【スペース・コブラ】古い王の地、ロードラン
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689:名無しNIPPER[sage saga]
2021/02/11(木) 12:02:08.30 ID:TWGllzqL0

世が世ならば論戦を巻き起こし、人の世に伝わる信仰さえも揺るがす言葉となっただろう。
だが忠士たちを護国の騎士たらしめるものが霧散し、人の世からの信仰が、神々の乱れにより同じく歪んだ今、もはやアノール・ロンドに残りし騎士たちは皆、騎士という名誉的称号などに何ら価値を見出すことは無い。
ただ、各々がその自嘲した考えを心底に仕舞い込むことは、ある種、保守的とも言えた。
いざ主君に口に出されてしまうと、己に対してならばまだしも、己が仕える主君に対して申しわけが立たないと考えていたからである。
しかし、その申しわけの立たせようなどはとうに失われていると、騎士たちは皆理解しており、主君もその理を既知していた。


オーンスタイン「………」


古き日のグウィンドリン「そなたらの心苦しさは理解しているつもりだ。だが、この地に残る栄華の残滓などに、みなの生命を細らせるほどの価値があるとは思えぬ」

古き日のグウィンドリン「名ばかりの王たる暗月になど、後ろめたさを思う事などない。枷より抜け出て、自由となるのだ」

古き日のグウィンドリン「しかしなお後ろめたいと思うことも、無論許そう」

古き日のグウィンドリン「だが…我が願いも、偽りなき本心だ」


オーンスタイン「……自由ならば、すでに謳歌いたしました」


古き日のグウィンドリン「待て。そなたのかつての行いを責めているわけではない。我が母の意思は固く。都も既に腐って…」

オーンスタイン「承知しております。そのことではなく、我が身がすでに一度、ベルカの統治の崩壊とともにアノール・ロンドより離れた事についてです」

オーンスタイン「この竜狩りは、グウィネヴィア様を火の神たるフランの元へと逃した後、名を奪われし王子…グウィンドリン様の兄上様のもとに身を寄せておりました」

オーンスタイン「そのような身であったからこそ、知るのです。自由とは、常に失望の影にすぎないことを」



コブラ「フッ……言ってくれるなオーンスタイン」

グウィンドリン「図星か?」

コブラ「この俺にもサイコガンなんぞ捨てて、サラリーマンに戻っちまいたくなる時があるのさ」

コブラ「心ってのは勝手なもんだぜ。不自由だからこそ受け取れるささやかな自由ってヤツを知っちまうと、特にな」



オーンスタイン「振るうべき時に槍を振るえなかったこの身は、しかし、故郷を失えど主君は失わぬ身でもあります」

オーンスタイン「王の都は滅びました。ですが、かつての王都を王都たらしめた光のうちの一筋は、いまだ我が眼を照らしているのです」

オーンスタイン「この竜狩りは、その光から悉く眼を背け、民を棄て、保身へと走った者達と、墓所を同じくするつもりはありません」


古き日のグウィンドリン「………」


古き日のグウィンドリン「…そなたの言葉を頑迷と断ずるのも、容易かろう」

古き日のグウィンドリン「しかし廃都に住み着く流浪の者が、場を穢さぬと言うのならば、あるいは廃都の亡霊も、流浪の者を受け入れるべきなのだろうな」

古き日のグウィンドリン「オーンスタイン。そなたが住まうことを、この亡霊は許そう」

オーンスタイン「…!」


ドスーン


オーンスタインの居候が認められると、処刑者は大鎚を背負ったまま、腕を組んで座り込んだ。
廃都にならば気を遣うことも無く、居候がひとつ増えることなど、誰も咎めぬとでも言わんばかりのその態度は、言質を取ったから現したというだけではなかった。


古き日のグウィンドリン「はは…早くも増えたか。寛がれよ、旅の者よ」


キアラン「………」


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