356:名無しNIPPER[saga]
2018/03/03(土) 06:57:11.01 ID:wW6mgGE20
カイーン!
一行「!」
ジークマイヤー「!?」
緊張した静寂を、金属の鋭い衝突音が割った。ジークマイヤーは咄嗟に音の出所を正面に捉え、盾を構える。
しかし、そこにあるのは建造物の白く美しい石壁だけ。敵も罠も無い。
そして、ジークマイヤーは己の握るツヴァイヘンダーが僅かに振動している事に気付いた。
大業物を担ぎ、余った左手に円盾を持ち、全身をすっぽりと覆うふてぶてしい重鎧を着て壁際を歩けば、一度や二度は壁を叩きもするだろう。
忍びではない、正面戦闘を是とする誇りある騎士に、密やかさなど無用であり、また不可能だったのだ。
ジークマイヤー「………」
言葉には出さないが、ジークマイヤーは仔ウサギのように臆病と見えるであろう己の姿を幻視し、また違った意味で駆け出したい思いを強めた。
そして、その思いは正しく、今しなければならない事と合致した。踵が巨人の影を踏んでいたのである。
コブラ「走れジーク!巨人が気づいたぞーっ!」
ジークマイヤー「え?」クルッ
ガギーーッ!!!
巨人へ振り返ったジークマイヤーの盾に、黄銅色に輝く甚だ巨大なハルバードが撃ち込まれた。
ドガッ!! グシャーッ!!!
ジークマイヤーは蹴り飛ばされた小石のように空中を突っ切り、聖堂の天井にぶち当たると跳ね返って、床に墜落した。
床に激突してからコブラとレディに担ぎ上げられるまで、数秒の時間があったが、その間ジークマイヤーはピクリとも動かず、蓋を開けて転がした水筒のように血を流すばかりだった。
レディはジークマイヤーの懐を弄り、エスト瓶を探り当てたが、中身は空だった。
コブラ「クソッ!俺たちはジークを連れていく!ビアトリスとじーさんは巨人を足止めしながらついて来い!いいな!」
ビアトリス「やるしかないようだね…」
レディ「しっかりしてジーク!ここにも篝火があるはずだから、それまで頑張るのよ!」
ジークマイヤー「………」ドボドボ…
コブラ「行くぞっ!」ダッ!
ズーン!!
逃亡を始めた侵入者を殲滅すべく、巨人の衛士達は一斉に動き出した。
聖堂の中に居た二体の巨人は盾を構えて歩みを進めるが、ジークマイヤーを斬りつけた一体はコブラ目掛けて駆け出していた。
目標はコブラではない。血だるまになったカタリナの騎士だ。
ビアトリス「私は走る巨人を討ちます!先生は向こうの二体を!」
ローガン「よろしい。任された」
ビアトリスは浮遊するソウルの小球を展開すると、杖にソウルを込める。
ローガンは大きすぎる帽子の長つばを上げると、二体の巨人を見据える。
ビュオーーッ!!
カタリナ騎士を斬るべく、走る巨人が振り下ろしたハルバードの大刃は…
ズドーーン!!
ジークに貸していた肩を外し、背負った特大剣を振り上げたコブラに受け止められた。
コブラ「ぐふっ!」
特大剣ごと床に叩き伏せられたコブラの脳裏に、ついさっき乗り越えたはずの障壁が浮かぶ。
鉄の巨像が蘇り、再びコブラに立ち塞がった。
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