【スペース・コブラ】古い王の地、ロードラン
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655:名無しNIPPER[saga]
2020/01/16(木) 07:16:32.97 ID:uIlizDYj0
コブラ「………」


ベルカ「貴様っ、何てことをーッ!!」


禁則はあらゆる魔術と奇跡を封じ、それはベルカも例外ではない。
それすらも忘れて駆け出したベルカの心は、怒りと困惑、焦燥に掻き乱されていた。
オーンスタインを組み伏せるべく手を伸ばそうとも、それはただの手に過ぎないというのに。

ズボォッ!

オーンスタインは脱力したエレーミアスの腹部から、ソウルの白煙を上げて右腕を引き抜いた。
その腕にベルカは絡みついたが、主君を弑する程に硬い意思で動くそれを制するなど、術無しの身では不可能であった。


ブンッ!ドカーッ!!

ベルカ「ぐはっ!」


ベルカは竜狩りの膂力に振り回され、壁に窪みを掘るほどの勢いで叩きつけられると、白煙を吐いて石床に伏す。
ヨルシカと古き日のグウィンドリンは呆けたように母親を眺めていたが、その視線を身で遮ったプリシラに抱き寄せられた。


プリシラ「グウィネヴィア!見てはなりません!」

グウィネヴィア「…母様……どうして…」

プリシラ「グウィネヴィア!!」


オーンスタインは自由になった右腕を再び握り込むと、エレーミアスの首を締める左掌に力を入れ、かの女神を壁に押さえつける。
そして葛藤かも怒りかも、哀しみかも分からぬ震えに苛まれた右腕を振るった。

ガゴッ! バギッ!

かの女神の顔に二度殴打が加えられたところで、グウィネヴィアがオーンスタインの背に飛び付き、かの女神から引き剥がそうとし始めた。

ゴッ!

三発目の拳がエレーミアスの片眼からソウルを吹き出させた時、キアランはようやく自らの脚から十字槍を引き抜き、オーンスタインへ向け這いずりをはじめた。

グシャッ! バシャッ!

頭部への殴打に耐えかねたのは、かの女神ではなく竜狩りの方だった。
オーンスタインは殴打をやめ、代わりとして穴の開いたかの女神の腹部に右腕を突っ込み、ソウルを肉と共に掻き出しはじめた。
エレーミアスは小さく呻き声を上げるようになり、コブラはたまらずグウィンドリンへ声を荒げた。


コブラ「なぜだ…なぜオーンスタインは彼女を苦しめる!なぜ安らかに死なせてやらない!」

グウィンドリン「神が死ににくいからだ。首を折ろうが胴を抜こうが、ソウルがその身にある限り神は死なぬ。故に幾度も斬り、抉らねばならぬ」

グウィンドリン「故に、禁則の威力を受けぬ癒しの力が、数多の妨害を受けるであろうオーンスタインには必要だったのだ」

グウィンドリン「コブラ。今オーンスタインの身体を動かしせしめている物は、我が姉グウィネヴィアの加護が加えられた、ひとつの指輪だ」

グウィンドリン「それは我が母が窮地への備えと偽り、グウィネヴィアに命じて、グウィネヴィアからオーンスタインに授けさせた物」

コブラ「命じただと…?」

グウィンドリン「これは母が望んだことなのだ」


コブラ「………」


グウィンドリンが、怒りの気炎を上げるコブラに、自らを納得させるような言葉をかけている時も、記憶の世界のオーンスタインはかの女神を虐げていた。
エレーミアスの身体は徐々に薄く透けはじめ、指先はひび割れて、ようやく崩壊の兆しを見る者に示しはじめる。
それはオーンスタインに、主君の苦しみに終わりがもたらされはじめたことと、主君の生命が間も無く危害に屈することを教えた。
だが同じく伝えた。主君を手にかけたその拳を、決して止めてはならぬということも。


ガキッ!

キアラン「オーンスタイン!何故貴公がっ!何故こんなああ!!」


オーンスタインの脚元に辿り着いたキアランは、右手に持つ黄金の刃をオーンスタインの太腿に突き立てた。
足甲の隙間を貫通した刃は、震える手からの膂力を受けて、少量の白煙を吹き出させた。
噴出したソウルは空中を一瞬漂うと、また傷口に戻っていくようだったが、キアランはそれには構わずに刃を起点としてオーンスタインの脚を這い上がった。
そして黄金の残光を足甲から抜くと、次にそれを竜狩り鎧の脇腹に突き刺した。



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