526: ◆6QfWz14LJM[saga]
2017/10/26(木) 07:17:46.30 ID:Wq6n4tJTO
そう、思っていたんだけど。
「……逆に聞きたいんだけど、怒ってないと思う?」
どこか呆けていたナナの言葉に、意志が宿る。
「思わない」
「……じゃあ、そんなこと聞かないでよ」
ナナにしては、随分と冷めた調子の言葉。
ただ、そんな彼女の様子を目にしたことで、少し考えが変わった。
なるほど、確認を取るまでもない事柄なのは確かではある。
「でも、それだけじゃないよね」
その感情が、怒りに限ったものなのであれば、だけど。
少し間を開けた後、同じ調子で言葉が返ってきた。
「……例えば?」
「さあ……実際何を考えてるかなんて、本人にしかわからないし」
「ただ、怒っているだけなら……ここには来てないかな、と思って」
思い違いをしていた、らしい。
もしナナが憤りを維持し続けていたとして、この場所を気にかける必要はあるだろうか。
何もないとわかりきった部屋で当たり散らすこともなく、私が彼女の捜索を決意する程度の時間を、静かに過ごしただけで済むものだろうか。
「そういうもの、なのかな」
「……私が思う分には」
「じゃあ、そういうものなんだろうね」
あえて赴くことで、怒りを保つ方法もあるにあるだろうけど。
他人事のように私の問いをいなすナナを見る限りでは、それも考え難いように感じた。
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