8: ◆6QfWz14LJM
2015/08/13(木) 22:29:22.58 ID:L7zAG9e10
「そう緊張なさらずに」
ラケル博士がレースの奥の目を細める。
宗教画の如く美しい微笑み。それだけに、左目の下にある傷跡が異物感を醸し出していた。
「……荒ぶる神々を喰らうことのできる唯一の存在、ゴッドイーター……彼らもいずれは、上に立ち、道を指し示す指導者の存在を必要とするようになります」
「あなたは、旧世代のゴッドイーターたちを統べる精鋭……"ブラッド"の候補者として、フライアに招聘されました」
"ブラッド"……これも聞いたことがある。フライアの移動要塞を拠点とし、各支部の神機使いを教導する目的で新設されたという、特殊部隊の名称だ。
ふと、ラケル博士の傍らで沈黙を守る、青年の右腕が目に入る。
神機使いのものと思われる、大きな腕輪。
ただし、普段見る赤い腕輪ではなく、見慣れない装飾の施された、黒い腕輪だった。
恐らくラケル博士と、彼女を連れてきた輸送機のスタッフ、それに……私を護衛する目的で来たのだろう。
「まずは適合試験を受けてもらいます……今すぐご同行いただきますが、よろしいですね?」
微笑んだ表情のまま、ラケル博士が言葉を紡いだ。
柔らかな物腰とは裏腹に、有無を言わせぬ強引さを感じる。
そして、当の私本人はと言うと、自分でも意外なことに、彼女の無茶な申し入れを二つ返事で承諾していた。
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