キスショット「これも、また、戯言か」
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198:名無しNIPPER[saga]
2016/08/20(土) 00:06:11.00 ID:GrYSg2Iro

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「ところで、『柔よく剛を制す』という言葉がぼくの国にあるんだけど、知ってる?」

「いや、『ぼくの国に』って、お前と僕は同郷だろうが」

「で、知ってる?」

「……知ってるよ。だいたい小学生くらいには習う、簡単なことわざだ。日本人で知らない

やつは、まあ、いないだろうよ。で、唐突にどうしたんだよ。またぞろ僕を馬鹿にしようっ

て魂胆か?」

「よせよ。その言い方だと普段からぼくがきみをバカにしているみたいじゃないか。ぼくの

イメージを害するな」

「基本的にお前の存在は害だろうが……僕も人のことは言えないけど……いや、罵り合いは

もうやめよう。なんだか悲しくなってきた。うん。で、またどうしたんだ?」

「いやさ、このことわざ、どうにもおかしいと思わないか?」

「? いや、特に変なところもないだろう。まさにその通りだと思うぜ? ドラゴンボールとか

でも言ってたじゃないか。パワーだけ膨らましても勝てないってさ」
  exactly
「その通り。たしかに力だけでは勝つことは出来ない。ただ、じゃあ技だけなら勝てるかと

言ったら、そういうものでもないだろ? たとえば、お前と真心が戦ったとする」

「嫌な『たとえば』だな。たぶん僕、肉片も残らないぜ?」

「さすがに真心もそれくらいは手加減してくれるだろ……とにかく、頭の良いお前と、圧倒

的な力を持った真心、どっちが勝つかと言ったら、そりゃあ真心だろ?」

「いや、そりゃあそうなんだが、だからと言って技術は大切だろ。というか真心は規格外だろ。

あいつは力もそうだが技術もある」

「そう、そこなんだ。真心は力も技術もある。ぼくらが策を練ろうとかないっこない。で、

問題はさ、真心は規格外と言ったが、じゃあこれは真心にだけ言えることなのか?」

「……いや、そうだな。真心だけってわけでもないか。力あるやつは大抵、力の出し方、使

い方を知っている。つまりは技術を持っているってことだ」

「それに経験もある。そこまでの強さにたどり着くまでにおよそ数え切れないほどの鍛錬や

戦闘を繰り広げてきたことを考えると、力の無いものが使ってくるような策なんて、そいつ

の中ではもう対処法が確立されているだろうさ」

「柔よく剛を制すと言うよりは剛は柔を兼ねるって感じか……しかし、あれだな」

「ん?」

「夢も希望もない話だなって思って。ようは、強い者に弱い者は勝てないってことだろ?

これ」

「まあでも当然のことなんじゃないのか? 熱心に自分を磨き続けてきた強者からしたら、

弱者のその場限りの小賢しい思いつきに負けるなんて、それこそ報われない話だ」

「じゃあ、僕ら弱者は、強者ともし相対することになったら、どうするべきなんだ?」

「そりゃあもう勝負しないことだね。とにかく戦ってはいけない。誤魔化すとか、説得する

とか降参するとか、その場から逃げるとか」

「戯言を使う、か。じゃあもし言葉が通じず、逃げ道がなかったら? 諦めて死ねってか?」

「そうだな。……強いフリをするしかないんじゃないか? で、相手が降りるのを待つ」

「……いや、ポーカーかなにかやってるんじゃないんだからさ」

 彼は苦笑した。


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