【スペース・コブラ】古い王の地、ロードラン
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396:名無しNIPPER[saga]
2018/06/21(木) 01:55:00.92 ID:WjaVphl70
不死達の助力は微かで、しかし的確だった。
戦士の剣は刃を立てず、呪術師の炎は混沌と比べ温いが、魔法使いのソウルの矢と、太陽の騎士の雷はデーモンを怯ませる。


ラレンティウス「炎の透りが悪い…」

戦士「焼けないなら眼を狙え!俺が惹きつけてるうちに火の明かりで眩ませろ!」


しかし、効かないとなってもそれなりに立ち回る術はある。力が弱くとも奮戦する彼らの姿は、少なからずクラーグを喜ばせた。
デーモンの群れ程度、クラーグだけでも何とでもなるだろう。だがクラーグが不死達に期待しているのは破壊力ではない。
自動的に死角を潰し、敵の視線を散らすしぶとさ。囮としての活躍である。
現にラレンティウスの炎はデーモンの身体を焼かないが、頭を仰け反らせ、攻撃の手を緩めさ、走り回る戦士はデーモンの斧に焼土を掘らせている。
他二人のソウルの矢と雷の槍に至っては、デーモンに手傷を負わせる程には強力である。
不死達はそう思っていないが、クラーグはこの戦いを舐めていた。

そして事実、舐めていい戦いだった。


ソラール(意外となんとかなった)ハハ…


グリッグス「…けっこうあっさり終わったな」

ラレンティウス「こっちは呪術が切れちまった…もう手斧で乗り切るしかないぞ…」

戦士「はぁ、はぁ、も、もう走れねえ…いや走らねえぞ…」

クラーグ「これしきでへばるな。デーモン共の五匹や十匹、倒したところで武勇にもならんわ」

戦士「あんたの目線で話すんじゃねえよ…こっちは腐っても人間だってんだ」フゥフゥ…

クラーグ「ならば人間らしく、デーモンを狩った武勇に力を奮い立たせ、立ち上がるがよかろう。先に行くぞ」カサカサ…

戦士「なっ…!」

ソラール「ハハハ、一本取られたな」パシパシ

戦士「チッ」


クラーグを先頭に、一行は爛れが垂らした熱を燻らせる地を抜けて、更に深く、灼熱の大空洞を降りていった。
足元は冷めた溶岩から、暑い石畳と滑らかな下り坂になり、岩壁は暑い石積みの壁と、煌々と輝く溶岩の海を覗ける断崖絶壁へと変わった。
壁に沿って造られた下り坂は狭く、手すりは無い。
蜘蛛の魔女は坂道を滑るが如く壁を走り、あっという間に坂の最下まで降りたが、人の身ではそうはいかず、不死達は一様に壁に手を着け、牛歩した。
坂の最下に着くと彼らはまた魔女にからかわれたが、暑さに体力を奪われつつある不死達は魔女の言葉を流し、その様子を魔女はまた笑った。
この時、嫌味な魔女にまた文句の一つでも返してやろうと戦士は思ったが、直後に襲いかかってきた山羊頭のデーモンの群れを、クラーグが大爆風を用いて焼き、残骸を辺りに撒き散らすと、その反抗心も消えた。

そしてうんざりするやら嬉しいやらの光景に出くわした。
牛頭のデーモンに匹敵する巨躯を持つワームと、その背後に揺らぐ篝火。
篝火はありがたいが、ワームは気色が悪く、篝火の温もりも灼熱の中にあっては苛立ちを強めるばかりだった。


クラーグ「面倒」ボゴーン!

ワーム「グギェエエエエエエエ!!」ドロドロドロ…


蜘蛛の口から放たれた熱泥を丸被りしたワームは身悶えし、牙を剥くことなく消滅したが、安全性の確保された篝火の恩恵に預かることを不死達は皆躊躇した。
疲労は消え去り、傷も癒えるが、いかんせん暑すぎる。
しかし不死達は結局、篝火を広く囲んで座った。


グリッグス「………」

ソラール「いやしかし暑い…流石に兜を脱いだ方がいいかもしれん…」

戦士「脱ぐならさっさと脱いでくれ。見てるだけでも暑苦しいんだよ」

ソラール「………」ガポッ…

戦士「!?」

クラーグ「ほお、これはこれは…中々どうして…」


暑さに耐えかねたソラールが樽型の兜を脱ぐと、金髪を後ろにまとめた優男が現れた。
鼻は高く筋は通り、顎は角を残した流線型。目は力強く、眉は優しく、口元は大らかさを放っている。


戦士「………お前所帯持ちか?」

ソラール「そういう事とは縁がなくてな。どうしてそんなこと聞くんだ?」フゥー

グリッグス「そっちの気があるんだろう。戦場に婦女子を連れ歩ける者はそう多くはないだろう。不思議なことでもないさ」


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