350:名無しNIPPER[saga]
2018/01/21(日) 03:16:14.18 ID:8rCo7bsG0
ローガン「………」ササッ…
レディが無事に聖堂に入るのを確認すると、ローガンは躊躇なく巨人の前を通った。
原理や法則を掴んだら迷わず事を行う。それが蒙を開き、後陣を導くと信じているからこその行動だった。
ローガンが確信を持った原理は『近づかないこと』『敵意を見せないこと』『攻撃しないこと』
確信に至らずもその候補に上ったものは『音を立てないこと』『走らないこと』
万全を期すなら、全てを行うのが望ましい。
ビアトリス「………」スッ…スッ…
そして、ローガンの信念は正しかった。
師が示した道を、疑う理由の証明なく無下にする事は出来ない。
真面目に過ぎる弟子には、尚のこと。
ビアトリス「………」スッ
不満を抱きつつも、ビアトリスは師の無言の言いつけを守り、聖堂に入った。
そして、一見して無闇な行動をとったコブラを小突いて、残った一人に心配そうな視線を送る。
ジークマイヤー「………」
ジークマイヤーは、実のところローガンの無言の忠告に全く気付いていなかった。
状況を打開するために知力を絞るという、冒険者にとっては利点と言える癖をジークマイヤーは持っている。
だが、思索をするには兜の覗き口はあまりに細く、ジークマイヤーの視野はあまりに狭すぎた。
ジリッ…
重鎧から音が漏れないよう、ジークマイヤーは極めて遅く、すり足を床に這わせ始めた。
一歩進むのに三十秒は要する、ナメクジのようなその歩法は、それを見る者にさえ緊張を伝える。
そんな細心の注意を払っても、彼の鎧は震えて擦れ、カタカタと小さく鳴り続ける。
そして遂に辛抱耐えかね、ジークマイヤーは声を殺して言葉を発した。
ジークマイヤー「走ってよいかな?」ヒソヒソ…
ビアトリス「!?」
ローガン(それもありかもしれん)
ジークマイヤー「いいかな?」ヒソヒソ…
コブラ「いや、そりゃマズい」ヒソヒソ…
ジークマイヤー「いいだろ?」ヒソヒソ…
コブラ「ダメだ」ヒソヒソ…
ジークマイヤー「じゃあ飛ぶから受け止めてくれ…隠密など無理だ…」ヒソヒソ…
コブラ「待て早まるな!そのままゆっくり来ればいいんだ!」ヒソヒソ!
ジークマイヤー「昔からこういう事が上手くいった試しがないんだ…」ヒソヒソ…
コブラ「よしてくれ恐れを知らないカタリナ騎士だろ!?」ヒソヒソ!
ビアトリス「おいコブラ、アレ…」ヒソヒソ…
小声で怒鳴るコブラの肩を叩いて、ビアトリスは聖堂の奥を指差した。
聖堂に入っている者たちは、その指が示す方向、聖堂奥の壁と、そこに刻まれた装飾を見る。
コブラ「おっと…」
聖堂の壁にあったのは装飾では無く、人の形をした巨像だった。
影のせいか色は薄いが、鎧と斧槍は鈍く光り、盾は大きく、僅かに上下に揺れていた。
恐るべきことに、巨人の影は二つ並んで、同じく一行を見下ろしていた。
その表情の見えない、虚ろな兜の覗き穴から。
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