季節走り 心はいつまでも (モバマス)(輿水幸子)
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34: ◆MhRo2YnWE.V/[saga]
2016/10/20(木) 15:12:18.96 ID:RhAcP3+k0
 職業柄、仕事で高級店に入ることも多いが、これだけ多くの手間をかけた料理はなかなかない。しかもそれを一人で作るとは。

「幸子は実は料理人を目指してたのか?」

 幸子が首をかしげる。

「……何のことですか?」

 俺の言葉に、幸子は本気で何を言っているのかわからない、という風だった。違うかもしれないとは思ったが、そんな顔をされるとは思わなかったぞ。

「何のことって、この弁当だよ。これだけのものを作るんだから、そういう将来も考えてるのかと思ったんだ。違ったみたいだが」

「ああ……」

 そこまで説明して、やっと俺の言葉を理解できたようにうなずく。
 ……本気で、全くそんなことは考えもしていなかったようだ。
 幸子は事もなげにさらりと答えた。

「……このくらいはやって当然なんですよ。私ですから」

「そ、そうか」

 あまりにも自然に自分を賛ずる姿には、風格すら感じる。大きくなったのは見た目だけじゃないのか?
 ずいぶんと一緒に過ごしていたはずなのに、彼女はこうして、ときたま俺が知らなかった顔をのぞかせる。
 こうは言っているが、多分幸子は最初に俺にカレーと肉じゃがを渡した後から、ずっと料理の練習をしていたのだろう。それも、ごく普通の頻度ではなかったはずだ。

 料理人を目指しているわけでもない幸子が、なぜそこまでしたのか。

「……ところで、提案があるのですが」 

「……ん? なんだ」


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