153: ◆mZYQsYPte.[sage saga]
2016/11/05(土) 06:53:38.57 ID:u1AXXBNco
比屋定「ただいま〜」
八雲「……」スゥスゥ
比屋定「あら、ゴリラさんはお休みですか」
八雲「……」スゥスゥ
比屋定「狸寝入りじゃないみたいね」
頬に指先を這わせても彼女は気にせず寝息を立てている。
唐突な自分語りだが私は世の中への憎しみで動く存在だった。
幸せそうな家族が、男が、女が、憎くて仕方なかった。
私は何も持っていないのに何故お前たちは持っている。
憎しみでガムシャラに動いているうちに天才と呼ばれるようになった。
光り輝く舞台は私を暖かく迎え入れた。
家族的なハンディや不遇を乗り越え続け成功した努力家として。
まったく世間とは綺羅びやかで呑気なものだ。
私はいい気になった。
どこにも所属したことの無かった私は、自分を祭り上げてくれる環境を守りたくなった。
分かりやすく言えば深海棲艦を倒して世界を守ろうと思った。
比屋定「貴女は変な奴ね」
可哀想な孤児でも天才科学者としてでもなく、比屋定海月として扱ってくれる存在。
乱暴に私の頭を撫でる大きく柔らかな手。
粗暴でも真っ直ぐに私を捉えた言葉。
彼女の隣を歩くときの安心感。
比屋定「私、こんなの知らなかったよ」
神様が居るかどうかは知らないが、神様を信じている人が居るのは知ってる。
好きという感情だって同じこと。
比屋定「八雲……」
科学者は観測した事実を決して取り消しはしないのだ。
誰かを想って流れる涙を私は初めて知った。
八雲「……」
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