197:名無しNIPPER[saga]
2016/11/27(日) 05:23:19.89 ID:JZqxQz8n0
卵背負い「叶うなら、この音色はわしが灰となるまでは、響かずにおいて欲しかった…」
虫のように両手足を動かし、卵の重さで膨れた腹を揺らしながら、亡者はコブラに振り向いた。
崩れた皮膚には血管が張り巡らされ、卵が揺れると、それらは合わせて脈動している。
脈動する血管は顔にも現れており、血管が動くたびに、その上を走る涙もまた、筋道を増やしていた。
卵背負い「お主ら、姉上様を殺したのであろう……」
震える声で亡者は言う
卵背負い「でなければ、ここには来れぬ……」
コブラ「まるで俺達が悪党みたいな言い方だが、今回に限ってはそうも…」
卵背負い「黙らんか!わしを殺すならやるがいい!だが姫様には手出しはさせん!」ガシッ
コブラ「よ、よしなよ!あんた少し悪趣味が過ぎてるぜ!」グイーッ
興奮した亡者の耳には、コブラの弁明は届かない。
鬼気迫る表情でコブラの脚にしがみつく様は、亡者というよりは餓鬼に近く、これにはコブラもたじろいだ。
レディはやむなく、コブラの背中から特大剣を抜くと、刃を上段に構える。
しかし、しわがれて、それでいて透き通った声を聞き、レディは剣を収めた。
「誰かそこにいるの?」
篝火が焚かれた部屋から聞こえるその声は、弱々しく震えていた。
卵背負い「!!…な、なんと……姫様が口を利きなされた…!」
「姫様?……それは何のことなの?……私、わからない…」
コブラ「怪しい者じゃありませんよお姫様。少しお茶でもと思いましてね」
卵背負い「何を言うかお主は!姫様、この男の言うことを聞いてはなりませぬ!」
ガッ
卵背負い「ぶっ!」
美女との関わりの予感がすれば、コブラの行動からはより一層に迷いが消える。
亡者の背負った卵を踏みつけ、コブラは天井高く飛び上がった。
亡者は顔を石畳に打ち付けたが、コブラは気にしない。
スタッ!
コブラ「なるほどぉ、こりゃお姉さんも心配するわけだ。君みたいな凄い美人が妹だと、さぞ大変だろうぜ」
降り立ったコブラの前には、病床に伏せった美女が座り込んでいた。
陶器のように白い肌に、薄っすらと浮き出た肋骨が痛々しく、身体は細く、髪は白銀色のシルクのようだった。
だが、姉と同じくヘソから下は大蜘蛛と化しており、白い糸に巻かれ、卵に囲まれていた。
混沌の娘「貴方は誰?……そこにいるの?」
娘は手を伸ばし、コブラの肩や厚い胸板に触れる。
指の動きはたどたどしく、正体を掴めないようだった。
コブラ「!」
薄く開かれた両の眼には、白く濁った瞳が浮かんでいた。
776Res/935.37 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20