375: ◆DTYk0ojAZ4Op[saga]
2015/11/25(水) 03:01:00.77 ID:Mm2oT6db0
居場所を失くした彼はまた放浪の旅に出る事にした。
旅を続ければ顔馴染みもできる。
まだ心の闇を晴らせていない、そう考えた彼は仲間と共に奴隷商となった。
奴隷商は気分が良かった。
未来ある子供の人生を、ただ腹を肥やすためだけの不条理で台無しにできる。
虫を爪弾くようなものだ。
それが人に変わったところで、なんの違いもない。
自分のような無学でなんの展望もない男の食事のために、
未来ある子供が泣きわめき、絶望し、瞳から光が喪われる。
殺しは好かない、殺されないだけマシと思え。
そう心で語りかけ、彼は奴隷たちに背を向ける。
奴隷たちにとって身体を暴かれる事はただ命を落とすより辛い事なのだが、
絶望しきった彼には、それが理解できなかった。
奴隷商を続けたのは9年ほど。
だがそれも、どれだけ傷めつけられようと瞳から光を喪わない、
亜麻色の髪をした少女と出逢い、
すっぽりと闇が抜け落ち、彼はまた心を失くしてしまった。
一体なにをすれば楽になれるのか。
自分にはなにができるのか。
すべき事を見つけられない彼はもはや死を待つばかり。
だがふと、死ぬ前に誰かと話したくなり、
親しい友人も居ない彼は、娼館に出向く事にした。
あてがわれた女は、ひどく蒼白く頬のこけた、気だるそうな年増の女だった。
股ぐらの芯が痛むのかふらふらとおぼつかない足取りで、
それが梅毒特有の症状だという事もわかった。
…しかし、妙に親近感の湧く顔立ちをしていた。
585Res/472.43 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20