【スペース・コブラ】古い王の地、ロードラン
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669:名無しNIPPER[sage saga]
2020/04/21(火) 01:47:53.76 ID:iOIDHq2k0
いかに愚かしく不毛であろうと、古き日のグウィンドリンは如何なる議論にも、その終わりが来るまで留まった。
アノール・ロンドは神と王の家。その思いは真実であり、グウィンドリンにはそれこそが最後の因であるが、それは神々には通じず、今や人からの信仰さえも持たない。


「もうよい、議論はもはや尽くされた。これより政府決定を下す」

「我らはこれより、鉄鎧の竜狩り騎士の名を、人である身の上を熟考に加えたうえで、アノール・ロンドのいかなる筆録において書き記すことを禁ず」

「これはアノール・ロンドを深淵より遠ざけ、神の威光、太陽と月の輝きを人の闇から護るための決定である」


多くの神々を抱き込み、あるいは討ち墜したであろう神の案を、ベルカの後任を務める暫定議長が採用した。
これにより、竜を狩った神々の物語から、人の世の英雄の名が永久に消滅することとなった。
神代の英雄譚たる『固い誓い』に残される神の名は、今や竜狩りオーンスタインのみ。
人と神々の絆を象徴し、弱きを助け強きを挫いた太陽信仰は、今この時より人の世において忘れ去られる事が運命づけられたのだ。

古き日のグウィンドリンは、幾度めかも分からぬ疑問を、またも諦観の想いの中に沈めた。
この決定がアノール・ロンドの窮地に対していかなる助けとなり得るのか。
人に再び光を見つめさせ、神代から闇を遠ざけ魔女や巨人を救うことに、この決定がどのような役割を担うというのか。
それを愚直に議会へ訴えたところで、かえって神々の求めぬ真実を再来させることになり、何も生み出さぬ不毛な争いが繰り返されるのみ。
どうにしろ不毛であることに変わりないのなら、命が消えぬ方が幾分心やすらかだ。

議論が決着すると、暫定議長は古き日のグウィンドリンに鵞筆と議事録を渡し、もはや慣例となった儀式を、無言のままグウィンドリンに促した。
古き日のグウィンドリンはいつものようにそれらを受け取ると、録を見もせずただ名を記し、それを大法官ライブクリスタルこと、クリスタルボウイへと渡す。
そしてクリスタルボウイは録の大部分を占める繰り言の如き討論を、政府決定文から切り取り、討論を懐に、決定文を己の補佐官に渡した。


暫定議長「これにて本会議を閉会とする」

暫定議長「我らに炎の導きのあらんことを」


議長が、捧げる者を失った祈りを唱え、神々がそれを復唱すると、会議は解散となった。
神々は皆、去り際に古き日のグウィンドリンに会釈をしたのちに議場から出て行くが、あくまでこの慣例を守るのは己らのためである。
月の覚えめでたき身となり、月の神秘にまみえること。忠義者を演じ、他の神々に己の威光を見せつけること。
我も無く慣例に従う身を演じ、他の神々を探ること。目的は百者百様であったが、いずれも月への敬いと、そして知性が欠けていた。


古き日のグウィンドリン「………」


神々が皆去り、あとには大法官とその補佐官、そして古き日のグウィンドリンのみが議場に残る。


大法官「グウィンドリン様、如何したのです?」


無言のまま立つ、力無き君主に大法官が声を掛けると、君主はやはり何も言わず、議場を立ち去った。


大法官「フッ…」


無神の議場で含み笑いを浮かべた大法官は、補佐官の頭へ掌を向ける。
次の瞬間、補佐官はその身に纏う衣服ごとソウルの塊となり、握り拳ほどの大きさに縮んだ。
縮んだソウルは金剛石の如く輝く小結晶となり、大法官の掌に乗ると、更に指輪ほどの大きさにまで縮んだ。

アーリマンの記憶をも見られる景色である以上、大法官が何をしたのかも今のグウィンドリンには理解できた。
闇の神アーリマンはあらゆる生命ある者を輝く石へと変える事ができるのだ。
あたかも、人の闇や呪いが、遂には暗い結晶へと変じるかのように。


コブラ「グウィンドリン。あんた今、人から生える結晶に似てるなって思っただろ?紫水晶みたいな結晶に」


グウィンドリン「気に障ったか?」


コブラ「いいや、むしろ安心したよ。俺のよく知る人間っていうやつは、あんたの考えるような闇だの呪いだのとは無縁なんだってな」


グウィンドリン「…かつての貴公の世界…宇宙、とやらが懐かしいのだな」


コブラ「まぁそんなところだ。宇宙はいいところだぜ?色んな宗教があるから神様もラクができる」

コブラ「ハンバーガーも食えるしな」



コブラが軽口を叩くのが先か、それが起きるのが先かという瞬間だった。
議場の外から、空気を震わせる大音と共に、黄昏色の空に一瞬の朝をもたらす程の大雷が閃いた。



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