205:名無しNIPPER[saga]
2016/12/05(月) 10:20:03.36 ID:xVqkSL/60
クラーグ「貴様……」
混沌の娘「!」
コブラ「よく効く胃薬を持ってるんだな。腹の傷が塞がってる」
髪を逆立て、目を血走らせたクラーグの負傷は、完全に癒えていた。
纏う炎は強く、火の粉が羽虫のようにクラーグの人間の腹部に群がっている。
右手に持った魔剣は炎を侍らせ、左手にある黒騎士の特大剣は、赤く熱されている。
クラーグ「我が血族を脅かし、五体を残して行けると思うな」
クラーグ「炎を浴び、贄となって生きるがいい!」ブワッ!
戦士「う、うわぁ!!よせーっ!!」
その両手に持った剣を胸元で交差させ、二刀を眩く輝かせたクラーグ。
彼女は、まさに自身を火の玉と化さんとしていた。
混沌の娘「姉さん、待って!その人と話をさせて!」
だが、クラーグの怒りの炎は、彼女の妹の言葉を前に呆気なく鎮静した。
クラーグにとっても、妹の言葉が全てという訳では無く、庇護と愛情の対象ではあったが、服従し、全てを許容してもいいという訳では無かった。
そのような関係などを度外視した、単純な疑問が炎を消したのだった。
クラーグ「………なに?…何故だ?」シュウウウウ…
混沌の娘「この人は、姉さんを殺してないと言った……そして、それは本当だった」
混沌の娘「それに…いつでも私を殺せるはずなのに、私は傷ついていない…」
コブラ「そ、そうそう!俺はもう人畜無害を絵に描いたような男でね!このとおり…」
クラーグ「おだまり!!」
コブラ「おーこわ……」
混沌の娘「とにかく……私達が思っているような人じゃないような気がするの…」
クラーグ「………」
気を削がれたクラーグは、しかし殺気をまとった視線でコブラを睨みつける。
コブラは背中を丸めてハンズアップの姿勢を取っており、レディも背筋を伸ばしてはいたものの、両手を上げて降参の意を示している。
そのボディーサインの意味する物などクラーグは知らなかったが、無防備で滑稽なポーズに、敵意は感じ取れなかった。
クラーグ「お前は何を企んでいる?」
コブラ「何も企んじゃいないさ。ただ、姉妹って言葉にえらく弱いって事は確かかもな」
コブラからの即答は相変わらず正体を掴ませない。
しかし、その時のコブラの視線は、クラーグには見覚えがあった。
溶岩の上に立ち、ニヤけつつも、コブラの眼には強い何かが宿っていたのだ。
クラーグ「………」
クラーグ「企み無し……その言葉の真偽など、我らには分からぬ」
クラーグ「不毛な問いだ。だが、信ずるなども出来ようはずはない」
クラーグ「この篝火に休みたいのならば止めはしない。だが、不穏な事をすれば炎がお前を焼くぞ」
コブラ「ああ、それで構わない。タダで休めてオマケに美女の裸体付きなら、言う事無しさ」
コブラ「あんたらも来いよ。俺たちを歓迎してくれるそうだ」
戦士「………」
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