617:名無しNIPPER[saga]
2019/10/06(日) 16:09:49.68 ID:nAUZyT2m0
グウィンドリン「白竜公が書庫に幽閉された日を境に、我ら月の子らへの隔離も、より深く明確なものになっていった」
グウィンドリン「我が姉上プリシラと妹のヨルシカが、当時どのような処遇にあったかも、母と話さなければ知らずにいただろう」
グウィンドリン「だが少なくとも、我が耳に入る言葉は、新たな統治者が現れるまでは処遇が定まらぬ身であった、権限の少なき者……我が母の言葉のみとなった」
グウィンドリン「この時の景色が映らぬのもそのためだ。広間の外から聞こえる母の声以外に、我が暗室に価値など無い」
コブラ「分かるぜ。つまらんCMばかりじゃテレビも消したくなる」
コブラ「だがひとついいか?アンタの記憶にはクリスタルボウイの記憶も混ざってるんだろ?この時もアイツは暗躍していたはずだ。何故ヤツの記憶が無い?」
グウィンドリン「クリスタルボウイが与えられた任をただ果たしていたからだ。これからしばらくは、あの者は動かぬ」
グウィンドリン「動く必要も無い。それほどまでに貴公の敵の謀りは完成していたのだ」
「グウィンドリン」
コブラ「!」
闇の中に鈍く響く声は、水中で聞く囁きのように微かであり、コブラは言葉を止めた。
囁きの主は月と太陽の女神であり、その調子から、決して愉快な用事があるわけではないという様子が伺えた。
月と太陽の女神「グウィンドリン…無事なのですね?」
月と太陽の女神「ならば、全てを話してもいいのでしょうね……実はしばらくの間、貴方と貴方の姉妹達に、刺客を放とうという動きがあったのです」
コブラ「フッ、飛ばすね。もう暗殺か」
月と太陽の女神「貴方の知る通り、あなた達月の子らと私には、王座へ王が座らぬ今、政を束ねる力は許されていません」
月と太陽の女神「それをいいことに、ベルカは臨時政府を発足して、このような画策を働いたのです……幸いにも、寵愛のフィナと岩のハベル、刺客達の長たる王の刃キアランの奔走により、大事には至りませんでした。太陽の第一王女たるグウィネヴィアの力添えも大きいでしょう」
月と太陽の女神「ですがヨルシカは幽閉され、プリシラは冷気を纏う身であるがゆえに、流刑の地たる冷たい絵画へと追いやられました」
古き日のグウィンドリン「……母上」
古き日のグウィンドリン「我らに政を束ねられぬと仰るのなら、何故我らは脅かされねば成らぬのですか?」
闇の中を、かつてのグウィンドリンの声が響く。
グウィンドリンの声は鈍くは無かったが、その主の姿は無く、やはり暗闇だけがコブラの眼には映っていた。
月と太陽の女神「全貌はまだ暴きようも無いでしょう……ですがグウィネヴィアの一声ですぐに動きを止めたのですから、何が起こっているにせよ、あなた達を脅かすことによって、ベルカの目的は達成されたのでしょう」
古き日のグウィンドリン「……ベルカは、我らの姉上を王に……次なる薪とするつもりなのですか?」
月と太陽の女神「それもまだ分かりません。ですがもしそうなら、アノール・ロンドは偉大なるソウルの系譜を失い、強い薪を生む力を弱め、遠く滅びます」
月と太陽の女神「かの神はそれを見ぬほど愚かではありません。グウィネヴィアを王とはしないでしょう」
月と太陽の女神「………」
月と太陽の女神「ともかくとして、私達への危機は一時にせよ去りました。我が子である貴方に、楽観せよとは言えないけれど…」
月と太陽の女神「それでも、多くの神々があなた達の影で支えとなっています。貴方の母も、そのひとつ」
月と太陽の女神「心細く感じた時は、どうかそれを思い出して」
コブラ「母の愛ってのは泣かせるね。アンタにも優しいお袋がいた時代があったわけだ」
グウィンドリン「子に優しくなければ、火に焚べる薪など育てられんさ」
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