【艦これ】まるゆ「隊長が鎮守府に着任しました」
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106: ◆UeZ8dRl.OE[saga sage]
2016/01/01(金) 20:06:55.73 ID:pRGGjO9G0
 沈む身体、視界は徐々に暗くなり、音も次第にしなくなり、光は遠退いていく。
 待ち受ける闇の世界、艦娘であるからこそ認識できる自分と周囲。
 ――それが分からなくなった時、果たして彼女達は平常心を保てるのだろうか。




「部屋から出てこない、か」

「はい、今朝から返事が無いんです……」

「中で倒れてるなんてことは無いと思うが……イク、俺だ、入るぞ」

 今回は非常事態の可能性も考慮し、提督はマスターキーで鍵を開け、中へと入る。
 そこにはある意味異常とも言える事態が待ち受けていた。

(引きこもり……とは違うか)

「イク、どうしたの?……イク?」

 日の光が部屋を明るく照らしているというのに部屋の電気を点け、備え付けのテレビにヘッドホンを繋げて画面を食い入るように見つめるイク。
 部屋に二人が入ったことに気付いた様子もなく、まるゆの呼び掛けにも返事は無かった。

「まるゆ、とにかくテレビを消せ」

「は、はい」

 まるゆは床に座るイクの隣に転がっていたリモコンを拾い上げ、電源を切る。
 すると突然、イクは身体を震わせ始め、両腕で自分を抱き締めるように小さく丸まった。

「――まるゆ、お前ちょっと部屋戻ってろ」

「隊長……?」

「いいから、戻れ」

 真剣な提督の声音に、まるゆは少し不安そうにしながらも部屋を後にする。
 そして、気配が遠ざかるのを確認した後イクへゆっくりと近付いた。

(ふぅ……よし)

 気合いを入れ直し、失敗のことは考えないようにしながら、提督は行動に出る。

「っ!……て……や……」

「俺の目を見ろイク、後で文句は幾らでも聞いてやる、だから、見ろ」

 雰囲気から分かる通りかなり不安定な精神状態にあるイクをどうにか拘束し、自分の方を見るように言い聞かせる。
 潜水艦娘とはいえ見た目より力は強く、錯乱状態であることも相まって、あまり長くかかると振りほどかれて壁に激突などという結果も考えられた。

(あー……いてぇ……)

 殴られ、引っ掻かれ、身体のそこかしこに傷を負ってはいるものの、それを顔には出さず、ただひたすら落ち着くのを待つ。
 そして、ようやくその時は訪れた。

「……てい、とく?」

「……セクハラはこの傷でチャラな」

「あの……は、恥ずかしいから離れて欲しいのね」

「あぁ、だから後でちゃんと話聞かせろよ? まるゆ達にも、な」


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