653:名無しNIPPER[saga]
2020/01/16(木) 00:14:10.03 ID:uIlizDYj0
ベルカが溜まらず思いの丈を吐き散らした直後、記憶の世界は静止した。
グウィンドリン「この時、母とベルカの言う何者かというのは、我が父グウィンを指すものとばかり思っていた」
グウィンドリン「幾つかの矛盾を承知しつつも、それは己が未熟の身であるがゆえに、多くを見渡せぬからだと」
グウィンドリン「暗黒神の陰謀など梅雨と知らず、例え語られようと、信じはしなかっただろう」
グウィンドリンの独白が終わると、記憶の世界は再び動きだした。
ベルカからの弾劾を受けたかの女神は数秒の間を置き、ベルカが平常を戻すのを見ると、語りかけた。
月と太陽の女神「ベルカ」
ベルカ「!」
月と太陽の女神「我ら火によって生を受け、生を広め、また生を失う」
月と太陽の女神「去りし生は闇に還り、火は闇に還り、光は闇に還る」
月と太陽の女神「ベルカ。人がなぜ無明たる者であり続けるのか、貴女は分かりますか?」
ベルカ「それは…きやつらが闇に生まれ、闇の力を持つゆえと決まっているでしょう」
月と太陽の女神「それもあるわ。でも、彼らが闇たる者であり続ける真意は、別のところにあるのです」
月と太陽の女神「それは、闇が暖かく、愛おしいから」
月と太陽の女神「闇は、火が遠ざけ虐げてきた者達を受け入れ、我らをも、その温もりで包むから」
月と太陽の女神「私はあのお方の意思に背くこと無く、貴女と共に、あらゆる凄惨を見てきました」
月と太陽の女神「ですが、私は愛を知っています。闇の温もりを知っています。それが、我ら神々の内にあることも」
ベルカ「………」
月と太陽の女神「だからこそ、私は我が子を護り、エレーミアスの名は冷たい絵画にのみ遺るのです」
月と太陽の女神「オーンスタイン!」
ベルカ「!?」
ガッ!
号令と共にオーンスタインはキアランを踏みつけに、エレーミアスへ向け跳躍した。
キアランの右手は飛びゆくオーンスタインの脚へ伸びたが、人差し指を踵に掠らせるのがやっとだった。
ドガッ!!
ベルカ「なっ!?」
グウィネヴィア「あっ!」
折れたはずのオーンスタインの右腕が渾身の力で振るわれ、エレーミアスの胴を突き破ると…
バキイィーン!!
その傷口からは紫色の威光が放たれ、光はオーンスタインの全身を砕き、突風となって辺りにいた者の衣服をなびかせた。
鎧の全ての隙間からソウルを吹き、オーンスタインは崩折れる。
ガン!
だが、致命傷を負ったはずのオーンスタインは踏み留まった。
そして漂うソウルを全身から吸い上げつつ、倒れゆくエレーミアスの首を掴み、持ち上げた。
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