勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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78:名無しNIPPER[saga]
2016/02/28(日) 19:47:14.73 ID:09+TUdRc0
勇者「『呪文・大回復』!!」
密かに紡いでいた回復の魔力を勇者は己の右腕に輪転させる。
完全回復というわけにはいかないが、何とか機能を取り戻した右手も使って、勇者は両手で騎士の体を掴んだ。
勇者「ようやく捕まえたぜ…!」
騎士「な…に…?」
騎士は完全に不意を突かれ、硬直してしまっていた。
真っ白になった頭を回転させ、勇者の意図に勘付いた時にはもう遅かった。
勇者「『呪文・大雷撃』ッ!!!!」
轟音と共に、閃光が騎士の頭上に降り注いだ。
騎士「ぐあああああああああ!!!?」
バリバリバリィ!! と身を焼かれる激痛に叫びを上げたのは、騎士だけではない。
勇者「うぐううううううう!!!!!」
勇者もまたその雷に焼かれ、苦痛の呻きを上げていた。
対象である騎士に対して、近すぎるのだ。
『呪文・大雷撃』は本来複数の敵を同時に対象にするような大雑把な呪文だ。
これだけ密着状態にある二人のうち、片方だけにダメージを与えるように威力・効果範囲を調節するなど、そんな器用な真似は出来はしない。
騎士(野郎…!)
勇者の体を振りほどこうとして、騎士は『呪文・大雷撃』の真価を思い出し、愕然とした。
騎士(体…動かね…!! ああ、くそ!! うざってえ!!!!)
騎士はそれでも痺れた体を無理やりに動かし、己の体を掴む勇者の手を振り払おうと試みる。
その時、騎士は勇者が笑っているのに気が付いた。
騎士「てめえ、まさか―――――」
勇者「―――『呪文・大雷撃』ッ!!!!」
ピシャァァァァンッ!!!!!! と、空気を裂く轟音と閃光が再び二人を襲う。
騎士「ぐうあああああああああああ!!!!!!」
騎士(こいつ!! まさかこのまま!! 心中覚悟で雷を呼び続ける気か!?)
騎士(だが、俺と勇者の間には絶対的な体力差がある!! 先に力尽きるのは、どう考えても勇者の……ッ!?)
騎士の目に、勇者に杖を向ける僧侶の姿が映った。
彼女はその目に大粒の涙を浮かべながらも、先ほどの勇者の言いつけに従い勇者の傷を癒そうとしている。
――――これから先、何があろうと……僧侶ちゃんは決して折れずに、俺を回復し続けてくれ
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