勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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417:名無しNIPPER[saga]
2016/11/06(日) 01:27:33.90 ID:ZSsiH8ra0
ぴくり、と『伝説の勇者』の指が動いた。
その手が地面に打ち捨てられた己の剣を取る。
伝説の勇者(そうだ……何もかも、生きていてこそだ)
『伝説の勇者』は己の剣を杖として立ち上がった。
目を見開いてこちらを見てくる勇者と目が合って、『伝説の勇者』は薄く笑う。
伝説の勇者(今更父親面なんて出来ないし、するつもりもないけれど……)
かちゃかちゃと震えの止まらぬ手で、それでも『伝説の勇者』は剣を構える。
伝説の勇者(せめて、最初の志だけは貫いてみせる)
『伝説の勇者』の脳裏に、目の前に立つ勇者が幼かった時の記憶がよぎる。
剣に見立てた木の棒を持って、よちよちと自分の後ろをついてきていた勇者の姿。
母の胎内から生まれ出でて、おぎゃあと己の腕の中で力いっぱい泣いていた勇者の姿。
伝説の勇者(―――――お前だけは絶対に死なせない!!)
ごぼっ、と『伝説の勇者』は己の口内に溜まっていた血液を吐き出した。
そしてすぅ、と息を吸い、静かに口を開く。
伝説の勇者「導け――――『覇王樹(ハオウジュ)』」
『伝説の勇者』の体から黄金の輝きが迸った。
その余りに鮮烈な光の奔流に、勇者も戦士も思わず手で目を覆ってしまう。
光がやみ、勇者は恐る恐る『伝説の勇者』の方に目を向けた。
勇者「……なんだ…」
わなわなと、勇者の肩が震える。
勇者「何なんだよ、それはぁッ!!!!」
勇者が『伝説の勇者』と相対して初めて感情を爆発させた。
今もなお仄かに輝きを放つ『伝説の勇者』の体からは、先ほど勇者がつけた傷が綺麗さっぱり消えていた。
伝説の勇者「これが―――俺の剣、『覇王樹』の力だ」
『伝説の勇者』は己の持つ剣を、『伝説剣・覇王樹(デンセツケン・ハオウジュ)』を勇者の前に掲げる。
伝説の勇者「一日に一度だけ使用者の傷を全快させ、更に一定時間精霊加護を爆発的に高めてくれる」
勇者「精霊加護を……高める?」
伝説の勇者「そうだ」
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