286:名無しNIPPER[saga]
2016/06/26(日) 00:19:35.43 ID:RyWkrIEDo
「おまえ、何言ってるんだ。優が休んでるからって俺まで学校を休む理由はねえだろ」
「優って呼んでるんだ」
「いやさその」
「体調不良なんでしょ? 念のために休んで」
「何でだよ? もう大丈夫だってえの」
「どうせ今日だってサボったんでしょ? それならしばらく休んでた方がそれっぽいっ
て」
「だから何でそこまで俺を休ませようとするんだよ。優が、女神行為をしてたのは事実だ
よ。おまえが見たとおりだ」
「・・・・・・うん」
「でもよ、人間関係なんて、恋愛関係なんて人様々だろ? 俺は優の女神行為なんて承知
の上で付き合ってるんだよ!」
「お兄ちゃん・・・・・・」
「俺は学校に行く。優のことは別に恥じてねえし、優の停学中だって俺がこそこそする理
由なんてねえよ」
「さっきも言ったけど、二見さんとお兄ちゃんのことは応援するよ。でも、それなら、な
おさらお兄ちゃんは明日学校に行かない方がいい」
俺にはその時の妹の言葉が理解できなかった。妹は優が女神行為をしていたことに気づ
いていた。そして、それは俺の不注意のせいだった。画像の削除とかには注意していたの
だけど、俺は不注意にも携帯からパソコンに転送した優からのメールをそのまま放置して
しまったのだ。妹はそのメールから女神板に辿りつき、優のレスを読んだのだった。あの
メールには優のコテトリも明確に記されていたので、誤解する余地は全くなかっただろう。
妹が俺の彼女が女神だということに気づいていたことは、今日明白になった。それでも、
妹には優の画像は見られなかったはずだった。妹がミント速報に辿りつき優の画像を見た
形跡がないことは、今日一日でわかっていたし、鈴木先生に優の女神行為をちくって彼女
を窮地に陥れたのがこいつではないことも、わかっていた。
それに、こいつは俺と優の交際に反対しないと言ってくれた。それはブラコンなこいつ
にとっては最大限の譲歩だったはずだ。それなのに、なぜこいつは俺に明日登校すること
を止めさせようとするのだろう。こいつは、何か俺が知らないことを知っているのだろう
か。
「何で俺が明日登校しちゃいけねえの」
俺は妹に聞いた。
「俺は女神の優と付き合ってることを恥かしいなんて思ってねえよ。それに、そもそも学
校の奴らには湯うが女神行為をしてるなんて知られてねえし」
「まだ、今日はね」
妹は暗い表情で言った。
俺はこれまで、妹のことは何でも知っていると思っていた。幼少の頃から、両親が不在
がちなこの家で俺はこいつと二人きりで生きてきたのだから、こいつのことは何でも知っ
ていたつもりだった。こいつが初潮を迎えた時さえ、うろたえながらもこいつにいろいろ
説明し、有希の助けを借りながらドラッグストアに生理用品を死にそうな思いで買いに行
ったのだって俺だったのだから。
でも、この時の妹の表情を眺めてもこいつが何を考えているのかはよくわからなかった。
「今日はそうだったけど」
妹は繰り返した。
「明日も学校のみんなが何も知らないでいる保証なんてないんだよ」
妹は俯いたままで続けた。
「何言ってるのかわかんねえよ。おまえ、何か知ってるなら教えてくれよ」
俺は混乱しながら妹に言った。
「あたしにもお兄ちゃんに説明できるほど、知ってるわけじゃないよ。でも、明日学校で
何かあったら、お兄ちゃんはきっと傷つくと思う」
妹は一瞬だけ、俺の目を真っ直ぐに見つめてそう言った。
「あまり楽観的に考えない方がいいと思う。二見さんのことも、お兄ちゃん自身のこと
も」
元気のない声だったけれど、それでも妹は俺を見つめながら話を続けた。
「そうなっても、あたしだけはお兄ちゃんの味方だけど」
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