魔女「ふふ。妻の鑑だろう?」
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130: ◆DTYk0ojAZ4Op[saga]
2015/09/05(土) 01:52:44.97 ID:X+mP6cx90



塔の上から夜の王都を見渡すと、
質実剛健な国風がよく見て取れる。
都はみな寝静まっている。
魔法の王国では考えられない事だ。

…戦士との戦闘を思い返す。
あれだけの腕が辺境の町に埋もれていたとは俄に信じ難い。
才能あるとはいえ、あの武芸は、度が過ぎている。
魔力を持たず、駆使するのは己の身体と、大仰な武器のみ。
その武芸の冴えは疾風のごとき踏み込みから、
雷光のような突き、大気を切り裂くかのような薙ぎ払いを繰り出し、
瞬時に長柄を持ち替える事で遠近共に隙がない。
魔法と剣が使えると言っても、
あの嵐のようなハルバードの攻撃を相手に魔力が練れる人間は果たして居るのか。
高速詠唱には自信があった。
それでも、彼を相手にしては、全くと言っていいほど隙がなかったのだ。

賢者「…全く、あの子も化物だったけど、
   旦那は旦那でとんでもないわね」

彼の一足先に王都に着いた。
ここは騎士の国。
大陸最古の歴史を持つ軍事国家。

歴史のある国ほど闇が深い。
魔法の王国の兵力は10万。
対する中央王国は30万。
そして今もなお軍拡競争は続いている。

更に、勇者の存在。

彼女は単騎で1000の兵に匹敵するだろう。
雷雲さえあればどれだけ兵が居ても同じ事。
戦場で彼女を討ち取る状況が想像できない。

賢者「我が祖国も存亡の危機なのねー…。
   あの子、これを見越してたのかな」

戦争になれば勝敗は明白だ。
中央王国を相手に勝てる国はこの大陸にはない。

賢者「…行きますか。
   とにかく、勇者の事を調べないと」

夜の王都に身を躍らせる。
死神と呼ばれた、魔法学院の懐刀。

勇者の素性を知る者は居ない。
出身も、生年月日も。
いつどこで雷魔法を身につけたのか、
剣を修めたのか。
勇者と戦い、生き残っている者は知る限り、自身のみ。
…そして、魔法の王国に、勇者に対抗できる者も。

これは私にしかできない仕事。
戦士もわかっているだろう。


この道を往くのなら、
いつか、勇者と戦う日が来るという事を。






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