【艦これ】まるゆ「隊長が鎮守府に着任しました」
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161: ◆UeZ8dRl.OE[saga sage]
2017/05/23(火) 22:50:51.28 ID:apfYdZO+0
その日、鎮守府に珍しく来客があった。
イムヤが見付けたその来客は、蟻の列を眺めて鎮守府の隅で佇んでいた。
だから、彼女が間違えたのも無理はない。
「先程はイムヤが失礼しました」
「いい、いつものこと」
羊羮を小さくするのに夢中になっているパーカー少女。身長はここに居る誰よりも小さい。イムヤが迷子と間違えたのも、至極当然だ。
しかし、ポケットから出てきた身分証には“中将”という目を疑う二文字が堂々と記されていた。
「それで、今日は何故こちらへ?」
「明石、居るでしょ」
「あの、それが何か?」
「明石が居ないと、あの娘達沈むよ」
「詳しく、話して下さい」
「言った通り。どうするかは貴方次第」
少女の戯言、そう思えない不思議な説得力。そもそも提督で階級も上ということは、年齢は彼より上になる。
正式に軍司令部が発行している身分証にも関わらず、顔写真と中将としか書かれていないのも異常としか言えない。
「ごちそうさま」
「……明石が居れば、アイツ等は沈まないんですね?」
「――怖いなら、結べばいい」
「結ぶ?」
「……」
少女はこれで役目は終えたとでもいうように、すっと立ち上がり出ていこうとする。その背を呼び止めることが出来なかったのは、これ以上関わるのを彼の本能が拒否したからだ。
提督が再び立ち上がれたのは、五分は経過した後だった。
(――ふぅ……悪い冗談、じゃねぇよなぁ)
「司令官、入るわね」
「イムヤか」
「さっきの子、何だったの?」
「羊羮食べて、満足したら帰った」
「……本当に何しに来たの?」
「俺が聞きたい」
(正体不明のちびっこ中将、か。出来れば二度と会いたくないな)
「帰る」
「そうか」
「……背負って」
「あぁ」
「長門」
「何だ?」
「羊羮は美味しい」
「……そうか」
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