346:名無しNIPPER[saga]
2018/01/20(土) 18:47:49.43 ID:hP0R+szl0
ジークマイヤー「回りくどいなぁ。つまりは何が言いたいのだ?」
コブラ「ここを抜けるのに速さはいらないって事さ。どーれ、ひとつ試してみるか」
スッ
ジークマイヤー「!?」
突然、コブラは歩き始めた。恐る恐る、震えを起こさずに、足音を消して。
警備装置を掻い潜って宝石を手に入れる時と同じ要領、同じ緊張感を持ちつつ、心をなだめて。
ビアトリス(また無茶を…!)サッ
無策な仲間を助けるため、ビアトリスは杖を構える。
巨人が少しでも動けば、その頭部に魔法を叩きつける腹積もりだ。
しかしそれも効果のほどは未知数であり、彼我の戦力差なども無視した警戒だった。
コブラ「………」スッ…
一歩二歩と、コブラは巨人と一定の距離を保ちつつ、巨人の目の前を素通りするべく歩く。
巨人の顔も、巨人の全体像もコブラは見ていない。ただ自分の足元を見て、早く寝たいと考えるだけ。
失敗したら仲間が死ぬなんて事も考えない。今や足元だけがコブラの世界だった。
コブラ「………」スッ… スッ…
巨人の騎士が立つすぐ横には、都の奥に見える巨影程ではないにしろ、巨大な聖堂がそびえている。
巨人はその聖堂の衛士であり、コブラはその衛士の前で不法な侵入をしようとしていた。
スッ…
コブラの足先が、聖堂内部を覆う影を踏む。
巨人近衛兵「………」
衛士は動かない。
コブラ(何故だ…何故動かない…)
コブラ(コイツも何かの罠か?それとも只のハリボテだったりするのか?)
コブラ(俺の世界だと、ここらで巨人の頭がパックリ割れて、セントリーガンが顔を出してるだろうな)スッ…
コブラは疑いつつも、歩みを止めない。
影に入った片足は両足になり、コブラの金髪も陽光から身を潜め、コブラの足音は巨人から遠ざかった。
大聖堂の中は静寂と薄闇に包まれ、そよ風すらも入ってこない。
巨人の衛士はやはり、動かなかった。
コブラ(やれやれ…今までで一番ヒヤッときたぜ)サッサッ
ビアトリス「………」
ジークマイヤー「………」
暗がりからのコブラの手招きには、不死達は誰も応えようとしない。
何故巨人がコブラを見逃しているのか皆目分からないからだ。
レディ「………」スッスッスッ…
唯一、コブラについて多角的に要領を得ているレディだけが、コブラの招きに即座に反応した。
彼女の忍び足は軽やかで、夜道を歩く猫のようだった。
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