季節走り 心はいつまでも (モバマス)(輿水幸子)
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◆MhRo2YnWE.V/
[saga]
2016/10/20(木) 15:12:18.96 ID:RhAcP3+k0
職業柄、仕事で高級店に入ることも多いが、これだけ多くの手間をかけた料理はなかなかない。しかもそれを一人で作るとは。
「幸子は実は料理人を目指してたのか?」
幸子が首をかしげる。
「……何のことですか?」
俺の言葉に、幸子は本気で何を言っているのかわからない、という風だった。違うかもしれないとは思ったが、そんな顔をされるとは思わなかったぞ。
「何のことって、この弁当だよ。これだけのものを作るんだから、そういう将来も考えてるのかと思ったんだ。違ったみたいだが」
「ああ……」
そこまで説明して、やっと俺の言葉を理解できたようにうなずく。
……本気で、全くそんなことは考えもしていなかったようだ。
幸子は事もなげにさらりと答えた。
「……このくらいはやって当然なんですよ。私ですから」
「そ、そうか」
あまりにも自然に自分を賛ずる姿には、風格すら感じる。大きくなったのは見た目だけじゃないのか?
ずいぶんと一緒に過ごしていたはずなのに、彼女はこうして、ときたま俺が知らなかった顔をのぞかせる。
こうは言っているが、多分幸子は最初に俺にカレーと肉じゃがを渡した後から、ずっと料理の練習をしていたのだろう。それも、ごく普通の頻度ではなかったはずだ。
料理人を目指しているわけでもない幸子が、なぜそこまでしたのか。
「……ところで、提案があるのですが」
「……ん? なんだ」
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