85:名無しNIPPER[saga]
2016/09/22(木) 07:58:19.00 ID:q5Dee4K20
鬱蒼とした茂みの中に、陽の光は無い。
蛙や鳥の鳴き声や、川のせせらぎが小さく聞こえる森は、明けない夜に包まれている。
それらを照らす月光は決して曇らず、冷たい輝きを放っている。
異端の魔女ビアトリス「………」ファサッ
傷を負った魔女は、苔むした石壁の陰で大きな尖り帽子を脱ぎ、傷口を確認する。
一閃を浴びた右脇腹は出血し、刺すような痛みを伴っている。
魔女は緑色の瓶を取り出すと、中にある液体の残量を確認した。
ビアトリス「…これを飲んだら、あと一口か…」
太陽色の液体を魔女が飲むと、魔女の傷は霞のように薄くなり、消えた。
ビアトリス(こんな森の中で闇霊に出くわすとは…運が無いね…)
ビアトリス(白のサインも見当たらないし、どうしたものだろう)
焦りを覚えつつも、ビアトリスは冷静に事を捉えていた。
野にあって上位の魔術を体得するほどの才女である彼女は、不死についてもまた見識を深めている。
それゆえに、正気を失わない限り、窮地は一時のものに過ぎないという事にも確信を持っていたのである。
「はぁー空気が上手いなぁ。湧き水も美味いし、なかなか悪くないなぁ」
ビアトリス「?」
「おたくみたいな野暮が襲ってさえこなけりゃ、もっと良かったのになぁ」
「ひ、ひぃ!待ってくれ!悪かった!今すぐ戻る!戻るから勘弁してくれ!」
「戻る戻らないはどうでもいいんだよ。俺は喧嘩を売られる理由を知りたいだけなんだ。先に言っとくが、俺の機嫌がいい間に答えておいた方がいいぜ。やろうと思えばあんたの頭を兜ごと握り潰す事もわけないんだ」
「コブラ、こっちにも苔玉があったわ。白い花が咲いてる物からは、より良い効能が得られるそうよ?」
複数の人物の話し声が、壁越しにビアトリスの耳に届いた。
人数は4〜5人といったところで、そのうちの二人が物騒な状況の中にいるらしい。
だがその二人の片方の声は、ビアトリスを襲った闇霊のものであった。
ビアトリスは好奇心と嘲笑の誘惑に負け、石壁の隙間から向こう側を覗いた。
ビアトリス(愚かな男だ。ソウル欲しさに目移りしたか)
闇霊「り、理由!?だからそんなの無いって言ってるだろ!ただアンタのソウルが欲しかったから…だから奪おうとしただけだ!」
コブラ「そのセリフで俺が納得しないからこうなってるって分からないのかねぇ」
レディ「この赤い苔玉はなんなの?」ガサガサ…
戦士「それは出血を止める効果があるらしい。話によると怪我の予防にもなるらしいんだが、本当かは分からないな。俺も使ったことが無いし」ガサガサ…
レディ「じゃあ……とりあえずは取っときましょう。他にも使い道があるかもしれないし」ガサガサ…
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