文才ないけど小説かく 7
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211:何事もなき夏の出来事(お題:ラムネ)2/8[sage]
2016/07/03(日) 22:15:29.63 ID:vx65kHWzo
姉の話し声が聞こえてきた。「かわいい子だったわね」
 僕はすっかり嬉しくなって、母親のところへ走って行った。それから荷物持ちを手伝って、夕飯を食べてる間
「今日の料理はウマイなぁ」等と言ったりした。テレビもいつもより面白かった。
   +
 それから夏休みの間、僕は山岸の家に遊びにいくことばかり考えた。しかしそれが実現することはなかった。
家がどこにあるか知らなかったし、連絡網で自宅の電話番号がわかっても、山岸の家族が出たらと思うと、行動
に移す気にならなかった。それに、僕が山岸と二人で遊ぶというのがそもそもおかしなことに思えた。今まで何
度か二人で話したことがあったが、気がつくと当たり障りのない内容を話している内に「それじゃあ」と言われ
て終わってしまう。二人の間柄はそのくらい浅いものだ。
 しかし山岸も夏祭りには来るだろう。そして姉も一緒にちがいない。根拠もないのに、僕はそう決めつけて考
えた。そしたら彼女が「あら、あの時の子ね」と話しかけてくれるように思える。山岸の家に遊びにいくよりも
彼女に会える可能性は高い。しかし会ってどうするのだか、僕も知らない。
 ただ一つ、ラムネでも一緒に飲んだら楽しいだろうなと思う。
   +
 今日の分でもさっさと終わらせようと適当にカナブンの絵を描いていると、遠くから太鼓の音が聞こえてき
た。
「兄ちゃん」
 と声をかけたが、兄はまだ問題を解いている。返事もよこさないので、僕は日記帳を閉じて鉛筆を筆箱にしま
った。とっくにカナブンはどこかへ消えていて、外は薄暗くなっていた。
「まだ終わんないの」
「うるさいな。急がんでもまだまだ時間あるだろ。もうちっと黙っとけ」
「はーい」
 僕はまたじっと兄を待たなければならなかった。
 母は病気の祖母の見舞いに出ていた。母の兄弟たちと話があるから帰ってくるのは遅いということだった。夕
飯のお金は兄が持っている。ゆえに兄の言うことを聞いていないと、夕飯にありつけるかも危ぶまれる。もちろ
ん夕飯は、夏祭りの屋台で食べることになるはずだ。
 そしてラムネも……と考えて思い当たる。どうやって山岸の姉の分のラムネを買ってもらえばいいんだろう? 
兄にはどうしても、二本ラムネを買ってもらわなければならない。僕は全然お金を持っていない。
 太鼓と笛の音が風に乗って聞こえる。商店街はすっかり人でいっぱいだろうな、と想像する。焼きそばとイカ
焼きと、かき氷と、水風船。金魚掬いはできない。うちの水槽には兄が以前掬った金魚が、鯉みたいに太って水


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