556:名無しNIPPER[saga]
2019/01/16(水) 07:29:11.35 ID:cUl7YnTu0
「勘がいいな…冴えている」
宙に浮かぶ赤い筋が言葉を発した。
だが、その赤い筋も徐々に薄れ、透き通っていく。
「今までの者とは違う。霧は外そう。このままでは事故が起きそうだ」
オーンスタイン「今までの者とは誰だ。先の仮面の騎士の口ぶりといい、我らの同胞といくらか剣を交えたようだが」
透明な者は、オーンスタインの問いかけに答えなかった。
問いによって敵の隙と心を探り、戦意をそらし、友や主を逃すという策など、透明な者は飽きるほど見てきたのだ。
スッ…
透明な者はただ、透き通る右掌に左掌を掛け、指輪を外した。
父の仮面「では、改めて」
完全な透明を解いた新たなる敵対者は、先の仮面騎士と同じく、巨人の黄銅鎧を身に纏っていた。
だが手に持つ剣はクレイモアより重く、大きく、被る真鍮仮面は巻きひげと巻き髪をたくわえている。
ジークマイヤー「仮面の悪霊!?しかし、仮面が…」
ビアトリス「声も男の声だ…まさか組で動いているのか…?」
ズッ…
新たなる仮面騎士が、黒鉄色の特大剣、グレートソードを腰溜めに構える。
しかしジークマイヤーは円盾を構えず、ビアトリスもソウルの矢を発さなかった。
仮面の騎士と一団の間には無意味とも言える『間』が空いている。
その間は槍斧に手応えを与えず、槍に血をつけない程の広さだった。
よほど遠くに跳び退いたのか、ランスチャージさえも可能なほどに彼我の距離を空けて剣を構える敵対者には、オーンスタインにさえも一部の隙を生んだ。
刃先を十倍にでも伸ばさぬ限りは、弾かれる権利さえ持てない剣など、槍を持つ神が受けようはずもないのである。
ブン!!
オーンスタイン「!?」
ガギイイィーーッ!!!
ジークマイヤー「!?」
ビアトリス「えっ!?」
だが仮面の騎士は剣を伸ばしてみせた。
人ならざる一撃を胸に受け、オーンスタインは両脚を浮かせる。
ただし、仮面の騎士とオーンスタインの間を通った鋼鉄の特大剣など、誰の眼にも映ってはいない。
ガシャッ!
オーンスタインが着地すると同時に…
ダダッ!
仮面の騎士は駆けた。
しかしその両足裏は、石床の上をまるで絹のように滑り、一歩たりとも竜狩りとの間を詰めてはいなかった。
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