【艦これ】まるゆ「隊長が鎮守府に着任しました」
↓ 1- 覧 板 20
175: ◆UeZ8dRl.OE[sage saga]
2017/12/13(水) 23:47:23.63 ID:ahavyftA0
誰もが何かを抱えていて、誰もが何かと戦っている。
救われたものも居た。向き合ったものも居た。震える手を固く握ったものも居た。絶望の先を覚悟したものも居た。今正に過去を吐露しているものも居た。
――さて、ここで一つ問いたい。仮に何も抱えていないものが居たとしたら、彼女は何を思うのだろうか。
(玉子焼きと味噌汁も飽きたなぁ……パンとか作れないかしら)
「今日は何にするの?」
「んー……パンとシチュー」
「イムヤ、作り方知ってるの?」
「知らない。けど、ハチなら知ってるんじゃない?」
「はっちゃん、最近ずっと出撃以外は引きこもってるから……」
「引きずり出してきて」
「えっ、でも――」
「いいから行く!」
「は、はい!」
(発酵させるって何かで読んだけど、どのぐらい時間かかるんだろ……夕飯間に合うのかな)
鎮守府内の大抵のことは当番制であり、その中でイムヤは食事当番に特に力を入れている。材料が無いときは適当に済ませることもあるが、大体は一手間加えた凝ったものに仕上げることが多い。
それには、ちゃんとした理由があった。
(今日はパンとシチューとして、次は何がいいかな……中華を攻めてみるのもありよね)
お玉を顎に当てながら、次の当番の日の献立を、そのまた次の献立を、あれにしようかこれにしようかと彼女は悩む。
当たり前に、“次”が来るとイムヤは思っているから。趣味となりつつある料理を、彼女は楽しいと感じているから。
普通と評するのは容易く、普通であることこそが難しく、だからこそ必要だといえた。何気無い日常のワンシーンを支える、彼女のような存在が。
「パンよりシュトーレンを作ればいいと思うな」
「ハチ、部屋に持ち込んでる本ごと天日干しされたい?」
「……とりあえず材料があるか確認しないと」
(キッチンに立ってるイムヤには逆らわないようにしよう、そうしよう、うん)
194Res/133.24 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20