255:名無しNIPPER[saga]
2016/05/12(木) 23:15:41.13 ID:PRviaZz6o
『突然メールしてすみません。御校の二年生の女子生徒である二見優さんがネット上で破
廉恥なヌードを自ら公開していることをご存知でしょうか。こういう行為が健全な青少年
に与える影響を考えると看過するわけにはいかないと思ってご連絡さしあげました。しか
るべき対応を期待しています。万一必要な指導をしていただけない場合には、この事実を
マスコミ等の諸方面に通報せざるを得なくなりますのでご留意ください。それではよろし
く対応方お願いいたします』
僕はそのメールを送信した。麻衣に相談せず自分の一存でこれを行ったことはいい考え
だったと僕は思った。麻衣は僕にリスクを負わせたことを気にしないで済むし、僕にとっ
ては大切な彼女に捧げるプレゼントを彼女に要求されたからではなく自発的に贈ることが
できたのだから。
僕はパソコンを消して、階下に降りた。今日も麻衣は僕を迎えに来るはずだった。どの
タイミングで麻衣にこの最高の贈り物を披露しようか。僕はその時これまで感じたことの
ないくらいの高揚感に包まれていた。
翌朝も麻衣は正確に七時半に僕の家に寄ってくれた。僕は玄関先に出て彼女が来るのを
待っていた。家の前に立っている僕に気づいた妹はすぐに顔を明るくして僕の方に寄って
来た。
「おはよ、先輩」
「おはよう」
もう僕たちはそれ以上余計なあいさつをせず、すぐにどちらともく手を取り合って自然
に同じ歩調で学校に向った。付き合い出してまだそう日は経っていなかったけど、この程
度の日常的な行動を取るにあたり僕たちはもうお互いに言葉を必要としなかった。そのこ
とが僕には嬉しかった。沈黙していてもお互いに不安になるどころか心が安らいでいる。
そういうことはどちらかの一方通行の気持ちでは成り立たないことだったから、僕はもう
僕の隣で沈黙している麻衣が何を考えているのか悩むことはなかった。そして、それは多
分麻衣も同じだったろう。
お互いに言葉は必要とはしていなかったけど、僕たちは互いに握り締めあった手の力を
強めたり肩をわざと少しぶつけ合ったり、恋人同士ならではのボディランゲージをぶつけ
合っていた。手を握るタイミングが偶然一致した時、麻衣は大袈裟に驚き痛がる振りをし
ながら僕の方を見上げて笑った。
一年生の教室がある校舎の入り口まで来ると、麻衣は周囲の生徒の視線なんかまるで気
にしない様子で、僕に抱き着き、僕の顔を見上げて微笑んだ。
「先輩」
「うん」
僕も迷わず彼女の身体に手をまわした。少しの時間、僕たちは抱き合ったままじっとし
ていた。
「もう行かないと」
やがて、名残惜しげに僕から身を離した麻衣が立ち上がった。
「今日もお弁当作ってきたから、少し寒いかもしれないけど屋上で待ってるね」
「うん」
それから昼休みまでの間、授業中も僕は麻衣のことを考えていた。
その時になってようやく僕は早朝のメールを思い出した。今朝は麻衣にこの話はできな
かった。早く麻衣に披露したいと思う反面、この僕からのプレゼントを麻衣に伝えるには
まだ早すぎるのではないかという気もしてきた。
麻衣の望みは優を池山君から引き離すことだったけど、それはまだ成就していない。鈴
木先生が今朝のメールに気がつき何か対応をしているのかもしれないけど、それはまだ成
果となって現れてはなかった。僕のしたことは単に捨てアドから鈴木先生にメールをした
だけに過ぎない。こんな程度のことを得意気に麻衣に披露したとしてもそれは僕の自己満
足だ。僕のしたことはただ行動を起こしたということに過ぎず、麻衣の望む結果は出せて
いないのだから。
僕は気を引き締めた。麻衣の僕に対する気持ちは、疑り深く臆病な僕にとっても疑う余
地がないくらい完璧に近い形で確かめられた。僕はもう麻衣の僕に対する気持ちについて
不安に思うことはなかった。
次は僕が麻衣に対して自分の気持を見せる番だった。それは百万回彼女に対して好きだ
と叫ぶことではない。麻衣の切ない望みを完璧な形でかなえてあげることこそが僕の麻衣
に対する本当の告白なのだった。
昼休みになり僕は教室を出て共通棟の屋上に向かった。麻衣とはそこで待ち合わせをし
ている。お互いに時間を無駄にせず長く一緒にいるためには共通棟での待ち合わせがいい
のかもしれないけど、今度は僕の方から麻衣の教室に迎えに行ってみようか。きっと麻衣
のクラスメートはざわめいて僕たちの仲を噂するだろうけど、麻衣はそんなことは気にせ
ずに僕の迎えを喜んでくれるだろう。
今日は優は登校していないのだろうか。それともメールの効果が発現するとしてももっ
と時間を要するのだろうか。僕は麻衣へのプレゼントのことを気にしながら共通棟の屋上
に続くドアを開けた。
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