【艦これ】まるゆ「隊長が鎮守府に着任しました」
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108: ◆UeZ8dRl.OE[saga sage]
2016/02/08(月) 19:45:04.89 ID:CptyAwk00
音も、光も届かない暗闇の世界に彼女は恐怖を覚えた。
けれど、例えそのどちらも取り戻せなかったとしても、きっとまた彼女は笑うだろう。
何故なら、彼女には――。
「急に深海で音も光も感じなくなる夢、ですか」
「それは、私も嫌かな……」
「まるゆはそんなの耐えられないよ……」
「ゴーヤもごめんでち」
「一度感じた恐怖をそう簡単には拭えん。完全に大丈夫だと判断できるまでは本格的な出撃は見送る」
「だ、大丈夫なのね。もう全然平気なの」
「分かった。なら今から無音で真っ暗闇な空間に放り込んでやるから一分耐えてみせろ」
「っ……そ、それ、は……」
青ざめていく顔、再び震え出す身体、息も徐々に荒くなり、実際に目の当たりにした仲間達もそのイクの姿に動揺を隠せずにいた。
(まるゆの時はどうにかなった。だが、今回は自分達のみで解決出来るレベルの話なのか? 艦娘に対しても有効なのかは分からないが、カウンセリングの様なものを受けさせるべきか? 対処を間違えれば下手すると……クソッ!)
出撃時に平気だとしても、敵地で急に発作を起こしてしまう可能性もある。
大丈夫だという確信を得ようにも、精神的な問題は目に見える形で必ずしも解決する訳ではない。
さしあたって、今はとにかく先刻同様落ち着かせようと提督はイクへと一歩歩み寄ったが、それより速く彼女へと一人の艦娘が駆け寄った。
「イク、シオイはここだよ。艦娘っていいよね、艦の時と違ってわざわざ何かで繋がなくってもこうやって手を握るだけで繋がれるもん、ね? また怖くなったら手を伸ばして、すぐに掴みに行くから」
「シオイ……」
「そうね、一人じゃないんだし私達はいつでも一緒だもの」
「ま、まるゆも頑張ります!」
「一蓮托生、ですね」
「そうでち、ゴーヤもイクの髪の毛後ろから引っ張るでち」
「髪の毛引っ張ってどうするのよ……」
「……髪は、やめて欲しいの」
いつの間にかイクの身体の震えは止まっており、涙目ながらも顔には生気が戻っていた。
その様子を見て、思い違いをしていたと提督は気付く。
(コイツ等はもう六人で一つみたいなもんだ。“一人”になることが無いのに、乗り越えられないはずがない)
イクとイクを囲むように立つ艦娘達、その繋がりは強固で、全員が全員を支え合っていた。
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