226:名無しNIPPER[saga]
2017/02/19(日) 00:59:02.70 ID:Cm3zmTyY0
まるで二人のやり取りに応じるかのように、要塞は城門を退けた。しかし、要塞は二人を歓迎している訳ではない。
二人のあずかり知らぬ場所で、あずかり知らぬ力が起こり、城門をこじ開けたに過ぎない。
カタリナの騎士「………」ジャリッ
ビアトリス「………」
その都合の良すぎる機に、悠々とかぶりつく二人では無い。
騎士は身の丈ほどもある長い鉄剣を構え、ビアトリスは杖の先に魔力を溜める。
そして案の定、城門の暗い口から、二匹の異形が飛び出してきた。
蛇人達「ギシェエエエエ!」
蛇の頭を持つ大男達は、手に持つ大鉈を振り上げて、二人に飛びかかる。
カタリナの騎士「むん!!」グシャア!!
一匹は巨剣に頭から叩き潰され…
ズバッ!
もう一匹はソウルの太矢に貫かれ、撃ち落とされた。
カタリナの騎士「むおっほっほ!他愛も無い!」
ビアトリス「いや待て!まだ死んでいない!」
頭骨を割られた方は、片目を眼窩からこぼしつつも起き上がる。
カタリナの騎士「おっ!?」
撃ち抜かれた方は、腹の風穴には見向きもせずに跳ね起きて、騎士の胴体に大口を突き立てていた。
鎧の分厚いプレートと、広く取られた内部の空洞のおかげで、騎士の身体自体は無傷だったが、それでも牙は深く食い込んでいた。
ビュン!!
カタリナ騎士「おおおおおおおおお!?」ビュンビュン!
ドカッ!
ビアトリス「はうっ!?」
蛇人の怪力によって振り回された騎士は、ビアトリスを跳ね飛ばし、諸共に城門へと放り投げられた。
要塞に入るという目的は達したが、今は喜ぶべき時ではない。
ビアトリス「ごほっ!ガハッ!」
カタリナの騎士「ええい!ここで死んではカタリナ騎士の名折れよ!貴公はこれでも飲んでてくれ!」
ズボッ
ビアトリス「むぐっ!?」
騎士は血を吐くビアトリスの口に、自前のエスト瓶を突っ込むと、彼女を脇に抱えて飛び起き、走り出した。
行先である要塞の中は暗く、何があるかも分からないが、引き返そうにも手負いの二匹が向かってくる。迷っている暇は無かった。
ガチャッガチャッガチャッガチャッ…
騎士の鎧が、一歩地面を蹴るたびに擦れて音を鳴らす。その音の合間に、蛇の気管支から漏れる威嚇音が混ざる。
無論、重い鎧を着込んでいる騎士は、威嚇音が段々と近づいている事に気付いている。しかし鎧の重さと手負いの魔女が、彼の脚を鈍らせていた。
もっとも、何も着ておらずとも、彼の鈍足に大した違いは無かったが。
カタリナの騎士「おおっ!?」
蛇に追いつかれる寸前、騎士は不思議な物を見た。石の足場に一本だけ掛けられた、長く細い石橋の上を、時折、巨大な鉄の塊が複数纏まって通過する光景。
騎士は、逃げ切れようが逃げ切れまいが、どちらにしろ詰みに追いやられていた事を悟りながら…
ドン!
蛇人の一人に突き飛ばされ、石の足場から落ちた。
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