末妹「赤いバラの花が一輪ほしいわ、お父さん」(最終章と後日譚)
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203: ◆54DIlPdu2E[saga]
2016/05/29(日) 22:36:48.71 ID:yzLsY11j0
末妹「……っと……よく見て、家政婦さんの手元」

次兄「お? あの動きは裁縫の……えらい高速ではあるが針と糸を持った手の動きだ」

末妹「ええ、ボタンをつけてあげてるみたい……」

末妹「糸を切って……終わったのかな?」

末妹「……何かお話ししているようね」

次兄「あ、兄さんが踵を返した」

末妹「……慌てた様子で走り去って……家政婦さん……後ろで笑っている」

次兄「…………」

次兄「……俺も、廊下で出くわした家政婦さんにシャツのボタンが取れかけていると指摘されて」

次兄「なんかどこからともなく取り出した針と糸で、着たままつけてもらったことはあります」

次兄「……だから、よくあることだよね?」

末妹「え、ええ……私はないけど……」

次兄「末妹の場合はボタン取れかけを放ったらかしで着ていること自体あり得ない」

末妹「それもそう……ね」

次兄「……よくあることだけど、なんとなく……誰にも黙っておかないか? いま見たことは……」

末妹「う、うん……私もそうした方がいいと思う……なんとなく」

…………


  お兄ちゃんと私が、お屋敷の皆さんとの『これから』を手探りしているのと同じように……

  皆も、誰もが、過ぎて行く日々の中で、自分の……または自分と他の誰かとの『これから』を手探りしているのでしょう。

  ある人は自分の信じる目的地に向かって、ある人は流れに任せて、ある人は自分がどうしたいのかもわからないまま

  ただひとつ言えるのは、誰もが今のままではいられないこと、遅かれ早かれ、多かれ少なかれ……


…………



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