361:名無しNIPPER[saga]
2018/03/08(木) 08:33:06.74 ID:c3T6gxPX0
二人の魔法使いが巨人達を打ち倒した、ちょうどその時…
負傷者を抱えたコブラとレディは聖堂を抜けた先にある大バルコニーを走り、バルコニーの壁に開いた横穴に入った。
横穴からは下り階段が伸び、その先には小さな石造りの個室があり、個室は暖かな光に照らされていた。
レディ「見てコブラ!篝火よ!」
コブラ「ヒェー助かったーっ!間一髪ってところだな」
コブラは篝火の近くにジークマイヤーを座らせると、個室の壁際に座り込み、ズボンのポケットを探る。
しかし、目当てのものは手に触れなかった。
コブラ「あー、またやっちまった。ハマキはタートル号の中だぜ」
レディ「フフッ、もう立派な葉巻依存症ね」
コブラ「あんな調べもの、すぐに終わるはずだったんだ。こうなると知っていたらリュックいっぱいに詰めてたさ」
コブラが愚痴をこぼす中、ジークマイヤーの鎧からは流血による汚れが消えて、歪みも修復されていった。
まるで時間が巻き戻っているかのような現象だったが、コブラもレディも大して驚きはしなかった。
疲労困憊のコブラには驚く程の体力は無く、それを分かっているレディはコブラを体力回復に努めさせるため、疑問を口にはしないようにしている。
あぐらを崩し、コブラは大の字に寝転がり、天井に向かって呟く。
コブラ「はぁ…腹減ったなぁ…」
コブラ「こんな事なら森で山菜採りでもしてりゃよかったぜ…」
レディ「コブラ!起きて!」
コブラ「んー?」
チャキッ
コブラ「かーっ!人がこれから寝ようって時に!」
喉元に突きつけられた細剣にコブラは悪態をつく。
剣の持ち主は真鍮製の重鎧を着込んでいたが、その佇まいはどことなく女性的で、コブラに幼ささえ感じさせた。
コブラが細剣を叩き折るなり取り上げるなりをしなかったのも、これが理由だった。
真鍮鎧の騎士「貴公、何者だ?不死では無いようだが、英雄にしては先程から隙が多すぎる」
真鍮の兜から聞こえるくぐもった声は、コブラから更に攻撃の意思を失わせた。
その女の声は、冷徹さの裏に慈悲を隠していたのである。
真鍮鎧の騎士「幾度か英雄の宿命を背負う者達と遭ったが……」
真鍮鎧の騎士「………ふむ…」
コブラ「おっと待った。剣を向けたまま考え込まないでくれ。あんたのうっかりで俺は死んじまうぜ」
真鍮鎧の騎士「………」
スッ…
真鍮の騎士が納刀すると、コブラは上体を上げて壁に寄りかかり、脚を投げ出した。
そのだらしのない姿を見ても、真鍮の騎士の気力は一切緩むことは無かった。
真鍮の騎士「ここに来た者達の素性など、私は一度も尋ねたことが無い」
真鍮の騎士「だが、貴公においては是が非でも聞いておかねばなるまいという気が、どういう訳か湧き上がる」
コブラ「質問攻めなら今はお断りだ。口説こうってんなら、まずは俺の胃袋を満たしてもらいたいね」
コブラ「あとそれとフカフカのベッドだ。それさえ用意してくれたなら、俺はなんだって喋るぜ?」
真鍮の騎士「そんなもの、あるように見えるか?」
コブラ「無いから欲しがってるんだがね」
真鍮の騎士「………」
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