755:名無しNIPPER[saga]
2021/12/29(水) 07:11:21.29 ID:xjkVkqJ/0
灼熱の地底に現れた熔鉄の城。
その城の正門から現れた「煤けた白騎士」は、斧槍を持ったまま崩折れ、片膝をついた。
蜘蛛魔女のクラーグは蜘蛛腹に不死達を乗せたまま、煤けた白騎士に近付き、その者を見下ろす。
クラーグ「何者だ?すでに廃都とはいえ、貴様に我が故郷を潰せなどとは頼んではおらぬぞ」
焼けた白騎士は重々しく頭を上げ、重厚に過ぎた兜のスリットを通して、炎の蜘蛛を目にした。
混沌を纏いし魔女は炎の剣を持ち、混沌の餌とするためか、背に不死達を乗せている。
白騎士は、かの魔女こそがまさに己が主を誘惑した怨敵であると確信した。
ガッ!
クラーグ「………」
今まさに力尽きんとしていた白騎士の両脚に力がみなぎり、かの騎士は立ち上がった。
妄執にも似た使命感が、消えかけた命に最後の隆盛を呼び起こしたのだ。
ビキビキビキ!!
クラーグ「!」
白騎士が構えを取ると、煤けた鎧には白い薄氷が張り巡らされ、その全身から目に見えるほどの冷気を立ち昇らせる。
灰色にくすんだ斧槍にさえも白い輝きが宿り、往時の力を取り戻すかのように鋭くなった。
ソラール「結晶ゴーレムか!?」
グリッグス「いや、こんな種類は見たことがないが…」
クラーグ「結晶ではない」
戦意を燃やす騎士を前にしたまま、クラーグは一人納得すると、剣に纏わせた炎を消した。
戦士「!? おい!何やってんだ!?」
クラーグ「白い騎士よ、我らは敵同士ではないようだ。矛を引け」
煤けた白騎士「………」
言葉が通じないのか、声を発せないのか、あるいは思慮しているのか。白騎士は矛を収めはしないものの、斬りかかることもない。
ラレンティウス「…相手が何者か見切られたのですか?」
クラーグ「此奴が纏っているのは氷だ」
ラレンティウス「氷…?」
戦士「そんなばかな…水がこんなところでこお…」
クラーグ「凍るわけがない。だが、此奴の冷気は炎に耐える力を持っている。鎧も得物も、質が良い」
クラーグ「そのような者がここに現れたということは、混沌を封じるために此奴に武具を与え、此奴を鍛え、この地へと送った者がいるということだ」
クラーグ「ならば混沌を敵とする者同士、ここで斬り結ぶのも不毛であろう?」
戦士「…そりゃあ、そうかもしれんが…」
グリッグス「たしかに、向こうにも迷いがあるように見える。しかし、言葉は通じるのだろうか…」
クラーグ「炎の魔女の指輪の力を侮るな。指輪を持たぬおぬしらは此奴とは話せぬが、指輪を持つ我が望めば、我が言葉は此奴の耳にも届く」
クラーグ「騎士よ、同じ敵を討たんと欲するならば、名を名乗るがいい。それともやはり斬り合うか?」
魔女の提案を聞き、白騎士はしばしの間を置くと、兜を脱いでその亡者頭を晒した。
白く乾いた皮膚は骨に張り付き、喉は枯れて目も落ち窪んでいるが、長白髪はある種の気品を残しており、その瞳には強い意志の輝きが保たれている。
そして、白騎士は声無き喉をそのままに、乾き切った口を動かした。
クラーグ「…ロイエスの騎士?…それは名ではなかろう。我は名を聞いておる」
ロイエスの騎士「………」
クラーグ「名は忘れたか。たしかに亡者であるらしい。…しかしなおも使命は忘れぬとは、見上げた忠義者よ」フフフ…
776Res/935.37 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20