150: ◆DTYk0ojAZ4Op[saga]
2015/09/12(土) 00:41:09.96 ID:woiMU4L00
私が王都に来たのは7日前。
王都は賑々しく、都民はみな国を愛し、
我こそ国のためならんと自己研鑚を欠かさない。
この国では行動力が愛される。
時間をかけたより良い結論より、直感をこそ重要視する。
まるで常に戦をしているかのよう。
その価値観は戦いに生きる者として共感すべき処はあるが、
思慮深きこそ美徳とされる私の母国とは決して相容れない。
思考より行動。
知力より腕力。
理性より野性。
そこには一定の美学があり、
決して愚者の国ではない。
それは失敗の可能性を肯定した国風であり、
案ずるより産むが易しとでも言うのか、
その国風は、失敗を恐れ動かぬより動いて失敗しろ、
あとでやり直せばいい、と端的に言い表す事ができる。
それは必ずしも失敗を恐れぬ事に繋がらない。
なぜならその教えは、
中央王国の豊かさに裏打ちされたものだからだ。
国が豊かであるゆえに、人はみな分の悪い賭けに乗れるのだ。
この国は居心地が悪い。
戦う道を選んだといっても、
私はあくまで魔法使いだ。
この国で魔法使いを名乗る事は、
嘲笑を甘んじて受ける事に他ならない。
ただ意見を同じとしてしまう自分にも気付かされる。
この国の豊かさを目にすると、
魔法の王国は知性豊かな愚者の国であるという事実を、
まざまざと見せつけられているような気にさえなってしまうから。
585Res/472.43 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20