383: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/20(木) 17:54:03.98 ID:v4+DVNQXO
「……今何時だ」
「それほど経ってないよ。10分ぐらいだ」
相変わらずタフだな、と冷やかす伊吹を無視してあたりを見渡す。
既に道場に円の姿は無く、結局ろくな会話も無かった。
言葉も無く暴力を振るわれるのは母親で慣れていたつもりだが、ジュウは落胆を隠せない自分を確かに感じていた。
円の性格からして憂さ晴らしということはないだろうが、それならそれで少しぐらい会話があっても良いだろうに。
「円堂さんから伝言を預かってる」
伊吹を見遣ると、どこか申し訳なさそうな、気まずそうな顔をしていた。
どうやら言いにくいこと、或いは言いたくないことを申しつかったらしい。
「ただの伝言だろ。言ってくれ」
「じゃあ言うけど――」
その言葉は、先ほど繰り出されたどんな攻撃よりもジュウの心に突き刺さった。
ジュウは咄嗟に返事ができずに黙り込む。
「俺自身としては、キミほど強い奴はなかなかいないと思うけどな」
「慰めはいらねえよ」
思わず吐き捨てるジュウに対して、伊吹は再び苦笑いで返す。
伊吹は立ち上がって、軽く伸びをする。
「用事も終わったし、帰るか」
「……部活は?」
「今日は休み」
「…………」
「……言うなよ、柔沢」
制服姿の伊吹とぼろぼろの自分を見比べて、ジュウはどちらの方がマシなのか考えたくも無かった。
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