548:名無しNIPPER[saga]
2018/12/11(火) 01:19:07.96 ID:YaGE1yn00
ドスドスドスドスッ!!
重装騎士「!」
レディ「!」
ビアトリス「ああっ!?」
コブラ目掛け振り上げられた斧槍は、振り上げられた頂点で静止した。
月色に輝く4本の矢に正中線を貫かれ、重装の騎士は動きを止めていたのだ。
グウィンドリン「………」
軽装騎士「おお?」
盗賊「その手があったか…」
グウィンドリンのソウルの雨は多くの魔法と同じく、発現してしまえば杖による制御を必要としない。
挑発に掛かる演技でソウルの雨を展開したグウィンドリンは、後は雨を残しつつ一人なり二人なりを誘い寄せ、コブラの元へ招くだけでよかったのだ。
王手を刺さんとする者は舌なめずりをするか、視野を狭めてひたすら剣を振るうだろう。その背中は赤子の背のようにかわいらしいというのに。
重装騎士「!…!…!…」
重装騎士は腸を抜かれ、横隔膜を抜かれ、心臓を抜かれ、中脳を抜かれて尚も倒れず、斧槍を力強く握っている。その手を、レディが指で軽く押すと…
グガシャーッ!
ビアトリス「お…おおおぉ〜…」
重装騎士は倒れ、鎧と共に空中に姿を消した。竜狩りと鍔迫り合う仮面の騎士は溜息を吐く。
母の仮面「呆れた…己の戦略に己を掛ける馬鹿がいるか」
オーンスタイン「友に恵まれなかったようだな」
母の仮面「友?やめてくれないか」
ガギッ!ズザザザッ…
竜狩りの腹を蹴り、飛翔した仮面の騎士は転がるように着地。しかし竜狩りは仮面の後を追わない。
深追いの愚を見た後では行く気など起きるはずもなく、そもそもオーンスタインは深追いに用心を加えるを良しとしていた。
仮面の騎士は腹の底で竜狩りの甘さを嘲笑し、結晶の盾を捨てて新たな草紋盾を背負い、クレイモアを両手に持ち直す。
グウィンドリン「闇の子らよ、臆したか。それとも騎士たるを重んじるか」
デーモン槍の騎士「ほほっ…仕返しかい」
盗賊「フン」
軽装騎士「………」
竜狩りの一騎打ちを他所に、グウィンドリンは敵対者たちへ意趣を返す。
かつて神の軍を率いた神国の騎士が、馬の骨如きに引けを取ることはあり得ないという、確固たる信頼がグウィンドリンの心胆を滾らせるのだ。
その堂々たる立ち振る舞いを見て、ビアトリスは一瞬でも彼の神を疑ってしまった己を恥じるとともに、瞳に崇敬の光を灯す。
そしてその崇敬の光を見たのはジークマイヤーも同じだった。彼はグウィンドリンを疑いはしなかったが。
グウィンドリン「貴様らが矛を収めるのならば、我らも槍を退かせ、ここより去ろう」
軽装騎士「去るだと?まだ貴様の僕と仮面の騎士が闘っているだろう」
グウィンドリン「竜狩りは殿を務める。あれも我が騎士だ。我らが去る頃には任を終え、我らの元に帰るだろう。スモウ、鎚を納めよ」
スモウ「………」ズズズ…
軽装騎士「……てめえ」
大弓を背負う騎士は、かつて己が味わった事も無い程の侮辱に、己らが晒されている事を自覚はしていたが、飛び掛かるを望む衝動を抑えた。配下の者に得物を下げさせるのも、歩き去るという意思表示も、全てはハッタリの臭いを漂わせる見え透いた罠である可能性もあるのだ。
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