370:名無しNIPPER[saga]
2018/04/02(月) 18:12:04.63 ID:en8r4GFO0
ローガンの提案から十数分後、小部屋は不死の地には甚だ不似合いな香りでいっぱいになった。
大魔法使いの小鍋は篝火に炊かれ、本来投じるべき調合素材の代わりに、緑花草・キノコ・山菜・香草・岩塩などを煮詰めたスープが、その鍋を満たしている。
しかし小さじでスープを混ぜるローガンと、小鍋を興味深げに見つめる火防女と、師から借りた鍛治道具で杖を治すビアトリスは、そのスープには一切口をつけなかった。
香りも味も、空腹と共に人の世へ置いてきた者たちにとって、食事など古い習慣の一つにすぎない。
現に、鍋を突くのは人にまみれた男、ただ一人だった。
コブラ「ひゃー!ここに来て以来初めての料理にしては中々イケるぜ。素焼きのキノコは料理の内に入らないからなぁ」ムシャムシャ…
ローガン「ここを出て左手側を進んだ先に生える木々から採ってきた。味に嫌味の一つでも言われるかと思ったが、お気に召したかね?」
コブラ「塩っ辛いのと肉が無いのがチョイト不満だが、それは贅沢ってもんさ。助かったぜ」モグモグ…
コブラ「それよりこのスープに使った水と塩はどっから汲んできたんだ?蛇口捻って水筒に汲んだわけでも無いんだろ?」
ローガン「女神の祝福という秘薬を作ろうとして出来た失敗作を使った」
コブラ「うっぶ!!」ブフゥ!
ローガン「ふーむ、塩味だったか。なぁに安心したまえ。失敗作とは言え毒というわけでもない。効果が一切無い液体の混ぜ物に過ぎんよ」
コブラ「まったく、たらふく食っちまった後にそういう事言うんだもんなぁ。あとで蕁麻疹が出てきたら帽子にラクガキするから覚えときな」
ローガン「ふふ、それは困るな。どうせなら手入れでもしてもらいたいね」
コブラ「あーそうかい。じゃ、俺は寝るぜ。俺がニキビまみれで起きないことを祈っててくれ」ゴロリ
コブラ「………」くかー
ローガン「入眠が早いな。多才なのはいいことだ」
レディ「それだけ消耗してるってことよ。こんな彼は珍しいわ」
ビアトリス「先生、杖の修理が終わりました。鍛治道具をお返しします。ありがとうございました」
ローガン「うむ」
ローガン「それでは、私が山菜採りに出かけた時に見つけた『輝く壁』について、話そうか」
レディ「え?」
ビアトリス「?」
真鍮鎧の騎士「それは我らが大王が施した封印だ。貴公らの力では開けられん」
ローガン「大王の封印?ということは…」
真鍮鎧の騎士「そう、太陽の光の王の封印だ。貴公ら不死がこの地で蒙を授からぬ限り、王の力は道を閉ざす」
ビアトリス「蒙を開くって…」
ローガン「それなら私の得意とするところだ。じっくり探究するとしよう」
ローガン「ただし、それはコブラとタマネギ君が起きてからだ」
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