152:名無しNIPPER[saga]
2016/10/19(水) 23:31:50.01 ID:JH/Vb9Yk0
黒いローブの女「なんだお前は」
ラレンティウス「あ、申し訳ありません。俺…私はラレンティウスと言います。その…まず言葉遣いの未熟さについて謝らせて下さい。俺にはそんな教養は無…」
黒いローブの女「なるほど。ザラマンと同じく、私の師事を求めているのだな。まぁ、火を見る者ならば、根源の火に憧れを抱くのも無理は無い」
ラレンティウス「それでは…」
黒いローブの女「だが、残念だがお前には才覚が無い。覚えられるものも有るだろうが、大成はありえんな」
ラレンティウス「そ、そんな待ってください!まだ俺の術も見ていないのに…」
黒いローブの女「術を見る必要は無い。お前の火を見れば分かる。お前には我らの火を得ることは出来ない。そもそも時の合一が無ければ、お前は私を見つける事も出来なかっただろう」
黒いローブの女「縁ある者か、才ある者、もしくは原初のものに似た火に照らされる以外には見えぬように、私達は己を律してきたのだからな」
ラレンティウス「待ってください!あまりに一方的すぎます!」
黒いローブの女「では聞くが、お前は何度かここに来たことがあるが、その時に私を見つけられたか?」
ラレンティウス「……それは…」
黒いローブの女「私はお前のすぐ近くで、お前を見ていた。篝火を点け、古箱から竜の鱗を取り、人食い女共に捕まって上へ連れていかれただろう?」
ラレンティウス「見て、いらっしゃったのですか…?」
黒いローブの女「そうだ。それで、私は見つかったか?」
ラレンティウス「………いえ……」
黒いローブの女「いいかラレンティウス。炎に近づき過ぎれば、炎に焼かれ炎に飲み込まれるんだ。お前が望もうが望むまいがな」
黒いローブの女「そんな者は見るに堪えないんだ。お前はそうはならずに凡庸に生きろ。火を大切に想うなら、尚のことな」
ラレンティウス「…………」
コブラ「まるで蝋の翼だな」
黒いローブの女「?」
コブラ「蝋の翼で太陽を目指したイカロスは、太陽の光を受けて溶けた翼と共に堕ち、破滅した」
黒いローブの女「そんな者はこの世にいないぞ。何かの例えか?」
コブラ「俺がいた世界に伝わる、おとぎ話と伝説の間にあるようなお話さ。もっとも、そのお話に含まれる安易なテクノロジー批判や文明批判とは、あんたの話は一線を画してそうだがね」
コブラ「あんたの話し方はむしろ教訓めいてる。まるで実体験みたいな迫真さだ」
コブラ「おまけにあんたは、実際にさっきの化け物をあっという間に追い払うような炎まで放って見せた。俺はああいうマジックパワーには疎いが、あの火柱を見ればどんな素人でも分かる」
コブラ「あんたは只者じゃない。それも鐘を鳴らす事や、不死の使命に関わるくらいの超の付く大物だ」
黒いローブの女「詮索好きだな……その考え方は、やめたほうがいい」
コブラ「自己紹介が遅れたが、俺はコブラっていう海賊なんだ。相棒のレディと一緒に稼ぎまくってるもんだから、詮索するのが習性になっちまってる」
黒いローブの女「それはどういう意味だ?族らしく私をねじ伏せ、拷問でもするか?」
ラレンティウス「!?」
コブラ「そんな野蛮な事を麗しのレディーにやったんじゃ、このコブラの男が廃る。やらないさ」
コブラ「それより、ここらに篝火があるんだろ?そこで少し話をすれば済むことだ。それに……」チラッ…
黒いローブの女「それに?それに何だ?」
コブラ「俺の知らない奴があんた以外に二人もいる。立ったまま身の上話をするにしても、ちょいと多すぎる気がするんでね」
黒いローブの女「………」
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