季節走り 心はいつまでも (モバマス)(輿水幸子)
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18: ◆MhRo2YnWE.V/[saga]
2016/09/29(木) 15:14:34.04 ID:4gwQuLZH0
「だから今度はもっと大きくて、カワイイ車を買いましょう。私がそのお手伝いをするのも当然です」

「当然か……?」

「さっき言いましたよね。お返しも期待している、って」

 そう言って幸子はマフラーに手を触れた。ひどく大事で、尊いもののような触れ方だった。気軽に贈ったものを喜んでもらえるのは、何だか申し訳ないけど嬉しくもある。
 しかし、さすがに値段が違いすぎる。安価なマフラーではなかったとはいえ、車とは比較にならない。

「そんなに高いものはもらえないよ」

「気にしないでください。お金はあるんです。それも、半分はアナタが私にくれたようなものですから」

 嬉しい言葉だが、それは買いかぶりだ。
 幸子のアイドルとしての活動時期は二年半ほどだが、その間に幸子個人が得た額はこの国の平均年収と比較しても、はるかにそれを超えているだろう。
 でも、それは幸子が自分の力でつかみとったもの、そのひとつだ。
 彼女はヒット、幸運に恵まれたのではない。輿水幸子という恵みとして我々の前に現れたのだ、というのが俺の考えだった。

「それは幸子が自分のために、大切に使うべきだ。大学の学費も自分で出すんだろ? 立派だ」

 俺の言葉に幸子はくいっと顎を上げて、自慢げに唇を寝そべった月のように形作る。

「ふふん、当然です。私はもう子供じゃないんですから。少なくとも、気持ちでは」

 普段のおしとやかな笑みとは違う、自信にあふれた力のある笑顔。多くのファンたちを魅了した表情だ。俺も彼女のこの顔に惹かれていた。
 懐かしさと感慨深さを感じる。……そんなに昔を懐かしんでどうするという話だが。

「だから、私も軽はずみな使い方をしているつもりもありません。アナタが私にふさわしい車を持つというのは、QOLの向上のための投資というものです」

「そこまでか」

 それだけ、俺の車に乗っている時間に価値を見出している、ということか。……心が少し動く。

「わかった。半分とは言わないけど、少しだけ一緒に払ってもらってもいいかな、と思ったよ」

「ふふ、なんでしたら私が全部払ってもいいんですよ。とても気持ちがいいでしょうからね」

 俺は苦笑する。

「リムジンでも買うか?」

「いいですね。運転手さんも雇いましょうか」

「……冗談だよ」

 結構本気で言っている雰囲気なので、釘をさしておく。


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