304: ◆lu5mqPKdjRWD[sage saga]
2020/01/09(木) 07:11:24.32 ID:2JERRmH+0
"ねえ、へやの、なかに、きて。どうか"
扉越しに、声がしました
鍵が開いていました
開くと、彼女が力なく座り込んでいました
はかなげに
彼女は婚約者を見上げました
不安げな、うわめづかいで
"わたくしは"
"あのときから、ずっと、ねむっているのです"
"だからこれは、寝言"
"気位ばかりがたかい、ばかな娘の、戯言です"
瞳は潤み、声は震えていました
今にも、消えてしまいそうな…
"やさしく、だきしめてください"
"だいじょうぶだよ、とささやいてください"
"しくしくとなく、ちいさなこどもを、あやすように"
"どうか"
とつとつとした、かぼそいこえ
そんな懇願でした
形ばかりの婚約者は、彼女の願いを叶えました
月明かりがさしこむ部屋で、ふたりはひとつでいました
なにかがこわれたあとで、ふたりは、たがいを
しめつけられるほどに、こいしくおもうようになっていました
#創作メモ #令嬢 #婚約者
#思慕 #愛に気付いていなかった
#窓から差し込む月明かり
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