213:名無しNIPPER[saga]
2016/05/01(日) 23:06:52.55 ID:lwUWxol4o
「・・・・・・それは」
「言いづらいなら僕が聞くよ。君は池山君に過度に依存することから卒業しようとしたそ
うだけど、お兄さんに彼女ができるのは許せるわけ?」
「だからそれは言ったでしょ? お姉ちゃんにもうあたしのことは気にしないでって話し
たって」
「聞いたけど、それは僕の聞きたいことじゃないよ―――遠山さんと池山君が付き合い出
したとしても、多分それはこれまでの君たち三人の仲良し関係の枠内の変化に過ぎないだ
ろ? ほら、君だって比喩的に言ってたじゃん。池山君と遠山さんは君の両親のようだっ
たって。それが現実になるだけでしょう」
「・・・・・・どういう意味?」
「池山君と遠山さんが付き合ったとしたら君は辛いかもしれないけど、それでも仲良し三
人組でいられることには変わりないわけだ」
麻衣は黙ってしまった。
「僕が聞きたかったのは遠山さん限定ではなくて、その他の女の子とが池山君と付き合う
ことまで君が許せるのかってこと」
「・・・・・・お兄ちゃんの恋愛を邪魔する気はないの」
麻衣は再び涙を流し始めた。これではコンサルやカウンセラー失格だった。でも、ここ
だけははっきりとさせておかないといけない。僕は敢えて挑発的な言葉を口にした。
「たとえそれが二見さんでも?」
しばらくの沈黙のあと麻衣は顔をあげ僕の方を真っ直ぐに見て言った。
「お兄ちゃんが好きな人ならあたしは許せるよ」
「でも、お兄ちゃんにふさわしくないような破廉恥で汚い女だったら絶対に許さない」
その時の麻衣の目の光に僕は少しぞっとした。自分以上に大切な相手という概念を僕は
これまで抱いたことはなかったのだけど、彼女にとっては自分の兄はそういう存在なのか
もしれなかった。
「メール見る限りだと、二見さんが女神であることは間違いなさそうだけど」
その言葉は麻衣を傷つけたかもしれない。でも同時に僕の心も自分のその言葉に痛みを
感じたのだった。
「あたし、お兄ちゃんが好きな人なら大抵のことは許せると思うの」
「そうか」
ようやく僕は麻衣の心情を掴んだようだった。この子が画像を見たがるのは、優の女神
行為が麻衣が許せる「大抵のこと」の範囲内なのかを知りたいのだろう。
僕は腕時計を見た。もうかなりいい時間になってしまっていた。窓の外は夕暮れを通り
越して暗くなっている。
「まあ、だいたいはわかったよ」
僕は言った。「さっきも言ったとおり僕は君のことが好きだから君に協力する」
「先輩」
「いろいろくどく聞いて悪かったけど、二見さんがどういう人か一緒に確かめよう。画像
だけじゃなくてもいろいろと手段はありそうだし」
僕にはこの時もう気がついていた。僕のしようとしていることは僕が心を惹かれるよ
うになった眼の前の少女を助けることになるのかもしれないけど、僕のかつての彼女だっ
た優を傷つけることになるかもしれない。
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