194: ◆DTYk0ojAZ4Op[saga]
2015/09/19(土) 02:02:29.42 ID:HzNUYnay0
憲兵に第6師団の人間と連絡を取ってもらったところ、
中央王国軍に盗賊という名の登録は無いそうで、
どうも嘱託のような扱いだそうだ。
普段の顔は町の宿屋の主人。
その宿屋というのも王都の外れ、暗黒街に近く、
ならず者たちの溜まり場になっているような宿らしい。
教えられた場所に行くと、盗賊は店先で掃き掃除をしていた。
古いながらも趣のある宿だ。
その風情は盗賊という男によく似ている。
繕われた部分も数多く、年月を感じさせながら、
その姿を微塵も恥じていない。
ただ、その方々に残る修繕の跡は、
その奥の、深刻な欠陥に目を向けさせないためのような、
虚栄だとも、確信できた。
盗賊「おや旦那。
本当に訪ねて頂けるとは」
戦士「あんた、一体何者なんだ。
軍籍を持った事もない、
嘱託軍人なんて聞いた事ないぞ」
盗賊「そりゃあ、私は勇者殿個人に雇われておりますから」
戦士「そんなの、軍人じゃねぇよ」
盗賊「まぁ、お入りください。
なにか御用があって来られたんでしょう」
促されて宿に入ると、
訝しげな目線を多く感じた。
敵意ではない事は確かだが、
どちらかと言えば敵意を向けようか悩んでいる、
という雰囲気。
この盗賊という男は、
勇者の弁では、かつて、奴隷商の元締めだった。
ただ軍籍を持たないという事は、生業は少なくとも宮仕えではないのだろう。
どこまで信用できるのか。
それは堅気の俺には、全く計り知れない。
しかしこんな場所に店を構えていられるのなら、
暗黒街へ未だある一定の影響力を持っているという事は、
確かな事だと言えるだろう。
585Res/472.43 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20