76:名無しNIPPER[saga]
2016/09/21(水) 12:17:35.52 ID:AhSgyJvx0
新たな同行者を連れたコブラは、祭祀場の真下にある昇降機を使って小ロンド遺跡に降りた。
コブラ「陰気な所だねえ……これじゃ地獄の悪魔も寄り付かないぜ」
一面が薄暗闇に包まれた遺跡は、冷たい湿気を広大な空間いっぱいに漂わせていた。
足元の濡れた石畳には砕けた幾つかの骨が転がっており、水分を含んだそれらは歩くごとに音を立て、しなるように折れた。
正気を無くした亡者達は、コブラを襲うことはない。
祈る者、壁にすがりついてむせび泣く者、白骨の前にへたり込んで動かぬ者達の心に、そんな余裕は無いのである。
戦士「悪魔か…ここにはデーモンより恐ろしいヤツがいるって話だ。あんまり関わっちゃ、それこそ命がいくつあっても足りねえよ」
コブラ「やっぱりな。だろうと思った」
冥界の如き闇の世界を眺めながら、コブラは格子扉を目指して歩みを進めた。
だが、その格子扉は意外なほど呆気なく、コブラの前に現れた。
それも、見た目も等しく、呆気の無い形で。
コブラ「はぁ?これがその格子扉だっていうのか?」
レディ「思ったほど頑丈そうには見えないわね」
戦士「嫌なものから目を背けるための悪あがきだ。封印なんて、大体はこんなものなんだろうさ」
コブラ「封印?」
戦士「病み村は名前の通り病に蝕まれている。そこから来る亡者共も病んでいるから、そいつらを遠ざけるのも当然だろう。決して治らない病に侵される事ほど、不死として恐ろしい事は無い」
戦士「そう考えた者が急ごしらえでこの格子扉を作ったのさ。魔法を掛けて造りを強め、鍵を使わない限り開かないようにした上で、鍵をどこかにやってしまった」
戦士「おかげで、俺はとんでもなく面倒な目に遭っちまったよ。ハハ…」
コブラ「それにしたって、そんなに頑丈そうには見えないがね」
戦士「まあ見てなよ。見てれば分かる」
案内役はそう言うと、懐から黒い小壺を取り出し、その壺から蓋を取り去ると、壺を格子扉の握りに被せた。
壺からは黒い油のような物が滴れ、握りを黒々と塗りつぶしている。
戦士「こいつは俺が考え出した方法でな。これで壺を剣で叩けば、大体の扉は壊れるんだ。この扉より頑丈そうな鉄扉だって壊したことがある」
戦士「だがこいつは…っ!」シュッ!
ボン!
案内役が剣を振り下ろした瞬間、格子扉の握りで小さな爆発が起こった。
壺は割れ、握りには火が着いてるが、損傷はどこにも見られない。
戦士「このとおりだ。ビクともしない」
コブラ「ふーん…」
戦士「ほら、諦めて鍵を探すか、別の道を行くかしよう。俺の決心が揺らぐ前になんとか…」
コブラ「レディ、この剣の刃先を扉に挟めてくれ。俺は他に使えそうな物を探す」
レディ「任せてコブラ」
戦士「おい見てなかったのか?ここは通れないんだよ!」
コブラ「いや、通れるね」
戦士「?…通れるだって?…何を根拠に…」
コブラ「まあ見てなよ。見てれば分かるさ」
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