らき☆すたSSスレ 〜そろそろ二期の噂はでないのかね〜
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72:ひよりの旅 107/112[saga sage]
2013/02/11(月) 21:36:51.93 ID:W145K4B60
ゆたかは直ぐ近くの公園に私を連れて行った。
ゆたか「どうして?」
同じ質問をしてきた。
ひより「それは私が聞きたい、もう忘れかけていたいたのに……蒸し返すなんて酷いよ」
ゆたか「私は……」
ひより「可笑しいよね、完全に振り切った筈なのに……笑い話には出来ない、あの場所にいると惨めなだけだよ」
ゆたかは何も言わなくなった。慰めの言葉は今の私には辛く苦しめるだけ。
ひより「帰る、そろそろ演奏始まるよ……ゆたかも戻った方がいい」
私はゆたかから離れた。
ゆたか「人一倍の好奇心、どんな危険を冒してでも自分の好奇心を満たすために探求する」
私は立ち止まった。ゆたかは更に話した。
ゆかた「遠目でただ観察しているようで気が付くと自分からのめり込んでしまって身動きが取れなくなってしまう不器用な子」
ひより「な、いきなり何?」
ゆたか「高校時代、ひよりはよくこんな事を言っていたよねキャラの分析……でもね、一人だけ言っていない人が居るのを知っている?」
ひより「……いや、ネタ帳に私の知人は全て書いた……最近会った人は忙しくて書いていない」
ゆたかは歩いて私に近づいた。そして人差し指を私の胸に向けた。
ゆたか「ひより、自分の事は一言も言わなかったね」
ひより「自分の事……書く必要なんかないよ、私は私だよ……」
ゆたかは私に顔を近づけにっこり笑った。
ゆたか「……二年前にアシスタントなった小島さん、好きなんじゃないの?」
ひより「な、何をこんな時に……好きじゃない……彼とは仕事で付き合っているだけ」
ゆたかは首を横に振った。
ゆたか「やっぱり、何も分かっていないね……だからまりさんに先を越されちゃうの」
カチンと来た。
ひより「勝手にそう思ってればいい、お稲荷さんの話しはゆたか一人でやれば……私はもう協力しないから」
ゆたか「そうやって気付かない、自分が傷ついているのさえ気付かない、人一倍傷つき易いのに……かがみ先輩の時も、いのりさんの時もそうだった、そんなに傷だらけになって……」
ゆたかの目に光るものが……
ゆたか「かがみ先輩を救ったのはつかさ先輩じゃない、ひよりだよ、いのりさんとすすむさんを結んだのも、まつりさんとまなぶさんも……そして私も救ってくれた」
ひより「ゆたかを救った……私が?」
ゆたか「うん……ひよりの好奇心は全部外に向けられちゃって、自分には全く関心ないみたい、だから人が出来ないような無茶をする、
    普通は逆なのに、私にはそんな真似出来ない、うんん、つかさ先輩だってかがみ先輩だって出来ない……凄いよね、憧れの人は直ぐ側に、目の前に居た、
それに私に物語を作る才能があるのを見つけてくれたのもひより、私はひよりから沢山の物を貰った……」
私はそんな事をした覚えもつもりもない。でも、ゆたかの流している涙は嘘をついているようには見えなかった。
ゆたか「外に向けられた好奇心、それの十分の一、うんん、百分の一でも自分に向けてみて……そうすれば今、何をすべきかわかると思う」
自分に好奇心があるのは知っている。それに自分の分析は何度もしている……今更そんな事をしたって……
ひより「私はもう戻れない……」
ゆたかは目を拭うとにっこり微笑んだ。
ゆたか「そう、それも良いかもね」
ひより「それじゃ先に帰っているよ」
私は立ち上がった。
ゆたか「あっ、そうそう、つかさ先輩が演奏する音楽はラヴェル作曲、亡き王女のためのパヴァーヌ」
ひより「ラヴェル……クラッシック、難しそうだね」
ゆたか「うん、彼が若かった頃の作品……逸話があってね……彼は晩年、交通事故で記憶を失ってしまって作曲活動ができなくなってしまったの、ある日、たまたまこの曲を聴いた彼が
    素晴らしい曲だね、誰が作曲したのか……そう言ったって……ネタかもしれないけど……でもその曲はこの話しを納得させるだけの力があるよ、
    オーケストラ用にも編曲されているけど、私はピアノの方が好き」
ひより「……なんでそんな話しを?」
ゆたか「記憶を失っても自分の作曲した曲をすばらしいと言った……人の感性や好みや性格って記憶で決まるものじゃないって……私はひよりの記憶を奪った……だけどそれは
    私の目的にはまったく意味のない行為だった……それが分かったから、ひよりも聴けば何か分かると思って……話した」
ゆたかは腕時計を見た。
ゆたか「もうシナリオは出来ているよ、主人公はつかさ先輩とひよりがモデル……ひよりが手伝わないのは残念、私の話しをイメージ化して漫画に出来るのは
    ひよりだけだから……あ、もう戻らなきゃ」
ゆたかは走って公園を去っていった。もっと話しを聞きたかったのに……

 公園を出て私は分かれ道で止まった。
駅へと続く道……家に帰る道。もう一方はつかさ先輩のお店へと続く道……
何故立ち止まる。私はもう帰るって言ったのに。駅に向かえばいいじゃないか。でも、私の中のもう一人の私が帰るなと言っている。
かえでさんとゆたかの言葉が頭の中で何回も繰り返して再生される。
私は……どうすればいい……いや、私ならどうする。
自分に問うか……そういえばみゆき先輩もそんな事いっていたっけ。
もちろん面白い方を選ぶに決まっている。とっちが面白い……
このまま帰れば締め切りが近い漫画の仕上げをすることになるか……
亡き王女のためのパヴァーヌ。どんな曲なのだろう。そしてつかさ先輩はちゃんと弾けるのだろうか。興味が湧く……それを確かめるだけも……
ひより「ふふ、分かった、悩む必要なんか無かった、こんな時、私なら行く場所は決まっている」
年甲斐も無く独り言を呟いた。まだ間に合うかな……
私は走り出した。




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