以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:25:30.25 ID:xCKe3ZeVO<>【注意】

・この作品は「名探偵コナン」の二次創作「ではありません」。
名探偵コナンの知識があった方が楽しめますし、作中に作品としての「コナン」は出ますが、コナンの登場人物が出るようなことはありません。

・全編シリアス、地の文で進行します。残酷シーンやベッドシーンも多少ありますので、苦手な方は注意してください。

・更新ペースはかなり遅めです。完結までに相当な時間がかかります。結末までの道筋はほぼできていますが、ご了承ください。

・ごく稀に安価選択とコンマ判定を使うことがあります。作中の重要分岐点で発生します。
安価・コンマスレというよりは分岐つきノベルに近いものになります。なお、当面は発生しません。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1535027130
<>殺人鬼コナン 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:26:09.64 ID:xCKe3ZeVO<> では、投下を始めます。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:27:21.26 ID:xCKe3ZeVO<> 【4月28日、11時13分】


映画を見るときのCMみたいのが、ぼくはたまらなく苦手だ。なんですぐに映画を流してくれないんだろう。
ビデオカメラのおばけみたいのが映画どろぼうとか言ってるけど、ぼくたちの時間を盗んでるのはおまえらじゃないか。ぼくはイライラして、手元のコーラを飲んだ。

「ママぁ、まだ始まらないのぉ」

うんざりしたように、妹の蘭が言った。ママは苦笑いして、蘭の頭をなでた。

「もうちょっとだから我慢しなさい。ほら、湖南お兄ちゃんだって大人しくしてるでしょ?」

ぼくの名をママが呼んだ瞬間、隣のお兄さんがちらっとぼくを見た。こういうのは一度や二度じゃないけど、居心地はよくない。
ぼくは冷たいコーラをもう一口飲んだ。ぼくももう小学4年生だ。イライラを表に出すほど、もう子供じゃないんだ。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:28:01.94 ID:xCKe3ZeVO<> スクリーンにはちょうどカメラのおばけが警察みたいなのに追いかけ回されてた所だった。そろそろかな。

「め、珍しい名前だね。本名?」

その時、隣のお兄さんが遠慮がちに話し掛けて来た。やっとというところなのに。ぼくはむっとしながらうなづいた。

「……そうかあ。コナン君がコナンを見るんだね」

ぼくはお兄さんを無視することにした。気弱そうなお兄さんだ。中学生ぐらいかな。
部活帰りなのか、バットが入ってるみたいなバッグが下に置かれてる。

映画はそろそろ始まりそうだ。ぼくは少しため息をついて、スクリーンを見ることにした。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:28:35.07 ID:xCKe3ZeVO<> #

ぼくの名は「名探偵コナン」から付けられた。パパとママが好きなマンガだからだ。何でも出会いのきっかけがコナンだったって前に聞いたけど、あんまり興味はない。妹の蘭も同じように、ヒロインの名前から名付けられた。
ぼくはマンガのコナンは好きだけど、自分の名前は好きじゃない。それでいつも注目されちゃうからだ。少し目が悪くなって、眼鏡をかけるようになってなおさらそんな感じになった。
学校のみんなはぼくの名前に慣れてるけど、病院とかで名前を呼ばれると周りが一斉にぼくを見るんだ。恥ずかしくて、逃げ出したくなる。

名探偵コナンのテーマが流れ始めた。ママの隣の席には誰もいない。本当はパパが来るはずだったんだけど、急に仕事が入ったらしい。

パパは英語の名前の会社でお薬を作る仕事をしてるらしいけど、ぼくにはよく分からない。優しくて好きなパパだけど、たまにこうやってお休みの日に仕事が入るのだけは嫌だった。
パパも映画を楽しみにしてたのにな。お休みの日に仕事なんて、やんなきゃいいのに。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:29:45.04 ID:xCKe3ZeVO<> 【4月28日、11時37分】


映画が始まった。去年は安室が大活躍したけど、今年も彼が主役みたいな感じだ。
赤井や黒の組織との絡みもある。もちろん、コナンも一緒になって謎に立ち向かってる。
蘭はお話についていけてないみたいでうとうとしてるけど、ぼくとママはスクリーンに釘付けになった。これは去年と同じか、それ以上に面白いぞ。

ふと横のお兄さんを見た。スマホを弄ってる。何のためにここに来たんだろう。こんなに面白いのに。

……そう思ってスクリーンに目を移そうとした時、ぼくはお兄さんが何かすごく焦ってるか、悩んでるかしてるように見えたんだ。



ぼくは、この時に気付くべきだったんだ。



彼が映画を見に、ここに来てるんじゃないってことに。



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:30:32.48 ID:xCKe3ZeVO<> 【4月28日、11時48分】


埼玉県警に第一報。熊谷リバーサイドモールで銃撃事件発生。犯人は少なくとも4人。映画館で発砲、多数の死傷者ありとの情報。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:30:59.81 ID:xCKe3ZeVO<> 【4月28日、12時01分】


熊谷リバーサイドモールの犯人は映画館を出た後も無差別発砲。2人ほど合流、なおも犯行継続中。死傷者はさらに増えたもよう。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:31:28.03 ID:xCKe3ZeVO<> 【4月28日、12時11分】


埼玉県警熊谷署から強行班が到着。特殊部隊SWATの応援も要請。激しい発砲あり、警察にも負傷者。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:31:55.04 ID:xCKe3ZeVO<> 【4月28日、12時16分】


犯人グループの一人が負傷、投降。学生のもよう。なおも抵抗続く。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:32:25.08 ID:xCKe3ZeVO<> 【4月28日、12時18分】


SWATが到着も学生による犯行であるため対応が協議される。銃撃はなおも散発的に続く。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:32:52.97 ID:xCKe3ZeVO<> 【4月28日、12時23分】


犯人グループの一人とみられる、少年Aを射殺。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:33:20.87 ID:xCKe3ZeVO<> 【4月28日、12時25分】


SWAT突入が決まった直後、犯人グループが集団投降。少年3人、少女1人その場で確保。
全員13〜14歳と学生証で判明。抵抗なく、その場で逮捕。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:33:57.27 ID:xCKe3ZeVO<> 【4月28日、17時】


埼玉県警熊谷署で会見。死者158人、負傷者316人と発表。なおも死傷者は増える見込みとのこと。
初動の遅れに非難相次ぐも説明はなし。

事件名が「熊谷リバーサイドモール無差別殺傷事件」とされる。

最終的な被害者は、死者233人、負傷者412人。死者の約半数が、TOCHIKUシネマにいた。
後に「熊谷大虐殺(ジェノサイド)」として記憶される、犯罪史上最悪級の「テロ」である。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:34:39.54 ID:xCKe3ZeVO<> 【5月6日、22時25分】


「時間を止めようと人はいろんなことをする。
しかし、そんなことはできない」

そう言った詩人がいた。確か、ボブ・ディランだったか。
僕は時折この言葉を思い出す。そう、時は止められないし、戻ることもできない。

だけど、人は誰でも大なり小なりの後悔を抱えて生きるものだ。
あの時、ああしていれば。あの時、何かをしていなければ。そんな後悔に囚われて生きる人は少なくない。そして、その願いは叶えられることはない。


「普通」は。


僕は大きく息を吐いた。そろそろ、奴が通りかかる時間だ。電柱の影で、気配を殺す。
背中のほとんど何も入ってないはずのリュックが、急に重さを増した。数時間後の僕は、今から行おうとすることを後悔しているだろうか?

……そんなはずはない。僕がこれから行うことは、掛け値なしの正義だ。大丈夫、間違ってはいない。
僕は右手の「銃」を強く握った。



全ての、悪夢を、終わらせよう。



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:35:29.21 ID:xCKe3ZeVO<> #



殺人鬼コナン



# <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:36:43.89 ID:xCKe3ZeVO<> 【5月21日】


妙な湿っぽさを感じ、俺は目を覚ました。外からはサァ……と音が聞こえる。もう梅雨か、嫌な季節だ。
どうも眠りが浅かったか、頭にぼんやりと靄がかかっている。時刻は5時47分、ちゃんとコーヒーを淹れるぐらいの時間はある。

キッチンに向かい、ティファールの電気ポットの電源を入れる。その間にネルをセットし、湯が沸くのを待った。
バチっとポットの電源が落ちるのを確認し、ネルにサッと湯を通す。そして、粗挽きのグァテマラをネルに入れ、ゆっくり馴染ませるように湿らせた。
ここからが難しいところだ。教室でも教わったが、なかなか上手くできない。
20秒ほど待って、ポットから湯を「の」の字を書くようにゆっくり回しかける。泡が消えるかどうか見計らい、もう一度。それを俺は3度繰り返した。
カップに十分な量のコーヒーがたまったのを確認し、俺はネルを取り外した。すぐに粉を捨て、ネルを洗う。終わる頃には、コーヒーは適温になっているという算段だ。

できあがったコーヒーを一口飲む。強い苦味と香ばしさが、口の中に広がった。ただ、わずかに雑味がある。まだ練習が足りないか。
エアロプレスで淹れればもっと楽に飲めるのは知っている。だが、ネルを使うことそのものが、俺にとっては楽しいのだ。
簡単な方法に流れることは合理的かもしれない。だが、そこに面白味はない。地味で手間のかかる作業だからこそ、できたものに対する愛着が湧く。そんなものだ。

捜査もそれと良く似ている。足を使って地道に情報を積み重ねることでしか、真実には辿り着けない。

俺はポットの残りを鍋に移し、ネルを入れるとそれを火にかけた。こうして消毒しないと、ネルがダメになる。手間だが仕方がない。
時間は6時13分。食パンにバターを塗ったものと、栄養ゼリー。そしてコーヒー。これが普段の朝食だ。テレビからはNHKの無味乾燥なローカルニュースが流れている。
スマホを確認したが、誰からの着信もなかった。少し前なら、木暮管理官や赤木警部からの呼び出しがあったが、さすがになくなっている。

2週前に川越で起きた中学生の不審死の捜査は、暗礁に乗り上げつつあった。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:37:47.10 ID:xCKe3ZeVO<> #

「仁さん、相変わらず早いっすね」

7時過ぎに本部のオフィスに付くと、ヤスがヒラヒラと手を振っているのが見えた。

「お前もな、『安川警部捕』どの」

ヘヘヘと、ヤスは悪戯っぽそうな笑みを浮かべた。

「もう一度、色々洗い出してるんすよ。最近、警察も未解決事件が多くなって世間の目が厳しいじゃないすか。この前の不審死も、何とかならないかなと」

「キャリアのペーペーが偉そうに。……何を調べてる」

「過去のお宮入り(未解決)事件と関係がないかって思ったんすけどね。まあ何ともですわ」

ヤスはおどけたように肩をすくめた。

普通なら「新人風情が何をやってる」とどやしつけるところだが、ヤスは極めて優秀な刑事だった。
去年の10月に奴が配属されて半年と少し。その間に、お宮入りしていた殺人事件を3件、解決に導いている。
一応あれは強行犯捜査3係全体の手柄になっているが、突破口を見つけたのは常にヤスだった。どういうわけか知らないが、奴は最短距離で俺たちが気付きもしなかった証拠を見付けてくる。

当初はキャリアのヤスが捜査一課、それも埼玉県警本部に配属されたのを訝しく思う奴もいたが、もはや奴を警察庁からの「お客さん」と見る者はいない。
役割が近い強行犯捜査4係の若手や中堅、それとお宮入り事件を手掛ける特捜係からは疎まれているようだが、その明るく飄々としたキャラは、俺は嫌いではなかった。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:38:40.43 ID:xCKe3ZeVO<> 「お前がそう言うってことは、余程だな。川越の連中が言うように、自然死という線はないか、やはり」

「どうっすかね。鑑識の倫さんは死因が特定できないって嘆いてましたけど。そういや、明後日でしたか。再検査の結果」

「まあな。何か出るといいが」

溜め息を付いて、俺は新聞を広げた。タブレットとかを使った方が楽なのは分かっている。あれなら検索も切り抜きも一瞬でできる。
だが、手を動かした方が何か覚えやすい気がする。ヤスは「んな馬鹿な」と苦笑していたが、俺には俺のやり方がある。

「……また変死か」

「またっすか。どこで?」

「福島だ、状況は同じ。ナイフを持った男が、交際相手の玄関前で、銃でズドン、だ」

ヤスは額にシワを寄せ、ふーっと溜め息をついた。

「何とかなんないすかね?まあ、相変わらずマル害が穏やかじゃない状況ですけど」

「何らかの犯行直前で死んでる、ってことだな。これで今年に入り全国で8件目か。ネットじゃ『バッドエンド・ブレイカー』とか『害虫駆除者』とか言われてるらしいが」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:39:42.98 ID:xCKe3ZeVO<> そう、この手の殺しが全国各地で相次いでいる。最初の殺人は千葉県船橋市。1月中旬、小学校の正門前で、白昼堂々と40代の男が射殺されていた。脳天を一撃。ほぼ即死だった。
男の手には刃渡り50cmの牛刀が握られ、後日小学校を襲撃する旨の犯行声明文が男の自宅から発見された。

そこからわずか5ヶ月。北海道、金沢、大阪、広島、高松、大分で、同様の射殺事件が発生した。やり口は皆同じ、ヘッドショット一発だ。
もう一つの共通点は、殺人の犯行直前に撃たれていたことだ。大阪や高松の事件のように、後日マル害による殺人事件が発覚したケースもある。
同一犯との見解を警察は公式には取っていないが、あまりの符合にネットでは一連の事件を繋げる見方が定着しつつあった。


ヤスが溜め息をつく。

「凶悪犯になる手前のクズとはいえ、殺しは殺しなんすよねえ。英雄みたいに持ち上げるのはいかがなものかと思いますけど。それに、ホシの手掛かりもないじゃないすか。
派手な銃殺ばっかなのに何で捕まえられないんすかね?銃の身元くらい、分かってるでしょ」

「千葉県警の友人に聞いたが、『前』のない銃らしい。密輸銃かもしれないが……。まあ、予断は入れないことだ。地道にファクトを積み重ねるしかない」

「そんなもんすかねえ。そもそも、何で犯行前の凶悪犯のところに姿を現すのか、さっぱり原理が分からんですよ。ネットじゃデスノートのキラの亜種みたいに、オカルトじみた説まで出る始末っすよ?」

ヤスはコーラのペットボトルに口を付け、一気に飲み干した。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:40:59.87 ID:xCKe3ZeVO<> 「おいてめえら早いな、感心なことだ」

その時、猫背の中年男が俺たちに近寄ってきた。顎には無精髭が生えている。

「赤さんも、まだ就業前ですよ。まだ4係なんて、誰も来てないのに」

「うちもホシが見付かってないのがあるからな。二つ抱えるのは沽券に関わる。これが川越の連中や若葉課長『殿』の言う通り自然死ならいいんだが、どうもそりゃないな」

赤さんこと赤木警部は、懐から棒のようなものを取り出してくわえた。最近流行りの加熱式タバコらしい。

「まあ、それが本筋ですよね。……赤さんは、『あっち』の件ですか」

「おう。3月の、荒川のホームレスの奴だ。もう一度資料を見ようと思ってな。どうにもひっかかってる」

俺の言葉に、赤木警部は頷いた。ヤスが机からひょいと資料を出した。

「これっすね。どうぞ」

「お前もか。川越の件と絡みがあると?」

「……と思ったんすけどね。どうにも接点が」

「まあ、場所が近いぐらいしか共通点がないがな。こっちももっとナシ(証拠)があると思ったんだが、不自然にない。
例の『バッドエンド・ブレイカー』の筋でもなさそうだ。殺しの手口が違う」

パラパラと資料を読みながら、赤木警部がこぼした。3月に富士見市の河川敷にホームレス、児島隆太の射殺体が発見された事件の資料だ。
仏は蜂の巣にされており凄惨な状況だったが、身寄りがないためかすぐに忘れ去られた。木暮管理官はともかく、若葉課長は捜査に酷く消極的だったのを覚えている。
今でも捜査を継続しようとしている俺たち強行犯捜査3係に対して、彼は冷淡だ。若葉課長は害者が子供か女という「価値のある」事件にしか、関心を示さない。
さらに言えば、徹底した事勿れ主義だ。お宮入りしそうな事件には、早くから事件性を否定する傾向がある。

「もう一度、現場に行きますか。とりあえず『現場百遍』ですし」

「……そうすっかな。仁の言う通り、足使うしかないな」

赤木警部はポリポリと頭をかいた。俺は自分のPCを立ち上げて、メールボックスを開く。


クリックした瞬間、俺は固まった。

「……何だこれは」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:42:30.62 ID:HRkKyEuzO<> #

差出人:SHELLY
件名:情報提供です

毛利仁様

突然のメール、申し訳ありません。情報提供になります。以下の2人の身柄を、可及的速やかに確保していただきたく思います。

鶴岡和人
練島瑠偉

恐らく、3月の荒川の殺人事件に関与しています。今後、さらに重大な犯行を起こす可能性が極めて高いと考えています。
他にも共犯が複数いるはずですが、確証は持てません。ですが、私の知りうる限り、この2人は間違いなく関与してます。
今後の犯行抑止のためにも、動いていただきたく思います。よろしくお願い申し上げます。

なお、私の素性については詮索されぬよう申し上げます。

SHELLY

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:43:53.42 ID:HRkKyEuzO<> #

意味が分からない。直接接触されると都合が悪い一般人が匿名を使うことは良くある。だが、このメールには違和感しかなかった。
わざわざ「素性を詮索するな」とある点。逮捕でなく「身柄の確保」を求めている点。
そして何より、代表アドレスではなく、俺の個人アドレスに直接名指しで送ってきた点。どれもがおかしい。


……何者だ、こいつは?


「どうした、仁。……メールか」

「ええ。荒川のホームレスの件で、情報提供が。でも、妙なんです」

赤木警部がメールにさっと目を通した。表情がたちまち険しくなる。

「何者だこいつ。お前の知り合い……じゃねえよな」

「全く。だとしたら偽名を使う意味がありません。どこで俺の名とアドレスを?」

「お前のことだからプライベートでアドレスを渡したりする軽率な行動には出ないと確信してる。それだけに妙だ。
そもそも、放置しておけばさらに重大な犯罪が起きる、だと?不穏極まりねえな」

俺は頷き、もう一度メールを読んだ。……これは。

「……この名前、どこかで……」

異変を感じたのか、ヤスもこちらに来た。

「どうしたんすか二人とも。メールっすか?」

「匿名のたれ込みメールだ。信頼性は定かじゃない。だが、色々妙だ。何より、この名前だ」

俺は「鶴岡和人」の文字を指差した。

「確か、ボクシングの『鶴岡三兄弟』の末っ子と同じ名だ。同一人物かは知らないが。テレビで出てたのを覚えてる」

「あー、あの!長男が世界チャンピオンの。評判は最悪もいいとこっすけどね」

「そう。で、実力が怪しい上二人と違って、末っ子のこいつだけは本物ってことになってる。頭もなぜかいいらしく、十番中に通っているって話だ」

赤木警部が顔をしかめた。

「十番中ってあそこか。東大に数十人入るって名門御三家の。鶴岡家のガラの悪さからは考えにくいな」

「まあ確かに。しかし、何でこいつの名が?確かに、志木に住んでるって話ですが。それに、和人はまだ中2とかだったはず」

ヤスが俺を見た。

「仁さん、ボクシングに詳しいんすね。競馬やサッカー見るのは知ってましたけど」

「昔ジムに通ってたこともあってな。今でもたまにホールには行く。……それにしても」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:45:22.23 ID:HRkKyEuzO<> 俺はPCのモニターを見つめた。鶴岡家に恨みがありそうなのは何人もいる。長男の光輝は怪しいジャッジを繰り返し、八百長や脅迫などの黒い噂も絶えない。
日本タイトルをかけて対戦予定だった大杉選手が2年前に事故死したのも、鶴岡陣営がやったとのまことしやかな話があるぐらいだ。
奴を不倶戴天の敵と見ているボクシングファンも少なくはない。だが、メジャーな長男ではなく、まだ中学生の和人を名指ししたのは、やはり変だった。

「胡散臭いたれ込みだが、念のため当たってみるか?どうにも妙だ」

「ヤサは割れてないですが、面は分かります。夕方から志木駅で張りますか」

「だな。それまではもう一回現場だ。ヤスも来るか?」

ヤスはうーんと唸った。

「俺は川越の方、当たっていいすか?でも、相方どうしようかな。白島さんか、青葉さんか……」

その時、誰かがポンと、ヤスの肩に手を置いたのが見えた。

「私じゃ不足かな?」

「……!木暮管理官……」

振り向くと白髪混じりの男性がいた。眼鏡の奥の瞳は、穏やかに細められている。

「悟さんが行かれるんですか?一課のナンバー2になっても、つくづく現場が好きですね」

「どこまで行っても私は一刑事だ。部下にやらせるというのは趣味じゃない。何より、荒川のと同じで証拠らしい証拠も、目撃者も誰もいない。
確かにこの件には事件性がないかもしれないが、納得行くまで調べたいと思うのが刑事の性ってヤツだ」

赤木警部の言葉に、木暮管理官は静かに笑った。

「い、いいんですか!?勉強させてもらいます」

「いや、そこまで恐縮されても何も出ないよ、安川君。君の洞察力は頼りにしている。何分、50近くなって勘が鈍くなってね」

木暮管理官がメールに気付いた。

「これは?」

「荒川の銃殺について、身元不明のたれ込みですよ。ただ、書かれてる内容が妙で。ボクシングの鶴岡三兄弟の末っ子が関与してると」

木暮管理官が何かを考えている。しばらくして、「私の思い付きだが」と切り出した。

「川越の件、亡くなった鬼束直哉君、だったか。彼は確か、武蔵野中の2年生だったね。
あそこも御三家の一角だ、鶴岡君と接点があるやもしれん。一応交遊関係をもう一度洗い直すことにしよう」

木暮管理官は踵を返した。

「ヤス、まずは川越署に行くぞ。ご遺族からも話を聞こう」

「はいっ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:46:26.31 ID:HRkKyEuzO<> 俺は二人の後ろ姿を見送った。赤木警部がニヤリと笑い、白い煙を吐く。

「さすがは悟さんだな。鶴岡の名だけでそこまで思い至るとは。……ってことは、鬼束は荒川の殺害に関わってる、って見てるのか?まさかな」

「どうですかね。確かに子供が事件直前に河川敷で騒いでたという目撃証言が1つだけありましたが、同定できなかったんですよね」

赤木警部は舌打ちした。

「そうだ。周辺の監視カメラを当たったが、何故か一つだけ前から故障してやがったからな……あれに写ってたかもしんねえんだが。とりあえず、俺たちも行くぞ」

立ち上がった時、痩せた中年男が入ってきた。若葉警視正だ。埼玉県警刑事部捜査一課長でもある。

「おや、随分と早いですねえ。もう捜査ですか?」

「おかげさんでね。木暮管理官はもう出ましたよ」

青葉課長はふっと陰気そうに口の端を上げた。

「また現場ですか。出世を捨てて愚かなことだ。大方、解決する見込みのない事件に手を出してるんでしょう?あなたたちも」

「解決するするかしねえかは、蓋を開けなきゃ分からんでしょう。悪いが、あんたの戯れ言に付き合っちゃいられねえんだ。行かせてもらいますよ。行くぞ、仁」

「4係の相澤君みたいに、堅実に実績を上げてはくれませんかねえ」

俺は拳を強く握った。気付いたのか、赤木警部が俺を制し、わざとらしい大声を上げた。

「そっちこそ、安全なネタばかり追ってないでくれって伝えてくれますかね?まあ、行きますんでよろしく」

向こうにいる性犯罪捜査1係のベテランである葛飾警部が、訝しげにこちらを見たのに気付いた。
赤木警部は、足早にその場を立ち去った。俺もそれを追う。「ふん」と嘲笑う声が、後ろから聞こえた気がした。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:47:36.41 ID:HRkKyEuzO<> 【5月22日】


「Sometimes I feel like I don't have a partner
Sometimes I feel like my only friend
Is the city I live in
The city of angles
Lonely as I am
Together we cry……」


イヤホンから物寂しい曲が流れている。傘に当たる雨音が、雰囲気をさらにウェットなものに変えていた。

あたしは軽く溜め息をつく。疲れは澱のように溜まっていた。明日の夜番が終われば束の間の休みだけど、多分家事もそこそこに突っ伏して寝るだけだろう。
遊びに行ったり、ネットで誰かを探したりする気力は、こっちに越してきてからの数ヵ月でとうに失せていた。
そもそも、彼氏はおろか友達だっていない。全てを投げ出して地元の高崎に戻れたら、どれだけ楽だろう。

けれど、それは許されないことだった。そして多分、そうしたらあたしは殺される。
どんなに辛かろうが、どんなに寂しかろうが、今は我慢するしかないのだ。

大丈夫、きっとそのうち慣れる。あたしはそう言い聞かせた。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:48:33.80 ID:HRkKyEuzO<> 「I don't ever want to fell
Like I did the day
Take me to the place I love
Take me all the way……」

あたしは笠幡公園に入った。ここを突っ切るのが、家への近道だ。たまにガラの悪い中学生や高校生がたむろしてるけど、この雨ならまず出くわすことはなさそうだ。

「Under the bridge downtown
Is were I drew some blood
Under the bridge downtown
I couldn't get enough……」

足早に歩く。今はただ、一刻も早く、家に帰りたかった。


その時だった。


キィ……キィ……


金属が擦れるような音がする。……ブランコ?この雨の中?


キィ……キィ……


やっぱり気のせいじゃない。あたしは少し気になって、その音のする方に近付いた。
ちらっと誰がいるのか見たら、何事もなかったかのように帰ろう。あたしはそう思っていた。


そこにいたのは。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:49:26.83 ID:HRkKyEuzO<> ボロボロに傷付いた、眼鏡と蝶ネクタイの少年だった。
傘も差さず、ずぶ濡れのままブランコをこいでいる。……これはマトモじゃない。


「どうしたの!?」

あたしは思わず、彼のところに駆け寄った。顔にはいくつもの擦り傷があり、服も所々破れている。一見して、誰かに暴行を受けたのは明らかだった。

少年は虚ろな瞳であたしを見た。

「あ……助けて、ください」

「今警察と救急車呼ぶ……」

「ダメです!!」

少年が怯えた瞳で叫んだ。あたしはその剣幕に固まる。
そして、彼は泣きそうな顔でうつむいた。

「警察とかは、ダメなんです。……父さんの所に、また戻されるから……」

「その傷は、お父さんから?」

少年は弱々しく頷いた。児童虐待?

「酷い……でも、すぐに手当てしなきゃ。あたしなら……」

あたしは言葉を飲み込んだ。何をしようとしてるの?何で厄介事に、自分から首を突っ込もうとしてるの?そんなことは、もうするまいとずっと前に決めたじゃない。

少年の、眼鏡の奥の瞳が潤んでいる。「お姉さんしかいないんです」と言われたような気がした。

あたしは大きく溜め息をついた。

「……分かったわよ。あたしなら、応急処置ぐらいはできる。これでも看護師なの。多少の薬も家にある。
とりあえず、あたしの家に来なさい。このままだと風邪を引くか、あるいは傷口からバイ菌が入ってもっと酷いことになる。……キミ、名前は?」

少年は躊躇したように黙り、そして口を開いた。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:50:00.98 ID:HRkKyEuzO<>



「コナン、です」



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/23(木) 21:50:36.44 ID:HRkKyEuzO<> 初回の投下はここまでです。ご意見、ご感想あればよろしくお願いします。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/23(木) 22:24:22.21 ID:rjzy9tXRo<> なんか面白そう、まだ読んでないけど <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/23(木) 22:31:46.22 ID:Pb8viJsKO<> 乙、楽しみにしてる <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/23(木) 23:46:16.46 ID:i3k0wzUao<> 光彦は <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/24(金) 13:55:48.31 ID:VMM/pT8y0<> 面白い <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/24(金) 15:13:24.37 ID:1035Dm2D0<> 期待 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/27(月) 21:15:02.81 ID:qWPBL8WdO<> 投下開始します。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/27(月) 21:16:20.43 ID:qWPBL8WdO<> 【5月23日】


「よう、久しいね」

廊下を歩いていると、向こうから白衣を着た初老の女性が手をあげた。髪は短く切り揃えられ、サングラスが額にかかっている。

「倫先生ですか。今日はどうし……ああ、例の結果ですか」

「そう。悟ちゃんに呼ばれたんでね。これからの会議で、あんたらにプレゼンすることになってる。しかし、難儀だね」

「事件のことですか?」

倫先生は少し辺りを見渡した後で、俺に耳打ちした。

「……それもあるけどさ。若葉課長さ。『地上(地方公務員上級資格者)』で、上狙ってるんだろ?これまでは警備部回りで、刑事部なんて柄じゃないって話だけど。
現場は相当やりにくいんじゃないかい?」

「……まあ。木暮さんの同期ってのもあるみたいですけど」

倫先生はふうと息をついた。

「まあ悟ちゃんは現場一筋の刑事馬鹿だけどね。でも上昇志向が強い若葉ってのとは相性最悪だろうよ。
悟ちゃん派と見られてるあんたら3係は、随分やられてるんじゃないかって心配になってね」

「正直、課長には言いたいことはありますが……上がどうであれ、やるしかないですよ」

倫先生が窓の外をちらりと見た。

「そうね。……まあ今回のは、立ち上がりさえちゃんとやっときゃ分かったかもしれないけど」

「どういうことですか?」

「それはつまり……ってそろそろ時間じゃないかい」

俺はスマホの時計を見た。集合5分前だ。倫先生と一緒に、足早に会議室に向かった。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/27(月) 21:17:25.88 ID:qWPBL8WdO<> #


「仁、遅いよ。これ食べるかい」

既に3係の面々は集まっていた。空いた席に座ると、隣にいた巨漢の青葉巡査部長が苦笑している。階級は俺より下だが、年齢は3つほど上の36歳だ。

「チョコレートですか。また変わってますね」

「タイショー社の新作だよ。ベネズエラ産カカオを使ってるらしいよ」

俺は勧められたチョコレートを一つまみした。苦味の中にオレンジの風味がある。

「旨いですね。コナコーヒーと合いそうだ」

「相変わらずコーヒー党だねえ。ま、適当に食べてていいよ。まだいくらかあるし、皆にも渡してるから」

「ちょいといただくよ」と、倫先生がひょいと手を伸ばした。コホンと木暮管理官が咳払いをする。

「チョコレートはほどほどに。全員揃ったな、会議を始めよう。
話は川越の変死事件、そして荒川のホームレス射殺事件だ」

緩んでいた空気が一瞬で引き締まる。暢気な顔をしていた青葉巡査部長も、刑事らしい鋭い眼光になった。

「知っての通り、両方ともホシは上がってない。そもそも川越のに至っては、川越署は自然死で通す腹積もりらしい。
本来なら捜査本部を立てるべき案件だが、若葉課長は動きそうもない。我々だけが、殺人を立証しようとしている状況だ」

木暮管理官が軽く息をついた。

「だが、一つ悪いニュースがある。今後も応援は望めそうもないということだ」

「悟さん、どういうことです?若葉の奴が動かないのはいいとして、何でそこまで弱気なんですか?」

赤木警部は、少し苛立ったように訊いた。それを制したのは、八代倫・埼玉県警主任監察医だ。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/27(月) 21:18:37.22 ID:qWPBL8WdO<> 「そこから先はあたしが説明するわ。端的に言って、このままじゃ殺人事件として立件できないってことよ」

「立件不能?じゃあ、検査結果は……」

倫先生は首を振った。

「赤ちゃん、想像通りよ。死因となる薬物は、検出できなかった」

部屋が重苦しい空気に包まれた。予感はあった。当初の司法解剖では、鬼束直哉の死因は呼吸器不全による窒息死とされた。原因は不明だ。
腰の辺りに赤い僅かな火傷痕が2つと、左腕に針で刺した痕のような小さな傷が1つあったため、まず俺たちは毒殺を疑った。しかし、彼を死に至らしめた毒物が特定できない。
注射痕があっても、それが死の原因となったことを証明できなければ、殺人事件としては立件できない。そこで改めて再検死を倫先生に依頼したのだが、結果は変わらなかった、というわけだ。

「……そうすか。間違いなく殺しなのに、ここまでとは」

「まあ手口は大体分かってるんだけどね。後方からスタンガンか何かで腰に一撃。スタンガンじゃ人は殺せないけど、腰上部や首筋みたいな神経が集中している場所に当てれば、さすがに気絶はさせられる。
そして倒れたところに、即注射。注射痕からして、実に正確な静注(静脈注射)だわ。間違いなくやったのは、医療に携わる者よ。そして、その注射で、鬼束少年は死んだ。多分ね」

ホワイトボードに倫先生が手早く人の絵を描いた。

「さっき薬物は特定できなかったって言ったけど、再検死で死ぬまでのプロセスは分かった。
脳の小脳部分が、著しく萎れてた。分かりやすく言えば、体のコントロール機能が何らかの理由で絶たれたってことだね」

倫先生が頭の部分に×を付けた。

「そこから呼吸器不全が起きてる。基本、この症状は神経毒によるものね。神経をやられ、小脳がボロボロになり、文字通り『息の根』を止めてしまうわけ。
フグ毒のテトロドトキシンが有名だけど、多分こいつはそれよりずっと強い。恐らく、倒れてから静注されてほぼ即死だっただろうから。
その意味じゃ、ロシアがスパイ殺害に使った暗殺用薬剤『ノビチョク』に近いかもしれないね」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/27(月) 21:20:41.68 ID:qWPBL8WdO<> 倫先生は体の部分にも×を書いた。赤木警部が「ちょっと待って下さいよ」と切り出す。

「ロシアの化学兵器って?そんな馬鹿な!中坊殺すのに、そんなもん使うわけ……」

「あたしはその物とは一言も言ってないけど?ここからが話の肝よ。
あたしがノビチョクに例えたのは、致死量1mgで触るだけで死ぬという強烈な毒性のためだけじゃない。あれは『痕が残りにくい』のよ。元々NATOの検出装置の穴をつくためにノビチョクは作られたわけだけど、この鬼束少年を死に至らしめたと思われる毒物も、それに近いものだと思われる。
多分、投与されたら体内で分解される性質のものね。肝臓が僅かに肥大してたのも、それを裏付けてる。
そして、ノビチョクと違い未知の毒物だと思う。もし、最初の司法解剖をあたしが手掛けてたら、まだ毒物が残ってたと思うし殺人と立証できたでしょうけど。今回に限れば、お手上げ」

「しかし、それにしても異常ですよ。未知の毒物って……ホシは相当特殊な立場の人間ですな。医療関係者を片っ端から洗いたいが」

赤木警部の言葉に木暮管理官が唸った。

「殺人事件と現状では立証できない以上、こちらの行動にも制限がかかる。赤木君の気持ちも分かるが、あまり派手には動けないだろう。
だから、こちらの事件を軸に話をしたいと思う。荒川のホームレスの件だ。こいつの解決が、彼の死の真相に繋がるやもしれん」

今度は木暮管理官がマーカーを手に取った。

「一昨日の聞き込みは大きな手掛かりになった。そうだな、ヤス」

「ええ。俺が説明しても?」

「構わない」

ふーっと息をついた後、ヤスが話し始めた。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/27(月) 21:22:15.95 ID:qWPBL8WdO<> 「既に赤さんや仁さんには話してますけど、やはり鬼束少年と鶴岡、練島両少年とは接点がありそうです。まだ確証があるとまでは言えないすけどね。
この春休み前後から、鬼束少年の交遊関係が派手になったらしいとは聞いてます。教育熱心な親御さんみたいで、度々注意はしてたみたいすけどね。
何でも『集中勉強会』と称して夜遅くまで帰ってこないこともあったようです。実際、中2になってから成績は全国トップレベルになったらしいすけど。
一方、飲酒の形跡とかもあったとか。ゴールデンウィーク前には、深夜に誰かの車で送ってもらったこともあったみたいす。
その時に、たまたま父親が車を運転していた男を見たわけですが……それが鶴岡光輝。和人の兄です」

木暮管理官が鬼束少年の写真と鶴岡光輝、和人の写真を貼り、それらを矢印で結んだ。

「相手は有名人だ。鬼束君の父親は毎朝新聞の社会部部次長とはいえ、普通に生きていて付き合うような相手じゃない。
ご両親は鶴岡選手らの関与をハナから疑っていたようだったが、もし推測される殺しの手口が倫先生の言う通りなら、その線はまずないだろう。毒殺というのは、非力な人間が採る手段だからね。
まあともあれ、鬼束君と鶴岡和人君との繋がりはどうもありそうだ。問題はどこから話を聞くか、だが」

管理官の目線が俺に向いた。

「昨日、一昨日と鶴岡のヤサを探しましたが、収穫なしです。そもそも志木駅にすら現れなかったのを鑑みると、電車通学でない可能性すらあります。
これなら六本木にある彼らのジムで張った方がいいですね。取り巻きに邪魔されそうですが。
後、例のメールにあった練川瑠偉という少年ですが。練川ってのは和光市地盤の建築会社で『練川建設』ってのがあったのが見付かりました。
ここかどうかは分かりませんが、珍しい名字ですしね。一族かもしれない。こっちも当たってみる価値はあります。
なお、荒川の現場周辺での聞き込みは収穫ゼロだったのを付け加えます。以上です」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/27(月) 21:23:02.36 ID:qWPBL8WdO<> 「ありがとう。差し当たり、六本木の鶴岡ジムと、和光市の練川建設に行くことになるな。後は、鬼束君が発見された初雁中周辺をもう一度聞き込みする形だろう。前の時は有力な証言はなかったが」

静かに向かいの白島巡査部長が手を挙げた。

「……一つ、いいですか?何故仁さんの情報にそこまでベットしてるんです?ただの中傷かもしれない」

白島は29歳の寡黙な刑事だ。3係の中では慎重なタイプで、若葉課長との関係もさほど悪くはない。

木暮管理官が頷いた。

「そう、君の言うことはもっともだ。ただ、鬼束君と鶴岡光輝との繋がりは、少々無視できない。
毛利君のメールの送り主が誰かは分からないが、今はそれは問題ではない。2つの事件に繋がりが見えつつあることの方が重要だろう」

白島は「分かりました」とあっさりと引き下がった。

「さて、これから早速動こう。私と安川君が練川建設、赤木君と毛利君が鶴岡ジム。白島君、青葉君は現場の聞き込みを頼む」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/27(月) 21:24:42.71 ID:qWPBL8WdO<> #

「しかし、金のかかってそうなジムだな。誰もいねえが」

「TVマネーを注ぎ込んだ宣伝搭みたいなものですからね。人がいないのは、時間のせいもあるでしょうが、まあ真っ当な人間は入りたがらんでしょう」

俺は赤木警部と六本木に向かった。六本木一丁目の住宅街の一角に、鶴岡ジムはある。ガラス張りのジムの中には、高価そうなトレーニング器具がズラリと並んでいる。
有名芸能人やIT企業の社長が会員と喧伝されているが、ジムには人っ子一人いなかった。怪しまれないように、俺たちは少し離れたらカフェに入り、遠間から観察する。
……男二人が小洒落たカフェのテラスでパンケーキを食うという光景自体、かなり不自然なのだが。

「それにしても落ち着かねえな。ここしかねえのか」

「赤さんもあのセキュリティは見たでしょ。あちらこちらに防犯カメラ、まるで要塞ですよ。それだけ色々警戒してるってことですけど。
あんなとこで張り込んでたら、捕まえられるもんも捕まえられない。兵隊(巡査)呼ばれるのも、桜田門(警視庁)との絡みを考えたらできるだけ避けたいですし」

赤木警部がふーっと長い息をついた。ちらちらと向こうの女性客が視線を送っている。

「何でそこまでするんかね?お宝でもあるってのか?」

「さあ。ただ、鶴岡家がヤクザと揉めてるって話はあるからそれでしょうね。奴らのケツモチは大誠会ですが、大阪にいた時は菱友組で、出ていく時に不義理をしたらしいですから。
襲撃とかされないように、ああしてるんでしょう」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/27(月) 21:26:04.63 ID:qWPBL8WdO<> 俺はリコッタパンケーキを一口放り込んだ。ふんわりとした口当たりだ。旨いが、コーヒーは適当なブレンドを適当に淹れているのがよろしくない。
あくまで若い女向けのカフェ、といったところか。

「時刻は、そろそろ4時ですね。学校帰りにジムに寄るなら、そろそろですが」

「まあな。あまりここは長居するとこじゃな……っと誰か来たぞ」

金髪の少年がジムに入っていくのが見えた。高校……いや、中学生ぐらいか。

「あんなガキでもボクシングやるんだな。DQNに憧れた口かね」

「目鼻立ちからして、ハーフかなんかですね。あれは地毛かも」

雑味だらけのコーヒーで、パンケーキを流し込む。赤木警部は紅茶のお代わりを頼んだ。


そこから30分間、次から次へと少年たちがジムにやって来た。眼鏡の気弱そうな少年。ジャニーズ系の快活そうな少年。いかにもお嬢様然とした少女までいる。……ひょっとしてこれは。

「これはジムにトレーニングしに来たわけじゃなさそうですね。『勉強会』とやらかも」

「それっぽいな。実際、あの金髪の奴も少しサンドバッグ打っただけですぐに引っ込んでる。本当に勉強してるのかね」

そこに、黒いヴェルファイアが止まった。中から誰か出てくる。影になって見にくいが……あのオールバックは。

「鶴岡和人ですね。親と次男の大和も一緒だ」

「出待ちだな。ナンバーは」

「控えました。至急U号(車輌所有者照会)かけます」

「よし、じゃあ後は出待ちか。車内待機に切り替えだ、出たところで訊くぞ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/27(月) 21:27:19.96 ID:qWPBL8WdO<> #

そこから2時間、動きはなかった。疑われないよう、こまめに車両を移動する。

そこに、電話が入った。

「赤さん、あの黒のヴェルファイア。練川秀悟の所有と判明しました。練川建設の社長ですね」

「なるほどな。これで悟さんの見立ては裏付けられたか」

木暮管理官からは、練川建設の情報が入っていた。

「練川建設が、鶴岡家のケツモチの一つって話ですね。表向きは新進気鋭のパワービルダーですが、裏では大誠会と繋がりがあると。
強引な営業から業界の評判は悪いようですがね」

「まあ、糞にはハエがたかるってのと同じ話だな。練川瑠偉についての身内の話は聞けなかったらしいが、小学の時の同級生は酷く怯えてたらしいな。
『ニコニコしながら、裏で酷く暴力を振るう』と。これで筑紫大附属中ってんだから世も末だ」

赤木警部はふうと白煙を吐いた。

そこにさっきのヴェルファイアがやってきた。少年と少女が次々に乗り込む。
そして、夜の街へと向かい始めた。交通量が多く、捕捉が困難だ。

「まっずいな。所轄外だ、ここまでにしとくか?Nシステム(自動車ナンバー捕捉システム)で追いたいとこだが、生憎嫌疑はかかってないしな」

「ですね。ヴェルファイアの持ち主は割れてますし、明日朝、練川の家で張りましょう」

「了解だ。明日に備え引くか」

俺は頷いた。


この時、ヴェルファイアを無理してでも追わなかったことを、俺は後悔することになる。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/27(月) 21:27:49.84 ID:qWPBL8WdO<> 【5月24日、0時12分】


和光市△△、○-○-○の路上で倒れている少年を発見。通行人が救急車を呼ぶが心配停止。
30分後、死亡が確認される。死因は呼吸器不全。


身元は学生証から練川瑠偉と確認された。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/27(月) 21:29:50.88 ID:qWPBL8WdO<> 今日はここまでです。ご意見、ご感想あればお願いします。

次回は「コナン」回です。

>>33
光彦に似た名前のキャラはそのうち出ます。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/28(火) 21:28:49.47 ID:9QAo50NdO<> 3話目の投下を開始します。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/28(火) 21:29:55.25 ID:9QAo50NdO<> 【5月23日】


あたしはあの後、すぐに彼にシャワーを浴びさせた。全身にはまだできて間もないと思われる痣と擦り傷、そして火傷があった。多分、「根性焼き」と呼ばれるものだろう。
すぐに家にあるありったけの絆創膏と包帯をかき集め、軟膏を塗って傷口を巻いた。コナン君は少し痛そうな顔をしたけど、泣くどころか唇を噛み締めて声をこらえていた。

ビックリするぐらい我慢強い子だ。こんな状態になったら泣き叫ぶのが普通なのに。

一通り傷口の保護を終えると、抗生物質を念のため飲ませた。少し発熱があったのと、相当辛そうだったので、その日はそのまま寝かせてあげた。
明日は児童相談所に行ってみよう。そう悪いことにはならないはずだ。その時は、そう思っていた。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/28(火) 21:30:56.99 ID:9QAo50NdO<> 翌日。目を覚まして驚いた。……朝食が、もう準備されてたのだ。それも、かなり美味しそうなのが。

「ちょっと……何よこれ」

コナン君は申し訳なさそうに目を伏せた。

「ごめんなさい、せめてものお礼をと……冷蔵庫の中のものは、弁償します。お金なら、いくらでもありますから」

あたしはコナン君を少し睨んだ後、テーブルの上の皿を見た。
トーストにふわふわのオムレツ。カリカリに焼いたベーコン。きれいに整えられたサラダと、ヨーグルトにレーズンを入れたものが置かれていた。

「これ、君が作ったの?」

コナン君は、遠慮がちに頷いた。

「いつも、父さんに作らされてたんです。気に入らないと、すぐにぶたれて……でも、お姉さんに恩返しするなら、これぐらいしかないですから」

あたしは軽く溜め息をついた。こりゃ厄介な子を拾っちゃったな……。

「まあ食べてあげるけどさ。それと、お姉さんじゃなくって吉岡愛結。アユでいいわ」

ナイフをオムレツに通す。すると、半熟のタマゴが切り口からとろりと出てきた。
口に運ぶと、濃厚なタマゴの味と強いコクを感じた。

「……これ、ただのオムレツじゃないわね。チーズとか入ってる?」

「はい!おつまみ用の裂けるスモークチーズを細く割いて、卵液に混ぜたんです。こうすると、チーズのコクが出るだけじゃなく、スモークフレーバーもオムレツに付くんです。……お口に合いませんでした?」

あたしは首を振った。

「とんでもない!すごい美味しい。火の通し方も完璧だし……あ、ごめんね。嫌なこと、思い出させちゃったかな」

「いいんです。喜んで貰えると、嬉しいですから」

はにかむコナン君を見て、何だか微笑ましくなった。ただ、いつまでも彼をここにおいておくわけにはいかない。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/28(火) 21:31:43.25 ID:9QAo50NdO<> 「ありがと。でも、これからどうするの?警察は嫌っていっても、あたしがずっと置いておくわけにもいかないわ。誘拐犯になっちゃう」

「それなら大丈夫です。父さんは、捜索届は出さないですから」

「……えっ?」

コナン君は確信があるかのように言い切った。

「どうして?」

「父さんにとって、僕は召し使いみたいなものなんです。だから、いなくなれば探すでしょう。母さんも、もういないですし。
でも警察に捜索届を出せば、虐待の事実も明らかになってしまう。世間体が大事な人ですから、きっとそれはしないでしょう。探すなら、自力でやってくるはずです」

部屋を重たい沈黙が包んだ。……何を言えばいいんだろう?

無理矢理にでも児童相談所に連れていこうか?そうした方が、多分正解だ。
でも、このまま人の手に委ねるのは、なぜか気が引けた。自分で探すだろうというという父親に見つかったら、この子はきっと、ただじゃ済まない。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/28(火) 21:32:23.57 ID:9QAo50NdO<> こんな訳ありの子なんて、捨ててしまえばいい。そんな思いを、あたしは必死で打ち消した。
これじゃ、「あの時」と同じじゃないか。あたしが「あの子」を見捨てなければ、彼女は死なずにすんだ。同じ過ちを、また繰り返すつもり?

悩んでいると、コナン君がリュックから何かを取り出した。リュックは、彼が持っていたものだ。

「……これじゃ、足りませんか」

手には5万円が握られている。あたしはぎょっとした。

「えっ、そのお金って……」

「父さんのところからくすねてきたんです。足りなかったら、まだ大分あります。
アユさんには、迷惑をかけません。料理も、掃除もします。だから……父さんが僕を諦めるまで、しばらく置いてくれませんか」

震える瞳で、彼はあたしを見上げた。

お金は、正直欲しい。高崎にいるはずの「奴」から逃げてきてから、ずっとお金は苦しかった。貯金はろくにない。
やっと看護師の仕事にありつけたのは、ほんの少し前のことだ。それにしたって臨時雇用で、いつ首を切られるか分からない。

でも、この子は明らかに訳ありだ。かわいそうだからといって、あたしに守れるだろうか? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/28(火) 21:33:04.95 ID:9QAo50NdO<> 「……君、どこに住んでたの」

「横浜です。できるだけ遠くにと思って、東横線から東武東上線に乗ったら、川越市ってとこが終点で。
どこか休めるところをって思って、あの公園にたどり着いたんです」

横浜か。……ならかなり距離がある。コナン君の父親も、そうそうここには辿り着けないはずだ。

「分かった。しばらくの間だけよ。でも、あたしもいつまでも君をおいていけない。だから、1週間……ううん、2週間たったら君を誰か信頼できそうな人に預ける。
誰にするかは、ちょっと調べてみる。本当は、あたしの母さんがいいんだけど……」

それはできない選択だった。「奴」は、あたしと母さんの接触を見逃さないだろう。
となると、口の固い民間の養護施設かどこかを探すしかない。それがどこかは、これから考えないといけないのだけど。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/28(火) 21:33:53.31 ID:9QAo50NdO<> コナン君の顔がぱあっと明るくなった。

「アユさん、ありがとうございます!このご恩は、決して忘れません!あ、ただいくつか約束してください」

「約束?」

彼が首を縦に振った。

「まず、1日につき5000円、僕に払わせて下さい。大丈夫です、7万円ぐらいなら持ってます。
それと、僕を外に連れ出さないでください。アユさんが疑われそうですし。その分家事は僕ができるだけやります」

お金については驚いたけど、二つ目はまあ納得だった。家事は、さっきの料理を見る限り本当に大丈夫そうだ。

「いいわ、それだけ?」

コナン君の目が鋭くなった……ように見えた。

「リュックの中身だけは、絶対に覗かないでください。絶対です。もし覗いたら、僕はここにはいられなくなる」

その迫力に、あたしは思わず唾を飲み込んだ。あれに、お金以外の何があるというんだろう?

「……分かった。とにかく、2週間だけよ。学校は?」

「いいんです。勉強は自分でできますし」

賢そうな子だし、言葉遣いも振る舞いも子供のそれとは思えない。しかし、それで大丈夫なのかな。

あたしの思考を読んだかのように、コナン君は微笑んでぺこりと頭を下げた。

「心配しないでください。これからしばらく、お世話になります」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/28(火) 21:34:48.14 ID:9QAo50NdO<> #

その日は遅番ということもあって、お昼にコナン君の着替えを買った。27の独身女が、小学生の服を買うってのは少し奇妙に見えたかもしれない。
戻ると、コナン君は大人しく本を読んでいた。文庫本だろうか?

「ただいま。本、好きなの?」

「はい。あまり小学生が読む本じゃないかもですが」

見せてもらうと、「エドガー・アラン・ポー短編集」とあった。

「何か難しそうね。確か、漫画のコナンで、名字のもとになった人だっけ」

「ええ。推理小説の草分けみたいな人なんです。アユさんも、後で読みます?」

「うーん、本はあんまり得意じゃないんだ。あたし、専門卒で馬鹿だし。コナン君は頭良さそうだけど」

彼は苦笑した。

「そんなことはないですよ。……もう、学校には1年行ってないですし」

「そんなに!?……ごめん、まずいこと聞いちゃったね」

「いいんです。それより、アユさん何か好きなものあります?夜勤前に、何か作りますよ」

「えっ……あたし、お酒のおつまみぐらいしか作れないから、冷蔵庫にはあんまないよ?」

ふむ、とコナン君は何か考えるそぶりをした。

「確か、トマトはあったからカプレーゼもどきは作れますね。焼き鳥の余りは、少し手を加えて炊き込みご飯にしましょうか。大丈夫です、慣れてますから」

コナン君はトテトテとキッチンに向かった。冷蔵庫の中身を覚えていたようだ。
……そう言えば、いつの間に掃除してくれてたんだ。散らかってた部屋が、随分すっきりしている。

「……コナン君って何歳なの?小学生だとは思うけど」

「……9歳です。アユさんは……って、女の人に年齢訊くのは、失礼ですね」

「ハハハっ、そんなこと子供が気にしなくていいの。27よ。完全に、行き遅れだけど」

「そんなことないです。アユさん、きれいですし……」

コナン君の頬が赤くなったように見えた。子供なのに、いっちょ前に色気付いてるんだな。

「お世辞でも嬉しいわ、ありがと。音楽かけていい?」

「構わないですよ」

あたしはスマホを弄り、スピーカーにセットした。簡易スピーカーから、音楽が流れ始める。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/28(火) 21:35:32.97 ID:9QAo50NdO<> 「I got dosed by you and
Closer than most to you and
What am I supposed to do
Take it away
I never had it anyway
Take it away
And everything will be okay……」


「……レッチリですか」

「えっ、この曲知ってるの?」

「あ、ええ。母さんが元気な時、よく聞いてた曲だったんで」

レッチリを小学生が知ってるなんて、珍しいな。って、元気な時ってことは……多分、お母さんは亡くなったんだ。

「……そうなんだ」

「ええ。悲しい曲ですよね。それでいて、きれいな」

あたしは、コナン君に何も言えなかった。この子が背負ってるものは、9歳としてはあまりに重すぎる。

少しでもいいから、守ってあげたい。そう思ったんだ。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/28(火) 21:36:28.52 ID:9QAo50NdO<> 【5月24日、7時11分】


夜勤は、特に何事もなく終わった。後は、引き継ぎを早番の子にするだけだ。
あたしはうーんと伸びをして、ナースセンターで付けられているTVニュースをぼーっと見ていた。入院患者への配膳も終わり、少し一息つける時間帯だ。

「埼玉県和光市の路上で死亡が確認された中学2年生、練川瑠偉さんについて、警察は事件と事故の両面から捜査する方針です……」

中2の子が、かわいそうに。事件じゃなきゃいいけど。

そして、あたしの思いは家で帰りを待つはずのコナン君に向かっていた。

彼は留守中、大丈夫だろうか。「奴」があたしの居場所を突き止められるとは思えないけど、万一のことがあったら。
あたしは嫌な想像を振り払うかのように、首をぶんぶんと振った。そんなことはないはずだ。

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家に帰ると、コナン君はすうすうと寝息を立てていた。


その時、新しく増えた擦り傷に、あたしは気付かなかった。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/28(火) 21:37:22.03 ID:9QAo50NdO<> 今日はここまでです。当面は10〜15レスずつの更新です。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/28(火) 23:46:44.81 ID:9qVD6nNm0<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/29(水) 22:28:19.93 ID:B5cih2muO<> 更新します。

今回若干の性表現と同性愛表現があります。ご注意ください。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/29(水) 22:29:09.56 ID:B5cih2muO<> 【5月25日】


人には、誰にでもやり直したい時間がある。あの時ああしていれば、こうしていれば。
でも、やり直せないからその時の行為を後悔し、心を苛む。何かあってはその時のことを思い返し、苦痛に浸るんだ。

今の僕もそうだ。あの日、屋上に行かなければ。もう少し大人だったなら。そして、「彼」があの日のことを知らなければ。
きっと今、僕はこうして誰かに怯えることはなかっただろう。心安らかに、日々を送れていただろう。

だが、それが僕の罪だ。決して消えることも、逃げ出すこともできない。
今はただ、これ以上事態が悪化しないよう、何も起きないよう、ただただ祈るだけだった。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/29(水) 22:30:07.37 ID:B5cih2muO<>
僕は時計を見る。15時46分。最後の授業が終わり、ホームルームの時間が近付いていた。そして、下校の時間だ。

あそこに行きたくはない。けど、行かないと多分、僕は破滅する。


深い溜め息をつくと、後ろからポンと肩を叩かれた。

「よう、ジョー。どうした、昨日から元気がねーぜ?」

「あ、いや……ヤクには関係ないよ。ただ、少し寝不足なだけ」

「寝不足か、さすが全国2位の天才は違うねー。どんだけ勉強してるんだよ」

僕は級友の、薬師丸英華に苦笑を向けた。言葉は男っぽいし、ガサツで女らしさの欠片もないけど、昔からの腐れ縁だ。

「大してやってないよ。塾にも行ってないし……地道に、普通にやってるだけさ」

「かーっ!またそんなことを言う。だから天才君には友達ができないんだよ。
どうせどっか別のとこで、秘密の勉強会とかやってるんだろ。オレも呼んでくれないかなー」

僕は一瞬、言葉に窮した。

「……そんなことは、ないよ」

ヤクがにやっと笑った。

「冗談だって。ジョーにオレ以外の友達がいるって、ちょっと考えられねえもん。あ、佳純が呼んでるわ。またなー」

僕の背中に、冷たいものが走った。あいつは、時々スゴく勘が鋭い時がある。だからあんななのに、国立の学園大付属に入れたんだ。


「勉強会」のことは、誰にも知られてはいけない秘密だった。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/29(水) 22:31:09.88 ID:B5cih2muO<> #

池袋で地下鉄に乗り、飯田橋で乗り換える。誰か知り合いがいないか、僕は注意深く見渡した。……よし、いない。
南北線で六本木一丁目へ。そして後ろを気にしながら、鶴岡ジムに向かった。

向かいのカフェに、怪しげな男もいない。いたらすぐ引き返すよう、和人からは言われていた。

僕はブザーを鳴らす。音もなく、ガラスの扉は空いた。ジムには、いつものように誰もいない。
和人のお兄さんたちは、フィリピンに行っているらしい。出稽古……ということになってるけど、本当のところは知らない。

ジムの2階に、僕らの「勉強会部屋」はある。内側から、オールバックの少年が現れた。

そして、ズドンと僕の腹にパンチが打ち込まれた。
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/29(水) 22:32:21.77 ID:B5cih2muO<> 「……っ……!!げえっ……」

「おせえよ。翔一もアゲハも、もう来てる。ああ、吐いたら埋めるぞ。今度は本当にやる」

僕は戻しそうになるのを必死でこらえた。部屋の奥、パソコンの前には翔一がいて、二つあるベッドの手前の方にアゲハが腰かけている。

「ジョー、危機感なさすぎ。マッポに尾行られてないわよね?」

「そ、それは、大丈夫。間違いない」

和人が睨んだ。

「本当だろうな。……本当にいねえな」

ブラインドの隙間から、和人が外を覗いた。

一昨日は警察らしいのがいたと、向かいのカフェのオーナーから連絡が入っていた。何でか知らないけど、警察が僕らを嗅ぎ付けつつあるようだった。

「誰が情報流した?てめえなら速攻殺すぞ」

「僕じゃない!僕はそんなこと『できない』って、皆知ってるだろ?皆も、裏切れないはずだ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/29(水) 22:33:27.69 ID:B5cih2muO<> 奥にいた翔一が、にこやかに僕の方を見た。

「そうだよ。僕も和人も、そしてアゲハも、絶対に互いを裏切れない。裏切ったら、僕たちだけじゃなくって家族の人生も破滅する。そういうようになってる。
それは死んだ瑠偉や直哉も、ちゃんと分かってたはずだよ」

部屋を沈黙が包んだ。そう。「勉強会」のメンバーだった練川瑠偉は、昨日死んでしまったんだ。

「殺し、なのか?直哉の時は、自然死って話だったが」

「そういう方向にもっていった、が正解。でも今回も上手くできるかは分からないわ。
荒川の件でつつかれたくないし、本当の病死ならいいんだけど」

アゲハが巻き毛の先をくるくるさせながら言った。それに和人が気色ばんだ。

「病死??んなわけあるかよ??直哉に続いて、『勉強会』メンバーが二人だ。こいつは、絶対に殺しだ。間違いねえ」

「でも誰も、ここを漏らしてないだろ?『勉強会』の存在は知ってても、誰がいるのか知ってる人はいないはずだ。まして僕らが『何をして』『何をしようとしてる』かなんて、知りようがない。
誰かが狙ってるのかもしれないけど、それは未確定事項だ。だから、しばらく『勉強会』をやめて、ほとぼりを冷ます。警察に追われないためにも、必要だ」

翔一の言葉に、再び皆が黙った。和人すら、彼には逆らえない。有無を言わさない説得力がある。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/29(水) 22:34:19.99 ID:B5cih2muO<> 「……でも、じゃあ『アイスキャンディ』は?あれがないと、成績維持できそうもないし」

「君なら素で桜岡中のトップになれるだろうに」

「イヤよ!私はトップの桜岡で一番でなきゃいけないの。二番じゃだめ。それに、あれがあるから、セックスがあんなに気持ちいいんだし」

僕は一瞬、顔をしかめた。彼女、金路アゲハは黙ってれば誰もが振り返るルックスだ。実際、その道では有名な読者モデルらしい。
しかし、その実は14にしてとんでもないビッチだ。「勉強会」にいなければ、多分関わりようのない人種だろう。

翔一は僕に気付かないようだった。苦笑いして、彼女に告げる。

「そう言うだろうと思って、20錠ほど皆に用意してある。まあ、使用回数にもよるけど3ヶ月ぐらいは大丈夫。見付かっても完全に合法だけど、あまり派手にやり過ぎないようにして。
とにかく、瑠偉のことは残念だった。殺人とかじゃないことを祈ろう」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/29(水) 22:35:12.05 ID:B5cih2muO<> 和人が翔一を見た。

「『計画』、進めんのか?二人もいねえんだぞ」

「それは勿論。『僕らに残された時間』は、もうそんなに長くない。絶対に成功させて、日本をあっと言わせてやろう」

「……そうか。じゃあ今日はこれでお開きか。次は3ヶ月後、第4金曜。それまで絶対にスマホだろうがLINEだろうが、互いに接触・連絡しないといういつものルールな」

「だね。あと、まあ君なら大丈夫だと思うけど、警察の捜査には徹底して弁護士つけさせて。君だけ、確実に面は割れちゃってるから」

ふん、と和人が鼻を鳴らした。

「俺を誰だと思ってる?それに、天下の佐倉法律事務所がついてる。完黙すれば、何も出てくるわけがねえ。それに……」

和人がちらりとアゲハを見た。ぷいと彼女は目線をそらす。

「あまり私に期待しないで。まあ、大丈夫だと思うけど」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/29(水) 22:36:46.83 ID:B5cih2muO<> 僕は、瑠偉を誰もちゃんと悼まないのに腹が立っていた。直哉の時もそうだ。人が死んでるのに。
そりゃ、友達ではなく、利害関係と薬とセックスだけで結ばれた、歪んだ関係かもしれないけど。
瑠偉は乱暴で、SなのにMで、和人以上に破綻した性格だったけど。


それでも、まるで知らない人間じゃない。


翔が僕に、白い錠剤を差し出していた。にこりと、邪気のない顔で笑う。

「ジョーも、イライラしてないで飲もうよ。もう二人は飲んでるよ」

「うおおおお!」と、和人が叫び始めた。アゲハは、上気した顔で、下着越しに胸と股を弄っている。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/29(水) 22:37:33.61 ID:B5cih2muO<>

「アイスキャンディ」。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、そして触覚。五感を全て倍に高めるだけじゃなく、思考能力や記憶力も倍増させる薬。
「勉強会」とはいうけど、実際にはこれを飲むだけでいい。即効性の上に、思考能力と記憶力については効果が持続するからだ。毒性も、依存性も、副作用も何もない。しかも合法。夢のような薬だ。


それをなぜか、翔一は持っていた。どこから手に入れているかは、誰も知らない。ただ、彼が供給源なのは間違いなかった。


そして、「勉強会」でやることは……


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/29(水) 22:38:26.14 ID:B5cih2muO<> 翔一はいつの間にウイッグをつけていた。下にはブラジャーとショーツを着けている。

「僕は今日、和人とするよ。瑠偉に挿れたかったけど、しょうがないね。ジョーは、アゲハかな」

僕は躊躇った後、錠剤を飲み込んだ。身体中の全ての感覚が、鋭敏になる。……もちろん、性感も。
股間と前立腺に血が一気に集まるのを感じた。アゲハは、下着をとうに脱ぎ捨てている。皆への怒りが、激しい性欲に変わっていく。

「じょお、早くこっち来てよぉ。あんたのそのおっきいの、挿れて?」

誰がこんな女なんか。そう思いながら、引きちぎるように僕は服を脱いでいく。向こうのベッドでは、和人のを翔一が愛おしそうにくわえていた。


全部、全部ぶっ壊してやる。僕の理性は焼き切れた。


挿入の瞬間、僕はアゲハの歪んだ顔を見た。僕は思わず、それをヤクのに上書きしていた。


ヤク、ごめん。


そこから先は、いつも通り覚えていない。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/29(水) 22:40:00.83 ID:B5cih2muO<> 今日はここまでです。

性表現はたまにこの程度のものが今後もあります。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/29(水) 22:50:38.30 ID:tWeq4o1X0<> 期待 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/08/29(水) 22:54:02.03 ID:1xNURtK+O<> >>68で一ヶ所翔一が翔になってました。訂正します。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/30(木) 01:32:37.41 ID:UpeAkKlo0<> おつおつ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/31(金) 22:43:51.86 ID:v7+r+6NiO<> 面白い、期待してます <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/09/02(日) 21:49:12.35 ID:oYo1BQfTO<> 更新します。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/09/02(日) 21:50:10.99 ID:oYo1BQfTO<> 【6月1日】


「また行き詰まりかよっ!」

加熱式タバコをくわえた赤木警部が、苛立った様子で足元のゴミ箱を蹴飛ばした。ゴミ箱は凹み、紙ごみが辺りに散らばる。

「赤さん落ち着いて。俺達のせいじゃ……」

「わーってるよ!!俺ら3係は捜査の中枢から外され、何もできやしねえ。しかも4係はまた自然死で片付けようとしてやがる。脳ミソ腐ってるんじゃねえか??」

ヤスが宥めるが、赤木警部は収まらない。無理もない。練川瑠偉の死は、殺人として立件しない方向になっていたからだ。

俺は、短くなったアメスピを強く吸い殻入れに押し付けた。そこにはコーヒー豆の出し殻が敷き詰めてある。
警察も喫煙者には厳しくなりつつある。喫煙室も、臭い防止のためこういう臭い消しが必須になっているというわけだ。

「気持ちは分かりますよ。嫌なぐらいに。だが、県南部の殺しは4係の担当。北部担当の俺らは遊軍として補佐するしかできない」

「だからといってこのまま若葉の馬鹿の言う通りにしろってのか、仁?てめえも白島みてえに丸めこまれ……」

「なわけはないでしょう。だから、川越の鬼束少年の件はまだ追ってる。鶴岡和人にだって、やっと接触できたじゃないですか」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/09/02(日) 21:51:26.39 ID:oYo1BQfTO<> 赤木警部が俺を睨んだ。殴りかかられると一瞬身を固くしたが、「けっ」と向こうを向いた。

「成果ゼロだったがな!あのガキ、弁護士を呼べ、一切本件については話さないの一点張りだ。悪知恵だけは無駄に回りやがる」

ヤスが溜め息をついた。

「……キツいのは、アリバイの証拠だけは弁護士経由で後日どっちゃりと送り付けてきたことっすね。ジム前の防犯カメラの画像データ、立ち寄ったという店のレシート。
鬼束殺しについては、完璧にアリバイありっす。荒川のホームレス射殺についても、アリバイを裏付ける複数証言が音声データで」

「んなもんいくらでも捏造できんだろ?……少なくとも、奴は絶対に何か隠してやがる。それは間違いない」

赤木警部は白煙を勢い良く吐き出した。

「鍵を握るのは、『勉強会』とやらですけど……あれから開かれた形跡がないんですよね。あの金髪が練川瑠偉だったのを考えると、残りの3人を捕まえたいとこですが」

「だな。問題は、どうやってそいつらを同定するかだ。鬼束の遺族は、詳細まで認識してない。とすると、鶴岡の身内か」

「どうでしょうね……連中はマル暴みたいなもんです。口を割らせるのは、簡単じゃない。どこかに突破口があるといいんですが」

ふう、と赤木警部が息をついた。

「……倫先生の検査結果は。練川の肝臓、本庁の科捜研に回したと言ってたが」

「週明けです。電話で話した時、自信があるようなないような、微妙な感じでしたけど」

「それで殺しと分かれば、本部立てて一気に行けるんだがな……」

俺のスマホが震えた。この震え方は、メールの方だ。


「ちょっと待ってください。……えっ……!?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/09/02(日) 21:52:34.39 ID:oYo1BQfTO<> #

差出人:SHELLY
件名:追加情報です

毛利仁様

またも突然のメール、申し訳ありません。捜査していただいているのでしょうか。
あなたのことです、恐らくは動いたのでしょう。練川が殺されたのは、私にとっても予想外でした。あなたを責めはしません。

練川を殺した人間は分かりません。ただ、普通の殺しでないのは確かです。
あるいは、私みたいなのが他にもいるということなのかもしれません。かなり事態は混迷しています。私も整理できていません。

間違いないのは、鶴岡和人を確保すべきだ、ということです。難しいのは知っています。
練川瑠偉の線から崩すことを想定していましたので、彼が自発的にうたうのは望みにくいでしょう。彼の仲間が誰かも、現状ではつかみにくいかと思います。

一つ、言えることがあります。鶴岡のグループは、全て超難関の国立・私立中の人間であったということです。
鶴岡や練川がそうであるように、成績優秀で名が通っている人物である可能性が高いでしょう。

このメールが真相究明に繋がることを欲してなりません。
くれぐれも、鶴岡一派の確保をお願いします。

返信は不要です。


SHELLY

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/09/02(日) 21:53:51.29 ID:oYo1BQfTO<> #

「……またか?」

凍り付く俺に気付いたのか、赤木警部が寄ってきた。

「何……前のタレコミと、同じ送り主じゃねえか。しかもこいつ、練川の件を『殺し』と断定してやがる。……何者だ?」

ヤスも覗き込んできた。読み終えるなり、今までに見なかったような険しい表情になる。

「どうした?」

「いえ……俺の推測が正しければ……」

俺はもう一度、文章を読み返す。強烈な違和感がいくつもあるが、この言葉遣いは。

「警察関係者?」

少しの間の後、ヤスが頷く。

「多分。これなら仁さんのアドレスも知ってて当然です。自白を『うたう』と言ったり、『確保』という表現だったり、警察じゃなきゃしないでしょうね。しかし、誰だろう。仁さんのことは知ってるみたいっすけど」

「俺の知り合いなのは疑いないが、まるで心当たりがない。一瞬4係の誰かかと思ったが、偽名使ってやるかは疑わしい。若葉課長を警戒したにせよ、これだけ情報を持ってるなら自分で捜査するだろう。
そもそも、なぜ鶴岡の周りの連中が、エリート中の人間だと知っているかだ。『勉強会』の話は、俺ら3係しか知らないからな」

赤木警部がふむ、と唸った。

「このシェリーってのが誰か、調べたいとこだな。メアドはフリーアドレスか」

「ですね。こいつは、俺らよりも情報を持ってる。そして、にもかかわらず捜査に関わっていない。さらに、鶴岡たちに対し強い感情もあるように思われる。
考えられるとしたら、所轄の誰かか……」

「考えても始まらねえ。こういう時は」

「まず手と足を動かせ、でしょ?返信不要とありましたが、接触を試みます。こいつに会えれば、何か分かるかもしれない」

赤木警部が加熱式タバコを吸った。

「だな。あと、こいつの助言通り有名国立・私立中に聞き込みか。まだ捜査本部もない状況だ。桜田門ともめないように、静かに……だな」

「それは俺がやります。ツイッターとかからも情報は取れますし、裏サイトも大体はある。一応、これでも開明出身ですしね」

ヤスが赤木警部を見た。確かに、東大卒キャリアのヤスならその辺りの事情は詳しいだろう。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/09/02(日) 21:54:34.51 ID:oYo1BQfTO<> 「了解だ。さて、晩飯にすっか。明日は一応オフだが、飲むか?」

「あー、俺はやめときます。ちょいと用事が……」

ヤスが申し訳なさそうに両手を顔の前で合わせた。

「ん、女か?」

「まあ、そんなもんっす。仁さんは?」

「俺も先約が。赤さん、また次の機会に」

「付き合いわりいな。まあ、俺も嫁と娘の機嫌を取らないといかんからな。ホシを挙げて、パーっとやっちまおう」

赤木警部が苦笑した。俺にとっても、理由はどうあれ久々に落ち着けそうな週末だ。

そして、今日ばかりは外せない理由もあった。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/09/02(日) 21:55:55.06 ID:oYo1BQfTO<> #

「遅くなりました」

「ううん、私も今来たとこだから」

駅の改札前に、小柄な女性が手を振って待っていた。髪は少し茶に染めたショートボブ、黒のジャケットと紺のタイトスカートを着ている。

「美和さん、すみません。仕事が忙しくて、なかなか時間が取れませんでした」

「いいよ。私もそれなりに忙しいし。どこに行こうか?」

「コッテリ系がいいんでしたっけ。この時間で近場だと、『ジャンキーガレージ』が空いてますかね。でも、女性に次郎系は……」

「いいよ、遠慮しなくて。食べてもそんなに太らない体質だし。それにいつも上品な塩や醤油じゃ飽きちゃうしね」

ニシシ、と美和が歯を見せて笑った。少しだけ八重歯が見える。

「じゃあせっかくだから、行きますか。でも量が多いから、無理しないでくださいよ」

「うん、その時は仁さんにお願いしようかな。じゃ、行ってみよ」

美和は跳ねるように歩き出した。そのしぐさが小動物のようで、俺は思わず微笑んだ。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/09/02(日) 21:56:24.33 ID:oYo1BQfTO<> 宮原美和は、俺の行き付けのカフェで知り合った女性だ。カフェでは月1でコーヒー教室をやっているが、俺も彼女も何回かそれに参加していた。その時に意気投合して今に至っている。
お互い食い歩き、特にラーメン店巡りが趣味ということもあり、たまにこうやって互いの仕事帰りに会うような関係になった。

恋人と呼べるような女性は、警察に入って以来いない。忙しかったのもあるが、誰かを俺の生活圏内に入れたいと思えなかったのが大きい。
何より、自分に誰かを愛し、愛される資格があるとは思えなかった。

だが、美和は少し違った。あっさりと、俺との距離を縮めてきた。29という歳の割に子供っぽく見える時と、年相応の思慮深さの両方を併せ持つ彼女に、俺は心惹かれていた。
彼女も、自惚れでなければ俺に好意を持っているはずだ。互いのことはそこまで踏み込んで話したわけではないが、多分上手く行くだろう。根拠のない自信があった。
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/09/02(日) 21:56:59.84 ID:oYo1BQfTO<> #

「どうでした?口にあったならいいんですが」

美和はぱあっと笑った。

「よかったよー。思ってたより随分食べやすくて。でもすごい行列だったねえ」

「リピーターが多いんですよ、次郎系は。麻薬に例える人もいるぐらいで」

「麻薬、ねえ。そこはあまりピンと来ないけど」

「脂と糖分と旨み成分が過剰だと、本当にそういう働きを起こすらしいですね。次郎系は大体化学調味料をどっさり入れますし。グルタミン酸やイノシン酸は、一種の麻薬なんです」

ふうん、と美和が言った。

「確かに『チャイニーズ・キュイジーヌ・シンドローム』ってあるらしいしね。化調たっぷりの中華に慣らされると、全部が物足りなくなるってやつ。
……で、今日はこれから?仁さんがもう一軒行きたいって、珍しいよね」

「ラーメン、も一応は出しますけどね。……ここです」

俺は「MAYOIGA」という看板の前で立ち止まった。美和が少し緊張した様子になる。

「バー、だよね。お酒か……」

「嫌でした?」

「そんなことはないよ。ただ、私、言わなきゃいけないことがあるから……」

珍しく美和の表情が曇っている。どういうことだろうか。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/09/02(日) 21:58:34.64 ID:oYo1BQfTO<> バーに入ると、マスターが俺らを一瞥した後、「いらっしゃいませ」と挨拶した。客は2人ほど、いずれも静かに飲んでいる。
彼は元筋者で、ここは情報収集にたまに使っている。美和を連れていたことで、プライベートと判断したのだろう。
もちろん、彼が作る締めの醤油ラーメンが絶品というのは、嘘ではない。次郎系とは対極の、無化調のラーメンだ。

「飲み物は?」

「じゃあ……この季節の生フルーツカクテルがいいかな。仁さんは?」

「ギムレットで」

マスターがシェイカーを振り始めた。

話は美和から切り出された。

「ごめんなさい、こういうとこに来た、ってことは、つまり……そういうことだよね。
私も気付いてなかったわけじゃないの。ううん、私も仁さんのこと、好きだよ。友達じゃなく、男性として。
でも、お互い話してないことってあるでしょ?……受け入れてもらえるか、不安で」

しばらく沈黙が流れた。マスターが無言で、2つのカクテルグラスを差し出す。

「……話してないこととは?」

少し溜め息をついて、逡巡した後、美和が話し始めた。

「実は、子供がいるの。5歳の」
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/09/02(日) 21:59:28.10 ID:oYo1BQfTO<> 瞬間、俺の目が見開かれた。

「そんな感じには、見えなかった」

「平日は熊谷の両親のとこに預けてるの。休日は、基本的に一緒。月1のコーヒー教室の時は、預けてたけど」

「そういうこと、ですか。旦那さんは」

美和は外資系運用会社で働いている。多忙な故のすれ違いかと思ったが、違った。

「……亡くなったわ。5年前に」

「……!!それは、失礼しました」

美和が苦笑いした。

「いいの。黙ってたのは、私だし。……正直、受け入れてもらえるか不安で」

俺はギムレットを一口飲んだ後、彼女に微笑んだ。

「驚かなかった、と言ったら嘘になります。でも、あなたとなら、きっといい家庭が作れると、俺は思う。
一度、会わせてください。あなたのお子さんに」

「……!!ありがとう……!!うぐっ……」

彼女が俺の胸に泣きながら倒れ込んだ。俺は彼女の小さな頭を、静かに撫で続けた。
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/09/02(日) 22:00:08.63 ID:oYo1BQfTO<> どのぐらいそうしていただろうか。美和が、何かに気付いたように俺を見上げた。

「……この匂い。やっぱり、あの人に似てる」

「あの人って、亡くなった旦那さんですか」

「そう。仁さんって、公務員だったよね。ひょっとして、警察?」

俺はもう一度、目を見開いた。まさか。

「殉職、ですか」

「……うん。やっぱり、そうなんだ。道理で、好きになるわけね……。
でも、あなたは死なないで。もう、耐えられそうもないから」

俺は答える代わりに、美和の手をぎゅっと握った。
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/09/02(日) 22:00:40.86 ID:oYo1BQfTO<> #

家に帰りついたのは、日付が変わって少ししてからだった。美和の娘さんである、亜衣ちゃんには来週会うことになった。いきなり一児の父親か。……上手くやれるだろうか。

スマホが震えた。「SHELLY」には、素性が誰かという質問と、直に会いたいという内容のメールを送っている。返事だろうか。
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/09/02(日) 22:01:14.00 ID:oYo1BQfTO<> #

差出人:SHELLY
件名:そのうちに

毛利仁様

メール、どうもありがとうございます。ただ、現時点では私の身の上をお話はできません。その点、ご勘弁いただきたく思います。
そのうちに、お会いすることもあるでしょう。全ては、そこでお話いたします。
もちろん、それまでに全ての決着が付くのが望ましいのは、言うまでもありませんが。

それでは、失礼します。

SHELLY <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/09/02(日) 22:01:40.99 ID:oYo1BQfTO<> 本日はここまでです。ご感想などあれば幸いです。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/09/02(日) 22:14:24.77 ID:lfsImQZo0<> 面白い
これは本物のコナンたちは出てこないんだよね? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/09/02(日) 22:18:57.44 ID:oYo1BQfTO<> >>91
ありがとうございます。

コナン本人たちは出ません。プロローグにある通り、お話の中の存在としては出てますが。
ただ、タイトル含め、コナンと絡ませている必然性はあります。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/09/02(日) 22:44:54.28 ID:uven5D0aO<> 面白いけどまだまだ全容が見えてこないな
続き楽しみにしてます <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2018/09/03(月) 12:11:43.84 ID:yzWb5YYRO<> 読み返して不自然だったので>>88を微修正します。

「いきなり一児の父親か」→「いきなり一児の父親になるかもしれないのか」

>>93
ありがとうございます。色々伏線を張っていますが、回収はもう少し先ですね。 <> ◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/15(月) 09:22:29.60 ID:L1QJICuhO<> おーぷんで連載していましたが、こちらでリライトの上再開します。
なお、ここまでの箇所に修正はありません。再開まで少々お待ちください。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/10/15(月) 09:33:53.14 ID:EIgzHMst0<> ツイッターでSS速報のこと散々こき下ろしてブーたれてたやんけ <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/15(月) 10:13:05.55 ID:L1QJICuhO<> >>96
それを言われると返す言葉もないですが。
ただ、著作権などを勘案するとこのスレに関しては速報の方がベターと判断しています。 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 14:44:14.25 ID:Gnn7ll0RO<> ちょっと分岐点まで進めます。 <> ◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 14:44:44.34 ID:Gnn7ll0RO<> 【6月3日】


「アユさーん、ご飯できましたよ」

コーヒーが部屋にふわりと香った。枕元の時計を見ると、もう9時過ぎだ。しまった、寝過ごした。
焦ってがばりと身を起こして気付いた。……今日は非番なんだった。

「えっと、もうちょっと寝ていい?」

「ダメですよ、中番明けで疲れてるのは知ってますけど。朝ごはんちゃんと食べないと、ホルモンバランスにも影響が出るんですから」

寝室に青いエプロンを付けたコナン君が入ってきた。わざとらしく頬を膨らませているのがかわいくて、あたしはつい吹き出した。

「ぷっ、何かお母さんみたい。あー、ごめんごめん。今起きるわ。今日のは?」

「ちょっと凝ったのにしてみました。エッグベネディクトにホウレンソウのソテーサラダ、それとヨーグルトです。お口に合うといいんですけど」

「え、えっぐべね……?何それ」

「いいから早くしないと冷めちゃいますよ。ほら」

背中を押されて入ったリビングのテーブルには、もう朝食が準備されていた。
何か丸いパンのようなものの上に、半熟卵とハム。そしてとろっとしたチーズがかかっている。

「サンドイッチというか、ハンバーガーみたいなの?」

「似てるようで違いますよ。ほら、どうぞ」

コナン君に勧められるままにかじると、濃厚な黄身とチーズのコクが一気に襲ってきた。気を付けないと口の端から垂れてしまいそうだ。
柔らかめのパン――マフィンだっけ――も、卵とチーズソースを吸って美味しくなっている。
あたしは二つあるマフィンのうちの半分を、あっという間に平らげた。

「お、美味しい!本当、何でも作れるのね」

「お仕事大変そうでしたから。お昼も夜も、何か食べたいのがあったら言ってくださいね」

コナン君がニコッと笑う。あたしは思わず何を言ったらいいか忘れた。

「い、いいのよ?気をそこまで使わなくて。材料費とかは君持ちではあるけど、そこまで贅沢言えないから」

「大丈夫ですよ。お金なら全然ありますし。そりゃキャビアとか白トリュフとか言われたら難しいですけど」

そもそもそんなものはこの近くに売ってないんじゃ、という突っ込みをあたしはこらえ、エアロプレスからコーヒーを注いだ。 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 14:47:13.73 ID:Gnn7ll0RO<> #

「美味しかったぁ。いつもありがとね。……今日どうしようかな。結構いい天気だけど」

外からは公園に向かう子供たちの声が聞こえていた。今年の梅雨は、随分遅いらしい。

「僕は気にしなくていいですよ。アユさん、この前のお休みもずっと家でしたし……」

「コナン君の傷の具合が気になったってのもあるけど、あたし元々インドアな方なんだ。こっちに友達もいないし。それに、君連れてどこか行くわけにもいかないし……」

コナン君はうーんと唸った。

「本当に、行きたいとこはないんですか?」

本音を言えば、ちょっと池袋まで出て買い物をしたかった。川越の辺りじゃ、かわいい服なんて見付からないし。
ただ、お金はあんまりないし、これまで我慢してきた。

思えば、こうやって外出しようとか前向きになれたのは、久々かもしれない。コナン君が来て、あたしの生活は随分変わった。
ご飯だけじゃない。家に帰って誰かがいるということ。他愛ない話を聞いてくれる人がいるということ。たったそれだけで、あたしのカサカサに乾いた心は、それこそ10数年ぶりに潤ったんだ。

彼を家に置くのは、あと3日だけってことになってる。でも、もっと彼といれたらいいのにと、あたしは思い始めてた。それは、恋とかそういうんじゃないと思うのだけど。……多分。


でも、人混みに出るのが怖い別の理由もあった。

あたしは、命を狙われてる。確実に、奴はあたしを殺そうとしてる。

まず見つからないだろう、とは思ってる。でももし万一見つかったら?そして、それにもし万一、コナン君がそれに巻き込まれでもしたら?そんなことは、考えるだけで悪寒がした。


どうしようか。 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 14:48:33.47 ID:Gnn7ll0RO<> #

「コナン君、準備できた?」

「ええ。サイズもピッタリです。ありがとうございます」

コナン君は一昨日ZOZOから届いた子供服に着替えていた。こっちに来た時にユニクロで買った普段着でも良かったのだけど、池袋に行くのにあれじゃちょっとコナン君がかわいそうだ。
結局、彼を児童相談所に託す時に着させるつもりでちょっと奮発して買ったのにした。デニム風のパンツに、シンプルな白系のポロシャツだ。

あたしは結局、外出することに決めた。コナン君を連れていくかは正直迷った。ただ、一人で行くのも味気ないし、彼を残していくのもちょっとかわいそうだ。

結局、連れていくことにした。何かあれば、親戚の子供で通るだろう。
それに、彼とはもう少しで別れることになる。あたしも、彼との思い出が欲しいのかもしれない。

……いけないなあ、大分情が移っちゃってる。あたしはそんな自分に苦笑した。

「アユさんもきれいですよ。その……とても似合ってます」

コナン君が顔を赤くして言った。そろそろ思春期だから、少し意識してるのかもしれない。

「うん、ありがと。お世辞でもうれしいな。きっと君、大きくなったら女の子が放っておかないよ」

「……ありがとうございます」

顔がさらに赤くなった。本当にかわいい子だ。
この性格と家事スキルがあれば、どこの里親の元に行っても大事にされるだろう。……あたしはちょっと寂しくなるけど。 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 14:50:45.60 ID:Gnn7ll0RO<> #

池袋までは駅から40分弱だ。他愛のない話で時間を潰す。

ゆっくり彼と話をする機会は、実はこれまであまりなかった。あたしの仕事が忙しいのが、一番大きな理由だった。
看護師の仕事は、基本は早番と中番、そして夜勤を含む遅番のローテーションだ。これが4〜5日続いて1日休み。拘束時間は長いし、ストレスも結構たまる。
コナン君はそんなあたしの様子を見てとっているのか、平日はあまり必要以上に絡んでこなかった。そんな距離感の取り方も、子供とは思えないほどだった。
あるいは、虐待されてたから、大人の顔色をうかがうのに慣れちゃってるのかもしれない。

あたしがいくつか彼について知っているのは、料理を含めた家事は達人といっていいほどだということ。ちょっと難しい、古めの推理小説が好きらしいということ。
そして、あたしと同じでレッドホット・チリ・ペッパーズが好きらしいということだ。
あと、彼の名前と同じ「名探偵コナン」が好きなのも分かった。「今までの単行本は全部持っているんです」と満面の笑顔で言われたけど、あれを揃えるのって相当お金がいるんじゃないだろうか。

そんなことを思っているうちに、東武東上線の急行は志木駅を通り過ぎていく。
そういえば「ゼロの執行人」ってまだやってたっけ。面白いなら、コナン君と見に行ってもいいかな。

「ねえ、コナン君。池袋で買い物した後、映画でも見な……」


その時だ。 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 14:51:13.54 ID:Gnn7ll0RO<>


「あ"あ"あ"あああっっっ…………!!!!」



彼は急に唸り出し、頭を抱えた。
顔色は真っ青で、全身は細かく震え、何かに酷く脅えているようにも見える。

乗客の注目が、一斉にこっちに向いた。

「どうしたの??傷がまた痛むの??」

ブンブンと、彼は首を大きく振った。

「どうしよう、お医者……」

「いいです!!……すぐに、落ち着きます」

はぁはぁと荒い息をしながら、コナン君は言った。顔には脂汗が滲んでいる。

「落ち着くって……!普通じゃないよ、頭かどこか痛むの??」

彼は小さく首を振った。さっきよりは落ち着いてるようだ。

「いえ、そんなんじゃないです。……ごめんなさい、映画だけは、やめてくれますか」

「えっ……?どうし」

「どうしてもです!!!」

今まで聞いたこともないような強い調子で、コナン君が叫んだ。車内がザワザワとし始める。
あたしは何を言ったらいいか分からなくなって、身体が震えた。目に熱いものが溢れ始める。どうして??

コナン君はそんなあたしの様子に気付いたのか、軽くあたしの手に彼のそれを重ね、静かに言った。

「……ごめんなさい、怖がらせるつもりはなかったんです。本当に、ごめんなさい。
ただ、映画館だけは、行けないんです。詳しい理由は言えませんけど、どうしても、ダメなんです」

申し訳なさそうに、彼は視線を落とした。……さっきの様子を見ると、本当に何かあるのかもしれない。

あたしは顔を拭い、彼の手を握り返した。こういう時は、大人がしっかりしなきゃ。

「分かったわ。よく分からないけど、君の触れたくない場所に触っちゃったのかもしれないね。
その代わり、今日は君の行きたいところに連れていってあげる。そんなにお金はないけど、池袋にあるものなら付き合うよ」

コナン君がぎゅっとあたしの手を握った。

「ありがとう、ございます。……それじゃ……」 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 14:53:58.83 ID:Gnn7ll0RO<> #

「ずいぶん並んでるね……」

あたしは半笑いで行列を見ていた。30人ぐらいはいるだろうか。

「前に母さんと来た時は、こんなものじゃなかったですよ。大分すいてる方です」

半笑いのあたしをよそに、コナン君が声を弾ませた。


PARCOで買い物を済ませた後、コナン君のリクエストでお昼はラーメンにすることになった。
お母さんが生きてた頃に一緒に行った、思い出の店らしいんだけど……。

「何回か来たことあるの?ラーメンにこんなに並ぶの、初めて見た」

「はいっ。1時間待ちぐらいなら、そんなでもないと思いますよ。巣鴨の『辰』なんて6時間待ちとかあったらしいですし」

「6時間?何やって過ごすのよそれ」

「何でも整理券配って、ディズニーのファストパスみたいな感じにしてるらしいですよ。……ってお茶来ましたよ」

見ると、頭巾を被った店員が行列待ちの客に麦茶を配っていた。少し暑いだけに、これは助かる。
あたしはそれを受け取り、軽く喉を潤した。

「これはありがたいね。でも、お母さんはコナン君に優しかったんだね」

「……そうですね。色々と教えてくれましたし。その分、父さんからは随分と酷いことをされたようですけど」

「……ごめん、嫌なこと思い出させちゃったかな」

コナン君は首を横に振った。

「平気です。こうやって、『PASSO』に来れるなんて思いもしませんでしたし。アユさん、ありがとうございます」

あたしは微笑んだ。そして、彼にいい里親がついてくれることを、心から願った。

#

ラーメン……というよりコナン君の強い薦めでつけ麺を食べた。小麦の香りがする太麺と、しっかりとしたスープがとてもよく合っていた。
ラーメンはあまり食べてこなかったけど、1時間待つ価値は十分あった。確か川越にも有名なお店があるらしいし、今度行ってみようかな。

「ごめんなさい、付き合わせちゃって。今度はアユさんが行きたいところ、行っていいですよ?付き合います」

「えっ?でも、もう服は買っちゃったし……」

コナン君の申し出に、あたしは戸惑った。確かにまだ13時過ぎぐらいだけど、行きたいところか……。
ちょっと足が疲れたから、ゆっくりできるところがいいな。そうなると……

あたしはスマホでお店を調べた。方向は逆だけど、そんなに時間はかからないかな。

「ん、じゃあお言葉に甘えて……コナン君、甘いのは大丈夫?」

「ええ、好きですよ。カフェか何かですか」

「うん。『ミルキーウェイ』ってパフェ専門店。テレビでやってて、1回行ってみたいなって。若い子が多そうだから、浮きそうだけど」

「そんなことないですよ!アユさんは、十分若くてきれいだと……」

コナン君がまた赤くなった。あたしはふふふと笑う。

「いいのよ、お世辞は。そういうのは君に大切な人ができたら言ってあげて。じゃあ、いこっか」 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 14:55:59.53 ID:Gnn7ll0RO<> #

ここから「ミルキーウェイ」までは10分ぐらいかかる。駅を突っ切って行くのが早いみたいだ。人混みは好きじゃないけど、仕方ない。

「お母さんとは、よく池袋に来てたの?」

「ええ。母さんは寄居が実家で。行く途中、たまに寄ってたんです」

なるほど、道理であのラーメン屋を知ってたわけだ。スマホで調べたら、どうも結構な有名店らしい。

西武百貨店が近付いて来た時、コナン君が急に足を止めた。鋭い目をしている。
その視線の先には……女の子3人のグループが立ち話をしていた。少しギャルっぽいけど、皆かなりかわいい。年齢は高校……いや、中学生かな。
特に茶髪のセミロングの子は、どっかのアイドルにいそうなぐらいだ。

「どうしたの?あの子たちが気になる?」

「いえ……ちょっと。行きましょう」

あたしは首をかしげた。かわいいから気になった、ということなのかな。


と思った次の瞬間、彼は女の子たちの方に歩き始めていた。


「えっ、ちょっと待って!?そっちだと少し遠回りだよ?」

コナン君はあたしの言葉が聞こえないのか、歩みを止めない。
そして、そのまま早足で彼女たちの前を通り過ぎていった。あたしも彼にようやっと追い付く。

「聞こえなかったの?そっちだとちょっと遠回りなんだってば」

コナン君がバツの悪そうな表情になった。

「あっ、ごめんなさい。こっちの方が近いのかと……人もそんなにいないですし」

確かに彼が向かう地下道は人が少ないから、歩くスピードも速くできそうだった。でも。

「そうだとしても、勝手に行っちゃダメだよ。迷子になるじゃない」

コナン君はしゅんとして「ごめんなさい」と謝った。しかしこれまで徹底してほぼいい子だった彼が、こんなことをしたのはちょっと不思議な感じがする。何でこんなことをしたんだろう?

でもあたしは、そんなことは1分で忘れてしまった。

#

「ミルキーウェイ」のパフェは、とても美味しかった。星座をイメージした色鮮やかなトッピングに、上品な甘さ。値は少し張ったけど、それに見合う味だった。

しかし、あたしたちってどんな関係に見えてるんだろう?歳の離れた姉弟……が妥当なのかな。
お店にいる数少ない男性は、スタッフの人かカップルかだ。コナン君は、さすがにちょっと浮いている。

「どうしたんです?」

コナン君がスプーンをくわえて訊いてきた。こうして見ると、年相応の男の子にしか見えないな。

「ううん、いいの。付き合わせちゃってごめんね」

「いいんですって。僕も結構な甘党ですから。……本当は、もっとアユさんと色々行きたかったです」

ズキン、と胸が痛んだ。そうか、もうこういう機会は、ないんだな。
コナン君を、別のしっかりした人に託す。それは大人として、当然のことだ。そもそも、コナン君の父親が訴えたなら、あたしは立派な犯罪者だ。このままでいいわけがない。

だけど、彼といた1週間ちょっとは、まるで世界が色付いたかのように鮮やかに見えたんだ。
「あの時」以来捨てたと思っていた、人としての幸せが、やっと戻ってきたような気がしていた。



ああ、あたしは独りでいることに耐えられなくなっているんだ。


<>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 14:56:27.27 ID:Gnn7ll0RO<> ほんの少し、あたしを思いやってくれる誰かと、こうやって過ごしただけなのに。
どうして、こんなに弱くなっちゃったんだろう。

いや、はじめからあたしは弱かったんだ。だから高崎からも過去からも逃げて、こうやってひっそり生きることを望んだ。
でも、それはもう限界に来ていたんだ。コナン君が来たのは、ただそれを自覚するきっかけにしか過ぎない。


彼が去った部屋で、あたしはこのまま生きていけるんだろうか?


「…………どうしたんですか」

コナン君がじっとあたしを見ていた。頬には、いつのまにか生暖かいものが伝っている。

「えっ、あっ、これはその……何でもないの、気にしないで」

「何でもなくないですよ。……ずっと思ってました。僕が言えた口じゃないですけど、アユさんは何か隠してませんか。
隠している、というより、何かに脅えているような」

あたしはギクッとした。時々、この子はあたしの心を見透かしたような発言をする。

「そ、そんなことは……」

コナン君は黙ったまま、あたしを見つめていた。視線がなかなか外れない。

あたしは溜め息をついた。隠し通すわけには、いかなそうだった。

「……分かった。でもここじゃ話せない。家に帰ったら、ゆっくり話すわ。
その代わり、コナン君のことも、もう少し聞かせて。もうそろそろお別れだけど……せっかくだし」

コナン君は少しだけ目をつぶった。そして微かに頷いた。

「……アユさんだけってのも、不公平ですしね。ただ、少し驚くかもしれない。それでもいいですか」

「ええ」

彼が普通の小学生じゃないのは、間違いない。でも、何で映画をそんなに恐れるのだろう?そこだけは、聞いておきたかった。 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 14:57:51.03 ID:Gnn7ll0RO<> ※ここから展開が変わります。

なお、ストーリーの骨子の部分は変わりません。展開が少し遅くなる程度です。 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 21:26:26.31 ID:Gnn7ll0RO<> 変更部分から再開します。なお、コンマや安価の使用は今後は「ほとんど」ありません。
(従来の予定通りとするという意味です) <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 21:27:39.43 ID:Gnn7ll0RO<> 一度家に戻ってゆっくり話をしよう。そう思って駅へ向かい始めた、その時だった。

「……アユさん。誰か後ろにいます。尾行られている」

背筋にゾゾッと恐ろしく冷たいものが走り抜けた。どうして?こんな街中なのに??
そもそも、何でコナン君が気付くの?

「え、ええっ??ちょ、ちょっと……」

「いいから!……ちょっと歩きますよ」

コナン君があたしの腕を引っ張った。子供と思えないぐらい、強い力だ。

「追っ手が増えた……参ったな。早めに電車に乗りましょう。JRに」

「JR?方向がちが……」

「撒くためですよ。奴らが何で尾行してるかは知らない。でも、僕らを捕まえるか、それができなくても僕らの居場所を知ろうとしてるんだと思います。
なら、乗り換えで混乱させるしかない。ボーッとしてたら、周り全員が追っ手ということになりかねない。
……僕が追われる理由は、『まだ』ないはずだ。アユさん、何か隠してますね」

後ろをちらりと見ると、確かに黒いシャツの男があたしたちの方を見ていた。尾行されてるのは、どうも確からしい。
早足で歩きながら、あたしは戸惑い気味に頷いた。

「……帰ったら、言うつもりだった。あたし、追われてるの。だから、不要な外出とかは、できるだけ避けてた」

「誰に?」

少し目線を落とし、それからコナン君の目を見る。

「……追われてるの。ストーカーから」

「そこまで危険な男だと?そもそも、今までそんな気配は」

「今のところは。元々、高崎に住んでたの。結構馬鹿なことも、たくさんやった。『売り』だってした。色々、自棄起こしてたし。……ごめんね、汚い女で」 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 21:28:18.32 ID:Gnn7ll0RO<> あたしたちはJRの改札に着いた。コナン君は切符が要ると思ったけど、彼は首を振ってそのまま構内に入った。どうも、Suicaか何かを持っていたみたいだ。

「追っ手は3人……1人は僕らを見失ってますね。早く山手線へっ」

ちょうど山手線の緑の電車が入ってきた所だった。あたしは全力で駆け出す。コナン君も走り出した。
振り向くと、黒服の男が凄い速さで階段を駆け上がり近付いてくるのが見えた。このままじゃ捕まる!

そう思った時だった。

コナン君は懐から何かを取り出し、男に向けた。そして。


「あがあぁぁぁぁ!??」


ビッという音と共に、何かが撃ち出された。男は苦悶の表情とともに、階段に前のめりに倒れ込む。

「今だっ、アユさん乗って!!」

ホームに発車を知らせる音楽が流れる。あたしは何とか飛び乗った。コナン君は……まだホームに残っている?

「コナン君っ!!早くっ……!!」

コナン君は、銃のようなものを持っていた。その銃口からは、糸のようなものが伸びている。
まるで掃除機のコードのようにそれは巻き取られ、コナン君はドアが閉まりかけの電車に滑り込んだ。

「待ちやが……」

残りの黒服が窓を叩いたのと、山手線が走り出したのは、ほぼ同時だった。

「……間に合いましたね。しばらく池袋には寄らない方がいい」

「寄らない方がいいって……さっきのは」

コナン君が指を唇に当てた。

「あまり大声で話さないで。大丈夫、本物の銃じゃないです。『テーザーガン』、スタンガンのようなものですから」

「スタンガン??何でそんなものを……」

「理由は……父が僕を見付けた時の、護身用ですよ。食らえば、しばらくは動けない」

護身用??そもそも、そんなものを小学生が買えるの?

そんな疑問を抱いていると、コナン君があたしの腕を引っ張った。

「高田馬場です。これで西武新宿線で本川越まで行けば、後はどうとでもなります」 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 21:28:59.77 ID:Gnn7ll0RO<> #

「……追っ手はないようですね。奴らがどこから来たか分かりましたか」

あたしは少し考えた。……ひょっとして。

「見えてなかったけど、心当たりはある……『アキヤマデンキ』?」

「ええ。アユさんと関係が」

あたしは、震えながら頷いた。

「……説明、いい?」

「ええ、どうぞ」

「ありがと。『売り』やってたって言ったわよね。……その客の一人が、あいつだった。
最初はただの、金払いのいい常連だったわ。時間は拘束されたし、正直下手くそだったけど、何とか我慢できた
でも、それはすぐに、甘い考えだったと分かった」

あたしは拳を握り、唇を噛んだ。

「奴は独占欲を剥き出しにしてきて、あたしの『表』の生活まで干渉してきたの。結婚を求められる程度ならまだよかった。でも、違った。
君には言えないようなことを、色々させられたわ。変態的で、受け入れがたいような……思い出したくもない。
そしてクスリを射たれて輪姦されそうになった時、あたしは逃げた。確実に殺されるって」

電車は小金井駅を通過したところだ。コナン君は乗客をチラリと見た後、「続けて下さい」と促した。

「奴は、まず高崎中を探し回ったわ。どうやって知ったか知らないけど、母さんの家にまで電話をかけて脅してきた。
母さんは、間一髪で福島の親戚の家に逃げ込めたけど、あたしはそうもいかなかった。手下は、あちこちにいるから……一度、前橋に逃げた時に捕まりそうになったし。警察も、相手にしてくれなかった。民事不介入だって」

「手下?さっきのはヤクザか何かですか」

あたしは拳をさらに強く握った。

「……もっとたちが悪いわ。家電量販店、『アキヤマデンキ』の御曹司、秋山雄一。各店舗にあたしの顔写真が貼ってあって、表向きは万引き常習犯として周知されてるみたい。
奴は裏の世界とも繋がりがあるって話。キモい上に執念深い。……あたしの知る限り、最悪の男」

「なるほど、だからあそこからワラワラと現れたわけですね。そして、彼はまだ諦めてないと」

「……諦めたのを祈ってたけど……違ったわ。今の家だって、いつ見付かるか分からないわ。
アキヤマデンキのない駅をと探して見付けたのがあそこだけど……」

あたしはいつの間にか、ガタガタ震えていた。視界が熱いものでぼやける。

そして彼は、あたしの肩をそっと抱き寄せた。

「……よく分かりました。そういうことだったんですね。
……僕があなたを守ります。必ず」

「……できるの?君が?」

コナン君は、力強く頷いた。

「できます。あなたが思うほど、僕は弱くはない」

「でも、相手は大人よ??それもヤクザみたいなものよ??子供が一人で、守りきれるわけが……」

「アユさんだって、ずっと逃げ続けられるわけじゃない。だから、僕が守る。
相手が来るなら、立ち向かうまでです。大丈夫、僕にはそれだけの力がある」

あたしはコナン君を見た。

「……どういうこと?」

「今は言えません。でも、近いうちに、必ず。その代わり、僕をしばらくアユさんといさせてください。お願いします」

あたしはコナン君に、恐れを感じはじめていた。この子がただの小学生じゃないのは、もはや明白だった。
それでも、今日彼は、あたしを守ってくれた。信じてしまって、いいのだろうか?

あたしは、少し考えた。そして。

「……分かった。でも一つ、約束して。君のこと、近いうちに正直に話してほしいの。
1週間以内にできないなら、出てってもらう。それでいい?」

コナン君は少し目を閉じた後、「分かりました」と答えた。 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 21:29:28.24 ID:Gnn7ll0RO<> #

翌朝。起きると朝食の準備がされていた。……でも、コナン君がいない。

「コナン君?」

テーブルの上に、置き手紙が残されていた。そこには、小学生らしからぬ細い、綺麗な筆跡でこうあった。


『アユさんへ
おはようございます。朝御飯、作っておきました。冷めてたらレンジで温めて下さい。
僕は少し外出します。アユさんが帰る頃までには必ず戻ってます。心配はしないで下さい。
コナンより』


どういうことだろう?これまで外出すらしなかった彼が、なぜ?


その理由を知るのは、ちょうど1週間先のことだった。 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 21:31:04.18 ID:Gnn7ll0RO<> 【6月4日】


「重要連絡事項あり。0800に本部へ集合」

職務用スマホの震えで目が覚めた。木暮管理官からのメッセージは簡潔だが、それだけに重いものを感じさせる。
連絡魔の赤木警部と違い、木暮管理官はあまり不要なメールをしない。逆に言えば、彼が動く時は何かが大きく動く時だ。

日課のコーヒーを今日は飛ばし、適当にコンビニで菓子パンとゼリー飲料で朝食を済ませることにした。
案件は見当がつく。恐らくは、練川殺しの一件だ。倫先生が、恐らくは毒殺の証拠を押さえたのだろう。
とすれば捜査本部が立つ。ローラー作戦に割ける人員も一気に増す。

高揚感を感じながら、俺はYシャツに袖を通した。

#

だが、会議室に入るなり、それは誤りだったと気付いた。
先に来ていた木暮管理官と倫先生の表情が、明らかに冴えない。
そもそも、冷静に考えればこんな強行3係だけのミーティングにはならない。若葉課長も交えた大会議になるのが普通だ。

「おはよう毛利君、さすがに早いな」

「いえ、いつものことですから。……倫先生、結果が」

彼女はうーんと唸った。

「まあ一応、だね。詳しくは後で話すけど、実に微妙な結果だったわ。正確に分かるには、もっとかかりそう」

「それで召集を?」

木暮管理官が俺を見た。

「それもある。あと、安川君が調べてくれた主要校の生徒データが上がってくるはずだ」

そこに書類の束を抱えたヤスが現れた。顔には幾ばくかの疲労の色が見える。

「……お待たせっす。まとめましたよ、何とか」

「どうだった」

ヤスがどや顔でVサインを作った。

「へへっ、そこは抜かりなく。一人、超有力なのが見付かりました。こいつは当たってみる価値ありです。まだ赤さんや青さんは来てないっすけど、フライングで」 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 21:32:22.03 ID:Gnn7ll0RO<> ヤスが書類の束から1枚の雑誌のコピーを取り出した。緩く髪をカールさせた少女だ。少し切れ長の目が、上品さと性格のキツさを感じさせる。
10人が見れば全員が美少女だと断言するであろう程度には整っているが、俺のタイプではない。

「ヤス、そんな子が好きなのか。俺はもうちょい、清楚な方がいいな」

ヤスの後ろから赤木警部が口を出してきた。ちょうど入室したらしい。

「あっ、赤さん。はよっす。個人的にはもうちょいギャル入っててもいいんですけどね。……集まってきたし、始めちゃいます?」

青葉も白島もやって来ていた。木暮管理官は、静かに頷く。

「じゃあ始めようか。こんなに早く集まってもらったのは、あまり他に情報を漏らしたくないということがある」

「どういうことです?若葉の奴に知られちゃまずいってことですか」

「確実に彼は止めに来るからな。練川少年の件が蒸し返されれば、自然死扱いされかかっている鬼束少年の件も、再捜査が必要になるだろうからだ」

「じゃあ毒殺の立証が……!」

興奮気味の赤木警部を、倫先生が制した。

「と言いきれないのが辛いとこね。グレーというのは分かったけど、グレーを黒にするには時間がかかるし、なるかどうかもまだ分からない。それが現状」

「どういうことですか?」

倫先生がペットボトルのお茶を飲んだ。

「グルタミン酸、ってご存じ?」

「旨味を構成するアミノ酸、ですね。化学調味料にもグルタミン酸ナトリウムとして含まれてる」

「仁君、その通り。それが普通の知識ね。しかし、これがとてつもない猛毒であるのは、あまり知られてない」

「どういうことです?」

倫先生は頷くと、脳の絵を描き始めた。

「グルタミン酸は色々な役割を持つわ。旨味を感じさせるだけじゃなく、記憶力を向上させる働きも持ってる。
ところがある特定の状況下においては、最強クラスの神経毒になるの。
脳虚血とか、かなり脳が深刻な状態にある場合、グルタミン酸は神経毒として脳細胞をアトポーシス……自己破壊させるわけ。鬱病の原因ともされてるらしいわね」

「でもそうだとすると、旨味調味料自体が危ないんじゃ?」

「そうはならないわ。何故なら、グルタミン酸は直接脳には届かないから。どんなに食べても血液脳関門という脳へと血液が回るところでブロックされる。
よく似た構造のグルタミンだと脳に入れるけど、神経毒は出さない。むしろ疲労回復効果があるとされてるわ」

図を描きながら倫先生が説明する。赤木警部が渋い顔で訊いた。

「いや、よく分かんねえんですが。つまりどういうことです?」

「ごめん。こういうことよ。『本来脳に入り込むはずのない超高濃度のグルタミン酸が大脳皮質でごく少量見付かった』。
もっと正確に言えば『神経毒を出す可能性が極めて高い、グルタミン酸の新しい変位体が見付かった』ってとこね。
ただ、これがどういう経緯で体内に入ったのか。そして練川少年の死との相関性がどれほどかまでは分からない。
前にも言ったけど、『ノビチョク』が厄介なのは毒性が高いからだけじゃなく、『未知』だから。
未知の化学物質が何なのか、死との因果関係を証明するにはどうしても時間がかかる。科捜研に送ってるけど、しばらくかかりそうって言われたわ」 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 21:33:05.92 ID:Gnn7ll0RO<> 木暮管理官が手を挙げた。

「というわけだ。若葉課長は、何故かこの問題を『穏便』に済ませようとしている。だが、私の勘では、こいつは100%殺しだ。それを補強する何かが要る。
証明されるまで大人しく待って、それを上にあげた方が無難かもしれない。だが、3人目の被害者が出ては遅すぎる。
だから、君たちには静かに、かつ鋭く迫ってもらう必要がある。
……そこで、安川君。君の出番だ」

「はいっ」とヤスが立ち上がり、全員にさっきの書類を渡していく。

「これは、前に言ってた国私立の一流校の話か」

「そうです。いやあ、難しいですね。最近の裏サイトは、普通じゃ検索できない。皆LINEのグループに潜ってて、情報がほとんど漏れないんすよ。
だから、この書類にあるのは、半分以上ある女の子についてだけっす」

「ある女の子?さっきのか」

ヤスがニヤリと笑った。

「仁さん、その通りっす。開明中は天才とか言われてる子は何人かいましたが、妬みやっかみばかり。学園大付属も、あんま目立った子はいなかったっす。
せいぜい、水泳で全国行った薬師丸英華って子が話題なくらいでした。まあ、一応マークはしといた方がいいかもですが。
問題はこいつ。桜岡中の金路アゲハ。読者モデルもやってる、ちょっとした有名人すね」

ヤスがさっきの女の子の写真をホワイトボードに貼った。

「面白いのは掲示板もSNSも、『皆が絶賛してる』ってことなんすよ。普通、やっかみとかあるはずなんです。しかもこいつ、学年トップらしいっすからね。
プライドの高い子が多い桜岡じゃ、絶対嫉妬されます。しかもお世辞にも美形が多いとは言えないので有名な、あの桜岡ですよ?
気になって調べてみたら、なかなか香ばしい人脈が。次のページを」

ページを捲ると、どこか見たような中年女性がいる。長髪で皺がほとんどなく、30代前半のようなルックスだ。確か、テレビによく出ている。こいつは……。 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 21:34:00.03 ID:Gnn7ll0RO<> 「嫌な女の顔だねえ。あたしゃこういう女を武器にしてるようなのは大っ嫌いなんだよ。
民生党代議士、金路栞だろ?こいつは、その女の娘か」

倫先生の言葉に、パンとヤスが手を叩いた。

「正解っす。まさにそうです。民生党次期党首と言われ、一部に熱烈な信者がいる、金路栞。アパレル大手『SHIORI』創業者としても有名っすね。
SNSじゃその攻撃的な言動から袋叩きにあってますが、老人や中高年女性、そして一部の若者にはえらい人気がある。
シングルマザーであるのを、テレビや女性誌でえらい強調してますしね。
んで、雑誌にこいつの娘だとあってピンと来たんす。多分、否定的な投稿は消されていると。彼女ならしそうな話っす」

「ふむう」と赤木警部が唸った。

「しかし、関係性が弱いな。鶴岡との繋がりは?」

「鶴岡の自宅があるとされる志木は、金路栞の地盤です。鶴岡一家のパトロンであるのは、隠そうともしてない。
総合して考えると、アゲハ嬢から話を聞くのが最速っすね」

「なるほど。じゃあ、彼女との接触を最優先だな」

赤木警部の言葉を受け、木暮管理官が続けた。

「そうなるな。そこで3つに分かれたい。まず、桜岡中近辺での張り込み、聞き込み。ただ、色々うるさい学校とも聞いている。行動には注意だな。
もう一つは金路栞の自宅周辺。彼女は現役の衆議院議員だ、ヤサは大体分かる。
最後は、一応念のためだが学園大付属だな。こっちは押さえということだ」 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 21:36:02.39 ID:Gnn7ll0RO<> 金路アゲハを追いたい気持ちはある。あれは間違いなく、鶴岡のジムにやってきた女の子だ。
だが、残りの2人が誰かはまだ分からない。彼らが何者か分かるのは、俺と赤木警部だけだ。

俺はその考えを木暮管理官に告げた。

「確かにその通りだ。なら毛利君には学園大付属中へ、赤木君には開明中へ行ってもらおう。
青葉君には桜岡中、安川君は金路栞の自宅だな。白島君は、私とちょっと来てくれ」

「私が、ですか」

無表情で呟いた白島に、木暮管理官は頷いた。

「君にはあることをしてもらいたい。頼まれてくれ」

「ちょっと待ってくださいよ。白島に何を?そいつは若葉派ですよ??」

赤木警部が語気を強めた。木暮管理官は静かに笑う。

「そのうちに分かる。決して君たちの損になることはない。
まだ明かせないのはそれなりの理由があるからだ。少し戸惑いもあるだろうが、我慢してくれ」

隠し事をする性質でない木暮管理官にしては珍しい。何故白島を?
だが、それを詮索するよりまず目先の任務だ。
俺は「はい」と短く答えた。

#

学園大付属は中高一貫の国立の学校だ。自由な校風で知られており、制服などはない。
皆思い思いの服で登下校しているが、大体はそれなりなのは面白い。

俺は通行人のふりをして、下校する薬師丸英華を待つ。ネットで調べた限りだが、少し色黒だが活発そうな笑顔が印象的な子だ。
金路アゲハとは、ある意味対照的な印象だ。さすがに彼女が「勉強会」の一員ということはないだろうが、何かきっかけはあるかもしれない。

直観だが、そんな気がした。 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 21:40:27.64 ID:Gnn7ll0RO<> #

待つこと20分。ラフなパンツとTシャツに半袖を合わせた少女が校門から出てきた。確か、あれが薬師丸英華だ。
そして、その後ろには……

「あれだ」

鶴岡ジムに入っていった一人だ。地味で目立たない印象だったが、辛うじて思い出せた。
これは僥倖かもしれない。俺は早足で彼らに近付いた。

「ちょっとごめん。少しいいかな?」

きょとんと少女は俺を見る。あまり人を疑うことを知らない目だ。

「えっ、どうしたんですか急に」

俺は懐から警察手帳を見せた。明らかに、後ろの少年の顔が引きつったのが分かった。

「埼玉県警捜査一課の毛利といいます。君たち……というより、後ろの子に少し用事があるんだけど、ちょっと時間いいかな?」

「えっ、警察……?それも捜査一課って、殺人とか捜査するところですよね。どうしてオレ……じゃなかった、私たちに?」

驚いたように少女が後ろを振り返る。

「ジョー、何か心当たりあるの?」

「い、いや、別に……。人違いじゃないですか」

俺は軽く息をついた。少年が嘘をついているのは明白だ。

「鶴岡和人、金路アゲハ。知らないとは言わせないよ。
ああ、もちろん君を疑っているわけじゃない。君が彼らと友人であるのを知っているというだけだ」

「そんな有名人。人違いじゃないですか」

「あるいは。だが、職業柄、人の顔の覚えはいい方だ。駅に落ち着いた喫茶店を見つけたから、そこで少し、話そうか」

ジョーと呼ばれた少年は、俺をじっと見たまま固まっている。
この子が鬼束少年や練川少年を殺した犯人である可能性は、かなり薄い。ただ、後ろ暗い所がある人間特有の表情ではある。

数秒の沈黙の後、ジョーと呼ばれた少年は視線をそらした。

「いえ、多分誰かと間違えてるんです。行こう、ヤク」

「う、うん……」

少年は足早に去って行った。思いの外口は堅いようだ。何度かここに足を運ぶことになりそうだ。問題は、彼が何を隠しているのか、だが。

#

俺はメッセージで今のやり取りを3係全員に共有した。1分後赤木警部から電話がかかってきた。

『よう仁!でかいの捕まえたな』

「初見は逃げられましたけどね。ただ、あの分なら多分口は近いうちに割りますよ。
本名は不明でしたが、薬師丸英華とは親しい関係のようでした。
恋人とかそういうのではないにせよ、彼女から彼の話は多分聞けるでしょう」

『そうだな。ていうか、どうにもこっちは見つからなくてなあ。
あの地味なのがジョーってのなら、ジャニーズ系の美形が最後の一人だ。
だが、そんなのはちっともいやしねえ。いかにも勉強ばっかりやってますというような奴ばっかだぜ、ここは。
ああいうのがいれば、速攻で見付かるはずなんだがね』

「学校が違うとか、そういう話かもしれないですが」

『かもな。金路アゲハとジョーってのは、ヤスの読み通り超一流中だったが、
最後の奴は違うって線はあるかもな。……っと、青から連絡だ』

俺のスマホにも表示が出た。

「学校のガードが堅すぎる上、校内のロータリーに入る高級車が多過ぎる。
あれで登下校の送り迎えをされていたら捕まえるのは至難」

『青にしちゃ珍しく淡々としてるな。相当きついのかね』

「でしょうね。青さんでもこれとなると、思いのほかアゲハ嬢を捕まえるのはきつそうだ」

『だな。あるいは、しばらくそっちが本線になるかもしれんな。
何にしろ、交友関係が見えてきたのは朗報ちゃ朗報だ』

俺は「ええ」と相槌を打ったが、何かが妙に引っかかっていた。 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 21:43:19.64 ID:Gnn7ll0RO<> 【6月6日】


夕方、今はもう使われなくなった、工場の3階。「奴」は、僕に背を向けて立っていた。
その時何を言われたかは、ちゃんとは覚えてない。ただ、絶対に許せないことを言われたのは覚えている。

「奴」が振り返り、下卑た笑いを浮かべる。僕の頭に、一生分の血が昇った。


ガンッ


強い手応えと、何かが外れたような音。宙に向かって仰向けに倒れ込む「奴」。
そして何かを掴むように、滑稽に手足をばたつかせた。ゆっくりと、スローモーションのように「奴」は遠ざかり……


グシャ


頭は地面に叩き付けられ、割れた。


「奴」の顔は、黒塗りになってて思い出せない。だけど。

あの時の手応えだけは、今もこうして手に残ってるんだ。

#

「はっ!?」

僕は強い不安に刈られ、目を覚ました。身体中から、脂汗が滲み出ている。

時計を見た。午前4時56分。起きるには、まだ早い時間だ。
僕は再び眠りにつこうと、目を固く閉じた。


……でも、心臓の音がうるさくて、眠れない。昨日もそうだ。また、あの時の夢を見てしまった。


原因は分かってる。あの刑事が、僕の前に現れたからだ。

#

昨日は裏門から出た。もう、あの刑事と会いたくなかったからだ。
ヤクはとても心配してたみたいだけど、本当のことなんて、あいつに言えるわけがない。


僕が、2人も殺した殺人者だなんて、言えるわけないじゃないか。


とりあえず、昨日はそれで済んだ。でも、またあの刑事に会ったら?僕の過去を暴こうとしてきたら?

僕は、机の鍵付きの引き出しに厳重にしまってあるあの薬のことを思い出した。あれを使えば……

僕は強く首を振って、その恐ろしい考えを打ち消した。馬鹿な、逃げ切れるわけがない。
大丈夫だ、こうなった時のことも、翔一は教えてくれたじゃないか。そもそも、彼らが僕らの繋がりを知っても、表面的なら大丈夫のはずだ。
第一、「アイスキャンディ」は合法なんだ。これで捕まったり、僕の過去が暴かれるなんてことはない。多分。


むしろ、僕らを狙っている誰かの方が、ずっと問題なんだ。警察は敵じゃない。そうだ、そうじゃないか。

悶々としているうちに、夜は白み始めていた。 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 21:43:53.60 ID:Gnn7ll0RO<> #

「ジョー。謝らなきゃいけないことがあるんだ」

珍しくしょんぼりとした感じでヤクが言う。

「……刑事さんのこと?」

「そう。昨日も来てたから、ジョーの名前、教えちゃった。オレ、ジョーのこと信じたいし……本当に、何もないんだよね?」

少し上目遣いで、ヤクが訊いてきた。……凄く心が痛む。僕は、お前の考えてるような人間じゃないんだ。

でも、僕は全力の作り笑顔で答えた。

「もちろん。ただの刑事さんの勘違いだよ。今日会うかもしれないけど、ちゃんと言ってくる。信じてもらえるさ」

「……ならいいけど」

ヤクの目に微かな不安の色が見えた。勘が鋭い彼女だ、薄々何かおかしいとは気付いてるんだろう。

でも、僕は嘘をつき続かなきゃいけない。僕と、僕の家族と、ヤクのために。

一限の授業が始まった。僕は束の間、刑事についてのことを意識の外に置くよう努力した。
それは結局、無駄な努力だったんだけど。

#

「城隆一郎君だね」

校門を出ると、早速一昨日の刑事がいた。横には、いかにも刑事ドラマに出そうな中年男がいる。

「赤さん、彼で間違いは?」

「ねぇな。……俺たちは別に、お前さんを犯人だとか言ってるわけじゃない。昨日の子が随分熱心に語ってくれたよ。
俺たちが聞きたいのは、お前さんの人間関係、特に亡くなった鬼束直哉と練川瑠偉の話だ。
……ここで立ち話もなんだ、駅前に喫茶店がある。そっちに行こう。ああ、俺は埼玉県警捜査一課の赤木航警部だ。毛利の上司に当たる」

僕は小さく頷いた。ここでしらを切り通すのは、どう考えても無理な話だった。

#

「さて……と。俺はホットコーヒー。仁は?」

「同じく、グァテマラがあればそれで。君はコーヒーはまだ早いかな」

「……それで」

初老の店員が、静かに去っていった。

「……さて。まず、改めて聞きたい。君と鶴岡和人、そして金路アゲハは友人関係にある。そうだね」

若い、がっちりとした体格の男が訊いてきた。
僕は出されたコーヒーを、一口飲む。無理してブラックで飲んだからか、ちょっとむせた。

「……友人というほどでは。ただの知人です」

「そうか。しかし君も『勉強会』の一員だと思っていたが?」

僕は一瞬、目を見開いた。そこまで知ってるなんて。
男の声は穏やかだが、しかし低い。有無を言わせぬ圧力がある。これは確信を持っている。ブラフじゃない。
……でもどこまで知ってるんだろう?僕は言葉をできるだけ慎重に選んで、答えた。

「……はい。その通りです。主な難関校の、最上位の生徒が自主的に集まって勉強会を開いてるんです。
彼らとは、模試の上位者ってことで名前は知ってました。興味本意で集まって、もう半年以上になります」

「じゃあ友人じゃねえか」

中年男がコーヒーを飲んで、剣呑に訊いてきた。この程度の揺さぶりは、想定内だ。

「勉強のライバルを、友人とは言いませんよ。正直、好きではないですし。
ただ、単純に学力を高めあうだけの存在です」

「でもこれ以上頭良くなってどうすんだ?勉強会の目的はなんだ」

「将来、社会を背負って立つには大学受験の先を見なきゃいけないんです。そのための勉強会です」

今のところは、翔一の想定通りだ。中年男が不機嫌そうに頭をポリポリ掻いている。若い方が、顔色変えずに右手で4本、指を立てた。 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 21:45:23.24 ID:Gnn7ll0RO<> 「……じゃあ質問を4つ。まず、君は何故一昨日嘘をついた?別に逃げる必要はなかったはずだが」

「いきなり刑事さんに会ったら、誰だってびっくりします。それで、ちょっと気が動転して……ごめんなさい。ちゃんと言えば良かったです」

「……まあそれはそれでいい。二つ目、何故鶴岡ジムに?勉強会やるなら、図書館でもいいだろう」

「パソコンとかの設備が整ってるんです。テレビ電話で、海外の講師ともやり取りできますし」

動揺せず、翔一の言われた通りにできてる。あと一つだ。
若い男が中年男の顔を見て、一服置いた。

「まあ、納得しがたいがいいだろう。勉強会の残ったメンバーは君に鶴岡君金路さんと、あと一人は?」

「……翔一とだけ聞いてます。彼だけは、よく分からないんです」

嘘半分、本当半分だ。彼が佐倉法律事務所の所長の子だというのは知ってる。開明中らしいということも。
でも、それ以上は何も知らなかった。もし知っていたとしても、翔一の話だけはできない。そう、厳に言われていた。

「翔一君ね……彼がリーダー?鶴岡君?」

「リーダーとか、そういうのはないんです。自然と集まっただけなんで……」

「なるほど。じゃあ最後の質問だ。鬼束君と練川君、二人も勉強会の一員だったと聞いている。二人が『殺された』理由は知ってるか?」

僕はすぐ答えようとして思い止まった。これは、罠だ。二人が「殺された」なんてニュースは、どこにもない。

「……『殺された』んですか」

刑事二人が一瞬視線を交錯させた。

「……厳密には、まだ分かってないんだ。だから、手掛かりがないか、君に聞きにきてる。
もちろん、殺人だとしても君を疑ってるわけじゃない。犯人は極めて高い確率で大人だからね」

僕は安堵した。やはり、二人は僕の過去を探ろうとしてるわけじゃない。「アイスキャンディ」の件でもなさそうだ。

「そうですか……彼らは確かに、勉強会のメンバーでした。でも、殺される理由なんて……」

それは本当だった。少なくとも「勉強会メンバーを狙い撃ちされる」理由は、ない。
「アイスキャンディ」関連とは思えないし、「例の計画」が漏れるとも思えない。
各メンバーには皆脛に傷がある。だからそれを理由に殺されることは、あるいはあるかもしれない。
でも、勉強会自体が狙われることは、ないはずだ。

中年男の刑事がうーんと唸った。

「本当に、ねえのか。何か隠してはねえのか」

「理由なんて、全然。何で二人が死んだのかすら、よく分かってないんです」

「……こりゃあの嬢ちゃんの言う通りかもしれねえな」

中年男が肩を竦めた。

「確かに。忙しいところ、邪魔したね。また話を聞きに来るかもしれないが、その時はよろしく」

若い男が微笑み、カップのコーヒーを一気飲みして席を立った。

「こちらこそすみません、お役に立てず」

「いいんだよ。こういうことは、よくある。コーヒーは奢りだ」 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 21:45:50.96 ID:Gnn7ll0RO<> 僕もほっとして席を立った。その時だ。


「おっとそうそう、忘れていたよ。荒川のホームレスの殺人。それについては知らないか?」


僕の全身の毛穴から、一気に汗が吹き出た。


そんな。馬鹿な。


あの件は、絶対に僕らに疑いがかからないはずじゃ。


刑事二人の視線が、鋭く突き刺さる。そうか、二人があっさり引き下がろうとしたのは……僕を油断させ、安心させるための、演技……。

僕は気力を振り絞って、言葉を紡いだ。

「……いえ。何ですか、それは。知らないです」

「……そうか?ならいいんだが。じゃあ『また会おう』」

僕はその場に立ち尽くすしかなかった。


彼らは、勉強会が犯した殺人を知っている。


<>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 21:48:58.28 ID:Gnn7ll0RO<> 【6月6日】


「やはり黒でしたね」

赤木警部は頷き、つけ麺を一気に啜る。

「崩すなら荒川の件というのは正解だったな。敢えて緩くやって、油断させてガブリ、だ。中坊にはかなり堪えただろうよ。
これで一応の突破口はできた。とはいえ、城たちと荒川の銃殺を繋げる物証はない。
そもそも、何で中坊が銃なんて持ってるのかって話だ。銃弾の旋条痕も、『前』がない。意味が分からねえ。
さらに言えば、消えた監視カメラの映像だ。身内が隠蔽した可能性すらある。まだ分からねえことは多過ぎるな」

俺は頷き、太麺を噛み締めた。川越の本店には遠く及ばないが、それでも駅構内のラーメン屋としては十分な水準だ。

「やはり、当面は経過観察ですかね。鶴岡ら勉強会のメンバーと接触するかもしれない」

「だな。後は平行して金路アゲハ、それと鶴岡和人だ。奴らのヤサは一応押さえた。
ただ、殺人の捜査本部が立たねえと、部屋借りての張り込みができねえ。奴ら、お付きがあまりに堅すぎる。
青が『どっちも身の危険を感じる』って言うなんて、かなり余程のことだからな」

この2日間、青葉は金路と鶴岡の自宅近辺での張り込みを試みた。しかし、どちらもその筋の者がいて近寄れないとのことだった。
彼は見掛けによらず、かなり肚の座った武闘派だ。その彼が弱音を吐く、ということは、恐らくは相手は「プロ」を使っている。

暴力団に屈するほど、俺たちはヤワではない。だが、それは数と組織の後ろ楯があってこそだ。単独で突っ走り、消えた刑事は稀にだがいる。
そういう刑事に対して、警察は冷淡だ。「突っ込むべきではないヤマに突っ込んだ」ということになる。勝てる状況なら、相手が総理だろうと何だろうと立ち向かう。
だが、裏を返せば「勝てない喧嘩はしない」というのが、悲しいかな今の警察組織だ。ある種の官僚主義と言い換えてもいい。

俺は、それを堪らなく情けなく思う。だが、そこには幾ばくかの理もある。それもまた、事実なのだ。

「子供一人に『プロ』ですか。いよいよ怪しいんですがね」

「全くだ。だから、消えた映像を見付けるか、城ってガキがゲロるか尻尾出すのを待つしかない。
ま、長丁場だな。……おい姉ちゃん、スープ割頼むわ」

若い女性が、ポットからスープを注いだ。赤木警部は、レンゲでそれを掬う。

「……しかし、リーダーは翔一って奴っぽいな。どう見る」

「城少年は、明確に彼をかばってますね。その少年が控えめに言ってキーマンでしょう。今度接触したら、彼の話をしましょうか」

「だな。ヤスにも情報あげとくかね……」

俺も辛つけ麺のスープを飲み込んだ。上手く行っている、はずだ。
……しかし、何だろうか。この胸騒ぎは。 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 21:49:57.81 ID:Gnn7ll0RO<> 【6月10日】


嫌な、夢を見た。もう何度となく忘れようとしていた夢……いや、事実だ。


俺はあの日、あいつに一緒に帰らないかと誘った。あいつは笑って「恥ずかしいからいいよ」と答えた。俺は仕方ない奴だなと、その手を離した。


そして、次に彼女を見た時……あいつは、喉を切り裂かれた屍になっていた。
その苦痛と絶望の表情が、俺を目覚めさせるのだ。


「はあっ、はあっ、はあっ……」


額の汗が凄い。俺は手でそれを拭う。

もし、あの時俺が無理矢理にでも引き留めていたら、あいつは死なずに済んだだろう。あるいは、一緒に行っていたら、死なずに済んだかもしれない。


だが、全ては無意味だ。
何をしても、妹は帰っては来ないのだ。


こんな日に、最悪の夢を見てしまった。もう7時になろうとしている。俺は日課のコーヒーを淹れることにした。

案の定、その日の出来は最悪だった。こんなので、人前に出れるものだろうか。

#

悪夢を見る時は、決まって何かが上手く行っていないか、緊張している時だ。両方の要素は、確かにある。

城隆一郎の監視は、今のところ不首尾と言えた。怪しい動きは、一切ない。勉強会の連中との接触もないようだった。
金路アゲハと鶴岡和人にしても、遠間から見る限りにおいては不審な印象はないという。
アゲハについては「何か終始不機嫌そうだ」と青葉が言っていたが。あるいは、何かあるのかもしれない。ただ、まだそれは表に出ていなかった。
やはり赤木警部の言う通り、長期戦を覚悟しなければならないようだ。

もう一つは、緊張だ。美和の娘と、コーヒー教室の場で初めて会うことになる。
せめて気に入られるといいのだが。何分こういう類いの緊張は、味わったことがない。

俺は溜め息をつき、上福岡の駅を出た。向かうは隣のふじみ野駅。そこから徒歩10分で、そのカフェはある。「カフェ・ドゥ・ポワロ」だ。 <>
◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 21:50:52.67 ID:Gnn7ll0RO<> 変更箇所前までです。この先の展開も少し変えていますが、今日はここまでとします。 <> ◆Try7rHwMFw<>saga<>2018/10/19(金) 22:00:29.94 ID:Gnn7ll0RO<> なお、推理や考察は歓迎です。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/10/19(金) 22:10:15.74 ID:Gnn7ll0RO<> 少し酉変えます。申し訳ありません。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/15(木) 11:29:53.54 ID:SR2aHdJQO<> 週末までに再開します。一部設定を大きく変更しています(おーぷんに出ていたキャラが差し替わります)。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/17(土) 15:37:09.54 ID:DJK9OBW2O<> 更新再開します。流れはこれまで通りで一切変更はありません。キャラの基本設定に大きな変更はありませんので、そのままお読みになって構いません。

ただ、カフェ・ドゥ・ポワロの場所をふじみ野→鶴ヶ島へと変更します。
また、おーぷんでのマスターの設定とここでのマスターは別物です。

また、感付かれている方もいるでしょうが、登場人物の一部はコナンのそれの名をもじったものです。それなりに意味を持たせていますので、参考になれば。
(ただ、ミスリードの材料ともしています)
<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/17(土) 15:38:02.81 ID:DJK9OBW2O<> #

「よう。時間にはまだ早いはずだが」

「カフェ・ドゥ・ポワロ」に着くと、白髪に白い口髭の男が少し驚いたように出迎えた。

「すみません、落ち着かなくて。どうです、景気の方は」

「ボチボチ、といったとこだな。落ち着かないのは、美和ちゃんのことか」

「……まあそれもあります。よくご存じですね」

白髪の男――白田兵次郎が静かに笑った。俺のコーヒーの、そして刑事としての師匠に当たる男だ。
3年前に退職し、今では自宅がある鶴ヶ島でカフェを開いている。住宅街の中の本格派カフェということで、最近は雑誌にもしばしば取り上げられているようだ。

「伊達にジジイはやっとらん。お前が他人に強い興味を持つのは珍しいからな。気があるのは、すぐ分かった。
ただ、付き合うならとにかく大事にしろ。この仕事をやってると、家庭がないがしろになる」

「……経験者の言葉は重いですね。気を付けます。それと、彼女は子持ちらしいんで、それも気掛かりではありますが。今日、連れてくるそうです」

「らしいな。落ち着かないのはそれ……だけじゃなさそうだな」

俺は頷いた。

「抱えているヤマの話です。今までにやったことがないような案件で」

「俺はもはや部外者だからな。詳しくは聞くまいよ。しかし、結局は基本だ。足で稼いで、人に訊いて、耳で聞く。一切の予断は許さない。
ファクト以外に頼れるものは、デカにはない。それ以外にないだろう」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/17(土) 15:38:34.91 ID:DJK9OBW2O<> スッと俺の前に一杯のコーヒーが出された。

「ちょうどいいのが入った。サービスだ、飲め」

香りはチョコレートのような香りだ。甘さが強い。

「何か入れてます?」

「いや、ブラックだ。滅多に飲めるもんじゃないぞ」

口にすると、まず芳醇な甘さ。それからしばらくして、深い苦味とコクが拡がった。奥行きのある味だ。
しかも、後味が残る。しばらく浸っていたい味だ。

「……旨いですね。こんなコーヒーは飲んだことがない。マンデリン、ではないですよね」

「もちろん。聞いたら腰抜かすぞ。コピ・ルアクだ」

「……!!これが、あの?」

兵さんは悪戯っぽく笑った。

「そうだ。ジャコウネコにコーヒー豆を食わせ、その糞の中にある豆を焙煎したヤツだ。
こう聞くとゲテモノだが、飲めば旨いだろ?先入観を取り除くということは、目の前にあるものを信じることだ。こいつと同じだな」

俺はコーヒーを見た。目の前にあるものを信じる、か。

「……ありがとうございます。高価でしょう?これ」

「何のことはない、もらいもんだよ。最近手に入った。
で、どうだ?競馬の方は。今年は連戦連勝と、赤から聞いたぜ」

「……耳が早いですね。たまたまですよ」

「とはいっても、皐月、ダービーと連勝は大したもんだ。万券だからな。安田はどうだ」

俺は苦笑する。

「さあ。ただ、何となくですがスワーヴの頭はない気が。モズアスコット辺りですかね」

「ほう。そう来るか、参考にさせてもらおう」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/17(土) 15:39:16.79 ID:DJK9OBW2O<> 俺はコピ・ルアクを口に含んだ。小柄な女性が、女の子を連れてくるのが見える。4、5歳ぐらいだろうか?

「兵さん、こんにちは。仁さんも、もう来てたんですね」

「ああ。それが例の」

美和が女の子に前に出るよう促した。女の子は美和の後ろに隠れてしまう。

「こらっ、亜衣。ごあいさつは?」

女の子は後ろに隠れたまま、じっとこちらを見ている。

「人見知りしてるのかな。仁っていうんだ。よろしくね」

女の子が小さく会釈した。まあ、難しい年頃なんだろう。

「いつもはこうじゃないのに。やっぱり分かってるのかしら」

「まあ、そのうち慣れるさ。今度、動物園にでも行こう」

「亜衣、お兄さんがそう言ってるわよ。来週、一緒に行きましょ?」

女の子は頷いた。兵さんがニヤリと笑う。

「若いねえ。俺にもこういう時があったんだが。さて、そろそろ準備をするとしよう。仁、ちょっと手伝ってくれ」

「了解です」

俺は教室で出すシフォンケーキ作りに取り掛かろうとした。

ブルルルル……

スマホが震えている。俺の警戒レベルが一気に高まった。

「何かあったか」

「多分。少し外します」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/17(土) 15:39:45.13 ID:DJK9OBW2O<> 1度店外へ出る。電話は、赤木警部からだ。

「どうしました」


『……3人目だ。金路アゲハが、さっき死体で見つかった』


<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/17(土) 15:52:54.63 ID:DJK9OBW2O<> 次回はコナンパートです。多少時系列が前後します。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/18(日) 12:48:17.19 ID:IERamAcUO<> 再開します。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/18(日) 12:51:36.28 ID:IERamAcUO<> 【6月5日】


朝起きると、いつも通り朝食の支度がしてあった。コナン君は、これまたいつも通りにテーブルについている。

「あ、おはようございます」

「……おはよう」

何もなかったかのような挨拶。でも、私の中での疑念は膨らんでいた。


この子は、本当は何者なのだろう?


<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/18(日) 13:19:49.31 ID:IERamAcUO<> #

「お帰りなさい」

「お帰りなさい、じゃないわよ!」

昨日の夜帰ると、コナン君はテーブルで本を読んでいた。古い推理小説のハードカバーだ。

「何で朝いなかったの??説明して」

「……今はまだ言えません」

あたしはテーブルをバンと叩いた。

「また『まだ』?一体どれだけ隠し事があるというの?
君はあたしを守るといったけど、そんなんじゃ信用なんてできないわ。話してもらわなければ、出ていって!」

コナン君は少し視線を落とした。

「……そうでしょうね。確かにアユさんの言う通りだ。
ただ、木曜日まで待ってくれませんか。その時全て、お話しします。
僕をどうするかは、その時判断してください」

「木曜?何で木曜なの??」

「説明しやすいからです。僕が話す内容を信じてもらえるかどうか、今だと正直自信がない。
木曜になれば、ある程度分かりやすい状況になる。それまで、待ってもらえますか」

コナン君は、静かにあたしの目を見ている。そこに動揺はない。

「木曜に何かあるの」

「恐らくは」

「あたしが仮に君をどこかに預けたとして、その後の当てはあるの」

コナン君はしばらく考え、首を振った。

「あまり自信はないです。ただ、多分アユさんは僕を手元に残す」

「……どういうことなの」

「それも木曜に分かります。『流れ』は変わっているけど、まだ大筋では変わってないはずですから」

「流れ」?言っている意味がよく分からない。

「……本当に木曜になれば話してくれるのよね」

コナン君は力強く頷いた。

「ええ。間違いなく」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/18(日) 13:32:01.63 ID:IERamAcUO<> #

そして、今朝。コナン君は静かに味噌汁をすすっている。
今日は火曜。明後日に何があるかは、教えてくれていない。不安が募る。

「……昨日の夜のことだけど。木曜に、何があるの」

コナン君が、味噌汁の入った椀を置いた。

「……言えません。それは、本当に」

「また隠し事??」

苛立ちを隠さず言うと、コナン君が鋭くあたしを見た。

「ええ。これは言えない。ただ、僕をそこまでは信じて下さい。それと、これを」

コナン君はポケットからピカチュウの小さな人形を取り出した。鍵につける飾りみたいなものだ。

「……何よこれ」

「お守り、みたいなものです。それを持っている限り、アユさんは大丈夫です。
どんな時でも、僕が必ず助けますから」

何よこんなもの、と言いかけて、あたしはやめた。コナン君の目が、あまりに真剣だったからだ。

そして、あたしは一つの疑念を口にした。

「……秋山に、襲われるとでも?」

「それも含めて言えません。『流れ』が、少し妙な方向に傾いているので。
でも、僕があなたを助けます。何があろうとも」

この子の目に嘘やごまかしはない。子供特有の背伸びもない。本気だ。
目の前にいるのは、あたしより年上の誰かのような気がした。……それも相当修羅場をくぐった、男の人だ。

「いいわ。最後に少し信じてみる。木曜に、全て教えてくれるのね」

コナン君は力強く頷いた。

「ええ。その時には、必ず」
<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/18(日) 13:49:41.29 ID:IERamAcUO<> 【6月7日】

そして、その日は来た。中番の日だけに、帰りは終電近くになる。
極力明るい場所を選んで歩いているけど、それでも少し怖い。

あたしはポケットに入っているピカチュウの人形を意識した。……コナン君の言うことは、本当なんだろうか?

鶴ヶ島駅に着く。ここから歩いて15分、何もなければコナン君の言ったことは出まかせということになる。
あたしはそうであることを強く望んだ。不安で、この数日は仕事もろくに手がつかなかったのだ。


異変を感じたのは、駅を出てすぐだった。
白いバン。あたしを抜いたかと思うと、待ち伏せしているかのように路肩で待っている。
そして、それを通り過ぎると、またノロノロと追い掛けてくる。

夜遅いけど、バス通りを歩く人はまばらだけどいる。それはまるで彼らがいなくなるのを待っているかのようだった。
背筋に思い切り冷たい氷のようなものが走った。


これは……まずいっ!!


あたしは走りにくいヒールを脱ぎ捨てた。横の路地へと逃げ込む。
逃げて逃げて、何とかまかなきゃ。自宅まで探り当てられたなら、もうあたしに逃げ場所はない。
額に、ねっとりとした汗を感じた。……お願いっ、諦めて!!

後ろから誰かが走ってくるのを感じた。あたしはそんなに足が速い方じゃない。
しかもただ闇雲に逃げてるだけ。絶望が、あたしの心を塗りつぶす。

あたしはポケットの中のピカチュウに、強く念じた。それはあたしの口から、言葉となって流れ出た。


「お願い!!!助けてコナン君!!!!」


<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/18(日) 13:50:25.77 ID:IERamAcUO<>


「勿論」



<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/18(日) 14:12:02.65 ID:IERamAcUO<> 小さな人影が、あたしの前に現れた。そして走ってくる男に体当たりしたかと思うと、男の身体が宙を飛んだ。

「ぐぇっ!?」

その人影は、何かをもう一人に向けて構えた。「ビュッ」という音。そして「あがあぁぁぁ!??」という悲鳴。

「アユさん、大丈夫ですか??」

「コナン君??」

「間に合ったようですね。逃げますよ」

「逃げるってどこに??」

コナン君は、あたしの手を引いた。男たちはまだ悶絶している。

「僕『たち』のアジトですよ。あそこなら絶対安全だ」

走って行った先には、黒いセダンが停まっている。コナン君はその後部座席に、あたしを連れて滑り込んだ。

「待たせましたね。発進してください」

「了解しました」

運転席には、眼鏡の優男がいる。顔はここからじゃ良く見えない。

ギュルルル!!!

タイヤとアスファルトが擦れる音とともに、物凄い勢いで車が発進した。後ろからは白いバンが追ってくるのが見える。

「撒きます?それとも事故らせます?」

「事故らせた方がいいですね。アユさんの家財道具を、一旦取りに行った方がいい」

「了解」

そういうと、男は……拳銃を懐から取り出した。何かが先端についている。
そして、窓を開け、一瞬だけ振り向いたかと思うと……

ドガアアアッッ!!!

車と何かがぶつかるような、大きな音が後ろから聞こえた。

「流石、興也さん。見事です」

「まあ、無駄に年月を生きてるわけじゃないですからね。吉岡さんのご自宅は?」

あたしは戸惑いながら案内した。セダンは流れるようにそこへ向かう。

「家に着いたら、手帳とかの貴重品は一通り持った方がいいです。あと、最小限の服と下着も。
そんなに長居はできませんし、もうこの家に戻ってこないと思った方がいい。大丈夫、お金なら僕らが保証します」

「戻ってこないって……!?それに、コナン君。あなたって……!!?」

コナン君があたしを真っすぐ見つめた。
<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/18(日) 14:13:07.20 ID:IERamAcUO<>




「説明が遅れて申し訳ありませんでした。
僕が、いや、僕らが……『バットエンド・ブレイカー』です」




<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/18(日) 14:14:33.54 ID:IERamAcUO<> 中断します。コナン編の続きになります。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/18(日) 19:10:17.04 ID:KOv6m2dM0<> 更新再開したのか
楽しみ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/18(日) 22:10:57.87 ID:DioSG6wPO<> 再開します。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/18(日) 22:30:00.37 ID:DioSG6wPO<> #

通帳や服を一通りバッグに詰め込み、私は駆け足でセダンに戻った。遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる。

「急いで。警察に怪しまれるとマズい。彼らは9割方、自損事故ってことにするでしょうが」

セダンは再び急発進した。沈黙が車内を包む。

あたしは、さっきから何を言ったらいいのかさっぱり分からなかった。
コナン君が「バッドエンド・ブレイカー」?あの、ネットで噂の?
そんなこと、信じろと言われてもそう簡単に納得できるわけがない。

「……信じられない、って顔をしてますね。それはそうでしょう」

「当たり前でしょ!?君が、『バッドエンド・ブレイカー』?全国各地で、凶悪な連中を殺して回ってる『あの』?
そんなわけな……」

あたしは言いかけてやめた。いや、この子が普通の子でないのは分かってた。明らかに、見た目通りの小学生ではない。
まして、この前の日曜。「テーザーガン」っていったっけ。あんなもの、普通の子供が持っているわけがない。
さっきだってそうだ。男一人を、あっさり投げ飛ばしてる。単に武器を持っているだけじゃない。この子は……強いんだ。

あたしはコナン君をもう一度見た。彼は頷く。

「そうです。僕は『バッドエンド・ブレイカー』。といっても、僕だけじゃないですけど」

「えっ??まさか、その人も?」

運転席をみやると、興也と呼ばれた男の人が静かに微笑んだ。

「僕も所詮一員に過ぎませんよ。全国合わせて10余名。そして、僕も全員を知っているわけじゃない。
数人としか顔を合わせたことはないですから。そうですよね、コナン君」

コナン君は頷いた。

「今から行くのは、僕たちのアジトです。あそこにいれば、しばらくは問題ない。
秋山の件は、そのうち僕らが何とかします。元々、『処理』しなければならない奴ですし」

「『処理』?」

「そう、『処理』。彼の被害者、アユさんだけじゃないんです。むしろ、まだまだ多い。
そして、これからさらに増える。そうなる前に、彼は『消えねばならない』。
僕が秋山の被害者――つまりあなたに出会ったのは偶然ですがね」

車は鶴ヶ島インターに入った。東京方面に向かって行く。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/18(日) 23:03:57.55 ID:DioSG6wPO<> 「……コナン君、お父さんに虐待されていたというのは」

コナン君が視線を落とした。

「半分本当、半分は嘘です。あれをやったのは確かに父ですが」

「どういうこと?」

「……アジトに着けば、父自身が説明するでしょう」

あたしの頭の中には、疑問が次から次へと生まれていた。
コナン君が本当は何者なのか。バッドエンド・ブレイカーとは何なのか。そして、あたしはこれから、どうなるのか。

そう考えているうちに、あたしは眠りに落ちていた。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/18(日) 23:05:07.93 ID:DioSG6wPO<> #

「アユさん、着きましたよ」

コナン君に揺さぶられ、あたしは目を覚ました。……どこかの地下みたいだ。

「ここは?」

「アジトの駐車場です。眠ってたから言うのも何ですが、ここがどこかは『今は』ご容赦を。
そのうち分かるかもしれないし、分からないかもしれない」

エレベーターに乗り込む。42階まである。どこかのタワーマンション?
そして、その最上階行きのボタンを興也さんが押した。着いた先は、赤い絨毯が敷かれた、見るからに高級そうな廊下だ。
その一室のチャイムを、興也さんが押す。

「『ギムレット』」

そう言うと、ゆっくりとドアが開いた。初老の男性がいる。

「戻ったか、湖南」

「ただいま、父さん。変わりは」

「やはり厄介なことになっている。白馬の死は、やはりどう考えてもイレギュラーだ」

「他の皆は」

「『おやっさん』だけは来れないそうだ。本業が忙しいらしい」

中は広いリビングだ。あたしには一生縁のなさそうな、超高級マンションなのは疑いなかった。
ソファーには、スマホを弄る長い黒髪の少女が座っている。彼女も、「バッドエンド・ブレイカー」?
そして、この男性。彼が、コナン君の父親なんだろうか。

「父さん、紹介するよ。彼女が、吉岡愛結さん。数週間、お世話になってた」

「あなたがですか。本当に、お世話になりました。そしてよくぞ御無事で」

「は、はぁ……」

あたしはコナン君の父親を名乗る人物が差し出した右手を、戸惑いながら握った。

「私は藤原雄作。湖南の父です。……あなたからしてみれば、随分酷い父親でしょうが」

「……虐待していたと聞いていました」

藤原さんは苦笑した。

「一時的に誰かの元に潜り込む必要があったので、偽装を。
湖南が『本気でやってくれ』と言ったのには、正直戸惑いましたがね」

コナン君が深く頭を下げた。

「申し訳ありません。……1、2日で引き上げるつもりでした。
ただ、あなたの名には覚えがあった。秋山の被害者であるのを知って、そう簡単に引き上げることもできなくなった。
しかも、あなたが『殺される』までそう時間もなかった。だから、長居させてもらうことに決めたんです」

「……『殺される』?」

しばらくの沈黙の後、コナン君があたしの目を見た。

「そうです。あなたは、本当は今日、『殺される』はずだった。
だから、僕がそれを止めた。あなたには死んでほしくはなかったから」

「どういうことなの??」

「湖南、言うのか」

「言わなければいけないでしょう。もし、アユさんが受け入れないなら、記憶を消すまでですし」

何か、胸騒ぎがする。彼らはただの人間じゃない。そう分かってても、心拍数が急激に上がっていくのが分かった。


そして、コナン君は口を開いた。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/18(日) 23:10:41.77 ID:DioSG6wPO<> 「ここから話すことは、常識の埒外の話です。
信じるか信じないかは、アユさん次第。そして、信じるなら僕らに協力を。信じないなら、記憶を消して普通の人と同じように生きてもらいます。
ただ、後者を選んだ場合、あなたは再び危険に晒される。僕は、そうなってほしくはない」

「常識の埒外?」

「そうです。何故、僕があなたの危機を事前に察していたか?それはそうなると『知っていた』からです」

「そんなっ!?何でこれから起こることを、前もって知ってるのよ!!?
そんなのまるで、君が未来から来た……」

あたしははっとした。まさか。

部屋の全員の視線が、あたしに向けられる。
<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/18(日) 23:13:00.81 ID:DioSG6wPO<>



「その通りです。……僕は、いや僕らは『20年後の未来から来ている』。
精神は2038年のものですが、肉体は2018年のもの。いわば、『タイムリーパー』」




<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/18(日) 23:16:11.26 ID:DioSG6wPO<> 今日はここまで。徐々にネタばらしになりますが、まだ物語は前半です。色々伏線はばらまいてます。
次回更新もコナン編です。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/19(月) 09:53:26.10 ID:O0RwCMvNO<> 昼から少し再開します。

また、投下方法を直打ちに変えました。こちらの方が性に合っているようです。
これに伴い、更新がぶつ切りになりますがご了承下さい。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/19(月) 13:19:18.92 ID:GIsngIIdO<> 【6月8日】


朝、目が覚めるとあたしは柔らかいベッドの上にいた。……ここはどこ?
一瞬の混乱の後、あたしは思い出す。ここは、コナン君のアジトだ。

#

「タイムリーパー」だというコナン君の説明を聞いても、あたしは理解できなかった。いや、理解はしたけどそれを受け入れきれなかった。
あたしは「ウソっ……!?」と、その場に崩れ落ちるしかなかった。

SFとかでそんな話はあったかもだけど、これは現実だ。簡単に信じられるわけもない。
「結論は明日で構わない」と、コナン君のお父さんは言った。軽いパニックになったあたしはシャワー室付きの寝室に案内され、そこで眠りについたのだった。

#

窓のないリビングに行くと、コナン君がいつも通り朝御飯の準備をしていた。昨夜の女の子もいる。

「アユさん、おはようございます。眠れましたか」

「……一応。少し落ち着いたわ。ご飯食べながらでいい?」

「はい。今日は純和食にしました」

テーブルにはお魚の焼いたやつと切り干し大根、ホウレン草のおひたし。それに味噌汁とご飯があった。

「久々にちゃんとした朝メシね。興也は作れないし、『おやっさん』やパパさんは滅多に朝はこっち来ないから」

「まあ仕方ないですよ、由依さん。ああ、紹介遅れました。こちらが浅賀由依さん。情報収集担当です」

制服姿の女の子は、あたしをチラリと見ると「ふん」と鼻を鳴らした。

「馬鹿ねあんたも。こういうのはいつも通り記憶を消しちゃえばいいのに。手元に置いても、足手まといなだけよ。
何でそうしないのよ?本来は死んでた人間だから、『覚醒者』であるはずもないし」

「『覚醒者』?」

コナン君が席について苦笑した。

「ああ、要はタイムリーパーのことです。どれだけ『未来の記憶』があるかでクラス分けしてますが……まあ、あまり気にしないでください」

「で、どうすんのよこいつ。覚醒者でもないなら、私たちの活動の邪魔になるだけよ?
確かにこのまま記憶消して解放すれば殺される可能性は高くなるし、それを防ぐためにケアすれば本丸が疎かになる。
でも、こいつをここにいつまでもおいておける理由も、どこにもないわ」

由依って子は、魚を白米の上に乗せるとひょいっと口の中に放り込んだ。

「仰ることは分かります。ただ、『できるだけ理不尽な死を減らす』。それもまた、僕らの存在意義です。
一般人を協力者とするのは初めてです。不安がないわけじゃない。ただ、こういうケースは今後もあるのでは?」

「テストケースってわけ?失敗は決して許されない。ましてこの子が、何かしらの訓練を受けているようにも思えない」

あたしは気持ちを落ち着かせるため、味噌汁を少し飲んだ。赤出汁が利いている。魚もよく見ると、何かに浸けてあるものを焼いたようだ。「西京焼き」というんだっけ。

「ちょっと、いい?疑問だったんだけど、君たちってどこかで訓練を?」

コナン君が只者じゃないのは間違いなかった。タイムリーパー、と言われても頷けるほどだ。じゃあこの子も?そもそも、コナン君は「20年後」何者なんだろう?

由依がフフンと笑った。

「コナン見てたなら分かるわよね。当然じゃない。パパさんは違うけど、後の4人はちゃんと相応の訓練を積んでる」

コナン君が箸を置いて、あたしを見た。

「僕らは、警察ですよ。20年後の、ですけど」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/19(月) 19:51:01.93 ID:GIsngIIdO<> 「け、警察?」

「といっても、コナンの本職は監察医だけどね。人手が足りないから、強行斑も兼ねてただけで」

ずずっと味噌汁を飲んで、由依が言った。コナン君は苦笑する。

「まあ、そうですけどね」

「何で、警察が人殺しを。それに、コナン君は……」

「ええ、今は警察でも何でもない。あくまで、僕らは非合法の存在です。しかし、僕らはやらなきゃいけない。
……こんな話を知ってますか?アメリカのある大学の調査です。
もし、あなたがタイムスリップして、目の前に子供の頃のアドルフ・ヒトラーがいたとする。アユさん、あなたはその子を殺しますか?」

「えっ……ヒトラーだからといって、子供でしょ??……殺すって」

コナン君はゆっくりと首を振る。

「アユさんは優しいからそう答えると思ってました。でも、実際は違う。70%が『その場で殺す』と答えたそうです。
ホロコーストをそれで避けられるなら、『その時は無垢であっても』人は命を奪うことを選ぶんです。
……僕らがやっていることは、それと同じなんです」

あたしは思わず立ち上がった。この子の言うことは……常軌を逸してる。

「ちょっと待ってよ!どんな理由があっても、君は罪のない人を殺してるんでしょ!?そんなことが許されるわけ……」

「そう、許されない。でも、僕がいなかったら、アユさんは死んでる。
秋山による殺人は、既に1件行われています。そして、アユさんの件を皮切りに、あと10人。その10人を救うために、秋山は消えなきゃいけない」

由依があたしを冷たい目で見た。

「ね?やっぱりダメだよこの子。あんた、ひょっとしたらこの子にお熱なのかもだけど、私たちにとっては邪魔でしかない。記憶消して解放しようよ」

「由依さん、まだ結論は早いです。……アユさん、秋山の件はおいておきましょうか。
こう言えばどうです?来年4月、無差別テロで200人以上が死ぬ。それを、止められる力があるとしたら、それを使わずにはいられますか?」

あたしは言葉に窮した。……200人以上?

「そんなことが、本当に起こるの??」

「はい、このままなら。そして、今はその犯行グループを処理している最中です。ただ、色々と一筋縄じゃいかない。だから、あなたに協力者になってほしい、というわけです」

「……あたしに何ができるというの」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/19(月) 20:31:17.10 ID:GIsngIIdO<> コナン君はお茶を飲んだ。ふう、と息をつく。

「あなたは僕らのような訓練は積んでない。ただの一般人です。ただ、だからこそできることもある」

「だからこそ?」

「はい。僕らでは、情報収集に限界がある。夜に小学生や高校生がうろついていたら不自然な場所もある。
興也さんなら問題ないかもしれないけど、彼には妙な威圧感がある。警戒されてしまうんです」

由依が茶碗を置いて、呆れたようにコナン君を見た。

「ちょ……!!まさか、あんた」

「……無理強いはしません。すぐに実戦に出ろ、とも言いません。ただ、慣れたらで構いません。情報収集の手伝いをしてもらいたいんです。
あなたには小型の発信器を既に渡してます。周囲の会話も受信できるものです。仮に秋山の部下が襲ってきても、僕らはすぐ近くにいます。身の安全は、保証します」

あたしは、言葉を探した。どう答えればいいのか分からない。
何とか、一つだけ絞り出した。

「あたしが……そんなことできるわけ、ないでしょ。あたしには、何の取り柄も……」

「あります」

コナン君が、真っ直ぐあたしを見た。あたしは思わず、身体を引く。

「え」

「あなたは、あなた自身が思うより、ずっと魅力的だ。ルックスだけじゃない。人に正面から向き合う、優しさも持ってる。
それは、人から話を聞くのに不可欠な要素なんです。僕らの誰もが持ち合わせてない、アユさんにしかないものなんです」

「……結局あんたがその子にお熱なだけじゃ……」

コナン君が由依を睨んだ。ビクッと、彼女が反応する。

「……僕が私情で動くとでも?」

「あー、はいはい。そうですね『警視殿』。素直に従っておきますよ」

由依は両手をヒラヒラさせて、「降参」のポーズを取る。

コナン君が、またあたしを見た。

「後は、アユさんの意思一つです。繰り返しますが、無理強いはしません」

あたしの頭はぐちゃぐちゃだった。あまりに理解を超えることが起きすぎてる。

それに、何より自信がなかった。「あの時」から、あたしは認められてはいけない人間になった。そう思い込んでた。
だから、売春婦紛いのこともした。抱かれている間だけは、あたしは誰かにとって意味ある人間になれたから。そして、金が切れれば捨てられる。その程度の人間だと思ってた。

でも、コナン君は。あたしをちゃんと見てくれていた。
あの時の彼が、色々隠していたとしても。彼の優しさや、笑顔まで嘘だとは全く思えなかった。


どのぐらい、あたしは黙っていただろう。あたしは顔を上げ、コナン君の目を見た。



「できるかどうか分からない。でも、コナン君の助けになりたい」


<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/19(月) 20:50:55.32 ID:GIsngIIdO<> コナン君は、とても嬉しそうに表情を崩した。そして。


「ありがとう、ございます」


立ち上がってこちらに来ると、あたしにぎゅっと抱き付いた。


「えっ、ちょっと……」

「すみません、しばらく……こうさせてくれませんか」

由依がやれやれと首を振って立ち上がった。

「『警視殿』、公私混同も程々に。あんたが優秀なのは嫌ってほど知ってるけどさ」

「アユさん、失礼しました。……由依さんは学校に行かなくっていいんですか?」

「あーあー。めんどくさいなあ。学校なんてどうでもいいじゃん」

「カモフラージュには必要ですよ。……僕らは、新しく家を探さなきゃですね」

「えっ?ここじゃダメなの?」

コナン君は部屋を見渡した。

「ここからじゃ、埼玉には少々遠いですからね。別途、朝霞か志木の物件を押さえる必要がある。
アユさんは、病院の退職手続きを。急病でってことにすれば、後は父さんがやってくれます」

「……埼玉じゃなきゃダメなの?」

「ええ。ターゲットは、埼玉にいますから。
大宮の金路アゲハ、志木の鶴岡和人、浦和の城隆一郎。そして、居場所不明の佐倉翔一。
……彼らを『消す』ことが、目下の最重要任務です」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/19(月) 20:54:00.51 ID:GIsngIIdO<> 今日はここまで。

次のパートですが、ちょっとした希望を取ります。

1 金路アゲハパート
2 コナンパート(視点はアユ)

0000までの多数決です。ストーリーの変化があるわけではありませんが、1はR15ぐらいになります(死亡描写あり)。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/19(月) 21:08:21.68 ID:VhonhnQf0<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/19(月) 21:39:53.76 ID:Q7+oY39Lo<> 1 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/19(月) 21:54:09.82 ID:GIsngIIdO<> 上げます。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/19(月) 22:03:10.02 ID:K4QcaPCDO<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/19(月) 22:23:56.15 ID:5G4KRIaTO<>
1 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/20(火) 20:23:50.40 ID:NZoL8FdsO<> 再開します。エロ&精神的グロ描写に注意。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/20(火) 20:34:53.20 ID:NZoL8FdsO<> 【6月10日】


私は梅雨が嫌いだ。ジメジメしてるし、肌に何かまとわりつくあの空気が何より嫌だ。生理的に気持ち悪い。
今年の梅雨は、雨が少ない。それでも、空は快晴にはほど遠いし、どことなく空気も湿っぽい。
神経を逆撫でするような空気。私のイライラは、頂点に達しようとしていた。

何でこんな日の夜に、川口くんだりまで出向かなきゃいけないわけ??

それもこれも、火曜に届いたあの小包のせいだ。あれは、まずい。とてつもなく、まずい。

私は机の引き出しから、USBメモリーを取り出した。……こいつが私のイライラの原因だ。

そこには、私が一週前に犯した、「殺人」の証拠がある。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/20(火) 22:09:12.66 ID:NZoL8FdsO<> #

その小包を見た時、私はストーカーか何かかと思った。私の自宅の住所を調べるのは、難しいはずだ。あの女とは、久しく同居してないからだ。
学校から尾行して調べたのだろうか。それもきっと難しい。もし尾行けられていたなら、すぐに気付いただろうから。

とにかく、気味の悪い贈り物は捨てるに限る。ほんの小さな段ボール箱だ。しかも軽い。ゴミ箱に放り込もうとした時、私の目は小包の内容物の欄で止まった。


「アイスキャンディ」


「嘘……」

冷や汗が流れるのが分かった。これは、ストーカーや熱狂的ファンの贈り物じゃない。「勉強会」を知ってる人間だ。

急いで開けると、そこにはUSBメモリーが1つ。胸騒ぎがしてPCに繋ぐと、音声ファイルが入っていた。
家に誰もいないのを確認する。元々独り暮らしだ。家事を行うシッターも、とうに帰している。

ファイルをクリックする。PCのスピーカーから、聞き覚えのある声が流れてきた。


『はぁっ、はあっ、さいっこう……!!まだ1回戦だよ、できるよね?』

『……少し休ませてくれ。アラフォーのおっさんには、少々しんどいんだよ。お前の性欲は。……『アイスキャンディー』、一粒くれねえか』

『だぁめ。これは私のなの。あげてもいいけど、すっごく高いよ』


私は唾を飲み込んだ。どうして。何でこの会話が。
PCからは荒い息と共に、会話が続いている。

『いくらだよ』

『1000万円。まけられないわ』

『それは出せねえよ。ていうか、力尽くで奪ってもいいんだぞ?』

『ふうん。じゃあ量産化の話はなしね。今日終わったら、一粒あげてもよかったんだけど』

『……てめえ。足元見てやがるな』

間違いない。これは、白馬伸の声だ。……私が殺した。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/20(火) 22:39:00.36 ID:NZoL8FdsO<> 私は、段ボールの底に手紙のようなものがあるのに気付いた。
軽く震える手で、それを拡げる。


「金路アゲハ様

先日の件はUSBにある通りです。現状、音声データは誰にも渡していません。
ただ、10日に指定の場所に来ない場合は、マスコミに一斉に送付します。ネットにも上げます。
アゲハ様お一人で来てください。マスターデータをお渡しします。それ以上のことは、当日お話しします。取引では損はさせません。
なお、誰かを連れてきた場合は、取引は中止です。可及的速やかに、リークを行いますのでそのおつもりで

ドイル」


「何よこれ……脅迫??」

音声は、私が白馬を殺すところに差し掛かっていた。

『……おお。おおおおっっっ!!!効いてきた!!チ○ポがガキの頃みたいにガッチガチだぜ!!
頭も熱い!!よぉし、ヤるか!!!』

『きゃっ』

『よぉおおし、股開け。濡らす必要ないよなぁぁぁ??
頭が熱いぜ!!身体もチ○ポも熱い!!!
燃えるように熱い……え、あっ……ああ…………あちいいいいぃぃぃ!!!!!!』

白馬が断末魔の叫びをあげ始めた。ああああだとか熱い熱い熱いだとか、声にならない声をわめき散らしてる。
それは火が消えるように、少しずつ小さくなっていった。「アイスキャンディ」の、オーバードーズの症状だ。

『ああ……あちゅい……あちゅくて、あちゅくて……あ"あ"あ"』

私は乱暴にPCの電源を切った。……気分が悪い。

これは盗聴?そんなはずはない。あそこは、会員制だ。大誠会が実質仕切ってる店に盗聴機を仕掛けられるわけがない。
でも、これは確かに私と白馬が実際に話した内容だ。どうやったかは分からない。しかし……これは現実だ。

「あ、ああ……!!」

私は絶望しかけながら、辛うじて踏み留まった。考えろ、考えろ金路アゲハ。何か突破口は……

あった。

机の中に、それはある。アイスキャンディを「舐めながら」戦うのなら、私は無敵だ。
相手の「ドイル」ってのは、私一人で来いと言った。よもや私が反撃してくるなんて、思いもよらないはずだ。まして、殺そうなどとは。

使うのは、3カ月ぶりか。絶望は一転、愉悦への期待に変わる。


「待ってなさい。誰だろうが、確実に殺してやるわ」


私は笑みを押さえきれなかった。セックスと同じぐらい気持ちいいこと。それを、また味わえるのだ。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/20(火) 22:39:41.46 ID:NZoL8FdsO<> 中途半端ですが、今日はここまで。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/20(火) 23:33:10.19 ID:NZoL8FdsO<> >>164
>>166

読み返して2ヶ所、致命的ミスがあったので訂正。

10日→9日

大変失礼しました。

また、アゲハが164で情緒不安定気味なのは仕様です。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/21(水) 11:50:46.29 ID:qFRcAI+QO<> #

そして、土曜が来た。私の感情は、期待と「土曜はまだ来ないの?」という苛立ちと、リスクを負わなきゃいけない苦痛とが入り交じったものになっていた。
多分、問題はないはずだ。バッグには、小型の銃――翔一が調達したものだ――がある。

翔一の正体は、私もよく分からない。ただ、アイスキャンディと銃火器を手に入れることができる、極めて特殊な人間だというのは知っていた。
佐倉法律事務所所長の一人息子ってことだけど、それもどこまで本当かは知らない。
確実なのは、奴が女装して犯されるのが好きなド変態で、人を殺すことに何の躊躇もないサイコパスだということだ。


まあ、私も似たようなもんだけどね。必要なのは、金と快楽。それだけでいい。


「勉強会」の連中は、それを手にするためだけの存在に過ぎない。
アイスキャンディの自家生産に成功すれば、とっとと縁を切る。口封じのために消したら、あれを高く買ってくれそうなのと手を組んでビジネスでも始めようかな。

そのためには、今日を乗り切らなきゃいけない。大丈夫。アイスキャンディを舐めておけば、反応も肉体能力も常人の2倍になる。
私をただのJCだと舐めてきた奴なんか、瞬殺できる。
殺した後は、きっと前みたいに「あの人」が揉み消してくれるだろう。彼が私に逆らえるわけがないんだ。

約束の21時が迫ってきた。私はハイヤーを呼び出すため、スマホを取った。

やっと。やっと殺しができる。あの絶頂を、また感じられる。
私は、ショーツが軽く濡れたのを感じた。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/21(水) 12:12:14.19 ID:qFRcAI+QO<> 【6月9日、20時54分】


待ち合わせ場所は、川口の町外れにある廃工場だった。よくもまあこんな場所があったもんだ。
入口の門は、不自然に開いている。もう誰かがいるのかもしれない。

私は、バッグから小さなタブレット菓子の箱を取り出した。もちろん、入っているのはアイスキャンディだ。

それをひょいと口の中に入れる。何とも言えない甘味が、口の中に拡がる。

しばらくすると……


「あ……きたきたキタ!!!」


視界が一気に広がった。周囲の色も、鮮やかになる。
同時に、身体全ての感覚が鋭敏になったように感じた。ブラやショーツと触れる乳首やクリトリスが、硬く尖っていくのも感じる。
懐に入れた銃の重さも、強く感じられた。不規則にブラと擦れ合うのが不規則で、イイ。


やっと解放された。


「ん〜〜!!!……ねえ、まだ来ないのぉ!?早くシようよ!!!」

私は周囲を見渡した。人の気配は……ない。ん?

タン、タン……

誰かが階段を降りる音が、微かに聞こえた。ただ、姿は見えない。

「何?かくれんぼ?いいわよ、すぐ見つけてあげる!」

銃を構えたまま、私は音の方にゆっくり近付く。視界はアイスキャンディのおかげでとても広い。暗視ゴーグルでもあるかのように、明かりのない廃工場の中でもよく見えていた。

気配は、少しずつ近付いている。いきなり殺すのはやめとこう。男でも女でも、まず身動きが取れない程度に痛め付けてやろう。
それで、もしセックスできる年齢とルックスなら、アイスキャンディを無理矢理飲ませるんだ。もちろん、オーバードーズになるように。
そして、一通り愉しんでから銃で殺す。いや、撃つ前に死んじゃうかな?

興奮でショーツがさらに濡れる。もうビチャビチャだ。

早く。早く欲しい。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/21(水) 17:39:08.35 ID:qFRcAI+QO<> タッタッタッ

誰かが走る音が聞こえる。そう遠くない。私は舌なめずりした。
私が銃を持ってることに気付いたかな?でも逃がさない。

ダァアンッ!!

威嚇のための空砲を撃つ。

「逃げても無駄だよ!?ほらっ、取引するんでしょ?出ておいでよ」

その気になれば、一気に距離を詰めることだってできる。そうしないのは、これが「狩り」だから。
どこの誰が強請ってるかは知らない。でも、敵に回した相手が悪いわ。

「……えぐっ、ええっ、うう」

誰かの泣き声が聞こえる。これは……女の子?いや、違う。子供?

私は警戒を解かず、そっちの方向に行く。人の気配は、これだけのはず。アイスキャンディによって常人より遥かに鋭敏になった感覚は、そう教えている。
……とすれば、子供が「ドイル」?そんな馬鹿な。

そして廊下の隅。その子はいた。眼鏡にジャケット。座り込んで泣いている。小学校中学年か、高学年ぐらいか。
蝶ネクタイこそないけど、ちょっと名探偵コナンのコナンを思い出させる。

「あんたが『ドイル』?」

男の子はブンブンと首を横に振った。

「お、お姉ちゃん誰??ぼ、僕を殺すの?ただ遊んでて、紛れ込んだだけなのに……」

子供が一人でこんな廃工場にいるわけがない。多分、嘘だ。同情を引こうとしているのは明らかだ。
でも、子供ができるような計画じゃない。誰かが隠れてる?この子は、そのための囮?

でも、人の気配はやっぱりしない。私の勘違い……?相手が余程なんだろうか。もう一度意識を研ぎ澄ませる。……少なくとも、この近くにはやっぱりいない。

「待ち合わせなの。君、邪魔だからどっか行って……」

気が変わった。「ドイル」ってのが来る前に、この子で少し楽しんでおこう。ショタ食いも悪くない。こんな年でアイスキャンディなんて味わったら、どんなことになるんだろう。
もちろん、喋られちゃ困るから、廃人になるぐらい……1錠半をあげてみよう。私は舌で唇を濡らした。

「いえ、ここにいていいわ。ねぇ、怖いでしょ?お姉ちゃんと、気持ちいいことしない?」

銃は下ろさない。万一のこともある。何か妙なことをしたら、即撃つ。

「き、気持ちいいこと?」

「そ。その前に、これ舐め」

私が視線をタブレット菓子のケースに向けた、その時。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/21(水) 17:40:13.63 ID:qFRcAI+QO<>




シュパッ




「あぎゃあああああああああああああ!!!!!!!!!」





<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/21(水) 17:41:38.48 ID:qFRcAI+QO<>



激痛。痺れ。



心臓が止まるかと思った衝撃と共に、私は、後ろから倒れ込んだ。




<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/21(水) 17:44:20.34 ID:qFRcAI+QO<>


意識が、どこか遥か遠くにある気がする。

痛い。痺れる。動けない。

目から涙が流れてる。鼻からも、何か。

叫ぼうとしたけど、私の声帯は「あ"あ"……」とかすれた音しか出してくれない。


助けて。ねえ、誰か助けて。


<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/21(水) 18:04:15.76 ID:qFRcAI+QO<> 「助けなんか来るわけがない。まあ、僕としては君一人で来てくれて助かったけどね。無駄な死者が増えずに済む」

遠くから冷酷な声が聞こえる。首は動かせない。でも、多分……あの子だ。あの子が「ドイル」だったんだ。

動けない私に、なおも「ドイル」は言う。

「アイスキャンディを飲んだと言っても、所詮は素人だね。僕から目線を切るべきじゃなかった。
まあ、そうしなくても『寝技』の最中に撃たせてもらうつもりだったが。さて」

「ドイル」が私の顔を覗き込んだ。無表情。でも、その奥には憎悪が見える。

「な……ころ……の」

言葉にならない音だけが漏れる。

「そう、君にはここで消えてもらう。最悪の苦痛と共に」

注射器が見えた。……まさか、こいつが。こいつが、直哉と瑠偉を殺した??


私の体温が、一気に下がった。


お願い、動いて!アイスキャンディが効いている状態なら、少しでも動けば、逃げ出せる!
私は、痛みと痺れの中、強く強く願った。


手でも足でもいいから、とにかく動いてよぉ!!!!!


「残念。アイスキャンディが効いている以上、君は絶対に動けない」

上から声がする。……何で??

「アイスキャンディは人の感覚を鋭敏にする。それは快感だけじゃない、苦痛もだ。
まあ、この特注テーザーガンを撃たれたなら、非投与時でもまず回復は不可能だけど。投与時で動ける奴がいたら、それはもはや人間じゃあない」

ワンピースの袖がまくられたのが分かった。やめて。お願い、やめて。

「この薬は、アイスキャンディとかなり性質が近い。グルタミン酸異成体を使ってる点も同じだ。……つまり、どうなるかは分かるね。
これはただ苦痛だけを与えるためだけに使われるものだけど」

やめて。ねえ、やめてよ。まだ死にたくないよ。

オーバードーズ。そんな。


「し……たく……い……!!」


<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/21(水) 18:07:18.24 ID:qFRcAI+QO<>




「その言葉は、お前が殺した人たちと、殺す人たちが最期に発した言葉だ。よく苦痛を噛み締めて逝け」



ぷつり。



<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/21(水) 18:09:00.65 ID:qFRcAI+QO<> 【6月9日、21時04分】


金路アゲハの生命活動は、止まった。


<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/21(水) 18:10:09.56 ID:qFRcAI+QO<> 中断します。次回、仁パート。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/21(水) 18:30:14.88 ID:ySTG2SWHO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/21(水) 18:39:50.11 ID:7YmP6sjq0<> 乙です <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/22(木) 12:47:17.79 ID:CscxxmCEO<> 【6月10日、13時02分】


「すみません、遅れました」

犯行現場を覆うブルーシートの前には、既に赤木警部とヤスがいた。

「しゃあない、俺らもさっき来たとこだ。鑑識ももう来てる、始めっぞ」

廃工場の2階廊下。まだ死体は検死に回されてない。遠間ではあるが、ぐったりと倒れている小柄な身体に布が掛けられているのが見えた。
川口署の中年の刑事が、険しい顔で説明を始める。

「第一発見者は無職の少年、17歳。どうもここは休日は不良少年たちの溜まり場になってたようで、そこで見付かったと本人は主張してます。
死亡推定時刻は昨晩21時から22時。直接の死因は窒息死のようですが、絞首跡はないですね。代わりに、胸部に軽い火傷。右腕下部に、注射跡と思われるごく小さな刺し傷があります。
第一発見者の少年は、既に署で任意聴取中です」

「……まあ、ホシはそのガキじゃないな。仏は鬼束や練川と似たような感じか。ちょっと近寄るぞ」

赤木警部と一緒に、アゲハの遺体を見た。

「……こりゃキツいな……」

思わず俺はこぼした。仕事柄、色々死体は見ている。多くは苦痛の最中に逝ったのが分かるような、苦悶の表情を浮かべている。

しかしこれは……その中でも最上級の酷いものだ。顔は赤を通り越し紫に変色し、目は白目を剥いている。
動けなかったのだろうか、手足はピンと伸ばされているが、辛うじて自由に動かせたと思われる唇の辺りはあちらこちらが噛みきられていた。苦痛に耐えるためだったのだろうか。

「モデルやってたとは思えねえ、ひでえ面だな。……さすがに同情するぜ」

赤木警部が手を合わせた。俺とヤスも、それにならう。

「さすがにこれで自然死はないっすね。殺しの線で立件しますか」

「無論だな。川口署の芥川だったか。遺留品は」

「目立ったものは皆無ですね。指紋もゲソ(足跡)も何も」

「マルモク(目撃者)は」

「マル害(被害者)が20時半にこの近辺でタクシーから降りたのは確認してます。運転手からも事情を聞いてますが、あまり期待はできないかと。
その他不審車両は特になし。ここ、電気も何も通ってないんで、不良は基本夜は使ってなかったそうです。ヤリモク(強姦目的)での使用がないわけではなかったようですが」

ふう、と赤木警部が息を付いた。

「まあ、そう甘くはないわな。ローラーかけて、地道に拾うしかないが。さすがにこれだと本署も特捜本部立てるだろ、アゲハは著名人だし。
若葉もいくらなんでもそこまで馬鹿じゃあないはずだ」

「ですね。……ん?」

アゲハの衣服が、微かに乱れている。それと、右手。指が不自然だ。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/22(木) 13:22:57.45 ID:CscxxmCEO<> 「これは……芥川巡査部長、何かが取られた形跡は」

「財布、スマホはそのままあります。何か?」

「いや、何か探してた感じがするんです。それと、右手。何か握っていたのを、無理矢理剥がしたような」

赤木警部が眉を潜めた。

「本当だな。何だろうな」

「さあ……検死待ち、ですかね」

その時、鑑識の一人がこちらに駆けてきた。

「デカ長!一階からちょっと気になるものが」

「気になるもの?遺留品か」

「いえっ、それが……薬莢です」

「薬莢!?そんなもんが何で?仏は銃殺じゃないだろ」

混乱した様子で鑑識が答える。

「私もよく分かりません。ただ、比較的新しいヤツです。今回の件とは無関係ではないかと」

俺たちは顔を見合わせた。……誰が撃った? <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/22(木) 13:56:59.88 ID:CscxxmCEO<> 【6月10日、14時14分】


県警本部に戻ると、休日ではあるが慌ただしい空気に包まれていた。
中高生に人気の読者モデルの死だ、記者レクも必要になるだろう。デスクには既に強行犯捜査3係の面々が揃っていた。

「現認(現場での状況確認)ご苦労だったね。話は既に川口署から聞いてる」

「木暮さん、どうもです。しかしただのヤマじゃないですね。鬼束、練川と同一犯なのは95%間違いない。本部立てて徹底的にやりますよね、勿論」

赤木警部の言葉に、木暮管理官が厳しい表情になった。

「それがだな……困ったことになっている。若葉課長と、連絡が付かない」

「はぁぁぁ??休日とはいえ即本部立てなきゃいけない緊急時でしょう?まして鬼束や練川の件も洗い直さなきゃいけない。陣頭指揮取らんでどうするんですか??」

「だが、付かないものは付かない。深沢刑事部長は激怒しているよ。このままだと、私が記者レクを代行することになりそうだ」

木暮管理官は静かに首を振る。赤木警部は憤懣やりかたないといった様子だ。

「あのカス……そもそも基本動作ができてないなんてあり得ないもいいところでしょうよ??何であんなのが捜査一課課長なんです?」

「上の覚えがめでたい、ってことだろう。……ヤスはどうした」

いつの間にか、ヤスがいない。用でも足しているのだろうか。

「まあそのうち戻るでしょう。じゃあ本部は」

「1600までに若葉課長と連絡がつかないなら、私が代行し立てることになるな。全体会議の後に記者レクだ」

※小分岐です。コンマ下で
01〜80 若葉現れず
81〜95 若葉現れる
96〜00 その時、電話が鳴った

(現れないのが基本ルートです) <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/22(木) 13:57:42.14 ID:H2ih4gc/0<> ん <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/22(木) 13:58:38.35 ID:CscxxmCEO<> 夜に再開します。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/22(木) 20:17:56.94 ID:VLG3h6l/O<> 【6月10日、16時15分】


「捜査一課管理官の木暮です。本日1211に発見されました金路アゲハさん殺害事件についてのレクを行います」

会議室の前方には、木暮管理官と深沢刑事部長がいる。どちらも険しい顔だ。

結局、若葉課長とは連絡がつかないままだった。現状は厳重注意となる予定という。
木暮管理官は、事件の概要を淀みなく説明していく。彼が課長なら、どれだけ仕事は楽になるだろうか。

「……しっかしどこに消えたんだかねえ。余程鬼束と練川の件を蒸し返されたくないのか」

赤木警部がボソッと言った。

「荒川のホームレス殺害もありますからね。捜査が進めば、あっちにも引っ掛かってきそうですし」

「だな。ホシもそっち関連か?」

「いえ、どうでしょうね。これ、明らかに素人の犯行じゃない」

物証、ほとんどなし。目撃情報もなし。
しかも、アゲハ嬢は恐らくはあの場所に呼び出されている。極めて計画的だ。
川口署は第一発見者の少年に色々聞いているようだが、まずもって無意味だ。彼にそんな犯行はできない。

「……死因については主任監察医の八代倫先生から」

倫先生が前方にやって来た。マイクをポンポンとやる。

「あー、聞こえる?じゃあ早速始めるわ。
死因は窒息死、ただ血中内のグルタミン酸濃度が尋常じゃない。
実は、この前の練川瑠偉少年の変死でも、ごく少量大脳上皮質からグルタミン酸が検出されたわ。同じものか不明だけど、恐らくは同じ」

会議室がざわついた。

「木暮管理官から説明があると思うけど、連続殺人の可能性が極めて高いわ。
多分質問があるだろうから、先に言っとく。前回はグルタミン酸は体内分解されてたと推測するけど、今回は違う。
体質の問題ではなく『元から濃かった』と推測するわ。投与量が同じという前提において、そうなる理由は……殺される前から別の形でグルタミン酸を摂取してたから」

木暮管理官が頷き、倫先生と視線を合わせた。

「なぜグルタミン酸が検出されたのかはまだよく分からない。グルタミン酸は旨味調味料として知られてるが、脳内まで届くと最強の神経毒と化す。
そのようなものを、アゲハ嬢がなぜ事前摂取してたのかは不明だ。ただ一つ言えるのは、それが彼女の死期を早めたということだ」

「そういうこと。多分即死に近かっただろうけど。ここであたしが言いたいのは、殺害方法は恐らく毒殺。しかも未知の薬物を静注されたことによるものってこと」

会議室のざわつきが更に酷くなった。

「……静かに。これはただの殺人ではない。もう一つ重要なのは、被害者衣服から少量の硝煙反応があったことだ」

俺は赤木警部と顔を見合わせた。

「……銃を撃ったのは、アゲハ?」

「しかいそうもないな。いよいよキナ臭くなってきたか」

俺は溜め息をついた。ふと、横の席を見る。ヤスは戻ってきてない。
レクの前に、「察庁(警察庁)からの呼び出しがあった」とのヤスのメッセージが3係全員にあった。どうも、理由は不明だが、上もこの事件を問題視しているらしい。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/22(木) 20:40:30.68 ID:VLG3h6l/O<> 「……アゲハ嬢と練川少年には接点がある。自然死となっているが先月川越で死体で発見された、鬼束直哉君もだ。
最悪3件の連続殺人である可能性もある。現在立件できるのは本件だけだが、重大性は高いと考えてほしい……」

木暮管理官が「勉強会」の話をし始めた。……城少年には、早い段階で再接触しておくべきかもしれない。
彼は、まだ色々隠している。突破口があるとすれば、彼だ。

「……とりあえず、当初は200人の捜査体制で行く。川口、さいたま、和光、蕨、新座。その他周辺所轄にも協力してもらう。徹底した聞き込みをお願いしたい」

「「「はいっ」」」

レクは一旦終了となった。しばらくは忙しくなるな。

しかし、強烈な違和感がある。なぜアゲハは、ボディーガードも付けず一人で出向いたのか?
青葉が警戒するほどの手練れを、彼女は自宅周辺に付けていた。なぜその日に限って一人だったのか?
呼び出された理由も含め、引っ掛かることばかりだ。

……考えても始まらない。現場百篇。俺も足を使って、地道に聞くしかない。
一度外の空気でも吸うか。気分転換をして、思考を仕切り直そう。


中庭に向けて歩いていると、どこかで見た顔が入口から入ってきた。……あまり見たくない顔だ。

「おーい、仁ちゃんじゃない」

ブンブンと小柄な男が手を振っている。まあ、ここで出会っても不思議じゃないが、好ましい人物でもない。


読日新聞さいたま支局社会部記者、射手谷文彦だ。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/22(木) 20:52:08.11 ID:VLG3h6l/O<> 中断します。光彦枠、やっと登場。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/22(木) 20:53:18.07 ID:VLG3h6l/O<> そろそろ人物が多くなってきたので、簡単な人物紹介をします。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/22(木) 21:08:25.46 ID:VLG3h6l/O<> (登場人物紹介)

・毛利仁
33歳。階級は警部補。準キャリア。
中肉中背、髪は短めでガッシリとした体格。目は細目の二重。趣味はラーメン屋巡りと料理。
過去に妹を殺された過去があるもよう。宮原美和との交際を始めた。

・藤原湖南
9歳。精神年齢は29歳。20年後は監察医にして警視。未来の警察は何らかの理由で人手不足のもよう。
外見は名探偵コナンを少し大きくしたようなもの。射撃だけでなく格闘術にも長けている。趣味は料理、家事全般、読書。
本来の歴史ではある事件の被害者?吉岡愛結には何らかの思い入れがあるようだが。

・城隆一郎
14歳。国立学園大付属中学校に所属。全国2位の秀才。身長168cm、前髪は長め。「僕たちは勉強が〜」の某主人公を気弱、かつ暗めにしたイメージ。
趣味は特になし。敢えて言えば勉強。幼馴染みの薬師丸英華のことは大切に思っているが……?
過去に何らかの殺人歴あり。キレると手に負えない獣性があり、ストッパーが外れると記憶が飛ぶ。本質的には快楽に溺れやすい。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/22(木) 22:04:06.57 ID:VLG3h6l/O<> (登場人物紹介・ヒロイン)

・宮原美和
29歳。身長156cm、体重47kg。推定Bカップ。茶がかったショートボブ、少し童顔気味。ルックスのイメージは東方の諏訪子を少し大きくした感じ。
外資系運用会社の広報として働くキャリアウーマン。刑事だった夫とは死別。5歳の娘、亜衣がいる。
性格は明るく天真爛漫だが、相応の思慮深さもある。趣味は食べ歩き一般。食べてもあまり太らない体質。

・吉岡愛結
27歳。身長164cm、体重53kg。推定D〜Eカップ。ちゃんとすればかなりの美人だが、どことなく暗い。艦これの翔鶴を黒髪にし、髪の長さをセミロングにした感じ。
過去に何かがあり、自分に自信を持てないでいる。というより、幸せになってはいけないとどこか自棄になっている。
職業は看護士。元は高崎市にいたが、自棄を起こしていたからか出会い系で身体を売る売春婦紛いのことをやっていた。
その際に秋山雄一と知り合い、苛烈なストーカー行為を受ける。命を狙われるレベルにまで達しており、本来は殺されるはずだった。
趣味は音楽鑑賞。実はセックスはさほど嫌いではない。

・薬師丸英華
13歳。159cm50kg。推定Aカップ。国立学園大付属中学所属。城隆一郎とは幼馴染み。
明るく素直なスポーツ少女で裏がない。水泳では国体3位で、将来の五輪候補とすら見なされている。一人称はオレだが、何かしら理由があるもよう。
ルックスは「僕たちは勉強が〜」のうるかを少し幼くした感じ。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/22(木) 22:04:47.48 ID:VLG3h6l/O<> 残りの登場人物紹介は後日。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/24(土) 16:07:49.94 ID:Ao9ipNwiO<> 登場人物紹介です。

(登場人物紹介・警察関連)

・木暮悟
48歳、身長は166cmぐらい。役職は警視。埼玉県警捜査一課のNo.2役職である管理官(管理官は通常2、3人いる)。
ノンキャリアの叩き上げ。別名「仏の木暮」と呼ばれる温厚な男。ただ、怖い顔もあるとの噂もある。推理力は確か。
イメージは小日向文世を10ぐらい若くして眼鏡をかけた感じ。

・赤木航
43歳、身長177cm。役職は警部。通称赤さん。埼玉県警捜査一課強行3係の係長。ノンキャリアの叩き上げで、やや強面。
家庭持ちで妻と娘の3人家族。妻は元警察で2つ歳上。恐妻家らしい。娘は普通の小学生。
イメージはコナンの高木刑事を老けさせて少し猫背にした感じ。

・安川徹
24歳、身長173cm。通称ヤス。役職は警部補。埼玉県警捜査一課強行3係。警察庁キャリア。通常キャリアが県警の現場に配属されることはまずなく、異例中の異例の人事である。
極めて高い推理力を持つ。本編ではその片鱗はそれほど出ているわけではないが……?ノリが軽く、飄々とした人物。
イメージはペルソナ4の足立をもう少し切れ者にした感じ。

・青葉和行
36歳。埼玉県警捜査一課強行3係。通常青。役職は巡査部長。ノンキャリアの巨漢にして大食漢。
温厚で暢気な男のように見えるが、その実は武闘派。荒事には真っ先に飛んでいく。柔道では県警屈指の強さ。なお、仁とはラーメン仲間である。ジロリアン。
独身だが県警に長年付き合っている恋人がいるらしい。イメージはバジリスクの鵜殿丈助を清潔にした感じ。

・白島三郎
29歳。準キャリアの巡査部長。若葉課長に気に入られているらしいが?無口で慎重派。
イメージはコナンの白鳥をもう少し若くして暗くした感じ。私生活不明。

・若葉大輔
50歳。埼玉県警捜査一課長。地方公務員上級のいわゆる「地上キャリア」。上昇志向が強く県警トップへの野望は隠さない。
事務処理や政治工作に長けているが、刑事としては無能。事件が起こるとなるべく穏当に済ませようとする。加点を積むのではなく失点を抑えたがるタイプ。
イメージは歳を取った金田一少年の〜の明智を嫌味たらしくした感じ。現在行方不明。

・八代倫
54歳。スレンダーだがキツい印象を与える初老の女性。埼玉県警主任監察医。性格もキツめで口さがない。ただ、正義感も強い。
木暮管理官との付き合いは長いらしい。シングルマザーで息子は成人済み。親子仲はあまり良くはないとのこと。
イメージはワンピースのDr.くれはを若くした感じ。

・白田兵次郎
63歳。元埼玉県警捜査一課3係係長の元警部。ノンキャリアでその存在は広く知られていた。警察学校への任官を拒否し、鶴ヶ島市の住宅街で喫茶店「カフェ・ドゥ・ポワロ」を開業した。
仁の料理の師匠であり、事実相当な腕前。雑誌に載るほどの評判であり、コーヒー教室も開いている。どうもバツイチであるもよう。
イメージは白髪にした大杉漣。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/24(土) 16:13:24.03 ID:Ao9ipNwiO<> 紹介の残りと本編は夜です。イメージキャラやモチーフになっているキャラは、伏線かもしれませんしそうでないかもしれません。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/24(土) 22:39:52.04 ID:1FwmYTEuO<> (登場人物紹介・「勉強会」)

・佐倉翔一
13歳。身長156cmぐらい。小柄で中世的な外見の少年。ウイッグを付ければ美少女にしか見えない男の娘となる。
性格は冷静沈着。恐らくは「勉強会」のリーダーであり最も頭が切れる。法曹界最大手級の「佐倉法律事務所」の一人息子?
どこから不明だが合法(脱法)麻薬「アイスキャンディ」や拳銃を仕入れてきており、正体不明。
開明中に通学していると思われるが、裏が取れていない。
恐らくはホームレスの件以外にも殺人歴あり。人を殺すことに躊躇いがないサイコパスであり、徹底した快楽主義者。
性欲を満たせるなら対象は男でも女でもいいと考えている節がある。
イメージはバカテスの秀吉を10倍ぐらい色々黒くした感じ。

・鶴岡和人
14歳。身長176cm。見るからにヤンキーじみた三白目の一重の少年。十番中に通学中。
上2人はボクサーであり、長男の光人はバンタム級の世界王者。ただ、実力は疑問視されており「金で世界王者になった」とのアンチが非常に多い。
和人は上2人をスパーでボコボコにしたとの報道があり、「こいつだけは本物では」と一部で言われている。実際、力量はその通りのもよう。
(もっとも、これにはアイスキャンディの力も相当程度ある)
性格は粗暴であり、人を人とも思わない冷酷さもある。兄二人のことは心底馬鹿にしている。
イメージは……まあ察してください。あそこの3男の若い頃。

・金路アゲハ
享年13歳。身長161cm、体重43s。Cカップ。桜岡中に通学していた。ちょっときつめの目つきの美少女だが、内面は極悪。
拝金主義者にして快楽主義のサイコパス。佐倉翔一との相性はいいかと思いきや、近親憎悪なのかそこまででもなかった。
当然快く思わない子は多かったが、歯向かう者は陰湿な手段で屈服、ないしは放逐していた。
なお、これは「彼女の気分がいい時」の話である。
作中で分かっている殺人は2件だが、実は手を下したのはもう1、2件ある。恐らくは母親(と誰か)がもみ消している。
間接的に手を下した(つまりいじめによる自殺)のはもっと多い。
イメージはうみねこのベルンカステル。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/24(土) 22:55:36.10 ID:1FwmYTEuO<> (登場人物紹介・「バッドエンド・ブレイカー」)

・バッドエンド・ブレイカー
凶悪犯罪を行おうとした人間の前に現れては銃殺していくという謎の殺人鬼。
手口が似通っているが、全国各地に現れており警察も尻尾を捕まえることができない。
バッドエンド・ブレイカーはネット上での通称。ただ、ひょっとしたら当人が流したのかもしれない。
実は十数人による犯行グループ。どうも「20年後の警察」がそれのようだが……?
今回に限り毒殺という手段を取っている理由は不明。主人公の一人、藤原湖南もここに所属する。

・須田興也
24歳。バッドエンド・ブレイカーの一人。身長182cm、細い糸目。眼鏡をかけている。
銃の腕は凄腕であるらしい。恐らくはこれまでの実行犯の一人。普段は大学院生で通している。
イメージはコナンの沖矢昴をもう少しごつくした感じ。

・浅賀由依
17歳。バッドエンド・ブレイカーの一人。身長167cm、体重50s。Aカップ。長髪の美少女。
情報収集担当でハッカー。20年後もどうもそういったことを担当していたようである。
物言いは少しきつめ。一応学校には通っているらしい。
イメージは少し大きくなった艦これの磯風。ただし胸は控えめ。

・藤原雄作
43歳。バッドエンド・ブレイカーの一人だが、側面支援を担当しているもよう。白髪交じり。実年齢より少し老けて見える。
虐待疑惑をアユから持たれていたが、実際は温厚篤実な人物であるようだ。
イメージはコナンの工藤優作の髪を白髪交じりにした感じ。

<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/24(土) 22:57:08.97 ID:1FwmYTEuO<> ひとまず登場人物紹介はここまで。本編は多分明日夜以降です。
なお、まだ登場人物は増えます。ある程度増えた段階でまたこのように紹介する予定です。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/24(土) 23:12:28.22 ID:nTawmNsUo<> >>196
須田興也…ジェノサイダーSDKの事かと思った <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/25(日) 22:10:55.93 ID:FPf8nKkGO<> 再開します。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/25(日) 22:35:54.33 ID:FPf8nKkGO<> 俺は文彦を無視しようと試みたが、文彦はもう俺の傍に駆け寄っていた。
深い溜め息と共に、奴を見る。

「貴様にかまっている時間はないのだが」

「まあまあそう言わないでよ。長い付き合いじゃない」

「付き合いはあるが友人でもないな」

やれやれ、と言いたげに文彦は笑って首を振った。

「そんなことないでしょ。何やかんやでお願い聞いてくれてたりするじゃない」

「聞かざるを得ない状況になったからやったまでだ。それに、それと仕事とは別だ。
お前には情報は流さない。お前がこっちに来て1年、ずっとそうだったはずだが?」

「えー、でも仁ちゃん、嘘つけないからね。割とすぐに顔に出る」

そう、こいつに情報を流したことはない。しかし、こいつの掛けるカマに、俺は何らかの反応を示してしまうらしい。
俺はそれを苦々しく思っている。高校からずっとそうだ。

「今回はお前の質問一切に反応しない。そんな時間もない」

「まあそうだよね。金路アゲハ殺害事件。ただのヤマじゃないんでしょ?」

立ち去ろうとした俺は、思わず足を止めた。何で知っている。
文彦は俺の思考を先回りするかのように、ニシシと笑った。

「常識で考えりゃ分かるでしょ。金路栞の一人娘が、廃工場で死んでいる。どう考えても訳アリだ。
しかも、先週のHAKUBAコーポレーション社長、白馬伸の変死事件にもアゲハは一枚噛んでいる」

「……何?」

初耳だ。そんなことが。

「あー、やっぱり埼玉県警には話が行ってなかったか。そりゃそうだね。
警視庁でも立件するかどうかもめて、結局上からの圧力で自然死になったってことらしいから。
確かに普通の腹上死のようにも見えたけど、そのお相手が金路アゲハだったってんだから只事じゃあない。
今回のアゲハの死で、ゴシップ記者は間違いなく関連付けて考えるだろうね」

「お前も同じ見立てか」

「どうだろうねえ。それは僕が君に訊きたいとこだ。
一つ言えるのは、アゲハは裏の顔を持っていた。HAKUBAコーポレーションは大誠会のフロント企業。
白馬が企業舎弟というのは、当然仁ちゃんも知ってるよね。アゲハは何かヤバいビジネスに頭を突っ込んでいたんじゃないかと、僕は推測する」

「ヤバいビジネス……」

売春が真っ先に思い浮かんだ。JCはその筋には最も人気がある。アゲハという少女が、それに手を出していないとは思えない。
ただ、何かが引っかかった。そんな単純な話だろうか。


死体から検出されたグルタミン酸の異常な濃度。練川の時には、あんなのはなかった。


クスリか?しかし、スピード(覚醒剤)でも葉っぱ(マリファナ)でもなさそうだ。それならそうと検視で出る。
もちろん、コカ(コカイン)でもヘロ(ヘロイン)でもない。新種の薬?



……ジジッ



俺の頭に、何かが走った。……何だこれは。何でこの単語が、俺の脳裏に浮かんだのだろう。
しかし、間違いない。俺はそれを、何故か知っている。



「アイスキャンディ」。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/25(日) 22:45:14.00 ID:FPf8nKkGO<> #

金路アゲハの家宅捜索が深夜行われたが、収穫は皆無だった。寝に泊まるだけの簡素な部屋であり、PCだけがあるだけだった。
こっちの解析は別途行われるが、どこまで手掛かりがあるだろうか。

金路栞はパニックになり、県警本部に押し掛けてきたらしい。しかし、死んでしまったものはもうどうしようもない。
ヤスはまだ戻ってきていない。明日には連絡をくれるものと思うが……あいつなら、どういう見方をこの事件に対してするだろうか。

深夜0時を回った。さすがに、一度引き上げねばならない。
県警のデスクから離れようとしたその時、俺のPCがメール受信の知らせを告げた。
<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/25(日) 22:53:29.44 ID:FPf8nKkGO<> #

毛利仁様

ご無沙汰しております。ニュースを見て、驚きました。
金路アゲハが亡くなったということです。
彼女が練川に近い形で殺されたということは、恐らく彼女もまた鶴岡の一味だったのでしょう。
つまり、私と同じ志を持ち、しかし手段を選ばない何者かがいるということです。
あるいは、それは「バッドエンド・ブレイカー」であるのかもしれません。

鶴岡がこの世にいていい存在ではない、というのは間違いありません。
しかし、それは殺人という非合法的手段ではなく、あくまで法によって裁かれるべきであると、私は確信しています。
彼は未成年で、死刑に処すことはできません。しかし、一生涯誰かの監視下に置くことはできます。それが、本来望ましい在り方です。

ともあれ、一度お会いしたいと思います。状況は私の理解を超えるものになりつつあります。
一度状況を整理して、改めてお会いできればと思っています。

来週日曜日。もしお休みであれば、こちらの方からご連絡します。
その時、あなたに名乗れると思います。よろしくお願いいたします。

SHELLY <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/25(日) 22:53:59.29 ID:FPf8nKkGO<> 短いですが今日はここまで。次回はジョーパートです。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/26(月) 16:27:20.49 ID:NRc0AdYfO<> 【6月11日】


金路アゲハが、死んだ。


朝起きて一人テレビを付けた僕は、ただ立ち尽くすしかなかった。


テレビでは「人気読者モデルの殺人事件」を強調している。テレビのコメンテーターは物知り顔で、「ストーカーに脅されてたのでは」と言ってる。

あいつは、そんなタマじゃない。ストーカーに遭ったら、殺しに行くような女だ。
僕は、彼女を殺したのが瑠偉や直哉を殺したのと同じであることにすぐに気付いた。思わず、その場にへたりこむ。寒気が止まらなくなった。


間違いない。犯人は、僕ら「勉強会」を狙い撃ちしている。全員を確実に殺すつもりだ。


目からは止めどなく涙が溢れてきた。母親がとっくに仕事に出ていたのを、これほどありがたいと思ったことはない。

学校に行くなんて、無理だ。でも、近所に住むヤクは、僕をきっといつものように呼びに来るだろう。それが彼女の日課だから。
どんな顔をしてヤクに会えばいいか分からなかった。仮病を使えばいいけど、なぜかそれは見透かされるような気がした。彼女は僕の異変に、きっと気付くはずだ。
なら、全部洗いざらい吐いてしまおうか。昔の「殺人」のことも、ホームレスのことも。それで、警察に守ってもらう。


……ダメだ。ヤクは、きっと僕をこの上なく軽蔑するだろう。それは、きっととても耐え難い。
母親は嫌いだけど、多分母親の仕事も地位も台無しになる。しかも、警察が僕を守ってくれる保証なんて、ない。

アゲハに対する哀悼の気持ちは、不思議と湧かなかった。ただ、これからのことが、とてつもなく怖かった。


ピンポーン


家のチャイムが鳴った。……ヤク?もう、そんな時間?
窓の隙間から、外を見る。そこにあったのは、黒塗りのワンボックスと。

とてつもなく不機嫌そうな、鶴岡和人の姿があった。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/26(月) 16:54:15.79 ID:NRc0AdYfO<> #

「……和人?」

玄関から顔を出した瞬間、僕の腕は物凄い力で和人に引っ張られた。

「……乗れ。速攻でだ」

目は血走り、明らかに尋常じゃない。逆らったら、その場で撲殺されそうな気がした。
僕は開けられていたワンボックスの後部座席に乗り込む。もちろん、着替え途中の制服のままだ。

「えっ、ジョー??」

向こうからヤクの声が聞こえた気がした。ドアは乱暴に閉められる。

「……てめえの女か」

「……違うよ。ただの、幼馴染み」

和人の顔が歪んだ笑みを作った。そして。


ドスン


「うっ、うぇええええ……」

「何てめえだけ普通の青春してんだよ。舐めんなよゴラァ!?しかし上玉だな、今度呼んでこいや」

「……なっ……」

顔が青ざめていくのが分かった。それだけは。それだけは絶対にダメだ。

和人がクックックと笑った。

「まあそれは今度だ。いかにも食いごたえがありそうだがな。……アゲハが死んだのは知ってるな」

「……これ、ひょっとしてそれと関連が」

「大有りだ。翔一から連絡があった。至急、新宿のパークハイアットに来いって話だ。今後の話をするらしい」

翔一が?和人に連絡を寄越すのも意外だったけど、そんな高級ホテルに呼び出すなんて理解ができない。翔一って、何者なんだろう?

「やっぱり、瑠偉と直哉を殺したのと、同じ奴が殺したのかな」

「……だろうな。おいクソ兄貴、もっとスピード出せや」

いつも強気で好戦的な和人だが、珍しく口数が少ない。やはり、アゲハのことは相当堪えてるらしい。

アゲハは、母親の金路栞のツテでボディーガードを付けていたらしい。大誠会の人間であった、とも聞いている。
にもかかわらず、アゲハは死んだ。多分、廃工場で見つかったってことは、殺しに行って返り討ちにされたんだろう。

僕らは翔一から拳銃を貰っている。「計画」に向けて、銃に慣れてもらうためということだった。
アゲハはきっと、持っていったに違いない。アイスキャンディも、きっと飲んでいただろう。

それでも、アゲハは殺された。

その事実に気付き、僕の寒気はさらに強くなった。


相手は、間違いなくただの人間じゃない。そのことに、僕も和人も気付き始めていた。


<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/26(月) 20:17:14.71 ID:P50C/moBO<> #

「やあ、来たね」

ホテルのスイートルーム。そのソファに、翔一は泰然と座っていた。口元には微笑みすら浮かんでいる。

「来たね、じゃねえよ。アゲハが死んだのに何だその余裕はよ」

「僕もこれでも内心焦ってるんだよ。ただ、無理矢理にでも落ち着かせた方がいいと、経験上知っているんでね。飲み物はコーヒーでいいかい」

「……いやいい」

翔一の目が和人から僕に移った。コーヒー……あの刑事のことを思い出すな。

「僕も、いい」

「そうか。残念、ブルマンのいいのが手に入ったんだけど」

翔一が目線を奥に向けた。

「だそうですよ、矢向さん」

白髪の口髭の老人が現れ、恭しくお辞儀をした。

「翔一様がお世話になっております」

「だそうだ。こちらは矢向さん。僕の執事だ」

矢向という老人は、無言で一礼すると奥へと消えていった。……奥の窓際には、見るからに屈強な男性もいる。翔一のボディーガードか何かだろうか。

「さて……何から話そうかな。とりあえず、禁を破って二人に集まってもらったのは、今後の話をするためだったね。
結論から言おう。君たちには、このままの生活を続けてもらおうと思ってる。ただ、『勉強会』はさすがにしばらく中止だ。警察にマークされ始めてる」

「……このまま?問題ありすぎだろそりゃよ」

和人が眉を潜めた。そうだ。僕ら3人は狙われている。このままの生活なんてできるわけがない。それに。

「『計画』は、どうするんだよ」

僕は翔一に聞いた。このくそったれな世界をぶっ壊す「計画」。それは、僕らが14歳以下のうちしかできない。
それは「どんなに人を殺しても医療少年院送りで済む年齢」だ。

翔一は微笑んだ。

「もちろん、実行する。しなきゃ意味がない。だから君たちをここに呼んだ。
降りたければ止めはしないよ。ただ、君たちとその家族が、社会的に『殺される』だけだ。それは前と何も変わらない」

「……翔一。アゲハが、瑠偉や直哉が殺された心当たりはあるんだろ」

「まあね。多分、これは『バッドエンド・ブレイカー』の犯行だ」

「『バッドエンド・ブレイカー』?ネットで話題の?」

僕の言葉に、翔一は頷いた。

「そう。凶悪犯罪を行うであろう人間の前に現れては銃殺する、連続殺人犯。これは銃殺じゃないけど、僕らの『計画』を知っていたら、動いても不思議じゃない」

「ちょっと待てよ!あいつらは、『犯行直前』の犯人の前に現れるんだろ??
俺らの『計画』は、まだ実行までずいぶん先……」

「でもそう考えると納得が行く部分もある。アゲハがあっさり殺されたのは、相手がプロだからだ。あれは、そういう手口だ」

部屋の空気が冷えた気がした。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/26(月) 20:38:04.37 ID:P50C/moBO<> 「……プロ、だって……?そんなの和人はともかく僕じゃ」

翔一がニッコリと笑った。大丈夫、と呼び掛けるかのように。

「だからこの二人を今日は呼んだんだ。矢向さんはさっき紹介したね。向こうにいるのが唐川さん。僕のボディーガードだ」

唐川さんと呼ばれた男の人は、こちらを一顧だにしない。和人が「ちっ」と舌打ちした。

「まさか俺にも付ける、と言わねえよな。自分のことは俺一人で十分だ。何となれば大誠会の力も……」

「そう思うならどうぞご自由に。ただ、どうなっても僕は一切関知しない。あと、二人とも君より遥かに強いよ。アイスキャンディを舐めた君より、ね」

和人が唐川さんをしばらく見て、ゴクリと唾を飲み込んだのが分かった。

「……かもな」

「そうそう、人の親切は素直に受け取るのが一番。僕は君たちに彼らを貸そう。もちろん、最低限の身の守りは自分でやってもらうけど。彼らが君らを守ってくれるだろう」

「だから、安心して普段通りに生きろってこと?」

翔一が立ち上がり、僕の方に近付いてきた。顔には満面の笑顔が浮かんでいる。
そして、僕の耳元に近付いたかと思うと、小声で囁いた。


「大丈夫。僕がちゃんと守ってあげるから、ね?」


僕は一瞬震えた。その声が、その表情が、とても妖艶に映ったから。
翔一は僕の動揺に気付いたのか、クスクスと笑った。

「ふふふ、かわいいなあジョーは。アゲハも死んじゃったし、これから3人でシてみる?男の娘も、気持ちいいよ?」

僕の下半身が反応したのが分かった。しかし、アゲハが死んだショックは、翔一にはまるでないんだろうか?

「……俺は遠慮するわ。また次の時にする。さすがに気分じゃねえ。それに、おっさんたちもいるんだろ?」

「あら珍しい。じゃあジョーだけかな」

僕は……

※小分岐です。コンマが50以上なら断る <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/26(月) 20:40:37.03 ID:m6QvCJF5o<> どやろか <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/26(月) 21:01:03.09 ID:P50C/moBO<> 僕は戸惑った。僕が翔一や瑠偉としなかったのは、最後の一線だった。アゲハとの相性が良かったのもあるけど。それを越えたら、完全に真人間でなくなる気がした。


でも、今は。頼れるのは、翔一しかいない。


少しでも、今の状況を、僕は忘れたかった。それが快楽であれ、何であれ。
何より、ヤク。和人から彼女を守るには、翔一に気に入られた方がいい。なぜか、そう思った。


僕は遠慮がちに、小さく頷いた。翔一が「んふふ」と笑う。

「そうそう、素直な子は好きだよ。ジョーも顔の造りは可愛い系だから、女の子の格好は似合うかもね。
じゃあ、ちょっと準備してくるね。ベッドルームは防音だから、矢向さんたちは気にしなくていいよ。先にそこのアイスキャンディでも舐めといて」

いつの間にか、テーブルにはアイスキャンディの錠剤が置かれていた。和人は「けっ」と吐き捨てた。

「翔一がイカれてんのは分かってたが、お前も大概だな。キレると何しでかすか分かったもんじゃねえしな」

僕は思わず和人を睨んだ。彼はふんと鼻を鳴らすと、「せいぜい楽しむんだな」と部屋を去っていった。

僕はアイスキャンディを指でつまんだ。そしてそれを口に放り込み、ゆっくりと溶かす。


視界が鮮明になった気がした。全ての色が鮮やかになり、そして体温が一気に高まる。来たきたキタ!!

僕は奥のベッドルームに駆け込み、着ているもの全てを脱ぎ捨てた。あそこは既に限界を越えてカチカチになっている。もう、頭の中はセックスしかなかった。

「お待たせ……きゃっ」

ウィッグを付け、エロいランジェリーを着た翔一を僕は荒い息と共に押し倒す。そして、その唇に舌を差し入れた。

「んっ……んんっ……ちゅるっ……ぷはっ。……積極的だね。第一ラウンドは、君が男の子でいいかな?」

僕は素早く2回頷いた。もう我慢なんてできない。

「いいよ。あ、エッチの時は『サクラ』って呼んで……むうっ!!ああっ!!」

僕は少し膨らんだ翔一……いや「サクラ」の乳首を吸った。


獣の情欲に流される中、僕の微かに残った良心が、こう言った。アゲハとした時にも聞いた、弱々しい言葉だ。


「ヤク、ごめん」


その日のことは、いつも通り記憶から飛んでいる。
ただ一つ言えたのは、その日のセックスはとてもとても気持ちが良かったということだった。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/26(月) 21:03:11.03 ID:P50C/moBO<> 短いですが今日はここまで。R15程度ではありますが、同性愛表現がありました点ご承知おきください。

次回はコナンパートです。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/27(火) 21:22:07.60 ID:p8zpc/oIO<> 【6月10日、12:22】


ここはどこだろう。状況を把握するまで数秒かかった。あたしは身体を起こし、周囲を見渡す。
見覚えのない家具、見覚えのない照明。カーテンを開けた先も、良く分からない場所だった。もう、時刻は昼を過ぎてるみたいだ。

あたしはしばらく目をつぶる。……昨日、何があったんだっけ?


そうか、コナン君を川口駅前に送り届け、それを拾ったんだった。
彼がやったのは……殺人。「消しに行く」と言ってたから、多分間違いない。


そして、コナン君と会ったのは、金路アゲハ。あたしでも少し名前を聞いたことがある、有名な読者モデルだ。彼は彼女を、殺した。

急いでスマホをチェックする。……まだ、彼女が死んだというニュースは、ない。
コナン君にかつがれていたんだろうか。……そんなことはないだろう。確かに「終わった」と彼の口から聞いた。
そして、あたしはカーナビが導くまま急いでここに来たのだった。朝霞のウィークリーマンション。ここが当面、あたしとコナン君が住む場所だ。

あたしは足早にリビングに向かった。コナン君が、テーブルで静かに本を読んでいる。

「おはよう、アユさん。……気分は」

「おかげさまで。……と言いたいけど。コナン君、本当にアゲハって子を殺したの?」

コナン君は静かに頷いた。

「間違いない。まだ報道されていないけど、じきに出るはずです」

あたしの背中に、一気に冷たいものが走った。あたしが殺したわけじゃない。でも……あたしは人殺しの手伝いをした。してしまったんだ。

「……そ、そう……」

「あなたには辛い思いをさせてしまった。でも、これが僕の役割だ。
もし、降りたいなら僕は止めない。記憶は消してもらうけど、僕は影からあなたを守ります」

あたしは一瞬、言葉によどんだ。……昨日、何回も念押しされたはずだ。コナン君に協力する意味を。そして、この「任務」の重さを。

平和に生きるなら、ここから逃げればいい。それでいいはずだった。
でも、コナン君の記憶を消してもらったとして、その先にある人生は?
あたしは、自分が幸せになってはいけないと思いながら、秋山の影に怯えて寂しく独りで生きていくの?

それは嫌だった。コナン君が自分を偽っていたとしても、彼がいた生活はやっぱり色が違って見えた。あたしはそれを、失いたくなかった。

それに、正体を明かしてもらってからも、コナン君はコナン君だった。変わってしまったのは、あたしの認識。

目の前にいるのは、9歳の子供ではない。29歳の、年上の男性。そう考えると、少し鼓動が早くなった。……ショタコンの気なんて、あたしにはないのに。

あたしは、コナン君を見た。

「ううん、いい。まだ覚悟ができたわけじゃないけど……あの子は2019年4月28日に、熊谷でテロを起こす。それは、間違いなかったのね」

「そうです。彼女が人を殺した音声も、一昨日聞かせた通りです。不快なものだったでしょうが」

そう。白馬って男を、薬を使って殺している音声だった。アゲハって子は、他にも何人か殺していたらしい。……13歳なのに、信じられないけど。

「……そうね。でも、あれを警察に言えばよかったんじゃ」

コナン君は首を振った。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/27(火) 21:49:16.41 ID:p8zpc/oIO<> 「難しかったでしょうね。彼女の母親は、衆議院議員金路栞。警察にもつてがあるらしいです。イタズラ扱いされて、握り潰されるのが落ちだったでしょう。
何より、それでは来年の『熊谷大虐殺』を止められない」

「でもっ!!実行犯は6人だったんでしょ?もう半分いないなら……」

そう。半分いないなら、さすがに主犯も思いとどまるはずだ。

……でも、コナン君は静かに首を横に振った。

「それは確実じゃない。……何より、色々妙なことが起きてる」

「妙なこと?」

「はい。アユさんが聞いた、白馬の殺人。あれは、本来の歴史じゃ起こってないんです」

「……え?」

コナン君は立ち上がった。

「ちょっと、コーヒー入れましょうか。ここ、ネスプレッソが置いてありました。すぐに美味しいのが淹れられそうです」

ヴィーン……という振動音がキッチンから響いてきた。やがて、コナン君はコーヒーカップ2つを持って戻ってくる。

「どうぞ。ルンゴです。エスプレッソの、量が多い版ですね」

口にすると、確かに強い苦味を感じた。ただ、確かにエスプレッソほどじゃない。

「ありがと。……さっきのって、どういう意味?」

「僕たちが20年後の未来から、精神だけ飛んできた『タイムリーパー』だということは言ったはずです。そこでは、確かに『熊谷大虐殺』が起きていた。
そして、本来の歴史では、白馬は新種の麻薬を売り捌く役割をしていたはずなんです」

「……麻薬?」

「ええ。『アイスキャンディ』という極めて強力で、かつ色々な意味で危険なヤツです。
ところが、白馬はアゲハに殺されていた。本来白馬が死ぬのは、ずっとずっと後なのに、です」

あたしはルンゴを一口飲んだ。

「……それは、コナン君たちが歴史に介入したからじゃ?」

「あるいは。……ただ、それ以上に気になるのは、『アイスキャンディ』の流通時期です。
本来、あれが出回り始めるのは来年、それも熊谷大虐殺の直前なんです。それなのに、アゲハはもう持ってた」

「……?ちょっとどういう意味?歴史が変わっただけじゃないってこと?」

「そうかもしれないと思い始めてます。いくつか仮説はありますが……自信は全くないです。確証がない今はまだ、言うのをやめておきます」

※質問を選択できます。ストーリー上の変化は、現状は小さいです。

1 そういえば、どうしてこっちに来たの?
2 そういえば、秋山の件はどうするの?
3 そういえば、何であたしを気にかけてくれたの?
4 自由安価(内容次第で採用)

※安価下3多数決 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/27(火) 21:50:34.72 ID:erCB4dYq0<> 3 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/27(火) 22:12:58.41 ID:p8zpc/oIO<> 上げます。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/27(火) 22:21:55.51 ID:9qerWGVDO<> 3 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/27(火) 22:23:36.08 ID:p8zpc/oIO<> ぶつ切りですが今日はここまで。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/28(水) 10:29:19.63 ID:L1AflvZdO<> 部屋に沈黙が流れた。コナン君の表情には、わずかに険しさが見える。

話題を変えよう。どうにも、こういう空気は苦手だ。

「……そういえば。どうしてあたしを気にかけてくれたの?普通に考えたら、あたしなんてただの足手まといでしかない。
コナン君は興也さんや由依ちゃんに、あたしが必要だと説明してくれた。でも、それだけじゃないんじゃない?」

コナン君の顔が赤くなった。こういう表情は、本来の少年そのものなんだな。

「あ、ああ……何というか。何か、言いづらいな」

「ふふ、まさか一目惚れとか?」

もちろん冗談だ。彼の中身は、あたしより年上。あたしが心揺れることはあっても、人生経験がそれなりにあるコナン君がそんなウブなわけがない。

しかし、返ってきたのは意外な言葉だった。

「……そう、かもしれないですね。あなたはあまりに、似すぎている」

「……似ているって誰に?」

コナン君はコーヒーを飲んで、苦笑した。

「僕の、死んだ恋人ですよ。年齢はちょっと若かったですが、まるで生き写しです」

「……!!そ、そう……」

一瞬、あたしは言葉に詰まった。そうか、未来の話だよね。小学生に死んだ恋人なんて、いるわけがない。

「そんなに似てたの?」

「そうですね。見た目は本当にそっくりです。性格はちょっと違いますけど、何やかんや困った人を見捨てられない優しい所や、少し寂しげな所は同じでした。
あなたに会って驚いたのは、まずそのことでした。歩美が成長した姿をみたかのようだった。
そして、あなたが秋山の犠牲者であると知って、さらに驚いた。正直、何かの間違いかと思ったぐらいです」

「……歩美さん、っていうの。あなたの亡くなった恋人」

コナン君は静かに頷いた。

「まだ20でした。看護士として、とてもよく働いてくれた……」

彼が拳を握って震えている。彼女が亡くなった時のことを、思い出したのだろうか。

「……ごめん、言いたくなければ言わなくていいよ。そっか、恋人を重ねてたってわけだ」

「……すみません。ただアユさんはアユさんで、とても……魅力的だと思います。あなたを守りたいという言葉にも、嘘はないです」

コナン君が真っ直ぐにあたしを見つめてきた。今度はあたしが赤面する番だ。

「……あ、ありがと。……何か変よね。君が本当はあたしより年上と知っても、言葉遣いとか態度が同じなのって。
やっぱり、少し変えた方がいい?」

「いえ、いいです。前にも言ったけど、そのままで」

「そ、そう……」

コナン君は微笑んでいる。あたしは気恥ずかしくなって、視線を逸らした。

※コンマ下50以上で追加質問可能、安価選択へ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/28(水) 11:08:00.02 ID:t3w4u6vD0<> 追加質問できると良いな <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/28(水) 13:16:07.68 ID:L1AflvZdO<> 〜♪

その時、コナン君のスマホが鳴った。名探偵コナンのテーマなのか。

「ちょっと出ます。……はい。そうですか、アゲハが。……これからですか。僕は構いませんが、彼女は」

コナン君があたしを見た。何度か無言で頷く。

「分かりました。10分後ですね、了解です」

電話を切った彼に、あたしは呼び掛ける。

「何かあったの」

「アゲハの死体が見付かりました。それで、これからの方針を協議することに」

「ってこれから外出するの?」

「さすがにそれは。テレカン(テレビ会議)ですよ。アユさんにはオブザーバーとして出てもらいます」

コナン君はリュックからタブレットを取り出した。あれで打ち合わせをするのだろう。

「打ち合わせって、興也さんや由依ちゃんも?」

「ええ。それと、僕らの統括者も紹介します。くれぐれも、他言しないよう」

あたしはブンブンと首を振った。そんな大それたことは、できそうもない。


タブレットの画面が4分割された。そこに、興也さん、由依ちゃんが映し出される。最後に現れたのは、額が大きい中年の冴えない男の人だった。この前は、この人はいなかった。

『皆集まったようだな。始めようか。……今日はオブザーバーありだ。藤原『警視』の横にいる、吉岡愛結嬢だ』

あたしはタブレットのカメラに向けて、「よろしくお願いします」と一礼した。……軽くでもメイクしておくんだった。

『私は内閣府副大臣、網笠博だ。よろしく頼む』 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/28(水) 13:16:36.49 ID:L1AflvZdO<> 夜に再開します。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/28(水) 21:15:37.03 ID:ShMjYVKxO<> その人は無表情に、そして早口で答えた。

『藤原君、彼女を引き入れて本当に良かったのか?決して失敗も露呈も許されんのだぞ』

「承知の上です。何より秋山雄一による連続殺人の、本来の被害者でもある。少なくとも、秋山の一件が片付くまでは、僕が保護した方がいいと判断しました」

『連中に悟られたら大事だぞ。それだけのリスクを負えるのか、君は』

「……無論です」

コナン君は冷えた声で答えた。画面越しだけど、緊張がこちらにも伝わる。

『……分かった。ただ、実戦投入は極力控えるように。行動中に秋山の一派に目撃されたら事だ。秋山の件を始末してからにしろ』

「了解です」

網笠という人は、まるでロボットのように表情を変えない。大臣とか言ってたけど、政治家なんだろうか。

彼がコホンと軽く咳払いをした。

『本題に移ろう。『熊谷大虐殺』の被疑者は残り3人だ。優先順位Sの案件だけに、仕上げは慎重に行きたい。
浅賀君、主犯の佐倉翔一の行方は』

『相変わらず尻尾見せないわ。警視庁の監視システムにハッキングしてるけど、それらしい外見のはサッパリ。でも暗躍してるのは疑いない』

『本来の歴史では、佐倉は開明中にいるはずです。しかし、完全に雲隠れしている。白馬の件といい、歴史が歪んでいるのかもしれません』

『須田君、歴史には修正力がある。その範疇では?』

コナン君が手を挙げた。

「『アイスキャンディ』の流通が早すぎます。単に歪んでいるだけではないかもしれません」

『というと』

「意図的にそうなっている、ということです。仮説に過ぎませんが、例えば僕らが彼らの行動の先を読んで動いていることを悟られた、とか。
あるいは……あまり考えたくありませんが、3人の誰かが『覚醒者』であるかもしれない。あるいは、『覚醒者』が彼らに助言している」

『どれも考えたくないシナリオだな。特に、後ろ2つは』

あたしは思わず身を乗り出した。

「コナン君以外に、同じような人がいるんですか?」

『……何人かは。そうした人物が、道に外れんようにするのも我々の役目だ。協力してくれる優秀な人物は取り込んでもいる。
そうでない場合は記憶を消したりもしている。……とはいえ、完璧でもない。私が君に言えるのは、そこまでだ』

未来を読める犯罪者?だとすると……。あたしはゾクッとした。

コナン君が、改めてタブレットを自分の方に向ける。

「やはり佐倉周りが鍵でしょう。ただ、奴はそう簡単には尻尾を掴ませない。史上最年少で司法試験に通ったような奴です。頭は回る」

『とすると、城と鶴岡のどちらから叩く、と』

「ええ。ただ、どちらにも問題はある。城は『熊谷大虐殺』の死者のうち半分以上を殺っている危険人物です。自宅が大通りに面していて、殺害も簡単ではない。
金路アゲハのような弱味があるとも思えない」

興也さんが割って入った。

『なら鶴岡にすると?アイスキャンディ飲んだ状態なら、どちらも危険ですよ。凶悪性からして、多分こっちの方が準備が必要かと』

『浅賀君の意見は』

『うーん、私はどっちもどっちかなと。ただ、二人を残しても計画は続くけど、佐倉を殺せばそれは終わる。佐倉を叩く方を優先したいかな』

『意見が割れたな』

網笠って人が黙った。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/28(水) 21:17:40.70 ID:ShMjYVKxO<> ※中分岐です。網笠が選んだのは……

1 城
2 鶴岡
3 佐倉

※安価下3多数決 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/28(水) 21:44:22.75 ID:ShMjYVKxO<> 上げます。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/28(水) 22:07:04.99 ID:cexTNAQh0<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/28(水) 22:09:37.01 ID:GTYOBF/DO<> 3 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/28(水) 22:29:43.77 ID:ShMjYVKxO<> もう一度上げます。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/28(水) 23:28:07.76 ID:vKa/ZaSCO<> 0000まで投票がない場合は再投票です。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/28(水) 23:35:52.09 ID:rqQssz5P0<> 3 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/29(木) 09:40:03.87 ID:i9oWmOpYO<> 10秒ほどの沈黙。そして。

『やはり主犯、佐倉翔一の『処理』を最優先としよう。
これまでは確実性の観点から行ってきたが、佐倉自身が『覚醒者』か、あるいは近くにそれに準ずる者がいる可能性を鑑みれば、彼の処理から入るべきだろう。
残り二人は経過観察、場合によって処理とすればいい。どちらも、既に複数人殺しているが』

『了解です。しかし、どうやって?浅賀君のリサーチでも奴の居場所は分からない』

『そそ。そこが問題。……ただ、『勉強会』の3人、どこかに集まると思うのよね。少なくとも、ごく近いうちに。明日、どっちかに付いてみる?』

コナン君が頷いた。

「それはいいかもしれない。城隆一郎のヤサは割れてるんだよね」

『もち。ただ、車から張るのはちょっとしんどいね。やっぱ疑われにくいのは、コナンか』

「そうなるね。少し距離をおいたところから尾行しよう。ただ、車を使われたら?」

『その時はNシステム(自動車ナンバー識別システム)にハッキングしてやってみる。正確ではないけど、かなり絞り込めると思う』

「了解。それでいいでしょうか、網笠『総理』」

網笠が初めて能面のような表情を崩し、険しい顔つきになった。

『私は『まだ』総理ではないがね。……ともあれ、一刻も早い作戦完了を。佐倉の居場所を突き止め次第、処理の詳細を詰めよう』

「「「はいっ」」」

タブレットの画面が切り替わった。どうもこれで会議は終わりみたいだ。

「……明日、大丈夫なの?」

「問題はありません。アユさんには僕が帰るまで自宅待機をお願いすると思います。暇かもしれないけど……」

「いいのいいの。1日ぐらいは」

あたしは寂しいという気持ちを圧し殺して笑った。仕方ない。

「……ごめんなさい。好意に甘えてるみたいですね」


その次の瞬間。コナン君があたしの胸に飛び込んできた。


「えっ……」

「すみません、何もしないので……このまま、ギュッとしてもらえますか」

あたしは戸惑った。コナン君が、こんなことを求めるなんて、初めてだったからだ。

「ちょ、ちょっと」

あたしは戸惑いながらも、左手で彼を抱き止め、残るもう片方で頭をそっと撫でてみた。コナン君は、あたしの背中に両手を回している。

「……ごめんなさい。どうも、この身体の『本来の持ち主』がそうしたがってるみたい、で……」

「本来の持ち主?」

コナン君に訊いてみたけど、返事はない。……胸の中で、すうすう寝息を立てていたからだった。

寝顔を見ていると、彼は少年にしか見えない。いや、「中身」にもそういう部分が残ってるのかもしれない。

……コナン君も、実は不安なんだろうか。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/29(木) 20:43:03.47 ID:t6xi0SctO<> 【6月12日、17:21】


「……来ないな」

「ですね」

俺と赤木警部は、学園大付属中の正門から少し離れた場所で、城隆一郎を待っていた。勿論、金路アゲハの件について訊くためだ。

#

金路アゲハの家宅捜索は、あまり大した収穫がなかった。脅迫文が残っているかと思ったが、破棄されていたらしい。
PCもあったが、HDDにあったのはファッション情報ばかりだった。後は参考書ぐらいなものだ。どうにも勉強と寝るためだけの部屋であったらしい。

検死結果の詳細からも、あまり目を引くものはなかった。せいぜいショーツに尿とは別の分泌物があった程度だ。
性交渉でも行おうと思ったのか、あるいは事前に投与されていた薬物によるものか。
薬物の分析には、時間がかかると倫先生が言っていた。どうにも、手掛かりが少ない。
どんな麻薬だったのか分かれば、マル暴や薬坦(麻薬担当)と提携して攻められるんだが。

そうなると、恐らく容疑者のターゲットであろう「勉強会」のメンバーからの情報が頼りだ。
何故狙われているのか。ホームレス殺害について彼らはクロなのか。訊きたい情報は山ほどある。

#

「城は帰宅部だよな」

「そのはずです。過去2回は16時過ぎに会えたのですが」

俺は左手首の時計を見た。17時半に近付いている。学校で用事があるのか、あるいは裏から逃げられたか?

その時、正門から色黒のショートカットの少女が出てきた。水着が入っているとおぼしきバッグをぶら下げている。

「……刑事さん?」

俺と赤木警部は会釈した。

「薬師丸君、だったね。城君は」

彼女の表情が曇った。

「ジョーは……今日、休みました。学校には風邪って言ったみたいですけど……。
今朝、不良みたいな奴に車に押し込められたのを見てて……ジョーは、ジョーは大丈夫なんですか!??」

「不良みたいな奴?」

今回の犯人か?いや、それならそんな人目につくやり方はしない。不良ということなら、まず鶴岡和人だろう。

俺は一拍置いて、彼女に微笑んだ。

「彼は私たちに任せてくれ。一つ、いいかい?彼に最近、変わったことは」

「……変わったこと……前に話しましたけど、『勉強会』に行き始めてから、なんか不安定になったかも……。でも、最近は特に。
それより、ジョーを助けて下さいっ!!お願いします!」

涙を流しながら、彼女が言った。

「彼は大丈夫だよ。連れ去った相手には心当たりがある。もし私たちの予想が正しければ、彼は明日は学校に来ると思うよ。出直してこよう」

泣く薬師丸少女の頭をポンポンとやって、俺たちはその場を後にした。

「鶴岡が城を連れ去ったか。多分、緊急会議ってとこだな」

「ですね。多分、行き先には佐倉翔一がいたはずです。何が話されたのか、城から任意で聞きましょうか」

赤木警部は頷いた。

「にしても、物証が少ねえな。やっぱ、やったのはプロか」

「プロファイリングでは30代、医学知識のある慎重な人物とありましたがね。手強いですね」

「全くだな。アゲハにもプロが付いていたらしいし、全く不可解だ」

そもそも中学生が未知の麻薬を射っていたらしい時点で、常軌を逸している。真相はまだ遥か遠くだ。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/29(木) 21:01:37.02 ID:t6xi0SctO<> #

「にしても仁。また例のメール来たんだよな」

「ええ。今週日曜に改めて連絡するとか。あるいは、会えるかもしれないと」

俺は白のクラウン――覆面パトカーのハンドルを切りながら答えた。メールの文面は、さっき見せている。

「中途半端に知ってる感じだったな。あと、『バッドエンド・ブレイカー』の犯行だとも」

「手口は違いますが。プロの犯行が濃厚だという点は、共通してますね」

「だな。そうだとすれば、かなり大変だ。解せんのは、何故銃殺じゃないかだ。スタンガンか何かで気絶、そして毒殺。回りくどいことをする必要性はないはずだ」

「……ですね」

被害者は全員中学二年生だ。その点も、過去の「バッドエンド・ブレイカー」による殺しとは違う。それが影響しているのだろうか。

赤木警部が溜め息をついた。

「ったく、『バッドエンド・ブレイカー』の殺しだとしたらとてつもないヤマだってのに、うちの馬鹿大将はどこに消えたんだか。今日も休みだろ?」

※コンマ下、小分岐
01〜70 病欠、とか言ってましたね
71〜90 ……無断欠勤とか
91〜00 その時、スマホが震えた <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/29(木) 21:06:26.88 ID:dNOvYCD50<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/29(木) 21:21:18.79 ID:t6xi0SctO<> 「無断欠勤とか。懲戒処分は免れないでしょうが、何かあった可能性もありますね」

「……!そうだな。失点しないことに全精力を傾けてる若葉が、無断欠勤は確かにおかしい。戻ったら、何か分かるかもな」

「アゲハの件とも関連してたら、それはそれで……ですが」

クラウンは首都高を降りて、一般道に入った。空は赤みがかっている。夕暮れの日射しが眩しい。

「にしても『SHELLY』は何者なんかね。事件関係者、かつ警察関係者……意味わかんねえな」

「日曜に会えればいいですけどね。そもそも、日曜が休みかどうか怪しいですが」

「そう願うぜ。昨日はいきなり呼び出されて、嫁と娘が不機嫌でしょうがなかったしなあ。仁もデート中だったりしたか?」

「そんなとこですが、仕方ないですよ。……そろそろですね」

埼玉県警本部が見えてきた。これから、また会議だ。収穫があるといいんだが。

#

※再度小分岐、コンマ下
01〜15 若葉が戻っている
16〜85 通常ルート
86〜99 木暮管理官が険しい表情になっている。捜索一課は酷く慌ただしい
00 大変なことが分かった <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/29(木) 21:29:24.66 ID:O6RSZr/DO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/29(木) 22:02:45.71 ID:t6xi0SctO<> #

「毛利君、ちょっといいかな」

収穫なしの空疎で無駄に長い捜査会議が終わると、木暮管理官が俺を呼んだ。彼には珍しい険しい表情だ。

「どうしました?」

「突然のことで、少し困っている。安川君の件だ。どうもこのまま、察庁に召し上げられるらしい」

「……は、はぁあ!!?ちょっといきなり過ぎやしませんか??」

木暮管理官は溜め息をついた。

「全くだ。この会議の直前だ。いきなり上からそう伝えられた」

「横暴が過ぎるでしょう!?それに、ヤスの代わりは?3係の人員、ただでさえ少ないんですよ??」

「私も抵抗した!……しかし、どうしてもということだ。安川君は、もう埼玉県警には来ない」

「……ヤスからの言葉は」

「……なしだ。見所のある刑事だと思っていたが、私の見当違いだったらしいな」

ダンッ!!

机を叩いた音に、残っていた数人の刑事がこちらを向いた。

「ふざけるなっ!!!」

「……君は安川君を可愛がってたから、気持ちは分かる。私も憤懣やる方ない。だが、私にはどうしようもない」

「赤さんたちには」

「まだ言っていない。私から直接伝えるが、君に早く教えたのには理由がある」

「理由?」

静かに木暮管理官が頷いた。

「若葉課長は今回の件から外された。代わりに察庁から人物が送られるらしい。彼が君に会いたいと言っている」

「俺を?何故」

木暮管理官が首を振り、小声になった。

「分からない。明日、9時だそうだ。この件は内密にとも聞いている」

察庁から、ヤスと入れ替わりで?関連がないわけがない。どういうことだ。

「察庁から来る人の名は?」

「堺。堺修司警視正だ。キャリアで警察庁内閣官房特務捜査室副室長……らしい」

「聞いたことがない役名ですね。何者です」

「私も初耳だ。カク秘らしいが、こっそり内容を教えてくれると助かる」

木暮管理官は部屋を出ていった。恐らく、ヤスのことを伝えるのだろう。
しかし、察庁のキャリアが、俺に何の用だ? <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/29(木) 22:10:17.48 ID:t6xi0SctO<> 【6月12日、9:00】


「失礼します」

埼玉県警の会議室。部屋は狭く、まるで取調室のようだ。
実際、そこは問題を起こした警察官が呼び出される場所として知られていた。通称が「処刑部屋」。

しかし、俺が処罰される理由はどこにもない。何故ここに。

待ち人である男は窓の方を向いて立っていた。ゆっくりとこちらを振り向く。

少し長髪でやや強面の男がそこにいた。古傷なのか、額にうっすらと切り傷の治療跡が見える。年齢は、俺より少し上か。

※重要分岐です。コンマ下が50以上で特殊ルート選択可能、99、00で?? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/29(木) 22:13:01.05 ID:H7N7raTDO<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/29(木) 22:32:37.82 ID:t6xi0SctO<> 「初めまして、だね。毛利仁君」

「……はい。私に何か用でしょうか」

堺警視正はじっと俺を見ている。そして、ふっと口の端を歪めた。

「失礼。心当たりはないようだね。引き揚げて結構だ」

「は、はい?まだお会いしたばかりでは……」

俺は唖然とした。俺は何のためにここに?

「いや、君の反応を見れば十分だ。こちらの勘違いだったようだな。失礼した」

「ヤスと……安川警部補と関係があるのでは?」

ふふっと堺警視正が笑った。

「君が気にすることじゃない。捜査に戻ってくれたまえ」

有無を言わせぬ圧力が彼にはあった。俺は渋々退室する。……一体何だったのだ。

#

捜査一課に戻ると、どうにも騒がしい。木暮管理官と白島を中心に、人だかりができている。

「……どうしました?」

「戻ったか。……堺警視正の話は」

「意味不明です。何もなかったです。本当に」

「……?そうか、ならいい。それはそうと、かなり重大な話がある。まず、若葉課長が失踪した。完全に行方が知れない」

「……え?」

白島が一歩前に出た。

「仁さん、実は僕、木暮管理官のエス(スパイ)だったんですよ。若葉課長の内偵を頼まれていたんです」

「内偵?容疑は」

「捜査資料の隠蔽、改竄。この件はまだ進行中です。ただ、ある事実が分かりました」

白島が懐から1枚の紙を取り出す。……これはっ!?

「はい、戸籍謄本です。ここ、見てください」


そこに記されていたものは。



父 若葉太輔
母 金路栞 (旧姓若葉)

長女 金路アゲハ



<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/29(木) 22:33:50.04 ID:t6xi0SctO<> 今日はここまで。

なお、本スレにおいては低コンマだから悪いとは必ずしも限りません。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/30(金) 09:52:48.68 ID:Ul/NA3tQO<> 「……若葉課長が金路アゲハの父親??」

「そういうことです。母親の金路栞とはかなり早いうちに離婚していたようですけどね」

木暮管理官が俺を見た。

「白島君に調べてもらったが、過去に金路アゲハと接点があったらしい人物2、3人が不自然な死を遂げている。
実は3日夜、HAKUBAコーポレーションの白馬伸社長が変死しているが、この第一発見者も金路アゲハだった。
ただの腹上死として処理されたが、どうも若葉課長、並びに金路栞からの強烈な圧力があったらしい」

「つまり、娘の犯罪を揉み消していたと?」

「その可能性が極めて高い。荒川のホームレス射殺も、彼女とその仲間……『勉強会』といったか、そいつらの犯行だろう。
とはいえ、物証不足だ。唯一動作してなかった監視カメラのデータが隠蔽されていて、かつ無傷で発見されれば話は別だが。
今のままでは『疑わしきは罰せず』になる」

「つまり、若葉の野郎を見付けて吐かせればいいってわけか」

赤木警部が怒りを隠さず言った。木暮管理官はふうと息を付く。

「このタイミングでの失踪だ。ただの逃げならいいが、自殺も十分あり得る。
自宅は留守だが、令状なしにガサ(家宅捜索)は入れられない。通常の失踪者扱いで捜索しよう。
白島君は、過去のデータの洗い直しを。赤木君、毛利君、青葉君は、引き続きアゲハの殺人事件の捜査に当たり、余力があれば若葉課長の捜索に当たってほしい。
その他の事件は4係が遊軍として対応する。構わないね」

反論はない。

その時、深沢刑事部長が苦り切った顔でこちらに近付いてきた。

「どうしました、深沢部長」

「酷く面倒なことになってきた。……現場にも関係があるので、せっかくだからついでにここで伝えておこう」

深沢部長が、深い皺をさらに深くした。

「堺警視正からの連絡だ。金路アゲハ殺害事件について、察庁から2人が追加で派遣されるらしい。
今後は基本その2人と堺警視正が中心になって捜査が行われるそうだ」

部屋が一気にざわついた。赤木警部は「はぁあ!!?」と怒号とも叫びともつかない声をあげている。

「俺らの面子はどうなるんですか?深沢部長!これは俺らのヤマですよ!!?何も知らない察庁のボンボンに何が分かるってんですか!」

「私もそう言った。しかし、堺警視正は全く聞かない。警視総監マターだと繰り返すばかりだ」

どよめきが戸惑いに変わった。木暮管理官が深沢部長を見る。

「その2人とは」

「シークレット、だそうだ。堺警視正の直属として動くらしい。私たちは、情報をただ上にあげるだけでいいと」


……じじっ


また頭の片隅に、不快な感じが生まれた。何だ。何だこれは。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/30(金) 13:26:26.60 ID:kSs+1RKBO<> アイスキャンディ。バッドエンド・ブレイカー。何かが、強烈に引っ掛かっている。
しかも、警視総監マターというのは明らかに尋常ではない。これは、恐らく……

「察庁は、これがバッドエンド・ブレイカーによる犯行と決め打ちしてますね」

部屋にいる全員の視線が、一斉に俺に向いた。

「……何だって?」

「木暮管理官、こちらを。赤木警部には既に見せています」

俺はスマホを渡す。木暮管理官の顔が、SHELLYからのメールを読み進めるにつれ強ばっていった。

「……前も思ったが、何者だ?警察内部者?」

「分かりません。それにしては情報が中途半端です。ただ、日曜に連絡を寄越すと。そこで会えるかもしれません。
このSHELLYが言う通り、一連の犯行がバッドエンド・ブレイカーだとすれば、察庁が出向く理由も分かる。全国に跨がる殺人鬼です、確かにうちの手には負えない」

「とはいえ、このヤマはヤマだ。私たちが最後まで関わる義務がある」

俺は強く頷いた。

「その通りです。表面上は従いつつ、出し抜いてやりましょう。『勉強会』関連の情報は多分、こっちがより持っているはずです」

「……城という少年に張り付くか」

「それが早そうです。鶴岡よりは崩しやすい。行方が分からない佐倉も押さえたいですが」

「なるほどな。とすれば若葉課長の件は、青葉君と白島君で引き取ろう。そっちは、赤木君と君で動いてほしい」

俺は直立姿勢を取った。

「了解しました」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/30(金) 13:40:07.89 ID:kSs+1RKBO<> 次章は安価による選択制とします。

1 ジョー視点(注・R15程度の同性愛描写あり)
2 ヤク視点
3 アユ視点

安価下3多数決 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/30(金) 14:04:54.06 ID:G7CgQ33s0<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/30(金) 14:05:28.69 ID:M3nyPWyu0<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/30(金) 14:06:13.89 ID:CQrdykLDO<> 1 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/30(金) 20:41:47.05 ID:WbByoJIDO<> 【6月12日】


まだ、身体がベタベタする気がする。そんな錯覚に包まれ、僕は身体を起こした。
リビングには冷めたトーストと出来合いの冷凍食品。自分の出世にしか興味がない、あの女らしい。
自分の息子が昨日学校を休んだことも、まして一日中セックスに耽っていたことも知らないんだ。

#

昨日の記憶はほとんどない。ただ、ほとんど裸でいた気がする。射精しては休み、どちらからともなく互いの身体を求め、アイスキャンディを舐める。そしてまた挿れて、射精す。
翔一の、いや「サクラ」の身体はどこもかしこも気持ち良かった。男とは思えないほどの肌の柔らかさ。胸もうっすらと膨らんでて、アゲハよりずっと感度が良かった。もちろん、「中」も。

途中からは「サクラ」が僕を責める番になった。お尻の中が、あんなに気持ちいい場所なんて知らなかった。
ゆっくり、丁寧に前立腺を撫でられた時はイき狂うかとすら思った。一度翔一が中で射精した気もするけど、あまり覚えてない。ただ、気持ち良かったのは確かだ。
次は女装の準備をしてくれるらしい。どんな感じなんだろう。

口がにやけているのに気付いて、僕は戦慄した。


ああ、やっぱり戻れなくなってしまった。


それはホモだとかゲイだとか、そんな次元の話じゃない。翔一は決して恋愛対象になんかなり得ない。
ただ、僕は守っていた最後の一線を、自分で踏み越えてしまった。決して、翔一に絡めとられるのは避けていたはずなのに。

多分、僕は翔一を切れないだろう。……僕の最初の殺人を知る彼を。
それは、もう日常に戻れないことを示していた。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/30(金) 20:45:03.85 ID:WbByoJIDO<> #

ヤク、ごめん。僕は、君が思う僕に、もうなれそうもない。

気弱で、勉強ができて、少し優しい幼馴染み。そうありたかった。そうあり続けたかった。


いつの間にか、僕は泣いていた。何でこんなことになっちゃったんだろう。


誰か、僕をただの14歳に戻して。


でも、その叫びは言葉にならなかった。
――聞いてくれる人も、それを叶えてくれる人も、どこにもいないのだから。


<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/30(金) 20:50:47.71 ID:WbByoJIDO<> #

「おはようございます。どうぞこちらへ」

玄関を開けると、白髪の紳士がいた。確か、翔一の所にいた……

「矢向さんですか?……どうして」

「昨日翔一様がお伝えになったかと。これから当面、私が登下校に同行させていただきます」

道には黒塗りの車。社長か何かが乗るような高級車だ。

「ジョー!どうしたんだよ!!」

向こうからヤクの声が聞こえてくる。

「お構い無く。後部座席へ」

有無を言わさず矢向さんは、僕を促した。

※コンマ下が70以上なら英華間に合う <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/30(金) 20:52:41.10 ID:GlJUMkp40<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/30(金) 21:10:53.34 ID:WbByoJIDO<> ヤクがこちらに走ってくる。彼女が僕の5メートル手前に辿り着くのと、車が走り出したのは、ほぼ同時だった。

ヤクが泣きそうな顔で何か叫んでいるのが聞こえた。僕は唇を噛む。

「……待ってくれてもいいじゃないですか」

矢向さんは静かに答える。

「あなたが彼女を危険な目に遭わせたいというなら。あるいは、彼女に全てを話し、新たなお仲間に加えられるのでしたら構いません。
私はこの件、第三者に過ぎません。ただ、あなたのお気持ち次第です」

……答えは決まっていた。ノーだ。

ヤクは、日の当たる場所にいなきゃいけない。それは、ずっと前から決めてたことだ。
……僕みたいな人間に、もう関わっちゃいけない。

涙がまた流れてきた。

「どうされました?ご気分でも」

「……い、いえ。何でもありません」

「そうですか。なら結構です。お忘れかもしれませんので、今後の生活の留意点を。
学校では、極力会話をしないように。校外でも同様です。常に、私がお守りします。
刑事が接触してきた場合は完全黙秘で。捜査協力目的の任意同行は断れますので、ご心配なく。
そして、不審者が接近した場合は、私が責任をもって排除いたします。ご心配は無用です。無論、ご家庭ではこの件ご他言なきよう」

矢向さんは淡々と言った。……何者?

「矢向さんは、翔一の執事か何かですか」

ふふふ、と彼は笑った。

「そうかもしれませんね。むしろ同志というべきでしょうが。深い詮索はなされぬことです」

少し、声に重さが混じった気がした。僕はそれを感じ、ビクリとする。

「……ともあれ、翔一様を狙う輩が消え、警察が引くまではこの生活です。慣れてしまえばいいのです」

「……はい」

間違いなく、今の僕が置かれている状況は、異常だ。
アゲハを殺した奴は、僕の所にも来るのだろうか?

そう思うと、背筋の寒気が止まらなくなった。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/30(金) 21:22:00.14 ID:WbByoJIDO<> #

その日、僕はヤクの呼び掛けを全て無視した。泣いて喚いて、「ちゃんと答えろよ!!」と叫んでたけど、僕はただ黙っていた。
クラスの女子が、酷く僕を罵ったけど、それも無視した。きっと僕は孤立するだろう。元々孤立ぎみだったけど。
ヤクも、僕を嫌ってくれるだろう。……それでいい。それでいいんだ。

#

帰りは、僕一人だった。矢向さんが、車の前で待っている。校門から少し離れた所には……あの刑事2人だ。
ゆっくりと僕に近付いてくる。矢向さんの車に乗ると知った彼らは、急に走り出した。

「城君っ!!話があるっ!!」

朝と同じように、矢向さんが僕を促した。

※コンマ下
01〜70 そのまま発進する
71〜90 間に合う
91〜98 そのまま発進する……?
99、00 ????? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/30(金) 21:30:14.10 ID:CQrdykLDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/30(金) 21:43:30.29 ID:WbByoJIDO<> 矢向さんは僕を後部座席へと押し込むと、急発進した。刑事はその場に取り残される。

「動きが遅いですな。極力、接点は持たぬよう」

「……分かりました」

僕はホッとした直後、凄まじい恐怖に襲われた。


……こんな生活が続くのか?僕の心は、耐えられるんだろうか??


矢向さんが静かに言った。

「城様、一つ、ご伝言が。今週末、17日10時。パークハイアットにて、翔一様がお待ちです」

僕は思わず笑顔になった。ああ、アレが。あの気持ちのいいセックスが、また待ってる。


そうだ、日曜までは、この窮屈で苦痛極まりない日常を耐え抜こう。


アレガアルカギリ、ボクハイキテイケル


<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/11/30(金) 21:46:04.28 ID:WbByoJIDO<> 今日はここまで。次回は仁パートです。その後コナンパートとなります。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/01(土) 15:16:23.66 ID:vdPj3UyiO<> 【6月12日】


「城君っ!!話があるっ!!」

俺の叫びを無視するかのように彼は車に乗り込み、そして去った。赤木警部が「クソッ!!」と叫ぶ。

「……逃げられたな。何者だ?」

「……城のつてではないですね。鶴岡か、あるいは佐倉か」

俺は溜め息をついた。あれはボディーガードのようなものだろう。
城の母親は、次期厚生労働省事務次官と言われる城寿美子だ。確かにステータスはあるが、ああいう筋と関係がある人間ではない。

「しかし参ったね。俺ら警察も警戒か。今度ボディーガードの方に職質(職務質問)かけてやろうか?」

「あまり意味がないかもしれないですが。今日はどうします?薬師丸を待ちますか」

「それがいいか。城を揺さぶるには、そっちからということだな」

俺は辺りを見渡した。空はかなり曇っている。じき、雨が降るかもしれない。

※コンマ下75以上で……? <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/01(土) 15:50:25.75 ID:vdPj3UyiO<> 上げます。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/01(土) 15:56:33.96 ID:vdPj3UyiO<> なお、条件を変更します。

01〜74 通常進行
75〜85 若い女
86〜98 ?????
99、00 ??????? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/01(土) 15:57:22.78 ID:sLSFTamDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/01(土) 16:23:00.67 ID:vdPj3UyiO<> ……向こうに、若い女がいる。ショートカットの、目付きの鋭い女だ。こちらの方を、じっと見ながらスマホで誰かと話している。

「赤さん、あれ」

俺は小声で、目線を向こうにやった。

「……ちょいきつめだが、いい女じゃねえか。……誰か待っている?にしては、ちょっと変だな」

「一般人、にしては纏う空気が違いますね。あれは……」

赤木警部が頷いた。

「同業者、かもしれねえな。それもなかなか場数を踏んでる」

妙なことだった。女は多分、20代半ばぐらい。にも拘らず、気配の消し方が堂に入っている。
桜田門(警視庁)の刑事だろうか。化粧で若作りしているだけかもしれないが。

「赤さんはここで待ってください。薬師丸が来たら対応を。ちょっと、向こうに行ってみます」

「おう。桜田門と下手にやりあいたくはねえしな」

俺は彼女に向けて歩き始めた。距離は15メートル程度。そう遠くもない。

その時、女が踵を返した。逃げる?……まさか。バッドエンド・ブレイカーの一員か??

「待てっ!!」

俺は駆け出した。脚力には、そこそこの自信がある。女の先には、BMW。あそこに逃げ込むつもりか?

※コンマ下50以上で確保 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/01(土) 16:33:01.64 ID:mJ1t/ZTZ0<> ほい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/01(土) 22:20:11.74 ID:VcFcKMX/O<> 女の足は速い。ただ、いかんせん俺のそれとは比べるべくもない。
距離はあっという間に詰まっていく。10メートル、5メートル……女が諦めたように止まった。

「あー、やめやめ。さすがだね。ボクの気配に気付くなんて」

女は振り返り、屈託なく笑う。

「何者だ?そして、なぜ逃げた」

「あー……まあ、隠してもしょうがないよね。いつかはバレることなんだし。はい、これ」

女が懐から取り出した名刺には「警察庁内閣官房特務捜査室 警部補 増田清良」とある。……これは。

「君は……境警視正の」

「そう。境さんの直属。隠密裏に動かなきゃいけないけど、あなたには多分気付かれると思ってた。それにしても早かったけど」

「俺のことを知ってるのか」

増田と名乗る女の目が、一瞬だけ泳いだ。

「まあ、知ってると言えば知ってる。埼玉県警捜査一課では、赤木航と並ぶエース格だしね」

何か隠している。多分、この一件のことだ。
なぜ、遠間から観察するようなことをしていたのか。そもそも、城をマークしている時点で、ある程度の情報は持っていることになる。

恐らく、彼女の狙いは。

「……君が来たのは、バッドエンド・ブレイカーの件だな」

増田の目が見開かれた。

「……驚いた、もうそこまで。境さんの最初の見立ては正しかったんだ。何でリリースしたのかな」

「やはりそうか。察庁は、この件のために境警視正を送り込んだ。君らが実働部隊ってところか。
だが、解せない点が多々ある。なぜ察庁はこの件を埼玉県警にではなく、自分たちで納めようとしたのか。
そして、なぜ君はここで俺たちと城両方の監視をしてたのか」

「最初の答えはイエス。ボクらは『バッドエンド・ブレイカー』専門の捜査部隊さ。後は今は言えない、かな。
こちらの方が驚きだね。何で毛利警部補がここにいるのか。何で城をマークしていたのか」


じじっ……


また頭にノイズが走った気がする。

※コンマ下75以上で?95以上なら別の展開。75未満で通常進行 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/01(土) 22:30:50.48 ID:b/+FnDcT0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/01(土) 23:32:06.48 ID:VcFcKMX/O<> まただ。俺は軽く頭を押さえた。

メールのことは、言うべきではないだろう。全て俺の推理と想像とした方が、今はいい。

「……色々論理的に考えた結果だ。荒川のホームレス殺害事件に、城たちが関与しているかもしれないというタレコミがあった。
そして、その被疑者が次々殺されている。となれば、次は彼と踏んだ」

「バッドエンド・ブレイカーについては?これまでと手筋が大分違うけど」

「……バッドエンド・ブレイカーについては、俺の妄想込みだ。ただ、金路アゲハの殺しで、奴の可能性もあるぐらいには思い始めた。あれは、プロの手口と踏んだ」

へぇ、と増田が感心したように呟いた。

「やはり、いい線行ってるね。堺さん、もったいないことしたかもなあ。
ま、いっか。さっき呼び出しがかかったんだ、今日はこれでさよならだね。
多分そのうち会えると思うよ」

「待て。まだ話は終わって……」

増田は微笑みながら、運転席に座った。そしてイグニッションボタンを押す。ブロロロ……と、低い排気音が響いた。
そして、運転席のドアウィンドウがゆっくり降りる。

「あ、そうだ。一つだけ忠告。
今日城についてた、あの初老の紳士。……あれには気を付けて。迂闊に手を出すと、死ぬよ」

「……何??」

ウィンドウは閉まり、BMWは去っていった。最後になかなかの爆弾を残して。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/02(日) 10:32:45.34 ID:6c1e04aIO<> #

「そうか、あの察庁のか」

赤木警部が苦り切った顔をした。

「要は察庁は、この件を自分のところでハンドリングしたいのだと思います。前に俺が言った通りみたいですね。
なぜ、堺警視正が直属の捜査員を秘匿にしたのかはよく分かりませんが」

「そこはよくわかんねえな。確実に言えそうなのは、向こうさんも城とかが次のターゲットと見てるってことだ。どこから情報仕入れたのかね。……ヤスか?」

「考えたくないですが。あの増田って女に、ヤスの話をすればよかったですね」

ヤスが戻された理由は、これで見当が付いた。ヤスはSHELLYのことも、「勉強会」のことも知っている。
俺のことも、あるいはヤスから聞いたのかもしれない。

「ったく、警察内部でやりあってもしゃあねえだろうに。ただ、話は通じそうな感じだったんか」

「一応は。階級からしてキャリアでしょうが、嫌な感じはさほど。ただ、あの城と一緒にいた紳士には気を付けろと」

「……知ってるのかね。確かに、堅気ではなさそうだが」

それも「死ぬよ」とは穏やかではない。金路アゲハの所にいたのと、同じ感じだろうか。

「城を詰めるにしても、やり方は考えた方がいいかもですね……っと、来ましたよ」

校門から出てきたのは、薬師丸英華だ。酷く落ち込んでいるように思える。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/02(日) 22:15:12.93 ID:dPoKPoyeO<> 「薬師丸君、だね。少し話が」

薬師丸は顔を上げた。既に目が潤んでいる。何かあったのは明白だ。

「ジョ、ジョーが……」

「彼のことだね。少し落ち着いて話せる場所に行こう。
彼が変わってしまった、そんなところかな」

「……どうしてそれを……!?」

彼女が驚いたように俺を見た。

「伊達に刑事はやってないってことかな。じゃあ行こうか」

#

「……なるほどね」

薬師丸から一通りの話は聞いた。赤城警部が加熱式たばこを深く吸う。

「聞いた限りじゃ、昨日城に何かあったな。
ついでに言えば、そのあからさまな態度。あんたを自分から遠ざけようとしている。
演技が下手だなあ。少しずつ距離を取るなら、あんたを傷付けずに済んだはずだがねぇ」

「俺も同意です。彼についていたあの紳士。明らかに堅気じゃない。
そういう世界に、君を近寄らせたくなかったんだろう」

薬師丸は俯きながら、小さく頷いた。

「ジョーは、そういうところのある奴ですから……。昔からそうです。
いつだってオレ……いやあたしを守ろうと。自分が傷付いてでも」

「嬢ちゃん、彼にホの字なのか?」

赤城警部の言葉に、彼女の顔が一気に赤くなった。

「そっ、そんなっ……!!た、ただの幼馴染です。家が近いから」

「ま、そういうことにしておこうか。しかし、城はどう思ってるんだろうねえ」

「……小6までは、普通に接してくれてました。あたしに気を遣うようになったのは、それからで……」

俺はグァテマラを一口飲んだ。

「何があったのかな?」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/02(日) 22:35:56.25 ID:dPoKPoyeO<> 「……あたし、いじめられてたんです。ハーフだから」

「ハーフ?」

よく見ると、少し彫りが深い。肌の色も、日に焼けているのかと思ったが地黒のようだ。

「ママがフィリピン人で。それで、ちょっと目立つから」

「それで、小6の時に何かあったと」

戸惑いがちに、薬師丸が頷いた。

「元々女子の中で嫌ってる子がいたのは知ってました。その子のお兄さんが、あまり良くない人で。
それで、何かお兄さんに言ったんだと思います。そうしたら、そのお兄さんが……ストーカーみたいになって」

「ストーカー、か」

彼女が震えている。触れられたくない記憶であるらしい。
赤城警部が、ふうと白い煙を吐いた。

「それで、城が守ろうとしたと」

「あたしがそのことをジョーに伝えたら、『僕が絶対に守るよ』って。彼が何をやったかは知りません。
ただ、その4日後……そのお兄さんは死にました。事故死、だったと」

俺と赤木警部は一瞬視線を交わした。

「本当に事故死だったのかな」

「……って聞いてます。ジョーも疑われたけど、アリバイ、ってヤツがあったらしくて。
それで、あたしへのいじめは終わりました。でも……」

「城君との関係は戻らなかった、と」

「どこか、線を引いてるような感じがしてました。それが嫌で……。
男友達みたいな感じになればいいのかなって、自分の一人称も変えました。でも、距離は離れるばかりで……」

「『勉強会』の存在だね」

薬師丸がはっとしたように俺の目を見た。

「……どうしてそれを?」

「刑事ってのは、普通の人が考えているより色々な物事を知っているものなんだ。
率直に言おう。彼の変化にも、それが関わっている、と俺たちは踏んでいる」

彼女が目を見開いている。赤城警部がそれに続いた。

「実はなぁ、日曜に殺された金路アゲハ。『勉強会』の一員だったんだよ。
で、何か月曜にあったんじゃねえかって、俺たちゃ踏んでる」

「そ、それじゃ……次はジョーかもしれないってことですか!!?」

薬師丸が叫んだ。俺は少し多めにコーヒーを飲む。

「可能性がある。だからあの紳士がボディガードについた。
俺たちはそれを止めたいと思っている。そのためには、君の協力も必要になるかもしれない」

「あ、あたしに何ができると……?」

「最小限でいい。少しだけ、彼の動向を教えてくれればいい。これが、俺の連絡先だ」

俺は名刺をテーブルに置く。

「それと、城君の自宅を教えて欲しい。何かあった時のためだ」

薬師丸は、小さく頷いた。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/02(日) 22:49:13.31 ID:dPoKPoyeO<> #

「ありゃあ、殺ってるかもな」

「殺ってるって……城が小6の時の件ですか」

助手席の赤木警部が頷く。

「アリバイがあったって言ったが、どこまでかね。まあ所轄がめんどくさがって、小6の城を真剣に調べなかっただけかもしれんが。
小6の殺人なんて、仮に立件されたらメディアのいい餌だからなあ」

「ただ、薬師丸は疑っているようでしたね。当時の資料を洗い直しますか」

「……なーんかこれも若葉が握りつぶしてそうだねぇ」

「……ありそうですね。何にせよ、城にも脛に傷がありそうですが」

「母親を当たるか。事務次官候補か、放任っぽいねえ」

やれやれと言いたげに、赤木警部が窓の外を見た。

「で、その若葉課長。まだ未発見ですか」

「特に連絡はないからねえ、多分。白島から、資料廃棄や改竄の証拠が出たという話も聞いてない。
こっちもこっちで、中々難航してんなぁ」

俺はハンドルを握り、溜め息を付いた。地道にやっていくしかないか。

※80以上で事件進展、未満ならコナンパートへ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/02(日) 22:52:35.67 ID:XmOOHeOG0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/02(日) 23:03:29.08 ID:dPoKPoyeO<> 今日はここまで。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/03(月) 12:48:13.02 ID:5ucnHNKTO<> 【6月13日】


「……しかし……佐倉を……」

朝、リビングから聞こえるコナン君の声で目を覚ました。あたしはそっとリビングを覗く。タブレットを前に、彼が喋っていた。会議、なんだろうか。
時計を見ると、まだ7時ちょっと過ぎだ。随分と早い時間にやるんだな。

「はい。あ、アユさんが起きたみたいです。1回切ります。……おはようございます」

「あ、ああ……お邪魔だったかな」

少し考えた後、コナン君は微笑んだ。

「構いませんよ。ただ、網笠さんに知られると煩いですから、タブレットの後方に」

「聞いてていいの?」

「いつかは分かることですし。ある程度進捗を聞いててもらった方が分かりやすいですから」

あたしがコナン君の向かいに座ったのを確認して、コナン君がタブレットに触れた。

「失礼しました。吉岡さんは一度寝室へ。今日の方針でしたね」

『そうだ。佐倉の居場所は、新宿都庁周辺でほぼ固まった。近辺のタワーマンション、ホテルだろう。特定作業はどうだ』

『あの近辺で長期滞在ができてセキュリティがいいとなると相当限られます。大本命がパークハイアット。ただ、特定できてもどうやって誘き出すかですね』

須田さんの言葉に、コナン君が頷いた。

「この2日、城の自宅前で張ってましたが、10日は鶴岡、11日は別の車が迎えに来ていました。問題は後者で、多分その筋の人間です」

『筋者……大誠会か』

「どうでしょう。ただ、迂闊に近付くのは危険な気がしました」

『鶴岡の方は』

『似たような感じ。ごっついのがいて、寄り付くのもキツいね。佐倉か鶴岡が手配したんだと思う』

由依ちゃんの言葉の後、沈黙が流れた。

「とはいえ、天岩戸から佐倉を引っ張り出さないと意味がありません。あれは、金路アゲハのように自分で隙は作ってくれない」

『発信器を付けるのも難しい、か。そうなると』

「城か鶴岡を強請って呼ばせる、ですね。二人に付いてるボディーガードをどう剥がすかという問題はありますが」

溜め息が向こうから聞こえた。

『長期戦、だな。いつまでも引き込もっていられないはずだが』

「差し当たり有力なのは、荒川の銃殺をベースに強請る手でしょう。ただ、それにも物証はいる。
単に知っていることだけをアピールしても、二人が動くとも思えないですし」

『警察に先んじて抑えねばならんのか。難儀だな』

『それについて気になる話あるよ。埼玉県警の若葉課長、行方不明って。金路アゲハの父親ね』

網笠さんの声の調子が少し上がった。

『それはなかなかだな。カーナンバーから行き先は探れるか』

『それは無理。どうも公共交通機関使ってたみたい。ただ、こっちを当たればいいんじゃない?金路栞』 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/03(月) 13:27:42.50 ID:5ucnHNKTO<> 『金路栞か、しかし警察の捜査にも顔を出さないんだろう?僕たちでどうにかできるんだろうか』

『私たち『だから』よ。警察は強請りはできない。それに、将来党首を目指す彼女にとって、噂程度でも致命傷になり得る。呼び出しに応じる可能性は、そこそこ高いと思うけど?』

あたしはふと疑問に思った。コナン君もそうだけど、警察内部の事情に詳しすぎる。
そりゃ、彼らが20年後の警察だから当然かもしれない。ただ、それにしても内部で何が起きてるか、相当知っているように思えた。

話はあたしの疑問に関係なく進んでいく。

『問題はどうやって呼び出すかだ。手紙でも送るか?秘書に握り潰されそうだが』

コナン君の目が、あたしを見た。……ひょっとして、あたしを?しかし、すぐに首を振る。迷ってるみたいだ。

「一応、今日浦和で講演会があります。そこで、上手くすれば彼女に接触できるかもしれない。何らかのメッセージを、彼女に伝えることは不可能ではないですが……」

1 協力を申し出る
2 黙っている

※安価下3多数決、ただし1〜3の合計が150以上の場合、別ルートへ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/03(月) 14:01:14.63 ID:xoqu98Ql0<> 1 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/03(月) 14:51:48.73 ID:5ucnHNKTO<> 上げます。再開は夕方以降です。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/03(月) 14:54:33.88 ID:kMjQFWmDO<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/03(月) 15:32:04.34 ID:zjGDKgPv0<> 一応1 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/03(月) 20:46:21.27 ID:HUKwM8/lO<> ※特殊ルートへ

あたしはコナン君の目を見た。……秋山に見つかるかもしれない。でも、せめて少しでも役に立ちたかった。

(本当にいいんですか)

コナン君が少し席を動かし、あたしに小声で言う。あたしは首を縦に振った。

ふーっ、と長い息をコナン君がつく。そして、「あっ」と小さな声を上げた。

コナン君が急いで席に戻る。

「思い付きました。これなら、リスクを最小限に、しかも金路栞にだけ伝わるメッセージを送れる」

『ほう。それは何かな?』

コナン君がにっと笑った。

「『アイスキャンディ』、ですよ」

#

あたしはコナン君と部屋で待機することになった。下準備は、須田さんがやってくれるらしい。

「本当に上手く行くの?」

「まず間違いなく。金路栞もアイスキャンディについて無知ではないはずですから」

「……さっきも聞いたけど、それって麻薬、なんだよね。何で子供がそんなの持ってるの?」

コナン君は視線を落とした。

「そこの詳細は、20年後もまだ。ただ、あれは僕の父さんのチームが開発した新型の認知症治療薬の技術が使われています。
多分、会社の誰かか、あるいは……あの原理を開発した東大の青山研究室の関係者が関わっていると思います。
歴史が早まったのが何故かは分からない。ただ、佐倉にはそのつてはあっても不思議じゃない」

「そんなに凄い子なの?」

コナン君が拳を握り、目は憎悪に燃えた。あたしは思わず身動ぎする。

「……少なくとも僕の歴史では。犯行後も脅迫でやらされたと言い張り、マスコミをも味方に付けた。
父親の運営する佐倉法律事務所がバックアップしたらしいですが、まだ裏があるという噂です。
そして、全ての責任を大虐殺中に死亡した城隆一郎と鶴岡和人に被せ、本人はのうのうと整形、改名した。20年後は、一端の実業家気取りです」

ゴクリ、とあたしは唾を飲み込んだ。……中学生がそこまでできるものなんだろうか。

「ちょっと突拍子もなくて、いまいち信じられないんだけど。20年後って、どんな世界なの」

コナン君は首を振った。

「それはできません。今を生きるあなたが、未来のことを知っても不快になるだけだ。
それに、僕らは未来を変えるために動いている。殺人が良くない、それは分かります。しかし、それによって救われる命があるなら。日本がより良い方向に進むなら。僕は躊躇わない」

「……そんな酷いの」

「これ以上はやめましょう」

コナン君が苦笑した。どうも、今より良くなっていることはなさそうだった。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/03(月) 20:52:41.53 ID:HUKwM8/lO<> 「でも、講演会の差し入れに普通のアイスキャンディを送るなんて。それで分かるものかな」

「金路栞は娘のアゲハが何をやっていたか知ってたはずです。無論、白馬の件も。その死因が何であるのかも」

「その、金路栞はアイスキャンディの一件に関わってるの?」

「後世では。ただ、今はどうでしょうね。少なくとも言えることは、アイスキャンディの差し入れを見た栞は、確実にその意味を悟る。
後は、荷物についてる連絡先から、僕のプリペイド携帯に連絡が来るといった案配です」

コナン君が時計を見た。

※コンマ下60以上で会話イベント続行 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/03(月) 20:56:55.26 ID:cJpBu+Nbo<> はい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/03(月) 20:57:07.17 ID:JpnfuAkL0<> ほい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/03(月) 21:26:36.09 ID:HUKwM8/lO<> 「……そろそろ電話が鳴る頃ですね」

講演会は昼で終わる。そして、電話の応対をするのは……あたしだ。

大きく深呼吸する。あたしはプレッシャーに強い方じゃない。口が回る方でもない。
でも、黙って何もしないまま、コナン君の元にいるのも嫌だった。大丈夫、愛想笑いと営業トークなら、そこそこ慣れてる。


プルルルル……


携帯が鳴った。あたしは通話ボタンを押すのを一瞬躊躇し、目をつぶりながらそれを押し込んだ。

「もしもし」

『……あなた、誰?』

キツい、どこか尖った高い声が聞こえてきた。多分、金路栞だ。

「名は明かせません。ただ、あなたの亡くなった娘さんのことを知っている、と言えば分かってくれま……」

『ふざけないで!!あんなもの送り付けてくるなんて、何なの!?あんたにアゲハの何が分かるというのよ??』

ヒステリックな叫びが聞こえる。……コナン君が言った通り、混乱しているみたいだ。

あたしは胸に手を当てる。大丈夫、ここまでこっちの予想通りだ。

「なら、あなたのお嬢さんが犯した殺人の音声証拠。ネットにばらまきますよ」

『……なっ???』

コナン君がタブレットをこちらに持ってきた。既にプレイヤーの準備はしてある。

……

適当な所で、コナン君がプレイヤーを切る。これ以上は、あたしも不快だ。

「以上です。ただのいたずらでないことは、分かってもらえますよね」

『……あんたが、アゲハを殺したの』

「私ではないです。ただ、人からもらっただけです。あたしは、これをばらまくつもりはない。彼女のファンの子が、悲しみますから』

『私を強請ろうというの?警察に訴えるわよ、それであんたも終わり……』

「その前にあたしはこれをネットに流しますよ。そうしたら、あなたの政治生命も何もかも終わり。それは嫌でしょう?」

栞が黙った。10秒ほどの静寂の後、彼女から口を開いた。

『要求は?どうせ金でしょうけど』

「お金は要りません。あなたの地位も生命も保証します。ただ、あなたの別れた旦那さんの居場所を知りたいんです」

『えっ……??』

「埼玉県警捜査一課課長、若葉大輔。今、行方不明って聞いてますけど」

あたしはコナン君が持つタブレットを見た。話すべき内容は、全てここに書かれている。カンペみたいなものだ。

※コンマ下
01〜25 ……知らないわよ
26〜60 もう死んでると思う
61〜90 潜伏先は知ってる
91〜00 ……指定する場所に来て <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/03(月) 21:32:58.87 ID:JpnfuAkL0<> ほ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/03(月) 22:07:04.90 ID:HUKwM8/lO<> 『……潜伏先は知ってる。伊香保の龍山荘』

「あなたが協力したと?」

『無能だけど、あいつが捕まったら私も終わる。資料を処理したら、どっかで首吊ると思うけど』

コナン君の顔色が変わった。

(早く行った方がいいっ!)

あたしは頷いた。伊香保だと、車を使うのが最短だ。これは誰かに手配してもらうしかない。

「まだ生きてるんですよね」

『金が尽きるまでは生きてると思う。……本当に、約束は守るのよね』

「あなたが約束を守るなら。明日には、あなたの事務所にお送りします」

『ならいいわ』

急に関心をなくしたかのように、栞は電話を切った。

「本当に大丈夫なの?」

「保身さえ確定するなら、彼女は動かないでしょう。全てが終わってから、マスターデータを流しますがね」

コナン君は冷たく笑った。

「でも、伊香保に行くのに足が……」

「それなら心配要らないです。実は、車あるんです。免許は、持ってますよね」

懐からコナン君が鍵を取り出した。

「興也さんも由依さんも、平日のこの時間は動けない。父さんももちろん動けないし、『おやっさん』も無理です。動けるのは、僕らしかない」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/03(月) 22:07:32.17 ID:HUKwM8/lO<> 今日はここまで。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/04(火) 11:58:03.43 ID:EJswOJL6O<> #

「車を運転するのは半年ぶりだけど、本当にいいの?」

「いざとなったら僕が横から運転しますから気にしないで。行きますよ」

用意されていたのは白いコンパクトカーだった。アクア、っていうのかな。
最初はおっかなびっくりだったけど、段々と思い出して慣れてきた。群馬では車がなきゃ生活できないのだ。

しかし、なかなか話題がない。あたしは緊張でそれどころじゃないし、コナン君も難しい顔をしている。……困ったな。

「ね、ねえコナン君。音楽か何かない?」

「音楽、ですか……」

コナン君はリュックからスマホを取り出した。そして、それを車に接続する。

「アユさん、レッチリ好きでしたよね?これどうです」

スピーカーからノリのいい曲が流れてきた。


「All around the world, we could make time
Rompin’ and a stompin'
‘Cause I’m in my prime
Born in the north and sworn to entertain ya
‘Cause I’m down for the state of Pennsylvania....」


「『Californication』の『Around the world』ね。このアルバム、すごく好き」

「僕もです。この背景が、またいいんですよ」

「背景?」

コナン君が微笑んだ。

「ギタリストのジョン・フルシアンテがヤク中になって廃人手前まで行って、バンドがボロボロの中復帰したのがこの作品なんです。
これでダメなら、全部終わりにしようと。そういうアルバムなんです」

「何か、全体的に物寂しいよね。壊れやすいというか、なんというか……それまでのファンキーな曲とは、まるで違う」

「ええ。ギター、すごくシンプルでしょ?壊れかけのジョンはそれしかできなくなってた。でも、それが味になってこのアルバムは売れに売れたんです。
逆に、追い詰められたからこそ、彼らはこんな素晴らしい作品が作れたんだとも言える」

スピーカーからは「Scar Tissue」が流れていた。グラミー賞も取った、名曲だ。

「この世界も同じです。……今なら、やり直しが効く。だからその前に、僕らがなんとかしないといけない」

「20年後、詳しく話せないみたいだけど……そんなに酷いんだ」

「具体的に言えなくて、ごめんなさい。ただ、『熊谷大虐殺』とその際の警察、司法の甘い処分が、世の中を悪い方向に大きく変えたとだけ言っておきます。
単に数百人の命を救うためじゃないんです」

空は冴えない曇り模様だ。車は関越自動車道に入っていく。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/04(火) 12:20:32.81 ID:EJswOJL6O<> #

渋川伊香保インターで降りて20分。あたしたちは伊香保の温泉街に着いた。
ここに来るまで、コナン君とは少し音楽の話で盛り上がった。20年後の音楽界は、大体ダメになっているらしい。
今の流行に疎いあたしにとっては、今とどう違うのかよく分からなかったけど。

「『龍山荘』は高級旅館です。平日ですが、予約なしで泊まれない。だから、別に宿を取りましょう」

「……って泊まるの??」

コナン君はきょとんとしている。

「多分、そこそこの長丁場になります。上手くすればすぐ帰れるかもしれませんが。
秋山の件は、多分大丈夫でしょう。店舗のないここに、彼の関係者がいるとは思えない」

「そ、それはいいんだけど。あ、あたしたちの関係は??」

「姉弟で行きましょう。さほど、不自然じゃないはずです」

あたしは赤くなった。そりゃ、見た目はそれでいいけど……コナン君の「中身」は2つ上なんだよね。彼は意識しないんだろうか。


「龍山荘」近くの適当な旅館に、あたしたちは向かうことになった。フロントで聞くと、部屋はあるらしい。

コナン君が少し外に出ている。

※コンマ下、中程度の分岐です

01〜20 まずいっ
21〜40 困ったな……
41〜98 通常ルート
99、00 ?????? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/04(火) 12:22:45.01 ID:IMvu2YVe0<> ん <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/04(火) 12:36:41.95 ID:EJswOJL6O<> 「まずいっ」

コナン君が慌てて戻ってきた。彼には珍しく、かなり焦っている。

「……どうしたの?」

コナン君は耳打ちした。

(もう警察が来てる。それも、相当厄介なのが)

「えっ!?」

(僕が街中を歩くのは、かなり危険だ。詳しくは、部屋で話します)

あたしは怪訝そうな顔をしているフロントの女性から鍵を受け取り、部屋に向かった。シーズンオフの平日だからか、部屋は値段のわりになかなか広い。
でも、ゆっくりとくつろげる状態でもなさそうだ。コナン君が大きな溜め息をついた。

「完全な誤算です。まさか、向こうもここを突き止めてたなんて」

「向こう?どういうこと?」

「外に一人、警察庁の刑事がいます。それも、ただの刑事じゃない。奴は、僕の顔を知ってるかもしれない」

「……え??」

コナン君は、何かを必死に考えている様子だった。彼は軽く首を振る。

「やはり奴がここにいるのは、偶然ではあり得ない。アユさん、少し負担をかけてしまいますが、いいですか」

「だからどういうことなの?ちゃんと説明してよ!」



「……外にいるのは20年後から来た刑事ですよ。僕らとは、対立関係にある」


<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/04(火) 13:05:52.45 ID:EJswOJL6O<> 「……えっ」

あたしの頭は混乱していた。20年後から来た「タイムリーパー」が他にも?
あたしの疑問を見透かすように、コナン君は溜め息混じりで答えた。

「タイムリーパー……『覚醒者』は数こそ少ないですがそれなりにいます。そして、一枚岩でもない。
20年後の日本は、二分されています。僕らと対立する陣営の人間も、この時代に飛ばされている。その一人が、奴です」

「それが今の警察にいるってこと?」

コナン君は額に冷や汗を流しながら頷いた。

「奴らの目的は、僕らの確保です。それだけは、絶対に避けなきゃいけない。
そして、20年後で僕と奴は顔見知りです。僕の人相はそれなりに変わってはいますが……疑われる可能性は相当ある。
だから、僕は外に出られません。若葉の発見と確保には、アユさんの力が不可欠だ」

「そんなっ!?あたしにそんなことできるわけ……」

「最大限の協力はします。……これを」

コナン君がリュックから補聴器みたいなものを取り出した。

「念のため持ってきてて良かった。補聴器型の発信器です。こちらから指示を送ることもできる。ただ、これ自体を怪しまれたら終わりですが」

あたしの鼓動が速くなった。コナン君は話し続ける。

「奴と接触することがあるかもしれません。下手に逃げると疑う人間です。極力、普通のアユさんでいてください。
龍山荘のフロントに着いたら指示を出します」

「普通って、普通でいるなんて無理よ!」

コナン君があたしの目を見た。


次の瞬間。


唇に、小さな柔らかいものが触れた。


「……僕がついてます。だから……心配しないでください」


あたしは、思わず頷いてしまった。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/04(火) 13:13:32.05 ID:EJswOJL6O<> #

あたしはホテルの外に出た。龍山荘は、確かこの上だ。

『できるだけ、散歩する感じでいてください。何なら、買い物だってしていい』

右耳から聞こえるコナン君の声に、あたしは小さく頷いた。
龍山荘は重要文化財でもあると聞いている。観光客が、そこを訪れるのは不自然ではない。

傾斜のきつい坂道を、一歩一歩踏みしめるように登っていく。その先に、古く威厳のある和風の邸宅が見えた。周囲は木々で囲まれている。

※コンマ下

01〜10 太った男と少し背が高い若い男がいる
11〜85 若い軽そうな男に会う(通常進行)
86〜98 誰にも会わない
99、00 酔っ払った男が出てきた <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/04(火) 13:14:51.14 ID:UyJS7rQDO<> や <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/04(火) 14:53:32.28 ID:gwfiV75UO<> 龍山荘。コナン君の説明によると、明治初期に建てられた旧財閥の邸宅を改築したものらしい。
一泊4万円以上する超高級旅館だけど、入口の売店は観光客でも使えるみたいだ。

あたしはその中に入った。

『アユさん、龍山荘に入りましたね。周りに、癖っ毛で身長170cmちょっとぐらいの男はいますか』

辺りを見渡す。それっぽいのはいな……

トントン

「ちょっとお姉さん、いいっすか?」

後ろから肩を軽く叩かれた。振り向くと、まさにさっきコナン君が言っていたような、癖っ毛の青年がいる。……この人が?

「きゃっ!?」

あたしは驚いて、一歩後ろに跳んだ。テーブルに当たり、上の工芸品がいくつか倒れる。

「あー、ごめんっす。脅かすつもりはなかったんすけど」

苦笑しながら青年が工芸品を元の位置に戻していく。あたしも慌てて手伝った。

「い、いえ……ど、どうしたんですか」

「いやあ、ちょっと。この近辺で、白髪で髪が少し長い、眼鏡の中年を見なかったかな、と」

……それは、コナン君から聞いた若葉の特徴だ。彼も探しているんだ。
あたしは少し間を置いて、首を振った。

「し、知らないです」

「……そうっすか。じゃあしゃあないっすね」

彼は懐に手をやると、名刺を取り出した。

「もし見付けたらここに連絡してほしいっす。よろしく」


そこには、「警察庁内閣官房特務捜査室 警部補 安川徹」とあった。


<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/04(火) 21:50:49.65 ID:whuS9SB2O<> 右耳からコナン君の声が聞こえる。

『アユさん、一度引き上げて。仕切り直そう』

安川という刑事は、鼻歌を歌いながらガイドブックを読んでいた。この人が、コナン君を本当に狙ってるんだろうか?

#

「これ、刑事の名刺。彼で間違いない?」

コナン君は苦笑した。

「『また』偽名か。そんなに気に入ってるんだな」

あたしは龍山荘で買ってきたプリンをすくい、口に入れた。濃厚で、卵のコクがすっと舌に拡がっていく。

「偽名?」

「そう。本名は古畑玲。アユさん、あいつには心を許しちゃいけない」

「そんなに?見た感じ、軽いけどいい人そうだったけど。それに、何で同じ警察で対立してるの?」

「警察は警察でも、奴は公安です。今の肩書きは違うみたいですが。僕らとは、『昔』から全く違う行動原理で動いてる。
今の彼らの狙いは、僕ら『バッドエンド・ブレイカー』の確保、あるいは抹殺。それだけは分かってる」

公安?推理小説か何かでは話にきいたことはあるけど、実際に会うのは初めてだ。
そして、コナン君が彼を恐れる理由も何となく分かった。……コナン君も、命を狙われてたんだ。

「でもなんで若葉を狙ってるの?」

「彼らのターゲットが、僕たちだけじゃないってことでしょうね。佐倉か、その周りにいる誰か。『覚醒者』の犯罪者を捕らえるというのは、僕らと実は利害が一致してる。
違うのは、僕らは現状を変え、彼らは現状の維持を目的にしてるってことです。そこは決定的に違う」

コナン君は、客室にあったコーヒーを飲んだ。彼のプリンは、半分ぐらいなくなっている。

「じゃあ、これからどうするの?そんなの相手に、マトモにやりあうなんてあたしには無理だよ」

コナン君は目を閉じ、そして開いた。

「3つ、手があります。まず、ここで諦めてしまうこと。一番安全だけど、一番何もない。そして何か別の手段で、城や鶴岡を揺さぶらないといけない。
次に、正面突破。これからもう一度龍山荘に行って、様子を探る手です。でも、古畑がいたらかなり厄介です。
最後の手段は……警察を呼ぶ」

「警察??何でそんなこと」

「警察といっても埼玉県警です。埼玉県警も、若葉は追ってる。ただ、古畑とは取れる選択肢に違いがあるんです」

「えっ?」

どういうことだろう。頭の良くないあたしには、よく分からない。
コナン君は、プリンを口に運んだ。

「古畑の場合、若葉を生かすという選択肢はないんです。『覚醒者』狩りは、誰にも悟られてはいけないから。
だから、アユさんに警察を名乗りながらも、正面から行かなかった。炙り出されるか何かして、一人になったところを確保。そして自殺に見せ掛けて殺害するつもりなんでしょう。
ただ、埼玉県警の目的は逮捕です。正面から当たっていくことができる。そこで首尾よく隠蔽の証拠や何かが出てくれば、城や鶴岡はもちろん、佐倉もただじゃすまない」

「でもそれって……賭け、だよね。さっきの、古畑さんが先に見付けたら」

「そう、電話しても無駄になる。埼玉からここまではざっくり2時間強。だから、確実じゃない」

※コナンが選んだのは……

1 撤退
2 愛結によるリトライ
3 埼玉県警への電話
4 自由安価

※安価下3多数決、1を選択の場合のみ代替案を書いてください <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/04(火) 22:07:50.19 ID:whuS9SB2O<> 上げます。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/04(火) 22:44:02.98 ID:oo4TmE3MO<> 4
栞を通し、呼び出す。
気付かれないように変装させて。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/04(火) 22:50:41.96 ID:whuS9SB2O<> もう一度上げます。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/04(火) 23:20:12.80 ID:SRAqS0jfO<> 0000までに満たさない場合は再投票です。

なお>>294は有効ですが、栞の職業と性格上成功する確率は高くはありません。
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/04(火) 23:25:34.14 ID:wH9p29Zk0<> 3 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/04(火) 23:48:35.66 ID:UyJS7rQDO<> 3 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/05(水) 14:45:07.58 ID:bz34PFd6O<> コナン君は目を閉じて黙った。そして、ゆっくりと目を開け、あたしを見る。首を弱く横に振ると、苦笑混じりに呟いた。

「……僕も甘いな」

「えっ?」

「色々考えました。あなたを囮に使い、古畑の動きを封じた上で僕自身が乗り込む。そんなことも考えてました。
……ただ、それはやっぱりできなかった。あなたを危険な目に遭わせたくはない。何より、僕が耐えられそうもない。
アユさん、警察に電話をしましょう。賭けに出ます」

コナン君の肩は、僅かに震えていた。多分、あたしがさっきの古畑って刑事を誘惑すれば、コナン君は若葉という男に接触できるかもしれない。
でも、彼はあたしのために、可能性が高い手段を捨てたのだ。あたしは胸が締め付けられるような、何ともいえない思いになった。

「……大丈夫なの?」

「今の時間が16時半。今から電話して、警察が来るのが19時過ぎでしょう。20時までには、決着が付きます」

コナン君が、窓の外の曇り空を見た。

「……正念場、です」

※コンマ下が40以上で若葉逮捕に成功、未満なら再判定 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/05(水) 15:05:38.40 ID:5j26YqEs0<> ほい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/05(水) 15:12:39.52 ID:bz34PFd6O<> ※若葉逮捕に成功

ここで安価選択します。どちらを先にしますか?

1 コナンパート(この続きから)
2 仁パート(前回の仁パートの続きから)

どちらにせよもう片方もやります。安価下3多数決です。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/05(水) 16:14:27.65 ID:gpYnOMWG0<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/05(水) 16:18:40.03 ID:VkhyBnBY0<> 1 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/05(水) 21:56:24.78 ID:dZ3dF4M0O<> 【6月12日、18時32分】


「夕食の準備ができました」

仲居がそっと部屋の襖を開けた。盆には、懐石料理が乗っている。簡易コンロの上には赤城牛の朴葉焼きがあった。

「あ、火を付けるのは待ってください。多分、少し食べ終わるまでかかるでしょうから」

コナン君がライターを持つ仲居を制した。彼女は不思議そうな顔をして下がる。

「……もうそろそろ、よね。どうなればいいの」

「若葉が逮捕されれば、僕の仲間から連絡が来ます。来なければ、僕の負けです」

「仲間?須田さんか、由依ちゃん?」

「別の人です。今後会うかもしれないし、会わないかもしれない。
ただ、外からパトカーのサイレンが聞こえてきたら……ほぼ、失敗でしょう」

コナン君は、瞑想するかのように目を閉じた。

「パトカーが来たら、上手く行ってるんじゃ?」

「警察の不祥事です。埼玉県警は、できるだけ騒ぎにはしたくないはずです。
パトカーが来るような事態ということは、死体か何かが見つかったということになる」

彼は食事に手を付けない。やはり、不安なのだ。あたしも、とても食べる気になれない。


会話のないまま、重苦しい時間だけが過ぎていく。


<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/05(水) 22:22:49.62 ID:dZ3dF4M0O<> 【6月12日、19時53分】


プルルルル

コナン君の懐から、音が鳴った。彼は素早くそれを取り出し、耳に当てる。

「はい。……ええ、分かりました。了解です。……古畑がいます。翌日昼まで待機、ですね」

すぐに電話を切った。長い、長い溜め息をコナン君がつく。

「……若葉が確保されたと」

「……やった!!」

あたしはコナン君に抱き付いた。やっと、重苦しい時間から解放されるのだ。
コナン君は少し頬を赤くしながら苦笑する。

「ちょっと、恥ずかしいですね」

「あっ……ゴメン」

また、彼の中身が29歳であるのを忘れてしまっていた。彼が本来の姿なら、こんなことはできない。

「でも、警察内部の人なの?その仲間って」

「まあ、そんなとこです。大分冷めてしまいましたね、食べましょうか」

そう言えば、何も食べてない。緊張から解かれ、一気にお腹がすいているのを感じた。

「そだね。じゃあ、いただきます。あ、火付けなきゃ」

※コンマ下、60以下でイベント発生 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/05(水) 22:24:45.63 ID:rCrGSpcU0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/05(水) 22:58:23.56 ID:dZ3dF4M0O<> #

「ふう、美味しかったね。こんな高級なご飯、久々」

「僕も旅行で泊まるのは数年ぶりですね。あ、未来のことですが」

コナン君の顔が、心なしか緩んでいる。どこかほっとしたのだろうか。

「……あ、そういえば。お酒とか、飲んじゃダメかな。普段は飲まないけど」

「構いませんよ。冷蔵庫にビールが」

あたしはそれを取り出す。お金のこともあって、発泡酒でないビールなんて久々だ。……あ。

「……コナン君の前じゃ、まずいかな」

「あ、気にしないですよ。今の僕は未成年ですけど」

「いや、飲める人だったら申し訳ないかなって。でも、あまり飲むイメージもないけど」

コナン君がビールの缶を開け、コップに注いだ。

「下戸じゃないですけどね。アユさんは?」

「昔は飲んでた。でも、お金がね」

「……僕がこの身体じゃなきゃなあ。代わりに、これで」

コナン君は苦笑いしてコーラの缶を開けた。それがどこかおかしくて、あたしは少し吹き出した。

「ふふっ、そうね。じゃ、乾杯」

コップと缶を軽く合わせる。強い炭酸と苦味が、喉を通っていった。この感覚も、大分忘れてたな。

コナン君がコーラを一口飲んで、あたしに頭を下げた。

「まず、ありがとうございます。金路栞と警察への連絡。本当に助かりました」

「えっ、大したことじゃないよ。あたしは普通に話しただけだし」

「でも、落ち着いてましたよ。特に栞への対応は、完璧でした。僕じゃ、多分ここに来れてない」

「そ、そうかな……」

あたしの顔が赤くなったのが分かった。アルコールのせいじゃない。コナン君が微笑んだ。

「……やはり、あなたがいてよかった。まだ、先は長いですが」

「そうだ。これからどうするの?」

「……多分、警察は城や鶴岡への捜査を始めるはずです。被疑者としてだから、ボディガードは公務で排除できる。
最初は任取(任意取り調べ)からですが、捜査は確実に進むはずです。特に『彼』がいるならば」

「『彼』?」

「ああ、こっちの話です。とにかく、逮捕とまでは行かずとも、捜査が進めば引きこもっている佐倉も動かざるを得なくなる。そこに勝機がある」

コナン君の目が鋭くなった。

「……やっぱり、殺しちゃうの?」

「あいつだけは、生かしておくわけにはいかない。できれば、この手で始末したい。……そういう人物です」

彼の目に、深い憎悪を感じた。……その佐倉という子、何者なんだろう。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/05(水) 23:11:53.36 ID:dZ3dF4M0O<> 「とにかく、しばらくは『待ち』です。城や鶴岡の『処理』をしないなら、しばらくは警察に任せることになる。
その間に、アユさん。秋山の『処理』に動きます」

あたしの酔いが覚めるのを感じた。

「秋山を?そういえば、彼もバッドエンド・ブレイカーの標的だって」

「佐倉ほどの優先順位ではないですが、彼もまた罪人です。しかも、犠牲者はさらに増える。殺るなら、今が好機でしょう。
朝霞に戻ったら、アユさんも交えてまた話し合いをしましょう。大丈夫ですか?」

「……うん、分かった」

秋山と対峙する時が近付いている。もう、逃げるわけにはいかない。

※アユからコナンに質問ができます。

1 ところで、優先順位って?
2 ところで、未来ってどんな感じ?
3 ところで、あたしのことどう思う?
4 ところで、古畑って刑事はどうするの?
5 自由安価

※自由安価は歓迎ですが、答えられない質問もあります。

※2票先取、0000まで決まらない場合はリセットしそこからカウント <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/05(水) 23:52:53.11 ID:+XFbvGlg0<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/05(水) 23:57:59.92 ID:JZmxr2cDO<> 2 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/06(木) 00:04:57.39 ID:tqaP1VNTO<> 2で決定します。今日はここまで。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/06(木) 00:07:27.11 ID:tqaP1VNTO<> なお、質問等歓迎です。答えられる範囲で回答します。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/06(木) 12:54:52.17 ID:zdQLvdNtO<> あたしはコナン君を見た。不安は、ある。そもそも、目の前にいるのは、殺人者だ。彼が警察に捕まったなら、あたしもきっと逮捕されるだろう。
それに、彼自身も狙われていると、今日知った。今はこうしてのんびりできているけど、危険とは隣り合わせなのだ。

ただ、何かに脅えて身を丸めるような日々は、もう嫌だった。過ちを犯した過去を振り返り、下を向いているわけにもいかない。
望むと望まないとにかかわらず、あたしはしばらく、彼と戦っていくしかないんだ。

そう考えると、あたしの中に一つの疑問が浮かんだ。……コナン君を信じるために、知らなきゃいけないことだ。

「そういえば……コナン君のいた未来ってどんな感じなの?」

コナン君の顔が、少し険しくなった。

「それは言えないと言ったはず……」

「分かってる。言えないことが多いのは、仕方ないと思ってる。でも……秘密ばかりは嫌なの。君と一緒にいるためにも」

彼は黙ってあたしを見つめる。少し視線を上に向け、そして戻した。

「……そもそも、何で僕たちがこんなことをしているか、少し言いましたよね。『できるだけ理不尽な死を減らす』。それは、単に被害者を救うためだけじゃない」

「どういうこと?」

「20年後が酷いことになっているのは、アユさんも気付いているはずです。そうなったのにはいくつか理由がありますが……。
その一つにいくつかの凶悪犯罪が未解決のまま終わるか、あるいは政治的理由で消化不良の決着に終わったという点があります。社会に対する絶望が、人々の間で広がっていってしまった」

あたしは落ち着くため、ビールを一口飲んだ。口の中が乾いて仕方がなかったのだ。

「金路アゲハの件も?」

「……最たるものです。佐倉翔一をはじめとした犯人グループは、未成年……それも14歳以下であることを理由に刑罰を受けなかった。200人以上も殺したのに、です」

「14歳以下だと刑務所に入らないの?少年院にも?」

「判例上は。永山基準、というのがあります。未成年者が殺人被疑者の場合、死刑判決には年齢や殺害者数、情状酌量余地などを総合的に考慮すべし、というものです。
ただ、現実には被疑者が18歳未満の殺人で、死刑は下されたことがない。かつて神戸で猟奇的な連続殺人を14歳の少年が起こしましたが、医療少年院送致に留まっている。
公安の監視下にあるようですが、社会復帰すらしているようです」

冷や汗が止まらない。まさか。

「まさか、金路アゲハたちは」

「そのことを知ってたんですよ。15歳以上だと、死刑はなくても通常刑罰の対象になり得る。
それを逆手に取って、テロを起こした。しかも、イスラム原理主義組織の命令があったと偽装までして。この事件の顛末、どうなったと思います?」

あたしは首を振った。想像すらつかない。コナン君の声が、震えていた。

「……組織による『洗脳』とされ、彼らは望み通り社会に復帰したんです。しかも、金路栞ら一部政治家やメディアは、彼らを被害者として弁護すらした。
……それがどんなに社会に、遺族に絶望を与えたか……分かりますかっ!?」

コナン君の目が潤んでいる。……そういうことか。

「……君は、前に言ってた『熊谷大虐殺』の被害者……」

彼が、弱く頷いた。

「はい。……あの発端となったTOCHIKUシネマの、生き残りです」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/06(木) 21:55:26.30 ID:YC5x4Bb7O<> やっと理解できた。映画館で、惨劇は起こった。だから、あの時あれだけ取り乱したんだ。
あるいは、彼が「子供」なのに殺人に手を染めたのは、復讐の意味もあるのかもしれない。

何を言えばいいのか分からず、固まっているあたしに、コナン君が頭を下げた。

「ごめんなさい。……少し喋り過ぎてしまった」

「……いいよ。ありがとう。辛かったでしょ。でも、やっと君が少し理解できた」

「……復讐なんて馬鹿げていると思うかもしれません。でも、遺族にとってそれをしたいと思う欲求を抑えるのは、並大抵のことじゃないんです。
まして、今の僕には力がある。法にも問われない今しか、これはできない」

コナン君はコーラを飲み干した。軽く目の辺りを拭う。

「『熊谷大虐殺』を契機に、世情は大きく悪くなった。それも確かです。それを変えられるのは、僕らしかいない。
実行犯が減った今、それは起きないのかもしれない。ただ、佐倉が『覚醒者』であるなら……彼を始末しない理由は、やっぱりないんです」

彼が真っ直ぐあたしを見た。覚悟と信念を秘めた目だ。あたしにはない目だ。

彼のやっていることは、法的には間違っている。道徳的にも、許されることじゃない。

それでも、彼の助けになろうと、今心から思った。

「分かった。あたしもできる限りのことはする。それには、まず」

コナン君が頷いた。

「ええ。秋山を殺しましょう」

※60以上でイベント継続 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/06(木) 21:55:53.89 ID:YC5x4Bb7O<> コンマ下です。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/06(木) 22:03:15.60 ID:Gkjf+uyeO<> そいやぁ! <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/06(木) 22:21:20.89 ID:YC5x4Bb7O<> ふふっとコナン君が軽く笑った。

「……ちょっと可笑しいですね。こんなに気合い入れちゃって。
堅い話が続きましたし、話変えましょうか。これじゃ旅行らしくもないし」

「あ、そだね。……そういえば温泉に来たのにまだ一回も入ってないね。ご飯を片付けてもらうついでに、ちょっと入ろうか」

「それもそうですね。じゃあ、行きますか」

替えの下着と浴衣を持って、あたしとコナン君は浴場に向かう。軽く、手が触れた。互いに照れ笑いする。

「なんか、恥ずかしいですね。周りからは年の離れた姉弟にしか見えないでしょうけど」

「そう?ひょっとしたら、『女教師と生徒、禁断の逃避行!』みたいなのかもよ。今日は平日だし」

冷静に考えれば姉弟二人で平日に家族旅行というのも、ちょっと変だ。……目立つかな。

あたしの手を、コナン君の小さい手が握った。

「いっそ、こうした方が自然、かもですよ」

互いの視線が重なる。互いに頬が赤くなったのが分かった。

「ん……そだね」

しばらく、平日で人の少ない廊下を歩く。……こんなに安らかな気分は、どれだけ久し振りだろう。

※コンマ下、80以上で特殊イベントへ。未満なら話題選択 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/06(木) 22:23:57.31 ID:DUSa38EM0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/06(木) 22:40:28.79 ID:YC5x4Bb7O<> #

部屋に入ると既に布団は敷いてあった。普通に2枚が並んでいる。まあ、そりゃそうだよね。

「何か、修学旅行以来ですね。和室に布団」

「そうなんだ。あたしは高校出るまで布団だったよ」

身体はまだ少し火照っている。寝るのは、それが冷めてから、かな。
時間もまだ21時半ぐらいだ。寝るには、まだちょっと早い。

※アユが振る話題を選んでください。

1 コナンの昔の彼女について
2 古畑について
3 あたしのこと、どう思う?
4 互いの家族について
5 自由安価

※2票先取
※自由安価は歓迎です。柔らかめの話なら、コナンは乗ってくるでしょう。
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/06(木) 22:47:44.47 ID:Gkjf+uyeO<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/06(木) 22:56:34.62 ID:DUSa38EM0<> 2 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/06(木) 23:04:58.40 ID:YC5x4Bb7O<> 今日はここまで。特殊イベントは、上の布団の下りから察してください。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/06(木) 23:34:30.21 ID:DUSa38EM0<> 乙
察しました <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/07(金) 11:53:14.53 ID:SKVoirG9O<> 「ちょっと、湯冷まししましょうか。ほら、夜景がきれいですよ」

高台にあるこのホテルからは、伊香保温泉が一望できる。遥か遠くには、渋川市の灯りもチラチラと見えていた。

あたしたちは窓側の椅子に座る。

「お茶、淹れてこようか?」

「あ、ありがとうございます」

コナン君は、何かを考えているように外を見ていた。あたしは湯呑みを置き、向かいに座った。

「そういえば……古畑って刑事。コナン君、昔から知ってたの?」

あたしが訊くと、少し驚いたようにコナン君があたしを見た。

「あっ……はい。今、ちょうどそのことを考えてたんで」

「ここに来てたよね。あたしたち、気付かれたかな」

「ひょっとしたら。ただ、確信は持ってないと思います。アユさんについても、僕との繋がりまでは考えないでしょう。もしそうなら、とっくにここに来てる」

あたしは少し安心した。これ以上追ってくる人間が増えるのは、さすがにごめんだ。

「そっか。じゃあ明日は」

「普通に帰って大丈夫だと思います。奴も、若葉の逮捕には面食らってるでしょうから。ただ、アユさんと奴が次に会ったら、確実に疑ってくるでしょうね」

あたしは唾を飲み込んだ。やはり警戒はしなくちゃいけないみたいだ。

「どうすればいいの?」

「しばらく、佐倉の出方待ちですからあまり気にしなくていいです。秋山をなんとかしなきゃいけませんしね。
ただ、奴も奴で佐倉を追っていると思います。もしアユさんが動くなら、気を付けて」

「……分かった。何か、因縁ありそうだね」

「因縁、ですか」

コナン君はお茶を飲んで外を見た。

「……『昔』から、何度か仕事で関わりはあります。ああ見えて、内面はとても頑固だ。考えを曲げない、そして執念深い。
だから、僕らとは相容れないんです。歴史を変えて世界を正そうとする僕らと、その前に秩序を守ろうとする古畑とでは」

「でも、若葉を殺そうとしてたんじゃないかって……秩序を守るなら、法律は守るんじゃない?」

「ははっ、そうだと思いますよ。普通は。ただ、彼は『覚醒者』の逸脱行為を許しはしない。歴史は変えられるべきものではなく、予測可能なものであるべきだ。そう考えてる。
それは古畑の信念であり、その上の考えでもある。『秩序の守護者』が、公安なんです」

「よく知ってるね。……どうしてそこまで?」

※コンマ下が75未満ならはぐらかす <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/07(金) 12:11:16.92 ID:BtOJGbEDO<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/07(金) 22:23:08.04 ID:SKVoirG9O<> 「……奴とは色々因縁があるんです。あまり、未来のことを話しすぎるのはよくないんですが……もう随分話しちゃってるか」

彼が苦笑する。

「優先順位、って少し言いましたよね。僕らは犯罪者なら誰でも消す訳じゃない。未来に与える影響が大きいのを優先的に消している。佐倉たちは、筆頭格の一人です。
同じようなランクのは、何人もいないんですが……そのうちの一人を巡って、『昔』僕と奴は対立した。
僕は、いや警視庁は『そいつ』を何がなんでも捕まえようとした。しかし、逃げ切られた。その原因となったのが古畑です」

「犯罪者を、同じ警察が逃がしたの?」

「公安は、『そいつ』を監視下に置いて、コントロールしようとしたんです。結果から言えば、それは失敗だった。それが後の破滅に繋がったんですが、多分古畑はそれを認めてない。
同じ過ちは繰り返されてはいけないんですが……公安は、『より精緻なやり方なら上手くいくと思ってる』。秩序を守るだけでは救えないと、奴らは分かってない」

話がよく分からなくなってきた。ただ分かるのは、警察も一枚岩ではなかった、ってことぐらいだ。

……一つ、疑問が浮かんだ。

「優先順位って言ったけど、片っ端からやるってわけじゃないの?その、『そいつ』とか」

「ルールを決めてるんです。『確実に救えない犯罪者となるか、その手前になるまで手は出さない』。
佐倉たちは、既に最低一人は殺しています。僕の知る歴史の通りなら、熊谷大虐殺の実行犯は、全員複数人をあの前に殺してる。
それをネタに、佐倉は城や鶴岡を掌握している、と僕は踏んでいます。とにかく、彼らはもう、人として踏み越えてはいけない線を越えてしまった連中です」

コナン君がお茶を飲んで、一息ついた。

「逆に言えば、優先順位が高くても、人として救えない存在であると確認できるまでは、手を出さない。殺さずに改心できるなら、それに越したことはないですから」

「うーん、あたしバカだからよく分かんないけど、要は『確実に犯罪を起こす』のが分かってから動いてるってこと?」

「そうです」

なかなかややこしいルールだ。網笠さんという偉い政治家さんもいたみたいだけど、色々事情があるというのだけは分かった。

※コンマ下65以上で会話続行、話題選択へ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/07(金) 22:31:14.50 ID:mkZKcoYy0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/07(金) 22:38:21.43 ID:SKVoirG9O<> 急にガクッと、コナン君の首が落ち込んだ。

「……やっぱり緊張の反動が来たみたいですね。この身体と、『もう一人の僕』には堪える」

「もう一人のコナン君?」

ハハハとコナン君が笑った。

「単純に、子供の身体で夜更かしはキツいってだけですよ。……そろそろ寝ましょうか」

「う、うん。そうだね」

あたしたちは布団に潜り込んだ。すぐに、隣からすうすうと寝息が聞こえる。もう寝ちゃったんだ。

あたしはそれを可愛く思いながら、目を閉じた。

今日は色々あったけど、上手く行ってよかった。コナン君のことも、色々聞けた。


でも、今のコナン君の中身が29歳なら、「9歳のコナン君」はどこに行っちゃったんだろう?


少し引っ掛かるものを感じながら、あたしにも睡魔が襲ってきた。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/07(金) 22:39:30.44 ID:SKVoirG9O<> 今日はここまで。来週木曜までスローペースです。
次回は仁パートから。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/08(土) 21:58:43.66 ID:Ok1IGt8uO<> 【6月12日、18時23分】


「うーっす。青と白は?」

「伊香保に行くとか言ってましたよ。若葉課長の情報が入ったとかで」

4係の緑山巡査部長が言った。赤木警部が眉に皴を寄せる。

「若葉の?聞いてねえぞ」

「何でも念のためってことらしいです。どうせガセでしょうけど」

俺は赤木警部を見た。青葉は確かに前のめりな方だが、相応に鼻は利く。

「青さんのことですから、それなりの自信があったんでしょうかね?電話しましょうか」

「おう、頼む。しかし伊香保とは随分遠いな」

俺はスマホを手に取る。すぐに青葉の野太い声が聞こえてきた。

『おう、仁か?今移動中だが』

「若葉の情報が入ったそうですね。何か感じる所が?」
 
『うーん、随分変な電話だったんでな。『身元は明かせないが、龍山荘に若葉課長がいる』『急がないと殺されるかもしれない』と」

「具体的ですね。しかも『殺されるかもしれない』と」

『身元は明かさねえわ若い女の声だわで怪しいんだが、一応裏だけ取ろうとな。
んで宿に連絡取ったら、一昨日から若葉と同じ特徴の男が一人で泊まっているときた。
これはマジネタか、と思って今伊香保に急いでる。あと1時間ぐらいで着く』

赤木警部は木暮管理官と何か話している。これは確かにかなり怪しい。

※コンマ下80以上で追加イベント <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/08(土) 21:59:27.77 ID:Qy7FBC7DO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/08(土) 22:37:07.58 ID:Ok1IGt8uO<> #

「赤さん、龍山荘に若葉がいると思います?」

「お前はどうだ、仁」

「直観ですが、9割」

俺はクラウンのハンドルを軽く切りながら答えた。車は関越自動車道に入った。
赤木警部が満足そうに頷く。

「同感だね。4係の奴は、目が腐ってるのかね」

「若葉派でしたからね。後ろ暗いことでもあるんでしょう。……ただ、2つ疑問が」

「ほう?」

「まず、電話してきたのが誰か、ということです。若い女らしいですから、普通に考えれば若葉の女でしょうが」

「……金路栞とは別れて長いし、女がいても不思議じゃねえ。ただ、白島の内偵では、それらしき女はいなかった」

そう。若葉は好色ではない。結構なグルメだったとは聞いているが、それ以外は禁欲的とすら言える人間だ。
とすると、金路栞がらみ?しかし、身内の裏切りを金路が許すだろうか?

「……ちょっと読めないですね。調べていくうちに分かるかもしれないですけど。
そしてもう一つ分からないのは、若葉が殺されるかもしれないと言っていたことです。誰が殺すんでしょう?」

「そりゃあ……佐倉とかの一派じゃねえか?自分にとって都合の悪い情報を持っているかもしれねえからな」

「確かに。ただ、若葉は逃げてるだけで捜査資料を持っているとは限らない。
もうとっくに破棄しているかもしれない。そもそも、佐倉が若葉の動向まで把握しているもんですかね」

「……まあそうだな。とにかく、伊香保に着けば分かるか。あー、飯買ってくるんだったぜ」

「伊香保で一泊できりゃいいんですがね。ま、SAで適当に詰め込んどきますか」

不可解なことは、相変わらず多い。ともあれ、着けば分かることだ。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/08(土) 22:45:52.19 ID:Ok1IGt8uO<> 【6月12日、19時45分】


上里SAで軽く菓子パンを買い込み、乗り込もうとしたその時だった。

……ブルルルル

俺のスマホが震える。青葉からだ。

「もしもし」

『見付かったぞ。今、確保した。これから渋川署に移動して、取り調べする』

「本当ですか!!?今、上里SAです。あと1時間足らずで着きます」

『そうか、了解。赤さんに代わってくれ』

赤木警部が興奮気味に俺のスマホをひったくった。……やはりマジネタだったか。
彼は「よっしゃ!!」と快哉をあげた後、すぐに深刻そうな顔になった。

※コンマ下

01〜20 見つかったのは若葉のみ、資料なし
21〜90 若葉と資料発見
91〜00 上+特殊イベント
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/08(土) 22:48:01.77 ID:5mJ6WUVm0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/08(土) 23:06:21.68 ID:Ok1IGt8uO<> しばらくした後、ふうと息をついて赤木警部がスマホを返した。

「若葉はいくつか資料を持っていたそうだ。中身は後で精査、ということだ」

「資料持っていたんですか。……何でまた」

「そりゃあこれからだな。まあ、これで例の荒川の件とか話が進めばいいけどな」

俺は菓子パンをかじった。若葉は何を語るのだろう。

#

【6月12日、21時03分】


渋川署の駐車場には、既に青葉が待っていた。

「赤さん、お疲れっす。仁もお疲れ」

「取り調べはまだだよな?俺がやる。渋川署と群馬県警への根回しは」

「済んでます。まあ、警察内の不祥事ですからね。完全に『お客様』ということで、外部には決して漏らさないと」

「おっし。白は?」

「今、資料をチェックしてます。いくつかの調書、それとフラッシュメモリ。中には、画像データが」

赤木警部がニヤリと笑った。

「荒川のか。しかしとっとと捨てりゃいいのに、馬鹿なことをしてんな」

青葉のスマホが鳴った。軽い応対の後、青葉が電話を切る。

「白島からです。確認終了したと……」

※コンマ下
01〜85 通常ルート
86〜97 上+追加情報
98〜00 上+追加情報(状況が激変します) <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/08(土) 23:15:35.51 ID:Ok1IGt8uO<> なお、全体的にコンマ判定を辛くしているのは仕様です。
通常ルートでも問題なく話は進んでいきます。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/08(土) 23:22:44.48 ID:Qy7FBC7DO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/08(土) 23:24:29.40 ID:lzfhz/1uO<> 今日はここまで。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/10(月) 12:41:19.19 ID:tHPa4Kw6O<> #

「で、何が見つかったんだ?」

青葉は調書とフラッシュメモリを赤木警部に手渡した。

「少ねえな」

「それでも収穫ありです。調書は金路アゲハが白馬伸の死亡現場にいたというもの。これ自体はさして新しくはないです。
問題は、こちら。ちょっと、見てみましょうか」

フラッシュメモリをノートPCに繋ぐといくつかの画像データがあった。……これは。

「……金路アゲハが歩いているな。場所は河川敷か?」

「多分。不鮮明ですが、アゲハらしい人物がいます。後ろには見切れていますが他の人物も。
そして、ここ。右下の日付、時間がミソです」

赤木警部が目を見開いた。俺も思わず声をあげる。

「3月27日……荒川のホームレスが射殺された日だっ」

「そう。これは消えていたとされる監視カメラのデータが基になってる。時間も死亡推定時刻と重なる。
アゲハたちがあの事件に関わっていたという疑いは極めて強い。この写真にはアゲハしか全身は映ってないけど」

青葉の言葉に、俺は写真をよく見た。

「後ろの男、指輪つけてますね」

「……本当だ。しかしこれだけじゃなあ」

※コンマ下60以上なら手掛かりあり <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/10(月) 12:42:53.05 ID:J6bx+6Zs0<> えいや <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/10(月) 12:54:22.46 ID:w+0v2QpPO<> 「ともあれ、これでアゲハの事件への関与は濃厚になったな。任意で城と鶴岡には聴取しよう」

「ですね。ただ、あのボディーガードをどうするか」

俺は増田警部補の忠告を思い出していた。「迂闊に手を出したら死ぬ」。奴らは警察すら恐れないのか。
それに任取は拒否されればそこまでだ。もちろん監視対象としてウオッチはするが、それ以上はできない。
上手く引き剥がす方法があればいいのだが……

※行動選択です。

1 城の母親を当たる
2 鶴岡の兄を当たる
3 伊香保に行く
4 その他自由安価

※2票先取

※どれも多少の運は絡みます。失敗時は、時間が少し飛びます。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/10(月) 13:07:23.43 ID:ONPBLljDO<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/10(月) 13:18:58.70 ID:bPwRPhyS0<> 1 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/10(月) 20:47:58.31 ID:XgdaodTGO<> 俺は少し考えた。将を射んとすれば馬から、だ。

「……やはり、家族からですかね。城寿美子。厚生労働省審議官で、城隆一郎の母親でもある」

「母親から揺さぶるか。しかし、城は放任じゃ」

「小学生の時に徹底して教育させたらしいと、薬師丸英華が。父親は早いうちに死別と聞いてます」

「……母親、仕事と出世の鬼と聞いてるがな」

城の「身体検査」は、ある程度済んでいる。親子の関係は今は希薄という近所の評判だった。
それでも、城寿美子が真っ当な人間なら、彼の疑惑に心を揺らがさずにはいられないはずだ。家庭内から揺らしていけば、あるいは。

「とにかく、厚生労働省前で張ってみます。ツラP(顔写真)はあったはずですから」

#

【6月13日】


梅雨とは思えない、蒸し暑い朝だ。早朝から張っているが、なかなか体力を削られる。
時計は午前6時半。城寿美子は始発で出て終電で帰るのが日課と聞いている。確かに相当なワーカホリックらしい。

視線を上げると、宝塚にいた某女優を倍くらい険しくした顔付きの女性がひどい早足で歩いてきた。城寿美子だ。

「すみません、ちょっと……」

俺を一瞥だにせず通りすぎようとる彼女の肩を、後ろから掴んだ。

「……邪魔よ。警察を呼ばせていただくわ」

「その警察です。息子さんのことで、お話が」

警察手帳を見せると、彼女は顔を一瞬しかめた。

※コンマ下

01〜40 面会は広報を通して
41〜80 ……隆一郎のことで?
81〜00 12時、10分だけ時間があるわ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/10(月) 20:50:07.12 ID:NFdAMnXCo<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/10(月) 21:06:11.21 ID:XgdaodTGO<> 「面会は広報を通して。以上」

そう言うと城寿美子は足早にビルに入ってしまった。これはとりつく島もない。
どうやら子供のことには無関心であるらしい。揺さぶるとしても、かなり骨だ。

俺は赤木警部にメッセージを入れた。「接触失敗、継続的に接触を試みる」。1分後、「了解」とだけ返ってきた。
これは今日も現場を洗い出すしかなさそうだ。

#

【6月13日、10:26】

「キツいな、これは」

赤木警部が苦笑いした。金路アゲハの殺害現場周辺の聞き込みは、今日も収穫に乏しい。

「お宮(迷宮入り)だけは断じて勘弁ですがね。若葉の件は」

「なかなか悲しい事情があったらしいな。奴さん、離婚後ろくにアゲハに会わせてもらってなかったらしい。
そのくせ、離婚後も栞とアゲハを捨てきれず、言うなりに証拠隠滅、だそうだ。
その中でアゲハが生きていた証を……とあの画像データと最後の証拠だけ持ってたらしい。
同情はしねえが、娘はちゃんと愛していたらしいな。歪んでるが」

「それでも許されることじゃないですがね。金路栞は」

「証言ベースに出頭要請かけてる。ただ、栞から若葉へという命令の証拠が若葉の証言だけだからな。これだけじゃしょっぴけない。
アゲハの携帯が見つかればいいが、それはきっちりなくなってる。頭の回るヤツだ」

俺は現場周辺の床にしゃがみこんだ。何か見落としているものはないのか。

……

#コンマ下
01〜75 通常ルート、日曜までスキップ
76〜90 これは……
91〜00 上+赤木警部の電話が鳴った <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/10(月) 21:08:36.45 ID:iKY3ZwkH0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/10(月) 21:15:11.11 ID:XgdaodTGO<> ……特になし、か。これは持久戦になりそうだ。

「まあ、地道に足使うのが俺たちの仕事だ。少しずつ外堀を慎重に埋めていくしかねえな」

赤木警部が溜め息混じりで言う。若葉は落ちても、そこから城や鶴岡、佐倉に繋げられないなら意味はない。
雨の滴は、何年も何十年もかければ岩をも穿つ。城寿美子に地道に当たり続けて、軟化を待つより他なさそうだ。

そう言えば、日曜にはSHELLYから連絡があるという。本当だろうか?

その時、俺の携帯が震えた。……また、SHELLYからのメールだ。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/10(月) 21:19:50.04 ID:XgdaodTGO<> #

毛利仁様

お仕事中失礼します。SHELLYです。
先日お話しした件、場所を指定いたします。熊谷駅前のサイゼリヤにてお待ちしております。
時間は1200です。よろしくお願いします。

SHELLY

<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/10(月) 21:21:41.88 ID:XgdaodTGO<> ※次回の視点を決めます。どれも【6月17日】です。

1 仁パート
2 コナンパート
3 ジョーパート

※2票先取 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/10(月) 21:22:53.76 ID:ONPBLljDO<> 3 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/10(月) 21:48:08.71 ID:iKY3ZwkH0<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/10(月) 21:57:33.05 ID:F2so4rmC0<> 3 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/10(月) 22:17:10.62 ID:XgdaodTGO<> では3からとします。今日はここまで。
コンマによってはR15展開になります。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/10(月) 22:17:38.42 ID:XgdaodTGO<> なお、選ばれなかった2つも順次進めていきます。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/11(火) 12:28:43.43 ID:CmfylZpuO<> 【6月17日、7時21分】


ついに待っていた日が来た。

僕は目覚めると、1分1秒も無駄にしないよう急いで着替え、髪をセットする。8時には、矢向さんが迎えに来るはずだ。
そして、ホテルに着いたら……「サクラ」が待っている。翔一のことは、正直好きになれないが、「彼女」は別だ。
アイスキャンディを舐め、好きなだけセックスする。今日は僕も「女の子」にしてくれるという。どんな感じなんだろう?

この日があるから、僕は息苦しい毎日を耐えられた。ヤクが声をかけなくなって、見放されても我慢できた。


全ては今日の「サクラ」との逢瀬のため。


頬が緩むのが自分でも分かる。すごく久し振りに表情筋が動いた気がする。
下半身はもうカチカチで、先っぽからはヌルヌルが出始めている。今日のために、オナニーも我慢したのだ。

準備ができた。少し早いけど、家を出よう。勤勉な矢向さんは、大体時間より大分前に来ている。とにかく、時間が惜しかった。

母親は、どうせいつも通りベッドから動かないだろう。休日は、ほとんど寝たまま動かない。それが母親の行動パターンだ。
起こさないよう、慎重に階段を下りる。

※コンマ下
01〜80 通常進行
81〜95 どこに行くの
96〜00 行かせないわよ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/11(火) 13:02:04.14 ID:3o3uKZjDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/11(火) 20:46:12.54 ID:Wy79HoDHO<> 玄関を開けると、いつものように矢向さんが待っていた。

「お待ちしておりました。どうぞ」

どうにも下半身が落ち着かない気分で、僕は後部座席に座る。……矢向さんの目が険しい。

「どうしたんです?」

「いえ、鼠が何匹か。ちょっと急ぎましょうか」

ギュルギュルとタイヤが道路と摩擦する音が響くと、車は急発進した。僕は思わず背もたれにぶつかる。

「ええっ??きゅ、急にどうしたんですか」

「鼠を撒くためですよ。まあ、大雑把な場所は特定されるかもしれませんがね」

後ろを振り向くと、大型バイクが追ってきていた。ただ、こちらの方が速い。

「カーチェイスに付き合うつもりはないのですが、ね」

ギャルギャルギャルッ!!

激しい摩擦音と共に矢向さんは急に車線変更し、大きくUターンした。その信号でバイクを振り切り、車は高速に入る。

……あれは、まさか。体温が急に下がった気がした。

「……僕らを狙っている連中ですか」

「どうでしょうね。どれかは判別が付きませぬが。その点、翔一様から連絡があるかと」

「……連絡?」

どういうことだろうか。どうも、状況は悪い方へ転がっている。
下半身の昂りは、すっかり治まってしまった。……それどころじゃないのかもしれない。

#

車は新宿ではなく、日比谷に向かっていた。定期的に居場所を変えている、と矢向さんは言う。
しかし、翔一のどこにそんなお金があるんだろうか。彼の素性は詮索しないのがルールだったが、気になる。

日比谷の帝国ホテルの駐車場に入る。こんな高級ホテル、来たことがない。
エレベーターで上層階に行くと、また豪華な雰囲気の廊下に出た。インペリアルスイートのフロアであるらしい。

※重厚なドアの先には……
01〜30 鶴岡もいる
31〜95 通常進行
96〜00 ネグリジェ姿の「サクラ」がいる <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/11(火) 20:49:20.53 ID:lueneQsB0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/11(火) 21:30:58.52 ID:Wy79HoDHO<> 重厚なドアの先には、「サクラ」……ではなく正装姿の翔一がいた。僕は唾を飲み込む。

「『あの方』は帰られたのですか?」

「うん。まあ上々だった。で、ジョー。おはよう、こっちに座って」

僕は勧められるままソファーに座る。テーブルには、飲み掛けの紅茶が入ったティーカップがあった。

「誰か先に?」

「まあね。君が知らなくていいことだよ」

穏やかな笑みを浮かべて、翔一も僕の向かいに座った。

「さて……矢向から報告は聞いてるよ。一週間、お疲れさま。で、しばらくはこんな感じの生活になる」

「警察と、アゲハたちを殺した犯人から逃げるため?」

翔一が一瞬黙った。

「普通の警察は、然程問題じゃない。彼らに僕らは捕まえられない。問題は、アゲハたちを殺した……多分『バッドエンド・ブレイカー』と、公安だ」

「バ、バッドエンド・ブレイカー??」

僕は唖然とした。ネットで噂になっている、凶悪犯罪予備軍を消す「害虫駆除者」。そのターゲットに、僕らがなっていると??
確かに、「計画」は作り始めていた。でも、実行なんて誰も言ってない。

翔一が真剣な表情で頷いた。

「そう。手口は違うけど、これはもうそう考えた方がいい。だから、極力矢向の側を離れず、単独行動は厳に控えてほしい。僕もこうやって、ホテルを転々としなきゃいけないんだ。
窮屈かもしれないけど、それが君のためだ。ストレスは、一緒に解消しよう」

「で、でも……いつまで?」

「僕らが奴らを見つけ、始末するまでだ。これは、戦争だ。君は矢向が守ってくれるけど、君自身にも戦ってもらわなきゃいけないかもしれない」

顔から血の気が引いたのが分かった。

「でもっ!!僕は翔一のように金持ちでもないし、和人のように強くもな……」

そっと、錠剤が入ったアルミシートを翔一が出した。

「新型のアイスキャンディ。本当にヤバくなったら、これを飲んで」

「新型?」

「そう。人間の脳は、95%が使われていない。それを引き出す薬だ。大丈夫、心配はいらないよ」

彼が静かに微笑んだ。

「あ、ありがとう……でもどうやって戦うの?」

「殺しに来たところを返り討ち。それが一番いい。ただ、向こうも相当慎重みたいで、彼らについての手持ちの情報はほとんどない。だから、まずは出方を探ってる状況だ。
和人にも言おうと思ったけど、彼は人の話を聞かないからね。唐川さん経由で伝えることになる」

そうなのか。しばらくは待つしかないのか。……心配とストレスで、額から汗が滲んできた。

翔一が紅茶を口にした。

「むしろ問題は……多分公安が、僕らをマークしてる。理由は知らない。彼らの打つ手が読めない」

「公安って、警察の秘密組織みたいな、あれ?」

「まあそのぐらいでいいよ。普通の警察じゃないから、何をして来るか……。
一応、僕の方で上位から圧力をかけてる。金路栞はもうダメだけど、チャネルはまだ他にもある。それで沈黙してくれれば、越したことはないけど」

翔一がカップを置いた。

「とにかく、君にできることは矢向と一緒にできるだけ動かないことだ。今度は和人もここに来ると思うけど、そこで善後策を改めて考えよう。
幸い、普通の警察のターゲットはバッドエンド・ブレイカーの方だ。そっちを潰しきれば、何とでもなる」

翔一は冷静そのものだ。立場のことなる3者から追われているのに、焦りも何もない。僕だったら確実にパニックになっているところだ。

「あっ」と彼が声をあげた。


「君の幼馴染み。……確か、薬師丸英華さん、だっけ?今度、会わせてくれない?」


純真そうな微笑みに、僕は恐怖した。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/11(火) 21:38:38.25 ID:Wy79HoDHO<> 「それだけはダメだっ!!ヤクを、こんなことに巻き込んじゃいけないっ!!!」

叫ぶ僕に、翔一はやれやれと首を振る。

「警察、多分彼女に接触してるよ?もう無関係じゃないんだよ。
警察だけならいい。バッドエンド・ブレイカーの連中が、彼女を人質に取らない保証はないよ?公安も何してくるか分からない。
だったら、僕らに引き込んだ方が、安全じゃない?」

……ダメだ。ヤクは、普通の女の子だ。こんな汚れた僕に、もう関わっちゃいけない。普通に生きていてほしい。

でも、翔一の言うことももっともだった。もう、ヤクは巻き込まれているのかもしれない。だったら、僕がそばにいて、守ってあげた方がいいんじゃないか??

汗を流して黙る僕を、翔一はニコニコと笑って見ている。



僕の選択は…………



※重大選択です。
1 ……分かった
2 やっぱり、ダメだ

※安価下5多数決 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/11(火) 21:43:34.37 ID:3o3uKZjDO<> 2 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/11(火) 22:09:56.87 ID:Wy79HoDHO<> 上げます。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/11(火) 22:20:09.23 ID:H2WCiDF/0<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/11(火) 22:23:40.62 ID:JR/35gu3o<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/12(水) 09:02:56.72 ID:OLNHhNLK0<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/12(水) 12:14:38.75 ID:43En3KxDO<> 2 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/12(水) 12:33:21.04 ID:NT5VBS+/O<> 「……やっぱり、ダメだ」

僕は声を絞り出した。翔一は……「ふぅん」と表情を消している。

「そんなに大切な子なの?惚れてるの?」

「……そんなんじゃない。あいつは、日の当たる場所で生きていくべき人間なんだ。ひょっとしたら4年後、オリンピックで日本中の注目の的になるかもしれない。
僕はもう、どうなってもいい。でも、あいつは……ヤクは僕から離れて生きるべきなんだ」

「バッドエンド・ブレイカーや公安が利用するかもよ?君が守らないせいで、彼女がどうなってもいいって?」

……翔一の言う通りだ。でも、これだけは譲れない。

「……あいつは、そこまでヤワじゃない。僕はそう信じている」


ニタァ……


翔一が、見たこともないような気持ち悪い笑いを一瞬見せた。僕は本能的に、思わず引いた。

……怖い。

その笑みはすぐ消え、いつも通りの微笑みに戻っていた。

「……そっか。なら僕は何も言わない。さて……と」

翔一が席を立った。

※コンマ下
01〜20 これ、使ってみる?
21〜95 通常進行
96〜00 その時、翔一のスマホが鳴った <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/12(水) 12:34:10.91 ID:xphvaYXI0<> 00 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/12(水) 20:25:46.12 ID:0stCA8MKO<> 「息苦しい話にも疲れたし、楽しもうか」

翔一が微笑みながら振り返る。ドクン、と下半身に血が流れるのを感じた。

さっきまで恐怖すら抱いていた相手なのに。とてもそんな気にならないような、キツい話を聞いた後なのに。
その笑みは、僕の本能を蕩けさせる何かを持っていた。

「矢向、席を外してくれ。連絡があるまで待機を」

「畏まりました」

恭しく一礼をし、矢向さんが去っていく。翔一が僕の手を取った。

「ほら、行こ?ベッドルームに行く前に、まずはバスルームかな」

僕は急いで服を脱ごうとした。その間に、翔一が「サクラ」に変わる。恐怖の対象は、どの本当の女の子より妖艶な、性愛の対象になる。

逸る気持ちでシャツに手をかけたその手を、翔一が軽く止めた。

「んふふ。ちょっと待って。シャワーじゃなくって、こっち」

バスルームには大きな化粧台があった。座るよう促される。

「今日はジョーにもちゃんと『女の子』になってもらうよ。ウィッグや下着だけじゃなく、ちゃんとお化粧も、ね」

髪をヘアバンドで止められ、顔を洗うよう言われた。翔一は、僕の後ろにいる。とても近くにいる気配がした。

「……ひゃっ!?」

「ほら、ちゃんと洗って。タオルで拭いたら、本格的に始めるから」

胸の辺りを、翔一がシャツ越しに軽く触れた気がした。触るか触らないか、微妙な感じだ。くすぐったいような、何か鋭い痺れのようなものがあそこの下辺りを流れたような……。
それが何回か繰り返され、僕が顔を吹くと、翔一が濡れたガーゼで僕の顔をゆっくりと撫でた。

「く、くすぐったいよ」

「化粧水だよ。これがあると大分違うんだ。肌はきれいだから、コンシーラーとかは必要ないね」

「コンシーラーって……ひうっ!!?」

今度はスポンジで、何かを薄く塗っている。……また、胸の辺りをもう片方の手で触っている。今度は、さっきよりもう少し強い。
下半身に、さらに血が流れた。前にした時もおっぱいは責められたけど、こんなに感じたっけ?

「ふふふ、女の子みたいな声だね。ジョーはまだ声変わりしてないから……僕も興奮してきちゃったな」

そう言いながら、翔一のメイクは進んでいく。眉毛、マスカラ、アイライン。軽く眉も整えられた。
その間、翔一の手は乳首やぺニスの辺りをごく軽く服越しに愛撫していく。気持ちいい。でも、物足りない。もっと触ってほしいけど、化粧中の僕は動けない。

全てが終わる頃には、僕のパンツは先から出た液で、もうグショグショになっていた。

「あとはウイッグを乗せて……と。できたよ」

僕は鏡の向こうの自分を見た。…………えっ???

「……こ、これは?」

そこにいたのは、黒髪の清楚な少女だった。地味そうだけど、とてもかわいい眼鏡の女の子。これが……僕?? <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/12(水) 20:47:29.73 ID:0stCA8MKO<> 翔一が満足そうに頷く。

「うん、やっぱりかわいいね。すごく……いいよ。
ベッドルームに行って、下着を着替えてきて。僕も準備するから」

ベッドルームには、黒い下着があった。もちろん、男物じゃない。ショーツとブラジャーだ。
ブラジャーをどうやって付けるか少し迷ったけど、ホックを前で止めればいいと気付いた。ブラジャーには、ごくわずかだけどパッドがもう準備されてて、ぴったり収まった。
ショーツははくのに手こずった。何より、固く反り返った僕のものがどうしてもはみ出してしまう。これはもう、どうしようもないみたいだ。

ベッドの脇を見る。……アイスキャンディの錠剤が、2錠。僕は我慢できず、その1つを舐めた。

「……ふ、ふぁあ……!!」

何とも言えないエグい甘みの後、僕の乳首とぺニスが一段と固くなった。視界は鮮やかに広がり、空気が性器と触れているだけですごい感じてしまう。
ダメだ、触っちゃ。楽しいことは、これからなんだから。

「あ、もう舐めちゃったんだ。せっかちだなあ」

部屋に「サクラ」が入ってきた。僕は「彼女」を抱こうと立ち上がったけど、その前に唇を塞がれた。

「……焦らないの。時間はたくさんあるし、いっぱい楽しも?」

「サクラ」は、ショーツからはみ出した彼のそれを僕のに擦り合わせた。ヌチャ……という粘液の音と、熱くて固い肉の感触と共に、凄まじい快感が僕の身体に走った。

「い、いいいいぃぃ!!?」

「出ちゃうの?まだだーめ。まず、これを入れようね」

イルカのような形のものに弦がついたものに、サクラがローションを垂らした。

「それって……?」

「んふ、アネロス。とても気持ちよくなれるよ。
今日は二人で、いっぱい、いーっぱい気持ちよくなろうね」

彼女はアイスキャンディを舐めると、粘液まみれの「アネロス」というものを僕のお尻に近付けていった。

#

その日、家に帰ったのは23時だった。細かい記憶はないけど、とても、とても気持ちよかった。それだけは間違いなかった。


そして、アゲハとした時に必ずといっていいほどしていた懺悔を、その日の僕はしなかったんだ。


※コンマ下95以上なら追加イベント(未満で通常ルート)
※通常ルートだから悪いというわけではありません。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/12(水) 20:53:30.07 ID:rD2ariyDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/12(水) 21:00:27.03 ID:0stCA8MKO<> ※通常ルートのためジョーパートは終了

次のパートを選択します。

1 仁パート
2 コナンパート

※2票先取 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/12(水) 21:06:41.25 ID:ErO3TU8E0<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/12(水) 21:44:57.69 ID:rD2ariyDO<> 2 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/13(木) 10:25:19.81 ID:KvFsWdiMO<> 【6月14日】


起きたのは昼を過ぎてからだった。昨日は伊香保から帰ると、すぐに眠り込んでしまった。旅の疲れなのか、それとも緊張から解放されたからだろうか。
リビングを見ると、コナン君は……まだ起きていない。珍しいこともあるんだな。

客間を覗くと、コナン君が薄く目を開けた。

「あ、アユさん。おはようございます……えっ、もうこんな時間」

「うん、おはよ。珍しいね、大体あたしより早いのに」

「まあ……大分疲れてましたしね。随分無理をさせてしまった」

「無理?どういうこと」

コナン君は起き上がり、大きく伸びをした。

「身体と心の年齢が違うと、随分負担がかかるんです。特に過度の緊張下においては。
昨日も古畑をずっと警戒していましたしね。家に帰ってから、寝付くまで早かったでしょう?」

そう言えばそうだった。お風呂に入ってすぐに、コナン君は寝ている。帰りの車でも、ずっと寝ていた。

「確かに……普段から負担かかってるの?」

「日常生活+α程度ではさほど。ただ、アユさんが働いてた時は、家に帰るまで大体寝てましたよ。稼働限界があるんです」

「……そっか、じゃああまり無理はできないんだね」

コナン君は立ち上がり、腕のストレッチをし始めた。

「ま、そうも言ってられないですけどね。佐倉たちの始末に、秋山の件もある。
夜にミーティングがあります。父さんも含めた、関東支部の人間が参加する予定です」

「……って、あたしも参加するの?」

彼は苦笑した。

「若葉の件では協力してもらいましたしね。頭数にはもちろん入ってます」

軽い緊張を感じた。あたしは、ただの女だ。取り柄もさほどない。
「警察」の、それも多分エリート集団の中に混じって浮かないだろうか?

「緊張することはないですよ。これからの流れを把握してもらうだけで結構です。
それに、アユさんがもう会ったことのある人ばかりですし。まだ面識がないのは……2人ですかね」

「その人たちも夜に来るのかな?」

「一人は間違いなく。もう一人はどうでしょう。多忙ですから」

前に来なかった「おやっさん」という人だろうか。
コナン君は話を続ける。

「とにかく、夜に六本木のミッドタウンに。ただ、尾行されてたら即中止です。ないとは思いますが」

※05以上なら通常ルート、95以上で「おやっさん」登場(00のみ特殊) <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/13(木) 10:29:00.54 ID:CQD/uEB20<> コンマの神よ! <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/13(木) 18:57:00.31 ID:mzRc4FLgO<> #

「……ここだったの?あたしが前、連れてこられたの」

「いえ、いくつかあるんですよ。あそこは、その一つに過ぎない」

あたしたちは六本木ミッドタウン近くのタワーマンションにいた。エレベーターは静かに上昇していく。

そして、その一室のチャイムをコナン君が押した。

「……マティーニ」

「オーケー、入って」

由依ちゃんはドアを開けると、あたしをチラッと見た。

「足引っ張らないでよ」

少しむっとしたが、それは胸のうちで抑えた。確かに、素人のあたしが彼らに加わるのは、大きなリスクでもあった。
コナン君は、彼女を「仕事人だ」と言っていた。元々ハッカーらしいけど、そういう仕事は確かに職人芸な気はする。

広いリビングには、興也さんと由依ちゃんがいた。興也さんはスマホを弄っている。

「他の皆は?」

「網笠『総理』と藤原先生は後で。『おやっさん』は、今日も欠席らしいですね。それと小峰君はそろそろ……」

ピンポーン

チャイムが鳴った。由依ちゃんが、あからさまに渋い顔をする。

「コナン、行って」

「……上司を顎で使います?」

苦笑するコナン君に、由依ちゃんが少し語気を強めた。

「知ってるでしょ、私たちの関係。……苦手なのよね」

興也さんがこちらを向いた。

「その塩対応はかわいそうでは?『夫婦』でしょう」

「元、ね。しかもこの時代じゃ夫婦じゃない。一緒にしないで」

コナン君がふうと息をついた。

「仕方ない、僕が行こう」

コナン君が玄関に行くと、ドスドスという音が聞こえた。そして……

「ゆいぃぃぃ!元気だっ……ぐはっ」

学ランの大柄な少年が、由依ちゃんに抱き付こうとした。それに彼女は肘鉄を食らわす。

「馴れ馴れしい。てか暑苦しい。学習能力ないのアンタ」

「てて……いいじゃんかよ。ほとんど会えないんだし。それに、この時代ならやり直せ……」

「ない。そういう空気の読めてないとこ、ホント嫌い」

「そんなあ」と少年は肩を落とした。コナン君がこほんと咳払いする。

「源さん、静かに。痴話喧嘩しててもしょうがないでしょう。こちらが、吉岡愛結さん。今回から加わってもらうことになった」

「ああ、あなたが!!お噂はかねがね」

「……噂?」

「はいっ、警視殿の、大切な方だと」

コナン君の顔が赤くなった。……あたしもか。

「……由依さん、どういう伝え方したんですか」

「どうって、その通りよ。そういう気配を察するのは得意なのよね。それに彼女、前の子にそっくりだし。思い入れがないわけがないじゃん」

コナン君が盛大な溜め息をついた。

「誤解だ、といっても君は聞かんだろうね。アユさん、彼は小峰源。うちの荒事担当だ」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/13(木) 20:20:16.72 ID:UHfWcW2UO<> 「荒事?」

「ああ、警察、特に捜査一課や二課には犯罪者とやりあわなきゃいけないことがたまにある。
その時に頼りになるのが、源さんだ」

「光栄でありますっ」

源さんと呼ばれた少年が胸を張った。見た目は中学生ぐらいだけど、身長は180cm以上はありそうだ。

「でも、この前はいなかったよね?」

「基本、隠密行動が原則ですから。できるだけ騒ぎにせずに仕留める必要がある。それには、彼は少々目立ちすぎるんです」

源君がしょぼんとした。コナン君は励ますように、彼の背中をポンポンと叩く。

「だから佐倉の件では後方支援に回っててもらってました。ただ、これからは彼の力がいる。例えば、鶴岡を処理する時」

「汚い手段さえ取られなければ、鶴岡和人なんて屁でもないですよ。……話は聞いてますよ。城隆一郎と鶴岡和人に、その筋の人間が」

由依ちゃんが首を振った。

「厄介ね。名前は知らないけど……ちょっと近寄れる感じじゃない。
そのうち一人が鶴岡のジム前にいたのを見たけど、剥がすのは大変そう」

「僕も同感です。もう一人が城隆一郎の送り迎えを始めたようですが、かなり『使う』。源は後のゴールドメダリストですけど、あれとやり合うのは覚悟が必要そうです」

興也さんも険しい表情だ。源君も状況を察したのか、「むぅ……」と唸った。

コナン君がパンパンと手を叩く。

「それはまた後だね。警察が若葉捜査一課課長の件で佐倉たちを揺さぶってきてない以上、僕たちにできるのは、しばらく待つことしかない。
今日の議題は、アキヤマ電気の秋山社長をどう仕留めるか。『Aランク』の案件だけに、確実に仕留めないといけない」

「『Aランク』って?」

コナン君があたしの方を向いた。

「前にも言ったと思いますが、仕事の優先順位ですよ。Aは被疑者死刑相当の中でも特に悪質なものです。
S、つまり佐倉たちの一件は、事件発生が社会のトラウマとなり、後世に極めて強い悪影響を及ぼすようなものですね」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/13(木) 22:07:59.31 ID:Vs4c5tVUO<> その時、チャイムが鳴った。由依ちゃんが玄関に行くと、それまでとは違った真剣な表情になった。
網笠さんとコナン君のお父さんが来たのだ。

「皆、来ているようだな。始めるぞ。まずは藤原君、伊香保での顛末を」

二人がソファーに座ると、コナン君が一昨日の出来事を話し始めた。古畑という男の下りになると、網笠さんの表情が曇った。

「……警察内で、こちらの対策組織が組まれたか?それも、公安主導で」

「濃厚ですね。どうやら、城と鶴岡にも張り付いてるのがいます。迂闊に動けない。
ただ、若葉を埼玉県警が確保したのは朗報です。今すぐにかどうかは分からないですが、城と鶴岡を搦め手なしの『表玄関』から揺さぶってくれる。
二人と一緒にいる男たちも、さすがに県警と正面からは戦わないでしょう。事故に見せ掛けて消そうとはするかもしれませんが、それをやれば弔い合戦になる」

「だな。とにかく、本丸の佐倉を引っ張り出さないことには始まらない。それは県警にやってもらおう。
さて……こうやって正面から話すのは初めてだな。網笠博だ。伊香保では危険な橋を渡ったようだな、協力に感謝しよう」

あたしは差し出された手を握った。数秒握られた後、網笠さんは仏頂面で手を離す。

「こ、こちらこそ、よろしくお願いします」

「愛想がないのは生まれつきだ。子供たちにもよく怖がられる。
……さて、吉岡さん。あなたは本来、Aランク処理対象の秋山雄一の手にかかっていたはずの人だ。本来の歴史では、既に死んでいる。
さもさりながら、歴史にはある程度の修正力が働く。あなたが死ななくても、代わりに誰かが死ぬ。
彼が10人殺したという結果は、形を変えて起こるだろう」

あたしは、ゴクリと唾を飲んだ。

「……そんなっ」

「そう。だから我々の出番だ。いくつか、プランを考えている。雄作君、説明を」

コナン君のお父さんが頷いた。

「プランは3通り。まず、吉岡愛結さんに囮になってもらうというものだ。我々は他人を装い、周辺を守る。そして、下っ端を確保した後に彼を脅迫。秋山雄一を呼び出す。
ただ、個人的にこの案は反対だ。吉岡さんを危険にさらしかねない。秋山への忠誠心が高い場合、素直に呼び出さない可能性もある。
第二が、強襲だ。毎週末、秋山はゴルフに行く。相手は政治家だったり、取引先だったり、愛人だったり色々だ。尾行の上場所を特定、殺すチャンスをうかがう。恐らく毒殺になる。
しかしこれも足が付きそうだ。キャディになりすませるスキルのあるのは、関西の京極君くらいだろう」

コナン君のお父さんが、一拍間を置いた。

「最後が、寝込みを襲う。奴は女好きだ。女を侍らせ薬を打ち、玩具のように扱って『壊す』……それが奴の手口だ。本来、吉岡さんの件以降その傾向が激しくなるはずだった。
とにかく、奴は絶えず獲物となる女を探している。吉岡さんの場合は出会い系だったようだが、あるいはその筋からの紹介を使っているかもしれない」

「……それを使って接触すると?しかし、どうやって襲うんです」

「そこが問題だな。ハニートラップを仕掛けるわけだが、吉岡さんにやってもらうわけにもいかない。浅賀君も嫌だろう」

由依ちゃんが肩をすくめた。

「そりゃそうだよ、パパさん。やっぱり、これまで通り上手く一人になる状況を作って、通り魔的にやるしかないんじゃない?」

「今回ばかりは難しいね。あまりに地位が高すぎる。手段を選ばないなら、人質を取る手もなくはない。確か、小学生の子供がいるからな。
しかし、悪手だ。バレやすく、しかも動く保証がない。警察も躍起になるだろう」

※コンマ下70以上で打開策あり <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/13(木) 22:13:58.23 ID:t/A+VUEQ0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/13(木) 22:25:45.73 ID:Vs4c5tVUO<> 皆黙り込んでしまった。そう、秋山は地位が高い。しかも猜疑心が強い。常に誰かしらそばにいるのだ。
現状で出た案には、どれも穴がある。素人のあたしでも、それは分かった。

コナン君が口を開く。

「今方針を決めなくてもいいんじゃないかな、父さん。まず、秋山の行動パターンを洗い直そう。
会社にいる時、休日の時。どう動いているか細かく分かれば、攻め方も分かるはずだ」

「しかし、それでは調べている間に、愛結さんに代わる犠牲者が出るかもしれないぞ?それは好ましいことではない」

コナン君のお父さんが、静かに、しかし重く言った。

※アユの選択は?(重要選択)

1 コナンに同意する(確率で犠牲者が出ます。低リスクですが解決は遅くなる可能性があります)
2 コナン父に同意する(アユが囮を買って出ます。リスクはありますが最速ルートで)

※3票先取
※質問受け付けます。また、作戦案の提案は歓迎です。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/13(木) 22:50:14.30 ID:Vs4c5tVUO<> 例によって一応0000までです。有効得票に達しない場合はやり直しになります。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/13(木) 23:19:45.06 ID:7/ujk0FDO<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/13(木) 23:22:24.91 ID:t/A+VUEQ0<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/13(木) 23:48:03.01 ID:co43NCCDO<> 2 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/14(金) 12:29:53.00 ID:B3+5BTkZO<> ……あたしは、考えた。このままでいいの?

前に決めたじゃない。守られるだけで、動かないのはもう嫌って。コナン君のために、できるだけのことはするって。
……まして、これは自分のことだ。あたしが撒いた種だ。


今動かなくてどうするの??


あたしは、手を挙げた。

「あたし、やります」

皆の視線が、あたしに向いた。コナン君は「えっ」と驚いている。

「でもそれじゃ……!?」

「いいの。昔の自分がやらかしたことの結果だし。何より、できるだけのことはしたいの。君のためにも」

あたしは微笑み、視線を網笠さんとコナン君のお父さんに向ける。

「あたしがやります。さっきの、藤原さんの意見だと……誰か、女性が必要な案は2つありましたよね。私が餌になって下っ端を捕まえ、秋山を誘き寄せる。あるいは、ハニートラップ」

「……そうだ。しかし、君にできるのか」

「できるかじゃなく、やるしかないんです。犠牲者を増やさないためにも」

コナン君のお父さんが、驚きを隠さず網笠さんを見た。網笠さんは、表情を変えない。

「……意外と肚が座ってるな。いいだろう。私が責任を持つ。後は、君がどうしたいかだ。
自分の手で殺すか、それとも我々に託すか」

1 自分で殺す(ハニートラップ)
2 コナンたちに仕上げは任せる(囮)

※3票先取
(再開は夕方以降予定) <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/14(金) 13:38:06.88 ID:LqSafUfM0<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/14(金) 13:52:59.26 ID:9DUou+C50<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/14(金) 16:24:56.81 ID:bL2Rip660<> 1 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/14(金) 20:19:09.25 ID:5rhDX8uiO<> あたしは……どうしたい?辱しめを受けたあの男を、自分の手でと思わないではない。
でも……それをやったら、二度と戻れない。あたしも立派な人殺しだ。

あたしはコナン君を見た。

「一つ、聞いていい?あたし以外の9人は、それで助かるの?」

「8人は。一人は、随分前に亡くなってます。彼の妻だった女性です。揉み消されていて、立件できませんでしたが」

そうか。既にあいつは、手を汚してたんだ。


なら、迷うことはない。


「あたしが、自分でやる。……どうすればいいか、教えて」

「……本当にやるんですか。危険な目に遭うかもしれない。
それに、手をかけた瞬間アユさんも犯罪者です。もう、後戻りはできなくなりますよ」

「……いいの。それに、金路アゲハの時に、もう戻れなくなってる。そうでしょ?」

コナン君は少し固まった後、溜め息をついた。

「まさかこういう所も歩美と同じとは……不思議ですね。分かりました、じゃあそういう方向で行きましょう。父さん、プランの説明を」

「分かった」

コナン君のお父さんが、タブレットを取り出した。

「一応、下調べはしてある。彼は群馬県の大誠会傘下の山本組の若頭、和田と付き合いがある。
彼が管理しているキャバクラから、何人かが秋山の所に行った、らしい。ただ、これは『未来』の情報だ」

「『未来』の?」

「そう。奴が大量殺戮に走った未来においては、このルートだった。ただ、今このルートを使っているかは分からない。別の誰かかもしれない。
だから、さっきは曖昧な表現を使った。確証はない」

※20以上で通常ルート <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/14(金) 20:21:31.99 ID:7xJcsh6v0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/14(金) 20:47:14.29 ID:5rhDX8uiO<> 「いえ、それで合ってます。あたしの時も、そうだったから。
あそこは『売り』ありのキャバクラなんです。だから、あたしみたいな小金を稼ぎたい女の子が、パートタイムで行ってた」

コナン君のお父さんがあたしを見つめた。

「本当にいいんだね?」

「はい。毎週末、破格の案件が来るはずです。それに乗ればいい」

「……分かった。ただ、君であることがバレると良くない。少しばかり、簡単に変装してもらえると助かる。
それと、発信器を付けてもらう。盗聴機付きだから、何かあった場合は我々が突入する。リスクは大きいが、それでも君の命には代えられない」

あたしは頷いた。

「でも、どうやって殺すんですか」

「君は看護士資格を持っていたはずだ。コナンと同じことをやってくれればいい。テーザーガンと注射器を、君に渡す。隙を見て、やってくれ。
決行までは、使い方含め練習してもらうが、いいかな?」

「……分かりました」

「いいですか、『総理』」

網笠さんはあたしをじっと見た。

「秋山を殺す、ということは君もバッドエンド・ブレイカーとなるという意味だ。もう普通の生活は送れない。それでいいな」

「……死んでいたはずの命です。彼のためにも、あたし自身のためにも……やります」

コナン君は喜びと悲しみが入り交じった、複雑な表情をした。胸にチクリとした、痛みがあった。


でも、もう止まれない。


網笠さんが初めて、少しだけ笑った。

「よろしい。これからよろしく頼む。まずは、『初仕事』だな」

彼が手を差し出してきた。握った手は思っていたより、ずっと強かった。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/14(金) 23:23:16.64 ID:OhiIB+BjO<> 明日は更新がないかもしれません。
(某所を更新します) <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/14(金) 23:26:23.24 ID:OhiIB+BjO<> なお、次回が6月17日分になります。
これを終えた後に仁パートです。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/15(土) 23:19:10.10 ID:53C+iwYXO<> 【6月17日、10時02分】


玄関のチャイムが鳴ると、由依ちゃんと興也さん、それと源君がいた。

「おはよ。朝弱いイメージがあったけど、ちゃんと起きてるね。OK。コナンは?」

「今、リビングの方に。網笠さんと、最後の打ち合わせをしているようです」

彼らをリビング案内すると、コナン君がちょうど会話を終えた所だった。

「皆来たね。じゃあ、始めようか。まず、今日の最終確認だ」

あたしに緊張が走った。……もう嫌でも引き返せない。

「アユさんに、由依さんがメイクを施す。彼女はハッカーとして優秀だが、隠蔽工作も強い。
その中には変装も含まれている。ぱっと見でアユさんとは、まず分からないようになるはずだ」

「まあ、正直素材はいいからね。いくらでも手のつけようはある。
差し当たりその長い黒髪は目立つから、軽く脱色しよう。
これでカラコンつけて、少し目鼻立ちをはっきりさせるようにしてハーフか外国人を装うのが良さそうだけど……。
多分あんた、英語はできないよね」

あたしは小さく頷いた。

「まあそりゃそうだ。とりあえず、ハーフ設定で押し切ろう。
生まれは群馬の大泉、ブラジル人かフィリピン人のハーフってことにするから、そこのところよろしく。
ああ、メイクでそれっぽく見えるようにするから安心して。元がいいと、何とでも誤魔化せるのよ」

「……そうなのかな」

自分自身、そんなに見た目に恵まれているとは思ったことがない。
男好きする身体と見た目だとは、昔よく言われた。
ただ、単に自分に自信がないからなのかもしれないけど、未だにしっくりこない。

コナン君が苦笑した。

「大丈夫です。由依さんは、思いもしないことはしゃべりませんから」

「そこが由依の良い所だよね」

由依ちゃんが源君を一瞥した。

「あんたは黙ってて。……まあ、正直アユにそんな度胸があるとは思わなかったからね。
最初に会った時は何こいつと思ったけど、今はちょっと見直してる。ただ、失敗はできないからね。そのつもりで」

「……もちろん」

コナン君が興也さんを見た。

「興也さんと源さんにはサポートに回ってもらう。僕も勿論待機するが、アユさんに何かあった場合は突入することになる。
ただ、秋山がどこを使うか次第で難易度は激変する。ホテル、それもラブホだと僕や源さんは動きにくい。
セキュリティのキツいマンションはなおさらだ。
ただ、誰かを連れ込んだ証拠が残りやすいそういう場所は彼は使わないとみている。本命はウィークリーマンションだろう。
……そうだったよね、アユさん」

「え、ええ。彼が『ヤリ部屋』に使うのは、大体ウィークリーマンションだった。それが今でも変わってるとは思えない」

「了解です。とにかく、これから高崎に向かいます。そこで和田が運営するキャバクラ『スターゲイザー』に興也さんとアユさんで行く。
多分、目的を言えば秋山の所まではたどり着けるはずです。そこからは……」

あたしはコナン君の目を見た。

「あたし次第、ということね」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/16(日) 21:12:46.44 ID:vaKfVoFRO<> 【6月17日、15時41分】


「よろしいですか」

「おう、入れや」

キャバクラの裏口の奥から、少ししわがれた声が聞こえた。
ここに前に来たのは半年以上前だけど、随分昔のように思える。

黒服に身を包み、サングラスで変装した興也さんが言う。

「極力声は出さないように。声で分かると厄介です」

あたしは頷き、奥に向かった。事務所の黒いソファには、オーナーの和田がどかっと座っていた。
派手なアロハシャツと、派手な金髪が目を引く。眼鏡の奥からは、剣呑そうな視線が覗いていた。

「おう、『本部』の長沼さんからの紹介らしいな。初めてだが」

「恐縮です。いい女の子をご所望とのことで、選りすぐりのを」

「半端なのだったら承知せえへんぞ。……」

和田があたしを上から下まで舐めるように見た。背中に冷たい汗が流れる。……ばれたらそこまでだ。

※コンマ下10以上で通常進行 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/16(日) 21:16:06.66 ID:b6iDcsAk0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/16(日) 21:41:39.18 ID:vaKfVoFRO<> ニヤリ、と和田が好色そうな笑みを浮かべた。

「兄さん、なかなか見る目あるやんか。いかにも旨そうな身体や。ハーフか」

「ええ。生まれは大泉、ブラジルの日系3世です。と言っても日本語は上手くないですけど」

ペコリ、と頭を下げる。

「それでええ。むしろ下手に知恵回る方が困るからな、今日の客さんは」

和田がセブンスターに火を付けた。

「ワンショット50万、取り分は7:3で俺や。それと、プレイ内容は決して口外しないこと。ええな」

「オーケーです。いいな、『アリーナ』」

あたしは小さく頷いた。7:3というのは相当きつい取り分だけど、1晩で15万円というのはそれでも破格だ。
その代わり、秋山のプレイは苛烈だ。お尻の穴を使われたり、放尿を強いられたりするのはまだいい方だ。
拘束や首絞め、薬を使われたことも1度だけある。しかも服従しないと酷いことになる。
秋山に逆らった女の子がソープに沈められたという話は、いくらでも聞いたことがあった。

「それじゃ15分後メドに移動するぞ」

「随分早いですね」

「大将、ヤると決めたらぶっ通しだからな。あの絶倫っぷりは真似できんわ」

あたしはほっとした。あまり待たされると、和田に気付かれる確率はそれだけ上がる。

「了解です。じゃあ、明日の朝ピックアップしにきますんで。よろしく頼みますよ」

「おう」

興也さんが去り際にあたしを数秒見つめた。「後は任せた」とその目は言っていた。




<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/16(日) 23:11:15.77 ID:vaKfVoFRO<> 【6月17日、16時08分】


「ここだ」

ワンボックスカーが停まった先は、高崎の郊外にある普通のマンションだ。
多分、コナン君たちが近くにいるはずだ。まだ夕方前だから、小学生や中学生がそこらをうろついていても不自然じゃない。

いざという時は彼らが助けてくれる。それだけが支えだ。

和田の部下がエントランスのインターフォンを鳴らす。

『入って』

甲高い声とともにドアが開いた。いよいよだ。和田の部下がマンションを出ていく。
エレベーター上がる十数秒間が、酷く長く感じた。

そして、部屋の前に着く。ドアノブを握る手が震えた。

ドアを開けた先から感じたのは、饐えた空気。精液と愛液と、それと微かな血の匂い。
前に来た時にも感じたけど、さらに濃くなっている。

胃の奥から何か酸っぱいものがこみあげてくるのを感じた。それをギリギリでこらえる。

「来ないのかなぁ」

間延びした声が部屋の奥から聞こえる。あたしは何とか意志の力で足を前に進めた。

「こ、こんにちは」

太った半裸の中年男が、ベッドに腰かけている。口にはニヤニヤとした笑いが浮かんでいる。


この男が、秋山雄一だ。アキヤマ電気の御曹司にして専務。
愚鈍そうに見えるが、頭は回る。力も強い。ただ、性根と性癖が異常にひん曲がっている。


奴はあたしをじっと見つめた。

※コンマ下

01〜30 見たこと、あったかなあ
31〜90 通常ルート
91〜00 いいねぇ……


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/16(日) 23:17:58.31 ID:Arb5lWRDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/16(日) 23:19:24.14 ID:vaKfVoFRO<> 今日はここまで。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/17(月) 13:02:29.41 ID:f9wnzpKuO<> 秋山はねっとりとした目線であたしを見つめた。下卑た笑いが、顔に張り付いている。

「んー、実にいいねぇ。巨乳過ぎず、小さすぎず。エキゾチックな感じもあって、とてもそそる。名前は、アリーナちゃんでいいのかなぁ」

「……はい」

あたしはできるだけ、声を低くして言った。声からバレてはいけない。
うんうんと満足そうに、秋山は頷いた。

「じゃあ早速即尺と行きたいが……その前に、君に渡しておくものがあってねぇ」

渡すもの?……秋山は後ろを向いている。今がチャンスと思った次の瞬間、奴は錠剤をあたしに差し出していた。

「……これは?」

「いいから、飲みなよぉ。とーっても気持ちよくなれるよぉ」

口は笑っているが、目は笑ってない。拒絶すれば、無理矢理にでも飲ませようとするだろう。

※コンマ下、40以上で追加情報 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/17(月) 13:39:34.56 ID:IVRD3OjE0<> ほい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/17(月) 19:20:50.19 ID:s8JNKPp3O<> 「これは……秋山様もお飲みに?」

にちゃあ……と秋山が大きな口を開けた。

「もちろん!最新の薬で、しかも合法。そしてとっても気持ちよくなれる、最高のドラッグだよ。ものすっごく高価だけどねぇ」

嫌な予感がした。あたしは焦りを無理矢理に押し殺す。

「……薬の、名前は」

「ああ、『アイスキャンディ』だよ。君もどうだいぃ?」

あたしは思わず固まった。コナン君が、微かに懸念していたことだった。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/17(月) 19:47:29.42 ID:s8JNKPp3O<> 【6月17日、14時41分】


「アユさん、一つ注意が」

隣に座るコナン君が、あたしを見つめた。かなり真剣な表情だ。

「……何?」

「『アイスキャンディ』の流通が、始まっているかもしれません。アゲハに殺された白馬は、それを売り捌こうとしていました。
ひょっとしたら……既に佐倉は動いているかもしれない」

関越を走る車内の空気が、一気に重くなった。

「アイスキャンディって前にも聞いたけど、どんな薬なの?」

「人間の感覚を、ありとあらゆる感覚を倍加・加速する効能があります。快楽も思考速度も肉体能力も……そして、苦痛も。
元は認知症の治療薬、と言いましたね。認知症には、グルタミン酸が関与している。
そこで、グルタミン酸の異性体を脳内に送り込むことで、脳を活性化する、というコンセプトだったわけです」

「でも、麻薬なんでしょ?」

コナン君が顔をしかめた。

「麻薬、で済めばいいんですけどね。あれには習慣性はない。ただ、常用すると、極めて深刻な作用が生じる。
あれは、人間の未来を先食いする薬なんですよ。脳の眠っている能力を引き出す……それがどういうことか、分かりますか?」

あたしにはさっぱり分からない。無言で首を振った。

助手席に座る由依ちゃんが、忌々しそうに言う。

「ぶっちゃけちゃうと、物凄い早い時期に痴呆になるのよ。認知症の、先の長くないお年寄りに使う分にはまだいい。副作用が出る頃には、大体老衰に近い年だから。
でも、若い子が使うと……その先は悲惨よ。数年とたたないうちに廃人になる。若くて代謝のいい人間には、副作用が早く訪れる、てわけ」

コナン君が頷いた。

「そう。だから佐倉は、何がなんでも止めなきゃいけない。あれが流行した未来は……実に悲惨でした。二度と繰り返してはいけないんです。
秋山がアイスキャンディを持ってる可能性はゼロじゃない。末端価格は、まだ1錠数千万円でしょうが、秋山なら買える。
そして、奴がアイスキャンディを持っていた場合……極力早く、テーザーガンを撃って下さい。1錠でも飲めば……アユさんの未来は、10年は縮まってしまう」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/17(月) 19:56:40.15 ID:s8JNKPp3O<> 【6月17日、16時10分】


そして今。目の前にはアイスキャンディを飲んだ秋山がいる。

これは好機だ。しかし、危機でもある。

今もし、首尾よくテーザーガンを秋山に当てられたなら、それで全ては終わるだろう。あとはコナン君の言う通り、注射をしてそれで終わりだ。

しかし、もし撃てなかったら。あるいは、外したなら。
肉体能力が上がった秋山は、躊躇わずあたしを殺しにくるだろう。それも、酷く残酷で、苦痛を伴うやり方で。
そこから逃げるのは、とても難しく思えた。

選択肢は3つだ。ここでテーザーガンを抜いて、一か八かの勝負に出る。
あるいはコナン君たちを呼んでみる。しかし、これは彼らが目撃されるリスクがある。できれば、あたし自身が決着をつけるのが理想的だ。
3つ目は、時間を稼ぎ、確実に秋山を殺せる状況を作る。この問題は、どうやってそれを実現するか、だ。

※コンマ下60以上で思い付く、未満で選択肢へ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/17(月) 20:14:47.24 ID:jnL3C42m0<> 60 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/17(月) 20:17:03.46 ID:s8JNKPp3O<> ※選択肢へ

1 この場でテーザーガンを抜く
2 コナンたちを呼ぶ
3 何とかして時間を稼ぐ

※3票先取、ただ3の場合はできれば具体的に方法を書いてください。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/17(月) 20:19:29.29 ID:s8JNKPp3O<> 4にその他の自由安価も追加します。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/17(月) 20:26:01.99 ID:s8JNKPp3O<> 一応のヒントを。

1は丁半博打です。決まればいいですが……
2もリスクがあります。仁や古畑の警戒が高まるでしょう。
3は適切なもの(上のコンマ判定で成功した場合の行動)ならかなりの確率で仕留められます。
4はある行動をとる場合は確実に殺せます。ただし……

なお、アユと秋山との距離は2m、秋山は腰にタオルを巻いただけです。テーザーガンはハンドバッグに入っていますが、抜き打ちで反応されたら叩き落とされるかと思われます。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/17(月) 20:27:38.18 ID:s8JNKPp3O<> なお、3には2、3正答があると思います。上の記述にそれとないヒントは忍ばせています。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/17(月) 20:40:39.65 ID:s8JNKPp3O<> 一応締め切りは0000までです。質問などあれば受け付けます。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/17(月) 21:30:15.93 ID:WOY+vYa1o<> ・アユの格好(裸?)と銃の位置(ズボンのポケットに入ってるとか)
・アユに[ピーーー]覚悟は出来てる?(いざというとき尻込みしないよね?って意味) <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/17(月) 21:58:04.72 ID:HBuufsewO<> >>414
アユはまだ服を着ています。テーザーガンはハンドバッグの中です(肩にぶら下げている状態)。
殺す覚悟は決めているでしょう。もっとも、一線を越える時はある判定と描写を入れますが(殺す殺さないではなく、もっと別のものです)。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/17(月) 22:14:54.17 ID:WOY+vYa1o<> テーザーガンは片手で容易に撃てる? <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/17(月) 22:33:30.32 ID:HBuufsewO<> >>416
問題なく打てます。通常拳銃は片手では撃てませんが、テーザーガンはスタンガンの一種ですので軽量なのが普通です。
秋山はアイスキャンディを服用しているため、当たればアゲハ同様に確実に昏倒します。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/17(月) 22:52:44.88 ID:WOY+vYa1o<> おk
唇にアイスキャンディを咥え、口を突き出し「キスで飲ませて」とおねだり
ハンドバッグを後ろに回しつつ手を後ろで組み、見えないように銃を取り出す
相手が至近距離まで寄ってきたら見えないように銃を構え横からバチィッ!
クスリ使用なしならこんなとこかなぁ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/17(月) 22:57:57.70 ID:HBuufsewO<> >>418
了解です。案として採用します。

まだ募集中です。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/17(月) 23:35:30.01 ID:RqYrsU/1O<> 上げておきます。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/18(火) 00:00:58.51 ID:POGvT0MqO<> 0000になりましたが有効得票数に達しないため延長します。
0800までに最も意見が多かったものを採用します(仮に投票がない場合は418さんの意見を採用します)。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/18(火) 09:39:00.46 ID:gv2ZDFz3O<> では418さんの意見を採用します。
こちらの想定とはやや異なりますが、文脈的にはOKです。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/18(火) 09:55:48.73 ID:gv2ZDFz3O<> あたしは必死に考えた。今ここでテーザーガンを抜く?
テーザーガンは肩に下げたハンドバッグの中にある。右手で抜き撃てる状況だ。
ただ……あたしはプロじゃない。コナン君なら、簡単に仕留められるだろう。でも、あたしは数日練習しただけの、素人だ。

まして、秋山はアイスキャンディを飲んでいる。コナン君の言う通りなら、反応速度も常人より遥かに高まっているだろう。
撃とうとしたところを押さえられたら……その後のことは、考えたくもない。


確実に当てられる方法……


……これならいけるかもしれない。


あたしはできるだけの作り笑いをした。

「ねえ、そのお薬ちょうだい?キスしながら、口で溶かしたいの」

秋山が「うほっ」と声をあげた。

「いいねぇ、積極的な子は実にいいよぉ。ほら、これ」

錠剤を手渡されると、あたしはそれを唇に挟んだ。秋山の醜悪な顔が近づいてくる。

……むちゅっ

生暖かい、どこか生臭い肉があたしの唇を割った。錠剤が、あたしの中に入ってくる。


……??


最初に感じたのは、異常なほどの甘さ。そして、口の中が酷く敏感になった。

「……はうっ!?」

キスだけなのに、錠剤が少し溶けただけなのに……身体の芯に甘い熱が生じ始めた。
これは、マズい!!このままでは……秋山の好きなようにされてしまう!!

快感で遠退く意識を何とか耐え、あたしは秋山を見る。奴はキスに夢中だ。
まだ、ハンドバッグは肩にかかっている。今撃たなければ、奴を殺す機会は、永久に失われる。

あたしは理性をフル動員し、右手をハンドバッグに伸ばした。秋山はあたしを押し倒そうと肩に手を当てている。


今しか、チャンスはないっ!!


※コンマ下10以上で成功 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/18(火) 10:09:50.10 ID:NrmfrbaDO<> あ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/18(火) 10:18:58.32 ID:pLvmbz6/0<> 成功判定が大きいのにこの数値
ギリギリだわ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/18(火) 12:29:44.18 ID:LsYojXYio<> 危ねぇw <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/18(火) 13:25:55.11 ID:Dhdm8iHFO<> 再開は夜です。

なおこちらが想定していたのは以下のパターンでした。

・即尺(すぐにフェ○)に応じ、舐めると見せ掛け噛み付く→激痛(アイスキャンディの効果で痛みが倍増)に怯んだところでテーザーガン
(傷口から警察が追求する懸念あり)

・シャワーを浴びると洗面所に引きこもる(シャワーは浴びるふりで、実際にはテーザーガンを構えている)→なかなか出ないでおいて、秋山がドアを開けたところで撃つ
(一緒に入ろうと言われると厳しい、判定あり。これが判定成功時の行動)

・自分もアイスキャンディを飲み、肉体能力を高めておいてテーザーガン
(後の展開に重大な影響あり)

・アイスキャンディをもう1錠飲むよう促す→オーバードーズで殺す
(秋山が知っていたらアウト)

キスの最中に狙うのはなかなか面白いアイデアでした。ただ、幾ばくか摂取しているかもしれませんが(後で判定あり)。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/18(火) 19:36:39.57 ID:xbJ74vjoO<> あたしは震える手でテーザーガンを握った。快感で蕩けそうになる意識を何とか保つ。

そして、右人差し指が引き金にかかった。全ての意思の力を使って、一気にテーザーガンを引き抜く。
それを秋山の腹に付けた感触と共に、あたしは引き金を引いた。


……シュバッ


「ぎゃああああああああっっ!!!!!」


秋山は、絶叫と共に白目を剥いて倒れ込む。あたしは、口に残ったアイスキャンディを吐き出した。

※コンマ下
01〜25 半分ぐらい溶けている
26〜85 4分の1ぐらい溶けている
86〜00 ほとんどそのまま <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/18(火) 19:39:49.08 ID:lIc/HQML0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/18(火) 19:51:51.68 ID:xbJ74vjoO<> 錠剤は半分ぐらい溶けていた。……あたしはその事実に、戦慄した。
たった半錠の摂取が、どれほどの影響を与えるかは分からない。でも……それは、決してあたしにとって良いことじゃない。

その場に崩れ落ちたくなったが、秋山はまだ、生きている。涙が溢れてくるけど、あたしの仕事は、まだ終わってない。

ハンドバッグをまさぐると、小さな注射器が見付かった。その中は、透明の液体で満たされている。
これを秋山に射てば、それで全ては終わりだ。

「……ヒューッ、ヒューッ……」

掠れた息の音が、やけに大きく聞こえる。情欲の残り火と、アイスキャンディを摂取してしまったことの絶望が、あたしの手をまた震えさせた。

コナン君の言っていたことを思い出す。「極力自然死に見えるように、できるだけ注射は一刺しで決めてほしい」と。
あたしは秋山の腕に集中する。薬のせいか、血管が随分とはっきり見えた。

注射器のキャップを外し、その先端を秋山のぶよぶよとした腕に近付ける。

…………

……

※コンマ下
01〜10 何刺しも刺してしまった
11〜20 3刺しほどで終わった
21〜00 一刺しで終わった <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/18(火) 19:53:05.14 ID:lzNolr0DO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/18(火) 20:09:08.67 ID:xbJ74vjoO<> 最初の一刺しは、震えから血管に刺さらなかった。二刺し目は、刺した瞬間に秋山が意識のないまま少し暴れ、上手く行かなかった。
三刺し目でやっと血管に針が刺さった。ゆっくり、ゆっくりとシリンダーを押す。

注射器の中の液体を全て注入すると、秋山の動きが一瞬止まった。

……そして。


「あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁぁぁぁぁ!!!!!」


奴は、獣のような咆哮と共に急に飛び起きた。そして顔を真っ赤にして、バタンッバタンッとベッドを激しく2、3回叩いた。

そして、白目を剥きながらあたしの方を見たかと思うと……糸の切れたマリオネットのように、バタリと倒れた。

「はあっ、はあっ……」

……死んだの?

脈を取ると、それはとてもとても微弱なものになっていた。そしてすぐに、それは止まった。

「……お、終わった……」

あたしは、秋山の遺体が乗るベッドの側にしゃがみこんだ。目と鼻から、色々な液体が流れていた。

それは、秋山から解放された喜び?それとも、遂に人殺しになったことへの後悔?
命を大幅に縮めかねない薬を、半分とはいえ飲んでしまったことへの後悔?あるいは、最後の最後に失敗してしまった、自責の念?


……分からない。分からないよ。


「う……ううっ……うわああああああ!!!!」

部屋には、あたしの慟哭だけが響いていた。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/18(火) 20:36:12.92 ID:xbJ74vjoO<> 【6月17日、16時25分】


すすり泣くあたしの懐で、何かが震えた。

「コナン君」と、スマホは表示している。どんな顔で彼に会ったらいいか、あたしには分からなかった。

ただ、出ないわけにもいかない。

『……アユさん』

スマホの向こうから聞こえた彼の声は、思いの外穏やかだった。

「ごっ、ごめんねっ……あたし、あたしっ……!」

『いいんです。状況は、発信器から大体察しました。……あなたに無理をさせてしまった。謝るのは、僕の方だ』

「そんなことないっ!……あたしが、もう少し落ち着いてたらっ……」

『それでも、あなたは一応無事で、秋山は死んだ。十分な成果です。……お疲れ様でした。
少し、今の状況を整理して話してくれますか?』

あたしは、泣きながらこの部屋であったことを話した。
秋山にテーザーガンを当てるために、アイスキャンディを口移しで飲もうと偽装したこと。その結果、半分ぐらいを飲んでしまったこと。
混乱と恐怖から、上手く注射できなかったことも話した。

全てを言い終わった後、コナン君は少し黙った。

『状況は分かりました。……プランBで行きましょう。
まず、アユさんが触った場所は、敢えてそのままにしてください。指紋を全て拭くには、ちょっと無理がある。
多分、少し髪の毛も落ちてると思いますが、それもそのままで』

「……えっ?そ、そんなことしたら、証拠が……」

『敢えて残すんです。本当は、証拠ゼロの自然死を装えれば良かった。でも、それはもう難しい。
だから、ヤク中の秋山が、オーバードーズで死んだという立て付けにするんです。
アユさんが半分飲んでしまったアイスキャンディ。これを注射器の中に入れて、水で少し溶かしてください。そして、それを捨てる。
これで、注射器の中にあったのは、アイスキャンディの水溶液と偽装できる。
3刺しの刺し傷も、オーバードーズを偽装するなら逆に好都合です。普通、何回も服用しないとオーバードーズにはなりませんから』

コナン君は、それがまるで予定されていたかのように、淀みなく指示を伝える。あたしは、ただ唖然とするばかりだ。

「う、うん。分かった」

『重要なのは、注射器の指紋だけはちゃんと拭き取ることです。そして、秋山の手にしっかり握らせてください。
そこまで済んだら、帽子を被って顔を見えないようにそっと出てください。
大丈夫、多分あそこは完全防音ですから、秋山の死体が見付かるのは多分明日の午前から昼です。すぐに騒がれることはない』

「あたしはどこに行けば?」

『高崎駅まではすぐです。そこのロータリーに、僕らはいます。
適当なコンビニのトイレで、ウイッグを外し、化粧を落としてください。そうしたら、僕らが拾います』

「うん、分かった」と言うと、『では、また』と電話が切れた。

あたしは涙と鼻水を拭う。今あたしにできることは、コナン君が言ったことをしっかりやるだけだ。

腰をあげ、秋山の死体を見る。醜悪な肉の塊。……こいつのせいで、どれだけの女の子が不幸になり、あるいは間接的に命を落としたのだろう。

でも、もう犠牲者は出ない。……それだけが、救いだった。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/18(火) 21:14:31.10 ID:xbJ74vjoO<> 【6月17日、17時07分】



「……ごめんなさ……」

車に辿り着いたあたしを待っていたのは、コナン君の抱擁だった。

「……それは僕の台詞です。よく……よく戻ってきてくれました」

「えっ……?」

車はゆっくり走り始める。源君が苦笑した。

「大変だったんですよ、『警視』。突入かやめるか、凄く悩んでいたんですから」

「……そうなの?」

助手席から由依ちゃんが振り向いた。

「そうそう。秋山がアイスキャンディ服用してると知った瞬間、顔が真っ赤になって。あんなにあたふたしたコナンは、そう見れないわね」

「まあ、でも判断は難しかったですよ。僕でも相当悩んだ。結果的に、アユさんが自力で殺してくれたのは悪くない。
あとは、群馬県警の捜査能力次第ですかね。オーバードーズの事故死ではないと見抜いても、僕らにはまず辿り着けない。
マンションの防犯カメラに映るのは、あくまで金髪のハーフ風の女性ですからね」

静かに興也さんが言った。……それならいいのだけど。

コナン君は、あたしの手を握っている。

「……怖い思いをさせてしまいましたね。もっと上手いやり方もあったかもしれないのに」

「……ううん。あたしがダメだっただけ。やっぱり、所詮素人、だよね」

コナン君が強く首を振った。

「いえっ、そんなことはないです。アイスキャンディを服用していた秋山は、明らかに危険でした。……あなたの、勇気の勝利です。普通じゃできない」

「……そうなの、かな……」

薄曇りの夕暮れを、車が走っていく。不安と後悔と、幾ばくかの達成感が入り交じった気持ちで、あたしは流れる風景を見ていた。

「すぅ……すぅ……」

ふと横を見ると、コナン君が寝息を立てている。……心労からだろうか。

#

※コンマ下、20以上で追加イベント、80以上で…… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/18(火) 21:49:56.67 ID:NrmfrbaDO<> えい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/18(火) 22:09:19.65 ID:xbJ74vjoO<> 今日はここまで。次回R15表現がある可能性があります。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/19(水) 09:51:38.45 ID:uFv90MPNO<> 【6月17日、20時33分】


「ごちそうさま。ごめんね、作らせちゃって」

「いいんですよ。今日はアユさんはゆっくりしててください」

チャカチャカと、食器同士が当たる音がする。

「それにしても美味しかった。あんな美味しかったんだね、ペペロンチーノって」

「……?そんなに、ですか?普通のペペロンチーノにネギとキノコを散らしただけですが」

「なんか、とってもコクがあった気がする。気のせいかな」

不思議そうな顔をしながら、コナン君がキッチンに向かった。あたしも洗い物の手伝いをしに立ち上がる。

「ちょっと、聞いていい?……あたし、アイスキャンディ半分飲んじゃったけど……どうなるのかな」

スポンジに洗剤を付けながら、あたしは訊いた。食事中には、ご飯がまずくなるような気がして言えなかった。

コナン君は、少し険しい顔になる。

「1錠の摂取だと別ですが……半錠なら、まだ影響は少ないはずです。多分、秋山も粘膜摂取してますし、アユさんが飲んだのは半分以下でしょう。
ただ、アイスキャンディには習慣性がないとはいっても、再使用率は極めて高い。メリットが大きすぎるんです。
だから、繰り返し使いたくなる。特にセックス時の使用においては覚醒剤なんて目じゃないほどの効果がある」

あたしは、秋山とのキスを思い出していた。あいつのテクニックも何もない乱暴な愛撫ですら、全身が蕩けてしまうと思うくらい感じていた。
キスであの程度なのだ。セックスなんてしたら……


あたしは恐怖と期待が混ざった震えを感じた。


コナン君が、あたしを見て話を続ける。

「アユさんも体験したはずです。だから、アイスキャンディの誘惑に打ち克つのはかなり大変だ。
そして、もう一つ。1錠以上を『累計で』摂取した場合、認知症の進行は加速度的に進む。前に話した通り、例外を除いては10年、人としての寿命が縮むと見た方がいいんです」

「……例外?」

「特殊な酵素を体内に持つ人間は、影響をあまり受けないと聞きました。1万人に1人らしいですが。ただ、そのメカニズムは20年後ですらよく分かってない。
だから、アイスキャンディに触れる機会が万一あった場合、最大限の警戒をしてください。……アユさんのためです」

コナン君はあたしが洗ったお皿を拭き始めた。

あたしは、ふと気付く。

「……そう言えば、アイスキャンディの効き目ってどのぐらい続くの?」

「1日弱。つまり、まだアユさんにはあれの影響が残ってる。そういうことです」

あたしは口に微かに残るペペロンチーノの味を感じ、戦慄した。
……これは、アイスキャンディの効き目のせいだったんだ。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/19(水) 12:19:34.01 ID:RdK76bEjO<> #

「……ふぅ」

肩までお湯に浸かる。多分、秋山の死体は見付かるだろう。しばらくは、警察に怯えないといけない。
ただコナン君は、あたしに疑いはまずすぐにはかからないと言った。警察だった彼が言うのだから、多分そうなのだろう。今はそれを信じるしかない。

あたしは、お風呂のお湯をすくった。この手は、完全に汚れてしまった。それは、あたしが望んだことだ。

あたしは昔、勇気がなくて友人を死に追いやった。もし、あたしが勇気を出して止めれば……彼女は生きていたかもしれない。

「……皮肉なものね」

昔は勇気がなくて人を「殺し」、今日は勇気をもって人を殺した。
もし、あの時に戻って今の勇気があったなら……ズキンと、胸の奥が鈍く痛んだ。

風呂から上がり、身体を洗い始める。腕から脇、そして乳房。


ビリッッ


「ひあっ!??」

身体の芯に、鋭く甘い電流が走った。スポンジは、あたしの乳首に軽く触れている。……この程度で??

アイスキャンディの効き目は、まだ続いている。しかも、秋山によって付けられた情欲の火は、燻ったままあたしの中に残っていたのだ。

……じゅんと、下半身の奥から何かが溢れた音が聞こえた気がした。

……耐えなくちゃ。

※コンマ下
01〜30 あたしの理性は負けた
31〜95 通常ルート
96〜00 アユさん、大丈夫、ですか? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/19(水) 12:32:12.23 ID:Vl2BT5AE0<> ほい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/19(水) 17:38:05.77 ID:RdK76bEjO<> あたしはスポンジを下半身に向けた。一番感じやすいところだけど、手早くやれば問題ないはずだ。

そう思っていたあたしは、甘かった。


「ひぎぃっ!??」


スポンジが内股に当たった時、さっきとは比べ物にならないくらいの快感が走った。そんな。
思わず、スポンジを置き指でそっと触ってみる。


くちゅり。


「ひあああっっ!!!」


そんな。少し触っただけなのに。何で?


あたしのそこは、すっかりぬるぬるになっていた。こんなに濡れるなんて……ほとんど記憶にない。
小さな芽が、堅く、鋭く尖っているのが見えた。ぬらぬらと、泡ではない透明な何かで濡れている。


……ここを擦ったら、どうなっちゃうんだろう。


それはダメだと、理性が叫ぶ。それをしたら、きっとここで満足するまで弄ってしまう。

それをコナン君に見られたら?……考えたくもなかった。
淫乱なあたしの本性を、彼には見せたくなかった。大切な人になりかけているからこそ、見せたくなかった。

しかし、身体の甘い疼きは、それを触れと急かせていた。
少しだけ。少しだけなら……


ちゅくっ


!!!!!!!


気持ちいいっ!!!気持ちいいよぉ!!!!

全身が下半身を中心に、甘い何かに溶けていく。溶けていっちゃう。
口からは声にならない叫びが出た。もう、何を言ってるか、自分でも分からない。

親指で芽を擦り、中指を中に入れる。すんなり入っていく。

もう、とろとろだ。目から出た涙で、視界もハッキリしない。


微かに残った理性が、最後に叫んだ。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/19(水) 17:38:47.10 ID:RdK76bEjO<>



「こ、コナン君……助けてよぉ……」



<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/19(水) 17:39:18.86 ID:RdK76bEjO<> ※コンマ下20以上で??? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/19(水) 17:40:53.16 ID:7yOpIHs20<> さて <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/19(水) 17:53:42.68 ID:RdK76bEjO<> ※20以上で目撃ルートでした

#

…………

……

気が付くと、あたしは布団の上にいた。服は……着てる。パジャマみたいだ。

あの後、どうなったんだっけ。記憶が、ない。

「気が付きましたか」

枕元にはコナン君がいた。心配そうな顔であたしを見ている。

「……えっ……ど、どうなったの、あたし」

「アユさんがなかなか上がってこないから、風呂場に行ってみたんです。そうしたら、アユさんが意識を失ってた」

「そ、そうなんだ……」

良かった、じゃああの現場は、見られてなかったってことか。
とすると……あたしはオナニーに熱中するあまりに暑さで失神したのか、あるいは強すぎる快感に耐えられなかったのか……

そこまで考えて、ハッと気付いた。

コナン君は、意識のないあたしの身体を拭き、着替えさせて、ここまで運んだ?あの小さな身体で?

ということは……頭の回る彼のことだ。どうしてそうなったか、理解してないはずもない。

あたしは愕然とした。まだ、見られてた方が良かったかもしれない。

目から涙が溢れてきた。

「ご、ごめんね……こんな、はしたない女で……」

※コンマ下
01〜10 どういうことです?
11〜90 通常ルート
91〜00 コナン君は「困ったな……」と呟いた。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/19(水) 17:58:44.87 ID:mCdBjocDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/19(水) 18:57:34.59 ID:RdK76bEjO<> コナン君は、静かに首を横に振った。

「いえ……こうなることは、予想しておくべきでした。謝るのは、僕の方です」

「幻滅、したでしょ?」

「アイスキャンディを摂取して、唇での愛撫を受けたら普通の人間は理性が飛びます。むしろ、アユさんはよく耐えた。
その反動が出てしまったのは……仕方ないことです」

「……あたしを、責めないんだ」

「責める理由はないですよ。ほら、今はゆっくり休んで」

コナン君が微笑んだ。あたしは申し訳なさと情けなさで、また泣いた。

「……えぐっ、本当に、ごめんね……何であたし、こんなダメなんだろ……」

「……自分を責めても始まらないのは、僕が一番よく知ってますから」

コナン君がそっと、頭を撫でる。……とても、安心する。

※コンマ下
01〜20 あたしはそのまま、眠りについた(仁パートへ移行)
21〜90 通常ルート
91〜00 ずくん。身体の奥で、何かが疼いた。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/19(水) 19:02:14.57 ID:T/3NdciDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/19(水) 22:22:37.56 ID:Tv9iZD1HO<> 「……ねえ、一つ訊いていい?」

「ええ、どうぞ」

「コナン君、どうしてそんなに優しいの?……こんなあたしなのに」

コナン君は、少し黙った。

「優しい……というのとは、少し違いますね。さっきも言いましたけど、自分を責めても仕方ないというのを、分かってもらいたいんです」

「……どういうこと?」

「アユさん、人生をやり直したい、と思ったことはありますか?」

あたしの心の古傷が痛んだ。

「……ある。それがどうかしたの?」

「僕にも、そう思うことはありました。あの時、ああしていれば。そう、何度思ったことか。ずっと、ずっと苦しんでました。
でも、ある人が僕に言ったんです。『人生はやり直せない。だから、とにかく前に進め』って。
過去から学ぶことはある。だけど、それに縛られ先に進まないのは愚かだと。
後悔より先にやることはある。繰り返し失敗しながら、それでも乗り越えていく。人生はその積み重ねなんだって、その人は言ったんです」

「先生か誰か、なの?」

「師匠の師匠、ですかね。……とにかく、済んでしまったことは済んでしまったことです。
それにアユさんは無事ですし、秋山以外は誰も傷付けてない。それで、いいんじゃないですか」

コナン君は、静かに頭を撫でていた。……そう、なのかな。

※コンマ下30以上で会話続行 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/19(水) 22:26:58.26 ID:T/3NdciDO<> て <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/19(水) 22:27:53.63 ID:Tv9iZD1HO<> ※コナンパート終了

次回から仁パートに入ります。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/20(木) 13:38:05.71 ID:WXep7BpSO<> 【6月17日】


俺は熊谷駅前のパーキングに、年季の入ったフィットを止めた。警察の車はクラウンだが、私用はこんなものだ。
美和と一緒になるなら、こいつも買い換えないといけない。

腕時計は11時53分を示していた。約束の時間まではそろそろだ。

SHELLYの件は、赤木警部に報告する手筈になっている。本来は誰か別の人間も連れてくるのが普通だが、俺一人で来いとの、SHELLYが強く要求してきたのだ。

#

俺はサイゼリヤの店舗入り口に立つ。今日が薄曇りで、暑さは然程でもないのが救いだった。

「あれっ、仁さん??」

スマホを見ていると、急に後ろから声をかけられた。……美和とその娘の……亜衣だったか。

「あ、ああ。美和さんですか。偶然ですね」

「ビックリしたよー。最近仕事忙しいって言ってたから、ちょっと寂しかったんだよね。この前も途中で抜けちゃってたし。今日もお仕事?」

「え、ええ。そんなところです。捜査協力者との、待ち合わせを」

美和が来るとは、一瞬驚いた。確かに、日曜は熊谷にいるとは聞いていたが。
彼女と話したい気持ちがないわけではないが、今はSHELLYが優先だ。

「ああ……そうだよね。お邪魔しちゃ悪いから、お店入るね」

残念そうに笑い、美和は娘の手を引いて店内へと消えた。時計は、12時を5分ほど回っている。

まだ来ないのか。軽い苛立ちを感じ始めたその時、スマホが震えた。メールだ。
そこには「店内に入って、奥の窓側の席に座ってください」とある。差出人は。SHELLYだ。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/20(木) 20:57:35.14 ID:YmUC/3wXO<> 「あれっ、仁さん。一人なの?」

指定された席に行こうとすると、その近くには美和母子がいた。必然的に、隣同士になる。

「あ、ですね。どうも、これから来るらしいです」

ホールスタッフが、美和の席にパスタとキッズセットを置いた。亜衣ちゃんは、無表情で向こうを見ている。前にちらっと会った時もそうだが、少し人見知りするのだろうか。

「こらっ、美和。お兄さんに挨拶は?」

彼女はペコリ、と軽く頭を下げた。美和が母親の顔になる。

「ったく、いつもはいい子なのに……困っちゃうよね」

「はは、そのうち慣れますよ。これからも会うことだし」

亜衣ちゃんはクルクルとフォークでパスタを巻いている。しかし食べる気配はない。

俺も注文することにした。昼飯もまだだ。手早く食べてしまおう。SHELLYはまだ現れる気配がない。

「何の事件……かは聞いちゃいけないんだったよね。お邪魔だろうから、早く退散するね」

「この埋め合わせは必ず。とりあえず、親子の時間を楽しんで」

「そうする。あ、ちょっとトイレ行くね。亜衣はいい子だけど、少し見ててくれると助かるかな」

俺は微笑んで頷いた。美和の姿が向こうに消える。


その時、亜衣ちゃんが俺に一礼した。



「毛利仁さん、ですね。『はじめまして』。私が、SHELLYです」



<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/20(木) 21:02:07.60 ID:YmUC/3wXO<> 俺は一瞬、フリーズした。……何を言ってるんだこの子は??

彼女は懐からスマホを取り出した。

「連絡先の交換を。早くしないと、母が戻ってしまう」

「本当に、君がSHELLYなのか?」

静かに亜衣ちゃんは頷く。……そんな、馬鹿な??


…………ジジジッ…………


頭に、またあのノイズのような音が響いた。


※コンマ下(重要分岐)
01〜50 それはすぐに止んだ
51〜90 ……何?
91〜99 ……君はッ……!!?
00 特殊ルート確定 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/20(木) 21:04:47.91 ID:w4YiLpTDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/20(木) 21:15:40.66 ID:YmUC/3wXO<> ジジ

……ジジジジ

…………ジジジジジジィィ………!!


「ああ"っ!!!!!」


俺は徐々に大きくなるノイズに耐えきれず、思わず叫んだ。周囲の目が、一斉にこちらに向かう。
亜衣ちゃんは、驚いたように目を丸くしている。

「……仁さん、一体……?」

俺は息を何とか整えようとした。ノイズは、もう消えている。
ふと、亜衣ちゃんを見た。そこに、見慣れた誰かの顔が重なる。美和ではない。よく似ているが、別の誰かの顔だ。

「……君はッ……??」

「まさか、『思い出した』んですか?」

思い出した?何をだ?俺は脳内を探る。


そこにあったのは、薄い何かの記憶。決して思い出したくない、しかし決して消えない記憶。


それは。



腹部から激しく出血し、事切れた美和を俺と亜衣ちゃんが抱き、泣き叫んでいる光景だった。



<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/20(木) 21:29:18.77 ID:YmUC/3wXO<> 俺は戦慄した。こんなことは、実際にはない。美和は、今トイレにいるはずだ。当然、生きている。
しかし、この記憶は……随分と現実味があった。それは、今の俺にとって消えないトラウマである、妹の百合の死と同じかそれ以上の重みを持っていた。


これは何だ?


「……どういうことだ……?」

頭の中には、靄がかかった他の記憶もあった。俺はそれを「知らない」。
もう一度頭を振った。気味が悪い何かを、振り払うように。

※85未満で通常ルート、99か00で特殊ルート <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/20(木) 21:30:38.50 ID:GlvyktODO<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/20(木) 21:32:46.89 ID:YmUC/3wXO<> 向こうから美和が戻ってきてるのが見えた。俺は慌てて座る。

亜衣ちゃん……いや、「亜衣」が小さく言った。

「この続きは、メールで」

#

あの後、美和と亜衣はすぐに帰った。俺は来るはずのない待ち人を待つふりをして、天井を眺めた。

あのノイズは。そして、あの記憶は……一体何だったのか。

ドリンクバーのエスプレッソを一口飲んだ。亜衣の件といい、整理が追い付かない。
そもそも、なぜ俺は亜衣を「知っていた」のか。あの時、幼い彼女の顔に重なったのは、成長した彼女の顔だ。

メールが再び届いた。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/20(木) 21:54:32.40 ID:YmUC/3wXO<> #

毛利仁様

驚かれたことと思います。しかし、これは悪い冗談ではありません。
私、宮原亜衣がSHELLYです。子供の悪戯ではありません。賢明なあなたなら理解してもらえるはずです。

信じるか否か、その判断はお任せします。しかし、以下のことは、事実です。


私、宮原亜衣は20年後から精神だけがタイムスリップした存在です。


来年4月28日に、熊谷リバーサイドモールで大虐殺が起きます。その加害者こそが、鶴岡和人であり、練川瑠偉でした。恐らく、金路アゲハもそうでしょう。
私はそれを止めたい。私は、そして母さんも被害者だから、です。
母さんはあれで命を落とした。あなたも、その現場にいたのです。

できうれば、事前に止めた上で法によって裁ければ、と思っていました。だから、あなたにメールで情報提供をしたのです。
私の知る「未来の記憶」――虐殺の練習であったホームレス殺害に、少なくともあの二人が関わっていたことは伝えました。それが、打開の切り札になると考えたからです。

しかし、バッドエンド・ブレイカーがここに関わってきました。彼らも、あるいは私同様、未来から来たのかもしれませんが……状況は大きく変わりました。

私は、警察こそこの事件を解決すべき主体だと信じています。しかし、普通にしていてはそれはもはや不可能に近い。
ですから、敢えて名乗り出ました。あなたに、今後はより濃度の濃い情報を伝えるためです。あるいは、私を捜査に使ってくれても構いません。
これでも警察の端くれでした。最初の2年という、ごく限られた期間でしたが、あなたの薫陶を受けた者として、恥じない動きはできます。

もしそのおつもりがあるのでしたら、以下の番号をワンギリして下さい。追ってご連絡します。

埼玉県警捜査一課
宮原亜衣 巡査 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/20(木) 21:55:01.62 ID:YmUC/3wXO<> 今日はここまで。しばらくは仁パートです。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/21(金) 21:20:15.55 ID:UdG0D9fXO<> 捜査一課?……SHELLY、いや宮原亜衣が?
この書き方から察するに、彼女は俺の部下だったのだ。だからメールアドレスも知っていた。

バラバラになっていたピースが、一気にまとまっていく。

俺は慌てて電話を掛けた。ワンギリ、ということは向こうからかかってくるということだ。

果たして数分後、俺のスマホが震えた。

「俺だ。……メールは読んだ」

『……ご連絡下さり、光栄です。私を捜査に?』

「いや、決めてない。お前は俺の下にいた。違うかっ」

しばらく返答がなかった。掠れた声が聞こえる。

『……はい。あなたのことは、忘れたことがなかった。もう一度あなたと働ける機会が来るなんて、思いもしませんでした』

……泣いているのか?俺と彼女は、どういった関係だったんだ?
しかし、その記憶はない。いくつか、断片のように浮かんだ記憶や情報があるだけだ。

「随分と慕われていたんだな。未来の俺は」

『……未来のあなたは、犯罪解決のためなら全てを犠牲にする『鬼』でした。
ただ、部下には本当に優しかった。刑事の手本ですらあったかもしれない』

「……面倒見のいいタイプじゃ、ないんだがな」

『熊谷大虐殺から、変わったって聞いてます。その分だと、記憶は』

俺は首を振った。

「……まだら模様だ。お前が俺の部下だったらしいことは分かった。だが、未来の俺がどうだったかは、よく分からんままだ。お前は、ハッキリと覚えているんだな」

『私も、完全じゃないです。そもそも、『表に出ていられる』時間が短いので……。誰が熊谷大虐殺の犯人なのか、その記憶もおぼろげです。ただ、少しずつ戻っては来てます』

「そうか。しかし、何で未来から精神だけが今の時代に?」

『……そこの記憶も曖昧で。すみません』

俺は軽く息をついた。自分の記憶も探ったが、これ以上は分からない。

しかし、聞きたいことは他に山ほどある。

※安価下、2票先取(最初の質問は無条件で可能)

1 今電話して大丈夫なのか?そもそも、どうやって電話を
2 美和が死んだ後の俺を、知ってるのか
3 佐倉翔一。この名は思い出せるか
4 バッドエンド・ブレイカーの正体に、心当たりは
5 自由安価(基本何でもOKです) <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/21(金) 21:21:04.55 ID:uO2aL19F0<> 3 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/21(金) 21:23:47.13 ID:jy7VymNDO<> 4 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/21(金) 21:27:40.76 ID:5TB6SJuDO<> 4 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/21(金) 21:29:58.23 ID:UdG0D9fXO<> 「佐倉翔一。この名は思い出せるか?恐らく、熊谷大虐殺の主犯だ」

亜衣が少し黙った。

※30以上なら覚えている、85以上ならかなり正確に覚えている <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/21(金) 21:37:06.09 ID:5TB6SJuDO<> 3ではなく4では? <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/21(金) 21:49:18.07 ID:UdG0D9fXO<> >>466
失礼しました。やり直します。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/21(金) 21:53:36.79 ID:UdG0D9fXO<> 「バッドエンド・ブレイカーは未来から来たかもしれないと言ったな。それはつまり、お前と同じような存在なのか」

『恐らくは。彼に殺された被害者は、軒並み後の凶悪犯です。手口は違いますが、練川や金路を殺したのも、多分。
そして、間違いなくプロの手口です。目撃者も、証拠らしい証拠も、一切ないんでしょう?』

「そうだ。金路アゲハら3人についても、手掛かりらしいものは一切ない。心当たりはあるか?」

※60以上ならある、90以上ならかなり詳細にある

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/21(金) 21:55:21.02 ID:0FxIcqgD0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/21(金) 22:03:43.59 ID:UdG0D9fXO<> 『いえ、全く。ただ、仁さんを向こうが認識していたら、厄介かもしれません』

「というと?」

『20年後のあなたは、警察を辞めるまで捜査の鬼でした。特に、殺人事件をはじめとした凶悪犯罪については。
埼玉県警だけでなく、他の県警からも知られてましたから……マークされてても不思議じゃないです』

俺は一瞬言葉に詰まった。俺自身が狙われている可能性も、なくはないのか。

「……そうなると、迂闊に動けないということか」

『ええ。だから私が使えるんです。見た目は幼女ですし、私のツラも割れてない。元から下っ端でしたし、まして今の私から『宮原亜衣巡査』は連想されないはずです』

一理はある。しかし、恋人の連れ子を危険な目に遭わせるわけにもいかない。
亜衣は優秀な刑事だったが、それでもなお、だ。

※コンマ下30以上で次の質問へ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/21(金) 22:04:34.55 ID:5TB6SJuDO<> か <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/21(金) 22:06:06.73 ID:UdG0D9fXO<> ※次の質問選択
2票先取

1 今電話して大丈夫なのか?そもそも、どうやって電話を
2 美和が死んだ後の俺を、知ってるのか
3 佐倉翔一。この名は思い出せるか
4 お前を利用するとして、どう使う
5 自由安価(基本何でもOKです)
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/21(金) 22:10:40.91 ID:gYPzUrz/o<> 3 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/21(金) 22:14:14.27 ID:yh+owmjbO<> 3 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/21(金) 22:27:15.98 ID:UdG0D9fXO<> 亜衣をどうするかは考えねばならない。問題は、彼女が対峙する相手をどれだけ知っているか、だ。

「そうか。だが俺たちが追っているのは、バッドエンド・ブレイカーだけじゃない。
佐倉翔一。この名は思い出せるか?恐らく、熊谷大虐殺の主犯だ。そして、俺たちが今捜査している荒川のホームレス殺害にも関与している可能性が高い」

亜衣が少し黙った。

※30以上なら覚えている、85以上ならかなり正確に覚えている <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/21(金) 22:33:29.34 ID:u7Z4s+cm0<> せい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/21(金) 22:35:16.77 ID:jy7VymNDO<> た <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/21(金) 22:38:02.29 ID:UdG0D9fXO<> 今日はここまで。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/21(金) 22:39:26.16 ID:jy7VymNDO<> 乙です <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/22(土) 09:22:42.83 ID:gKyoX1BzO<> 『あっ……!佐倉翔一、今思い出しました。熊谷大虐殺の実行犯で、主犯格の城隆一郎に脅されていたと』

城に佐倉が脅されていた?……何かがおかしい。彼女の知る「未来」は、そんなことになっていたのか?

「俺の認識とは随分違うな。俺の認識では、あくまで主犯格は佐倉の方だ。
バッドエンド・ブレイカーの存在で、『未来』が変わったのか?」

『分かりません。私が知るのは、あくまで表向きの話ですから。
その佐倉がどうかしたんですか』

「さっき言った通り、俺は荒川の一件のホンボシ(主犯)は佐倉と踏んでいる。
奴が主導して犯行グループ『勉強会』を形成した。これはかなり確かだ。
ただ、佐倉のガードは極端に硬い。ヤサも転々としているようだ。
中学生のガキのどこにそんな資金力があるのか全く分からないが……。
さらに言えば、『アイスキャンディ』というヤクにも手を出している可能性も高い。
奴を捕まえないと始まらないが、手掛かりがつかめない」

電話の向こうで、亜衣が「えっ」と声をあげた。

『『アイスキャンディ』……もう流通しているんですか』

「死んだ金路アゲハが手を出していた、らしい。ただ、それがどんなヤクであるかは不明だ。
元締めも分からない。佐倉が関係している可能性が高いとも思うが」

『アイスキャンディは、相当危険な薬物です。人間の感覚を一時的に倍化させる代わりに、認知症の進行を極度に早める……。
常用すれば、1年で廃人です。熊谷大虐殺の際にも、城が服用していたとか』

俺は息を飲んだ。これは、相当に危険なヤマだ。
バッドエンド・ブレイカーが佐倉たちを狙うのも分かる気がする。


しかし、罪人を裁くのは暴力ではない。あくまで法だ。


奴らより先に、俺たちが佐倉を捕まえねばならない。
亜衣は警察だ。その原理を、ちゃんと彼女も認識しているらしい。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/22(土) 09:35:59.29 ID:gKyoX1BzO<> 「問題は、佐倉にどう迫るかだ。それ以前の問題、城や鶴岡にすらろくに接触できてない。
奴らには明らかにプロと思われるボディーガードがついている。
ある人物からは、警察も殺しかねない人物だと聞いた。こちらは慎重に動かざるを得ない状況だ」

『私なら……多少は接近できるかもしれません。
『表』に出れる時間は限られていますが、この姿であればまず警戒しないはずです』

「……何をするつもりだ?」

『内偵に私を使ってほしい、ということです。城でも鶴岡でも構いません。
少なくとも、あなたよりは彼らに近付けるはずです』

「近付いてどうする?」

亜衣が少し考えているようだ。

『理想は発信機を付けることです。ただ、20年後ならともかく現在でそこまで小型の発信機はない。
あるいは、私が囮になってボディーガードを引きはがす。その間に、城か鶴岡に接触すればいいのでは?』

※80以上なら発信機あり
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/22(土) 09:41:13.04 ID:5zdEj51m0<> ほい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/22(土) 09:56:47.96 ID:gKyoX1BzO<> 確かに、そんな発信機はない。そうなると、彼女の言う通りの話になるのか。
しかし、本当に囮にすることに危険はないのか。もし女子供でも手を出すような相手なら、亜衣の提案は無意味だ。

「リスキー、だな。そもそも、熊谷から5歳児が一人で東京まで出てくるというのは、現実的じゃない」

『そこは私が上手くやります。仁さんの協力も得てもらいますけど』

「……?とにかく、今は結論は出さない。状況を見て、どうするかは考える。それでいいか」

『了解です。何かあったら連絡を』

※60以上で追加質問可 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/22(土) 10:08:09.49 ID:J3C1Xx7DO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/22(土) 10:26:55.79 ID:gKyoX1BzO<> 『ふぁああ。……限界が来ましたね』

大きなあくびの音が、向こうから聞こえた。

「限界?」

『ええ。本来の精神の持ち主である『5歳の私』が表に出ようとしているんです。
『25歳の私』が連続して出れるのは、せいぜい2時間。どうも、それ以上は負荷がかかるみたいです』

もう一度、あくびが聞こえた。

「そうか。了解した」

『連絡は基本メールで。私が表に出ている時に、拝見させていただきます。それでは』

電話が切れた。聞きたいことはまだあったが、やむを得ない。


……しかし、俺の中にも「未来の記憶」があるようだ。
一体なぜそれがあるのか。そして、亜衣のような存在は、他にたくさんいるのか。
もやもやした気分を抱えながら、俺は席を立った。


<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/22(土) 10:32:02.65 ID:gKyoX1BzO<> ※18日のイベント判定です。

01〜25 特に何もなし
26〜75 秋山死亡のニュースに仁が反応
76〜00 群馬県警から連絡 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/22(土) 10:32:51.70 ID:nnSkrFiDO<> よし <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/22(土) 10:40:21.86 ID:gKyoX1BzO<> 少し中断します。
<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/22(土) 21:53:49.35 ID:fEkSkMQWO<> 【6月18日、11時12分】


「今日も収穫なしか」

俺はハンドバッグをデスクに置いて、赤木警部に首を振った。

「城の母親、難航不落ですね。取り付く島もない。青さん、鶴岡の方は?」

「こっちもきついね。ただでさえ警戒がキツいのに、ボディガードが隙を見せない。
兄の方を当たってるけど、長男の光輝は海外出稽古とかで不明。次男の大は引きこもってる」

「そういや、次男は世界挑戦に失敗して以降表舞台にほとんど出てなかったんでしたね。
金路アゲハの関与までは分かっても、そこから残り3人はなかなか難しいですね……」

赤木警部が溜め息を付いた。

「ったくだな。そういや、昨日SHELLYには会ったのか?」

俺は言葉に窮した。本当のことを言っても、恐らくは信じてくれまい。
かといって、誤魔化すのもなかなか難しい。
亜衣の言ったことは、恐らくは真実だろう。それを説明するためには、俺の中に「未来の記憶」があると言わないと難しい。

さて、どうしたものか。

1 本当のことを話す
2 警察関係者でした。が、身元はどうしても明かせないと
3 狂言でした。どうも、踊らされていたようです

※2票先取 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/22(土) 22:07:31.43 ID:J3C1Xx7DO<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/22(土) 22:10:25.97 ID:24MuMqHf0<> 2 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/22(土) 22:28:25.77 ID:fEkSkMQWO<> 「警察関係者でした。ただ、身元はどうしても明かせないようです」

「……やはりか。しかし、何故お前に会ってもなお身元は明かせないとか言う?
お前自身は知っているのか。警察である証拠は」

赤木警部が険しい顔になった。ここから先は、嘘をつくことになる。

「警察であるのは確かです。ただ、身元を明かすと身内に危害が及ぶかもしれないと」

「……どういうことだ?佐倉に近い人物か」

「それも含め、一切言えないと」

※30以上で通常ルート <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/22(土) 22:31:33.35 ID:cTiLg1swO<> ソイヤ!ソイヤ! <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/22(土) 22:44:59.77 ID:fEkSkMQWO<> 「……まあお前を信用することにするか。俺にも抱えている『S』(スパイ)はいるしな」

赤木警部が息を付いた。俺はふと、テレビを見る。
そこから流れる、民放のニュースを見て、俺は固まった。


「本日9時頃、群馬県高崎市のマンションで、家電量販店『アキヤマ電気』の専務である秋山雄一さんが心肺停止の状態で発見されました。
病院に運ばれましたが、死亡が確認されました。群馬県警によると薬物摂取による中毒死である可能性が高く、
県警では事故死と殺人の両面から捜査を進めているようです」


秋山雄一??


ジジッ……


「っつ!?」


脳内に眠っていた「記憶」が呼び覚まされた。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/22(土) 22:56:10.06 ID:fEkSkMQWO<> 秋山雄一。高崎市を中心に若い女性ばかり10人を殺害した殺人鬼。
手口は薬物の過剰摂取による中毒死、あるいは絞殺が中心。
2019年初春に犯行が発覚。逮捕されるも立件されたのは1件のみ。
残りは全て、証拠不十分とされた。……が、それはアキヤマ電気が組織的に揉み消した結果との、もっぱらの噂だ。


つまり、2018年6月に死ぬはずがない。


額に汗が流れるのを感じた。これは、間違いなく……バッドエンド・ブレイカーの仕業だ。
しかも、手口からして金路アゲハらを殺したのと、同じ人間。

この二つの事件に、一体何の繋がりがある??

「どうした仁、顔色が悪いぞ」

赤木警部が声をかけた。

「あ、ああ。いえ、こちらのことです」

秋山の死がバッドエンド・ブレイカーによるものと言っても、信じてくれるかは不明だ。
それには、秋山の「未来の殺人」について言わねばならない。

群馬県警に連絡をしてみるか?しかし、基本的に警察は縄張り意識が強い。
金路アゲハと秋山雄一を結びつけるものがない限り、群馬県警は捜査に俺たちの介入を許しはしないだろう。

どうする?

1 赤木らに、本当のことを全て話す
2 群馬県警に一応連絡してみる
3 亜衣に連絡する(ただし、レスポンスは遅い)
4 増田警部補に連絡してみる
5 その他自由安価

※3票先取 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/22(土) 23:11:03.41 ID:zllgRLRo0<> 4 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/22(土) 23:30:00.99 ID:J3C1Xx7DO<> 4 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/22(土) 23:45:15.45 ID:7VtxeXc90<> 4 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/23(日) 13:53:03.35 ID:V/RcWG0zO<> 俺は名刺入れの中にあるものを思い出した。増田清良。察庁の警部補で、堺警視正の部下だ。
そして、バッドエンド・ブレイカー専門の捜査に従事しているという。彼女に連絡すれば、何かしら動いてもらえるのではないか。

俺は部屋を出て、人気のない場所に行く。

「埼玉県警の毛利だ。今、少しいいか」

「へえ」と驚きとも笑いともつかない声が聞こえた。

『何のようだい?ボクには、あまりいい印象を持ってなさそうだったけど』

「さっき、ニュースでアキヤマ電気の秋山雄一が死んだというのがあった。あれはひょっとしたら、バッドエンド・ブレイカーの仕業じゃないのか」

『どうしてそう思うんだい?』

俺は躊躇した。本当のことを話しても、まず信じまい。

「……勘だ。それ以上では、ない」

『嘘だね』

即答された。フフフ、と増田が笑う。

『君は知ってたんだよ。『秋山がここで死ぬはずがない』って。やはり、当初の見立ては正しかった。君も『覚醒』しつつあるわけだ』

「『覚醒』?……何だそれは」

未来の記憶のことを言っているのか。その言葉を俺は飲み込んだ。

こいつは、間違いなくただの警官じゃない。俺は電話したことを、後悔し始めていた。

『それを知りたいなら、17時に警察庁に来てボクを訪ねてくれ。会わせたい人がいる』 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/23(日) 14:18:35.53 ID:V/RcWG0zO<> 【6月18日、16時52分】


警察庁は警視庁の隣にある。よく混同されるが、警視庁はあくまで東京を管轄する一地方警察に過ぎない。
これに対し、警察庁は警察政策を司る官庁の一つだ。だから、一警官がここを訪れることは、ほとんどない。

俺は警察庁が入っている合同庁舎の前に立った。一体この中に、誰が待つというのか。

上層階へと案内される。会議室で待つこと数分、増田が現れた。

「やあ、毛利警部補。こんなに早く会えるとは思わなかったよ」

「……まるで再会を確信していたようだな。会わせたい人物とはどこだ」

「ああ、そうそう。この上の階にいるよ。ついてきて」

エレベーターで、さらに一つ上の階に向かう。……警視総監をはじめとした幹部たちがいるフロアだ。
増田はまっすぐに、重厚な扉の前に来た。

「会わせたいというのは、まさか警視総監か」

「それはその一人。何人かいるんだ。2人ほど、驚く人がいるから心の準備だけしておいて」

コンコン、と彼女がノックする。

「増田警部補、入ります」

「よろしい」と重い声が聞こえた。中に入ると、そこには長いテーブル。3人の人物が、向かいに座っていた。
左に座る一人は那珂川警視総監……だったか。右には堺警視正?そのことに俺は軽い驚きを覚えた。
しかし、中央に座る人物を見た時、俺は目を見開いた。

「朝尾副総理?」

間違いなく大物だ。総理経験もある、日本政府の元老。こんなのが俺にわざわざ会うのだろうか?

俺は部屋を見渡した。いや、もう一人、人物がいる。その男を見た時、俺は心底仰天した。


「……ヤス、か?」


その男はバツが悪そうな笑いを浮かべた。


「仁さん、悪いっすね。ちょっと、話聞かせてもらいますよ」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/23(日) 14:30:04.64 ID:V/RcWG0zO<> 「ちょいと座りな」

朝尾副総理が、立ち尽くす俺を促した。俺は革張りの椅子に座る。酷く、自分が場違いな気がした。

「何の、ご用でしょう」

「平たく結論から言っちまうか。お前をヘッドハンティングしたい。なあ、堺」

「いや、その節は済まなかったな。やはり、君も『覚醒者』だったか。私の顔を知らなかったから、そうではないと判断したが……まだあの時は未覚醒だっただけだったか」

「覚醒者とは、なんですか」

堺警視正の目線がヤスの方に動いた。

「20年後の未来から、精神だけがこの時代の飛ばされてきた人間のことっす。この世界にはそういうのが、何人かいる」

ジジッ……

まただ。また頭にノイズが走る。

※85以上で特殊ルート <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/23(日) 14:33:26.90 ID:s9fU18aT0<> ん <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/23(日) 19:22:29.17 ID:GMQKyBFp0<> 特殊ルート楽しみ…! <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/23(日) 23:11:49.65 ID:qJ9aOIbwO<> 頭に鮮明なヴィジョンが描かれた。



荒れ果てる街。


武器を持ち、殺しあう人々。


そして、燃え盛る炎と、衝撃波。


これは、一体何だ?これも、俺の未来の記憶とでもいうのか??





<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/23(日) 23:21:27.23 ID:qJ9aOIbwO<> 頭を押さえていると、ノイズは遠い彼方へと消えた。代わりに、目の前にいる男の正体を悟る。


「……『思い出した』よ。堺『警視総監』」


那珂川警視総監の表情が固まり、堺警視正が「ニィッ……」と笑った。


「やはりな。久し振り、というべきか。お帰り、というべきか。毛利警部補……いや『デッドマン』」

「その名は今の俺には相応しくない。まだ絶望する時ではないし、いくらでも立て直せる。それに、俺の記憶は、完全には戻ってない」

「とはいえ、覚醒レベル2はクリアしている。完全に未来の記憶を取り戻したレベル3に、限りなく近付いている。そうだろう?」

俺は首を振った。今の俺は未来の俺とは違う。そう思いたかった。


全てに絶望し、警察を辞め、フリーであらゆる事件の処理を法を越えて行う男。
手段を選ばず、特に殺人事件には異常な執着を示す「闇の刑事」――「デッドマン」。

それが、未来の俺の名だった。



<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/23(日) 23:46:43.33 ID:qJ9aOIbwO<> 俺は、混乱する内心を表に出さないように努めながら、もう一度部屋にいる人間を眺めた。
ヤスと増田には、会った記憶がない。ただ、ヤスは――別の名だったはずだ。堺の腹心といえば、奴しかいない。

そして、奇妙なことに気付いた。……なぜここに朝尾がいるのだろう?

俺は息をついて、朝尾に訊いた。

「なぜあなたがここに?あなたと堺らの『西日本政府』は、対立していたとばかり思ってました」

「……今堺が言ったように、かなり思い出したようだな。まあ、説明するとめんどくせえんだが……煙草、吸っていいか」

「御随意に」

朝尾は特注品と思われる長い紙巻き煙草を懐から取り出すと、慣れた手付きでジッポーのライターで火を付けた。芳ばしい香りが広がる。

「まあ、ぶっちゃけちまうとだ。俺も覚醒者なんだよ。レベルは2止まりだがな。どっから説明するのが早いかね。堺、任せる」

堺がにやついた顔で俺を見た。……この顔は、好きにはなれない。

「まず、『未来』の確認をさせてもらおうか。20年後の日本は東西に分裂して、内線状態にある。
それはどうやら覚えているね」

「ああ。政治的混乱が長年続いた後、日本崩壊は2033年の『東京大震災』で決定的になった。
米中の介入を受けて日本は左右に割れ、左派政権の西日本政府、右派政権の東日本政府に割れた。東日本政府の源流である、民自党の長老だったのが、朝尾さん、あなただ」

朝尾は肩を竦めた。

「とは言っても、2023年に俺が『犯したとされている』毎朝新聞記者の殺害以降、俺は塀の中だがな。ほぼ廃人状態のまま、日本が壊れていくのを知って、心底絶望したもんだぜ」

「そう。それが西の警察トップ、それも公安畑の堺と組んだのは、なぜです」

「まあ……細かいことは言えねえ。だが、世界をやり直したいという点で、俺とはこいつは一致した。そもそも、西日本といっても一枚岩じゃなかったからな。なあ、堺」

堺はふふっと笑った。

「まあ、逆らうチャンスはずっと探ってはいましたがね。こうして2018年に戻ったのはチャンスだった。
しかし、私たちと同じように20年後から『帰還した』奴は少なくない。暗黒の日本を、そして世界を変えるには、変えるべき点は極力少なくすべきだ。
だから、私は『特務調査室』を立ち上げた。未来の記憶に目覚めた人間の行動を監視し、正し、犯罪があれば地方警察に代わって調査・処罰する……それが私たちの仕事だ」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/23(日) 23:56:52.49 ID:qJ9aOIbwO<> 今日はここまで。
<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/24(月) 08:56:21.64 ID:2fmFPEgqO<> 朝尾が頷いた。

「そういうこった。特務捜査室の室長は那珂川警視総監だが、実質は俺だ。
歴史の流れを変えるには、大筋はそのままの方がいい。変えすぎると、記憶通りにならなくなって、対応しきれなくなるからな。
だから、バッドエンド・ブレイカーは邪魔だ。正義感からやっていることなんだろうが、はっきりありがた迷惑だ。そもそも、法を逸脱してやがる。
恐らく、相手も覚醒者、それもプロだろう。『旧東』の連中かもしれん。だから、堺を中心に動いてもらっている。そういうこったな」

「……というわけだ。私の狙いが、見えてきたんじゃないか?」

なるほど、そういうことか。

「ここにいるのは、那珂川警視総監以外は皆覚醒者だ。なあ、ヤス……もとい、古畑玲」

ヤス――いや、古畑が苦笑した。

「御名答っす。……多少は、俺に裏切られたとかショックがあると思ってたんすけどね。さすが『デッドマン』、揺らがない」

「俺にその名で呼ばれていた頃の精神は宿ってない。だから、ただ痩せ我慢で怒りと戸惑いを圧し殺しているだけだ。
お前とは、未来では面識がない。だが、噂には聞いている」

「ろくな噂じゃないでしょ?まあいいや、それはここで言うことじゃない」

古畑が「西」の凄腕とは聞いていた。手段を選ばず、確実に目的を遂行する、忠実な政府の犬。
俺とも比べられることがあったという。未来の俺は、そんなことには無関心であったようだが。

「お前が埼玉県警に派遣されていたのは、初めから俺目当てだった。そうだな」

「仁さんが『覚醒者』かもしれないというのは、前から話に上がってましたからね。『グラウンド・ゼロ』周辺にいた人間なんて、そう多くはない。
あんたは多分、その一人だ。だから最初から狙っていたのは確かっす」

「『グラウンド・ゼロ』?」

何だそれは。そんな記憶は、ない。そもそもどうして、俺らの精神は20年前に飛ばされた??
そこの記憶は、今のところすっぽり抜け落ちている。

「おっと」と古畑が口を手で覆った。

「そこまでは『思い出して』なかったっすか。忘れてください。
とにかく、仁さんが覚醒者なら、俺たちに手を貸してくれるはずだ。あの未来を、繰り返してはいけない。それは分かるでしょう」

古畑が真顔になり、俺をじっと見た。

朝尾がそれに続ける。

「俺らの目的は、覚醒者の管理、そして場合によっては処理だ。バッドエンド・ブレイカーはその最右翼だが、佐倉翔一にもその疑いが濃くなっている。
両方に対応しなきゃいけないが、いかんせん人手は足りない」

佐倉も?……いや、そういえば金路アゲハが扱っていたアイスキャンディ。あれは、まだ流通しているはずのないヤクだ。可能性は、ある。

「俺の力が必要、ということですか。しかし処理とは……殺しも視野に入れるということですか」

堺がふうと息をついた。

「手段はあまり選べない。拘束しどこかに半永久的に監禁するのが筋だが、場合によってはそういうこともある」

「歴史はもう、かなり変わっているぞ?」

「それでもだ。熊谷大虐殺は止めた方がいいが、城と鶴岡が適当に暴発する程度なら止めはしない。歴史の流れは、変えすぎない方がいい。
決定的な転換点だけ、しっかり修正すれば、悪夢の未来は変えられる。それに導くのが、私たちの役目だ」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/24(月) 10:06:48.24 ID:2fmFPEgqO<> 朝尾が煙草を灰皿に押し付けた。

「まあ、無理にとは言わねえ。もしこれに応じたなら、お前さんにゃ埼玉県警から警察庁に転属してもらうことになる。
んで、秋山の件を追ってもらうことになるな。あれは間違いなくバッドエンド・ブレイカーの仕業だ。
とはいえ、人生の大きな決断の一つだ。ここで答えを出すのは、酷ってもんだろう」

俺の脳裏に、美和と亜衣の顔がよぎった。朝尾の下に就くということは、普通の刑事ではいられないということでもある。
そして、亜衣。……20年後の彼女は、警察を辞める直前まで俺を慕っていた。
それは、「どんな状況でも、警察は警察でなければならない」という俺の主義に賛同していたからだ。……結局、現状に絶望した俺はそれを捨てたのだが。


ならば、出す答えは一つだ。


「せっかくのお申し出ですが、断ります。俺は、埼玉県警のままでいい。あくまで一刑事として、このヤマを追う」

「即答だなおい。それでいいのか?警察庁キャリアに準じた扱いになるんだぜ?」

「地位や給与は問題じゃない。俺は、どこまで行っても刑事だ。未来の俺は、それを捨てたみたいですが……今の俺は、そこまで現実に絶望はしていない。
であるなら、一人の刑事としてバッドエンド・ブレイカーや佐倉翔一を逮捕する。それもまた、世界を変えることにつながる。違いますか」

「法の外にいる人間に法で立ち向かうことは難しいぜ。だから、俺たちは 『特捜』を立ち上げた。バッドエンド・ブレイカーも、やり方は相容れないが大元の発想は同じだ。
一刑事ができることなんて、たかが知れてる。それは分かってんだろうな?」

朝尾が俺を睨んだ。俺はそれを正面から見据える。

「覚悟の上です」

「……噂通りの頑固な男だな。まあ、しゃあねえか」

朝尾は軽く溜め息をつき、なぜか笑った。

「いいんですか?『デッドマン』を野に放したら……」

「こいつはお前らの知る男じゃねえよ。言ってたろ?こいつには2038年の精神は宿ってない。覚醒レベルは3じゃねえんだ。
未来の記憶こそあるが、中身は2018年のままだ。なら、こいつがどこまでできるか見てやろうじゃねえか。俺らの邪魔さえしなければそれでいい」

堺が渋い顔になった。

「……そうならいいんですが。毛利、一つだけ言っておく。今日あったことは、決して口外するな。破った場合は、お前も敵対者とみなす」

「構わない」

この言葉を、堺はどれだけ信用するだろうか。だが、当座を切り抜けるには仕方ない。

「じゃあ、交渉は決裂だな。帰って構わねえぞ。古畑、増田。送ってやれ」

#

「古畑、一つ聞いていいか」

下りのエレベーターの中で、俺は訊いた。古畑が無表情にチラリと俺を見る。

「何っすか」

「お前にとって、3係での日々は何だった?」

奴が少しだけ目をつぶった。

「……悪くはなかったっす。あんたが思っていたような、冷酷無情の男とは大分違っていたのも意外でしたけどね。
何かに罪悪感を感じることは、あまりなかったんすけどね」

「……そうか」

再びエレベーターが静寂に包まれた。増田が、少し驚いたように古畑を見ている。


少しだけ、俺はほっとした。


<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/24(月) 10:10:15.28 ID:2fmFPEgqO<> ※この出来事を誰に伝えますか?

1 小暮管理官
2 亜衣
3 3係全員
4 美和と亜衣
5 その他自由安価

※3票先取 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/24(月) 10:12:49.94 ID:2fmFPEgqO<> また、展開が入り組んできたため適宜質問は受け付けます。
(当初設定からぶれてはいないはずです) <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/24(月) 10:17:11.62 ID:2fmFPEgqO<> なお、再開は(あるとするなら)夜になります。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/24(月) 10:36:20.76 ID:2fmFPEgqO<> 6に「黙っている」を追加。失礼しました。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/24(月) 12:24:19.24 ID:wQSHrXGVO<> 一応参考までに。仁本人が言っている通り、あまり多人数に伝えるのはお勧めしません。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/24(月) 13:06:52.14 ID:qlN7xthDO<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/24(月) 13:18:14.99 ID:510uuHQB0<> 2 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/24(月) 15:31:54.15 ID:iF5coYH+O<> 上げます。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/24(月) 17:10:16.13 ID:7IsIFWEo0<> 2 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/24(月) 22:40:07.05 ID:sHb2HjdJO<> 【6月18日、19時26分】


「仁、察庁からの呼び出しだったらしいな。用件は何だった」

赤木警部が訊いてきた。……あまり口外するような話ではない。そもそも、信じてもらえるかも分からない。

「人事関連ですよ。交流人事で、向こうに来ないかと。断りましたが」

「ほぉ。随分もったいないことをしたな。何でまた」

「現場から離れることになりそうでしたから。それはゴメンです」

俺は半分だけ本当のことを言った。ヘッドハンティング自体は、嘘ではない。理由は全く違うが。
赤木警部が笑いながら肩をすくめた。

「まあお前っちゃお前らしいがな。察庁から来た堺ってのがお前を呼んだことがあったが、そういうことだったか」

「らしいですね。木暮管理官は」

「木暮さんは食事だそうだ。警察のOBとだとか」

珍しいな。木暮管理官が3係以外の誰かと飲むのは、あまり聞かない。
となると、警察庁での出来事を彼に話すのは、今は難しい。

……となると。

俺は日本茶のペットボトルをデスクに置き、PCのメールボックスを開いた。
赤木警部は自分のデスクで資料に目を通している。青葉と白島は、恐らくは城と鶴岡の所か。
多分、メールの内容を見られることはないだろう。



<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/24(月) 22:48:14.63 ID:sHb2HjdJO<> メールの内容は、極力簡潔なものにした。警察内での検閲に引っかかる恐れがあったからだ。

#

AI

至急連絡乞う。電話でが望ましい。



#

すぐに連絡が来るかは、自信がなかった。「表に出れる時間は限られている」と、亜衣も言っていたからだ。
美和と同居してはいないとはいえ、彼女の祖父母の目を掻い潜っての電話はなかなか難しいだろう。

それでも、善後策を彼女に相談する必要があった。現状では、ヤス……いや、古畑らに先んじられる可能性が高い。

※コンマ下

01〜40 この日の電話はなし
41〜70 深夜に電話あり
71〜95 すぐに電話あり
96〜00 こちらから電話しようかと思っていました
<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/24(月) 23:01:32.07 ID:sHb2HjdJO<> 上げます。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/24(月) 23:01:39.34 ID:OWYaVW9DO<> はい <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/24(月) 23:09:39.68 ID:sHb2HjdJO<> #

結局、その日亜衣からの連絡はなかった。やはり、平日での連絡は難しいものらしい。

#

【6月19日】


翌朝。俺はいつも通りコーヒーを淹れ、NHKのニュースを確認する。
世間はワールドカップの話題で持ちきりだ。日本は負けるとの見方が大勢だし俺もそう思っていたが、今となってはさして関心がない。
日本は今日のコロンビア戦に勝ち、ベスト16でベルギーに劇的な敗退をすることになる。
結果が分かっているスポーツなど、熱心に見る気にもなれない。

……どうやら、「未来の記憶」があることは、人生をかなりつまらなくしてしまうようだった。

俺はブラジルのブレンドを飲みながら、職務の準備を進めていた。

※コンマ下
01〜60 秋山の事件の続報あり
61〜80 特になにもなし
81〜00 電話が鳴った <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/24(月) 23:19:09.29 ID:+zLZBWlG0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/24(月) 23:32:36.05 ID:sHb2HjdJO<> TVからは秋山の事件の続報があった。

「先日遺体で発見されました、アキヤマ電機専務の秋山雄一さんについて、群馬県警は殺人との見方を固めました……」

やはり、か。この分だと、警察庁から群馬県警に何らかの指示があったかもしれない。
俺は溜め息をついた。出遅れたか。

亜衣からの連絡はまだない。出社すれば、何かあるだろうか。

#

PCを立ち上げ、メールボックスを確認する。新着メールは……あった。

#

毛利仁様

昨日はご連絡できず申し訳ありません。平日は、「表」に出るのがなかなか難しいです。
至急の案件とありましたが、どのような要件でしょうか?
こちらも可及的速やかに対処いたします。恐縮ですが、よろしくお願いします。

亜衣

#

やはり、か。どうにも機動的に連絡を取る相手としては、彼女は不向きのようだ。
俺は昨日のことをかいつまんでメールした。早く動きたいところだが、現状では限界がある。

どうしたものだろうか。

※2票先取

1 木暮管理官にも話す
2 亜衣の連絡を待つ(コンマ次第、ただし中確率)
3 城の通う学園大付属中学に行く
4 群馬県警にコンタクトを取る
5 その他自由安価


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/24(月) 23:39:25.85 ID:+zLZBWlG0<> 3 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/24(月) 23:46:37.33 ID:OWYaVW9DO<> 2 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/24(月) 23:50:44.98 ID:sHb2HjdJO<> 0000までに決まらない場合はリセットします。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/24(月) 23:53:24.81 ID:+zLZBWlG0<> 3 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/24(月) 23:53:29.05 ID:qlN7xthDO<> 2 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/24(月) 23:54:54.37 ID:sHb2HjdJO<> >>529は多重投票なので2とします。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/24(月) 23:56:41.82 ID:sHb2HjdJO<> ※コンマ下

01〜45 連絡は夕方になってから
46〜95 連絡は10時頃
96〜00 上+イベント <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/24(月) 23:58:03.82 ID:OWYaVW9DO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/25(火) 00:11:00.24 ID:nF6pZ+2tO<> 【6月19日、10時02分】


川口付近で不毛な聞き込みをやっている時、スマホが震えた。……亜衣からだ。

「遅かったな」

『……すみません、自由の利かない身体でして。『思い出された』んですね』

「相当程度な。……秋山の件、察庁の部隊が先行している。バッドエンド・ブレイカーの犯行と、決め打ちされているな。
佐倉の件含め、こっちは出遅れている。お前の協力が欲しい」

『ありがとうございます。……しかし、難しい局面ですね。秋山の死因、薬物中毒死ってありましたけど、何の薬物かまでは分からない。アイスキャンディだとしたら……』

「佐倉にも繋がるな。俺の中での優先順位は、むしろこっちだ」

亜衣が何か考えている様子だ。

※コンマ下40以上で妙案あり、95以上だと?

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/25(火) 00:12:07.88 ID:Vozpcz0e0<> えい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/25(火) 00:14:36.47 ID:nF6pZ+2tO<> 今日はここまで。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/25(火) 00:25:04.56 ID:gIT/MCEDO<> 乙 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/25(火) 14:32:30.21 ID:AMAiBwXqO<> 『同じ手段を使いましょう』

「同じ手段?」

『ええ。仁さんにメールを送ったように、群馬県警にもメールするんです。
仁さんから直接金路アゲハの件と秋山の件が結び付いていると指摘しても、反応は鈍いでしょう。
しかし、匿名の第三者なら?それも、関係者しか知り得ないことが、そのメールに書かれていたとしたら?』

あっ、と俺は声を出した。第三者の情報提供なら、群馬県警も動きやすい。
ただ、このやり方には問題もある。

「なるほど、面白い案だ。ただ、警察庁がこの事件のハンドリングを既にしていたら厳しいな。お前が警戒対象になるだけになる」

『……それは否定できないです。古畑は私の存在に感付いてましたか?』

「奴もお前のメールは見ている。ただ、それが宮原亜衣とは知らないはずだ」

『なら、試してみる価値はありますね。親しい群馬県警の友人は?』

「親しくはないが、借りのある刑事はいる。彼のメアドを、後で送ろう」

俺は渋川署のベテラン刑事、石塚を思い出した。若葉の件ではいきなり押し掛けたにもかかわらず、融通の効いた対応をした男だ。名刺も交換している。
彼経由で、話を動かすことができればいいが。

※コンマ下
01〜10 石塚から連絡はない
11〜30 参るんだぁ、そりゃ
31〜95 どした?
96〜00 面白れえ話あるぞ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/25(火) 14:37:14.23 ID:a6sqrh8V0<> そいや <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/25(火) 14:50:25.54 ID:AMAiBwXqO<> #

亜衣との電話から30分後。俺のスマホが再び震えた。この市外局番は、恐らく石塚だ。

「もしもし、毛利です」

『おお、やっぱりあんたかぁ。その節は世話になったなぁ。若葉とかいう課長、どうなった』

上州弁なまりの、陽気そうな声が聞こえてきた。やはり石塚だ。

「職を解かれ、捜査中です。金路アゲハが犯した殺人のうち、一件の証拠隠滅に関わっていたのは立件できそうです」

『そりゃ何よりだぁ。……しかし、さっき届いたメール。参るんだぁ、そりゃ』

「といいますと?」

『昨日東京から偉い人さ来てなあ。重大事件につき警察庁で預かる言われたって、県警本部の友人が怒ってたさぁ。こちらでできることはぁ、なさそうだぞ』

危惧していた通りになったか。これでは秋山の事件から手掛かりを得るのは難しい。亜衣は骨折り損になってしなったか。

『しっかし、あのメールの差出人。警察関係者だべか?お前さんとも面識が?』

「ディープスロート(秘密の情報提供者)のうちの一人ですよ。信頼は置けます」

『んだかぁ。……アイスキャンディ、なぁ。そんな薬、初耳だべども』

……これは厳しいな。地道にやり直すより他ないか。

※50以上で別の情報提供あり(再判定あります) <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/25(火) 14:57:04.92 ID:gIT/MCEDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/25(火) 15:50:07.68 ID:AMAiBwXqO<> 『ただ、伊香保でちょっと面白ぇ話あんだば、聞ぐか?』

「面白い話?」

『んだ。……』

※コンマ下
01〜70 若い女と男の子が平日に旅館に泊まってた
71〜95 若い女と男の子が平日に旅館に泊まってたんだが……妙でなぁ
96〜00 上+二人の名まで判明 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/25(火) 16:02:42.85 ID:9ihpNx4DO<> ほい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/25(火) 22:10:27.95 ID:otT5Q04BO<> 『若葉の捜査、伊香保周辺の聞き込みは渋川署が協力しとったろ?
んで、タレコミが誰かという話さぁ。これは後で赤木さんにも伝える予定だったげども、実ぅに興味深いんだぁ。
あのメールが来て、渡りに船だったさぁ』

「誰か分かったんですか」

若葉の話を知っている人間は、埼玉県警の内部者以外にはいない。しかし該当者は、今の所いなかった。
……つまり、情報が洩れていて、なおかつこちらに協力しようとする人間がいる。

『いや、確信はねえよ。ただ、ちょっと不自然な話があったんでねぇ。
『伊香保桐香ホテル』に、変わった客が泊ってたんだそうだ。どんな客と思う?』

「見当もつきませんが。まさか、それが通報者?」

『いんや、分がんね。ただ、俺の勘は何かあるとみてる。
若い、30前ぐらいの女と10歳ぐらいの小学生っぽい2人組の客だ』

少し考え、引っかかるものを感じた。平日に泊まりで、しかも2人組で旅行??

「確か、若葉の逮捕は6月13日。平日ですよね?母子という可能性は?」

『ホテルの従業員は、そりゃまずないと言ってる。まず、女が若過ぎる。
結構な別嬪さんだったらしいが、あれで40ということはまずねえなぁ。
姉と弟ってことで泊まったらしいんだが……面白れぇこと、その従業員が言ってたんだよ』

くっくっく、と石塚が笑った。

『風呂行くのに、2人して手を握ってたんだと。ありゃ肉親というより、恋人同士に見えたとさ』

「恋人……?そりゃないでしょう、だって大人と子供……」

そう言いながらも、俺の頭はフル回転していた。まず、本当に大人と子供の恋人同士という可能性。
親や世間に反対され、禁断の逃避行……というのはなくはない。しかし、不自然だ。
二つ目は、女が子供を誘拐している可能性。ただ、にしてはホテルの従業員の反応が変だ。


……ジジィッ


頭にノイズが走る。ある考えが、俺に浮かんだ。それは……「子供が子供ではない可能性」。


しかし、そんなことがあるのか?子供が、そんなことをできるのか??


『……どした?』

黙っている俺に、石塚が訊く。俺は、「いえ、貴重な情報、ありがとうございました」と会話を打ち切った。


そうだ。バッドエンド・ブレイカーが、「未来の記憶」を持つのであれば……。


「見た目は子供、頭脳は大人」の犯罪者だって、いても不思議ではないはずだ。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/25(火) 22:21:12.68 ID:otT5Q04BO<> 俺は今までの捜査を思い出した。鬼束、練川、金路。その全てで、「まともな不審者は見当たらなかった」。
勿論、物証もろくにない。だからこそ、これほど捜査が難航している。

しかし、「不審者」の対象を広げるのであれば?

小学校中学年の子供が犯行現場近くを歩いていたとして、そいつが犯人とは、まず普通は思わない。
それに、今回は手口が毒殺だ。極めて的確に静脈注射を行っていたという倫先生の指摘からして、子供は当然犯人の対象から外れる。


だが、その前提が今、崩れた。


俺は赤木警部の電話番号を探した。もう一度、捜査をやり直す必要がある。


バッドエンド・ブレイカーは、ひょっとしたら……「子供」だ。


※80以上でイベント発生、未満なら視点が切り替わります


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/25(火) 22:21:44.10 ID:cUxfQBpA0<> え <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/25(火) 22:23:48.49 ID:otT5Q04BO<> ※視点を切り替えます。どちらを先にやりますか?

1 コナン側
2 ジョー側

※2票先取 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/25(火) 22:24:38.05 ID:otT5Q04BO<> なお、赤木警部に対し仁は真実を話さず「女をマークしてほしい」ぐらいに伝えます。
後で描写は入れますが、念のためです。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/25(火) 22:25:23.42 ID:gIT/MCEDO<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/25(火) 22:26:13.64 ID:cUxfQBpA0<> 2 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/25(火) 22:33:16.69 ID:otT5Q04BO<> 今日はここまで。

読んでいただければ分かると思いますが、ここから展開次第でちょっとキツい描写が出る可能性があります。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/26(水) 09:56:21.14 ID:Gt0KN1sSO<> 【6月21日】


この日も空をどんよりとした雲が覆っていた。梅雨だから仕方ないけど、やはり気分は晴れない。
僕の日々は、すっかり色が褪せていた。行動に自由はなく、ただ家と学校を往復するだけ。ヤクが離れ、会話する相手もいなくなった。

時折、心配そうに彼女が僕を遠くから見ているのは知っている。心が痛まないわけではない。
でも、それが徐々に薄らいでいるのも分かっていた。


週末に「サクラ」に会えるからだ。


それが恋とかそういうのじゃないのは、理解している。ただ、「彼女」を抱き、そして抱かれている時は全てを忘れられた。
圧倒的な快楽。下半身が蕩けてなくなってしまうほどの愉悦。
いつまでこの日々が続くかは分からない。でも、できれば一日中、ずっと「彼女」とのセックスに浸っていたかった。思い出しただけで「ドライ」でイキそうになる。

僕は頭を振る。いけない、また勃ってきた。日曜まで、オナニーは禁止だったんだ。前立腺の疼きを、僕は無理矢理押し込めた。
正直、かなり辛い。こっそり抜こうと思ったのも、一度や二度じゃない。
ただ、「舐めれば分かる」んだそうだ。そして、約束を破ったら厳しい罰が下されるとも。それが怖くて、僕は何とか耐えていた。


アイスキャンディを高頻度で舐め始めて、分かったことがある。

まず、味覚が鋭敏になったこと。コンビニのご飯が、薬物まみれで食べられたもんじゃないのが分かり、閉口した。
次に、今みたいに性欲が強くなったこと。多分、その気になれば想像だけでも絶頂に達することができそうだった。
運動能力も上がった。体育の授業で、運動部の連中より100mが速かったのには、自分でも驚いた。

多分、あれの中身に含まれている成分が影響しているんだろう。本当に、夢のような薬だ。

※30以下で異変あり <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/26(水) 10:09:49.69 ID:x6npOl6DO<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/26(水) 13:34:59.74 ID:f+KCzff+O<> あの薬が広がったら、どんな世界になるんだろう。僕はそれを考えて、少し震えた。

#

図書館で勉強していて、下校は少し遅くなった。正門には、いつも通り矢向さんがいる。
無言で後部座席のドアを開けた彼が、少し止まった。

「どうしました?」

「……いえ、ちょっと」

※コンマ下
01〜15 そろそろ「駆除」の時間ですかな
16〜40 気のせいのようですね
41〜60 ジョー、ちょっといい?
61〜75 泣いている女の子がいる
76〜90 おにーさん、ちょっといい?
91〜00 ジョー、面貸せや
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/26(水) 13:42:55.59 ID:21SWYrM70<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/26(水) 20:23:09.39 ID:BGCnwovjO<> 車の前方には……ヤクがいた。まるで通せんぼをするように、手を大きく広げている。

「ジョー、ちょっといい?」

「……関係ないだろ、ヤクには」

矢向さんが彼女の方に向かう。僕は微かに恐怖を感じた。
彼は物腰こそ柔らかいけど、何か凄く危険なものを中に持っているような気がする。それがヤクに向けられたのなら……。

その時。

※コンマ下
01〜30 もうやめてよ!
31〜90 やっと捕まえたぞ
91〜00 矢向さんが険しい顔で立ち止まった <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/26(水) 20:24:03.87 ID:/6Jqpwc70<> ほい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/26(水) 20:35:31.84 ID:BGCnwovjO<> 「やっと捕まえたぞ」

僕の背後に、短い髪の男が立っていた。矢向さんが見たこともない険しい顔になる。僕でも分かる。これは殺気だ。

そして、この男には会ったことがある。

「失礼。埼玉県警捜査一課、強行3係の毛利です。城隆一郎君に、話がある」

「……話、とは」

「彼の生命に関わる話です。あなたも聞いておいた方がいいかと」

「……いえ、遠慮しておきましょう。金路様らの件と、関係が」

毛利刑事は静かに頷いた。

「捜査が進むかもしれません。それには、彼の協力が必要だ。時間は取らせません。県警本部まで、彼に来てもらいたいのですが」

刑事の目が僕を見た。

「断っても構わない。ただ、君の身の安全がどうなるかは知らないが」

僕は迷った。多分、これは名目だ。本丸は、翔一らとの関係を聞き出す点にある。
ただ、この刑事の言うことがハッタリでないとしたら?

※2票先取
1 仁についていく
2 断る <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/26(水) 20:58:40.81 ID:x6npOl6DO<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/26(水) 21:02:28.60 ID:ETH2byA60<> 1 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/26(水) 21:45:06.61 ID:zeNgB8oYO<> 僕は言葉を絞り出した。

「……分かりました。行きます」

「そうか。ご協力、感謝する」

刑事の視線がヤクに向いた。彼女は小さく頷き、その場を離れる。
ヤクは、この刑事に協力してたんだ。矢向さんから、一瞬でも僕を遠ざけるために。

その事実に、僕は苦いものを感じていた。

【6月21日、18時43分】


僕は小さな会議室に通された。てっきり、薄暗い取り調べ部屋みたいな所に連れていかれるのかと思ってたけど。

「腹、減ってねえか。何なら出前でも取るぞ」

ニヤリ、と赤木という刑事が笑った。

「……カツ丼でも取らせるつもりですか」

「ご所望ならな。旨いぞ、『やぶ八』のカツ丼は。というか、自分が犯人扱いされるとでも思ってんのか」

僕はゴクリと、唾を飲み込んだ。新型のアイスキャンディは……鞄の中だ。これを飲んで、無理矢理逃げる……?
いや、それはできない。どれだけの効果があるのかは分からないけど、きっとここからは脱出できない。
普通にしらを切り通すしかない。僕は大きく深呼吸した。

「荒川のことなら、弁護士を呼んでください。僕から話すことは、何も」

「そうかい。こういう時に駆け付けてくれる弁護士がいるたあ、違うねえ。
いや、真面目な話だ。それも訊きたいが、それ以上に訊きたいことがある。お前らを狙っている奴のことだ」

毛利刑事が少し身を乗り出した。

「さっきも言ったけど、君の生命に関わる話だ。君の証言が、大きく事態を動かすかもしれない。
まず質問だ。この春から、身の回りで不審な20代後半の女は見たか?こんな顔らしいが」

彼は似顔絵を僕に見せた。どこかのモデルだろうか?

「綺麗な人、ですね。彼女が、何か」

「いや、君の友人の殺害に関わっている可能性がある。どうかな」

「見たことがないです」

赤木警部が肩をすくめた。

「やっぱちげえんじゃねえのか?」

「……どうでしょう。じゃあ、これは」

子供の顔?名探偵コナンのコナンを、少しだけ大人にしたような顔だ。

……

※コンマ下(重要分岐です)
01〜85 知りません
86〜95 ……ん?
96〜00 ……彼は <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/26(水) 21:48:11.43 ID:HXpjbKFDO<> はい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/26(水) 21:48:45.63 ID:x6npOl6DO<> さて <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/26(水) 22:23:00.15 ID:SF2OqmGZO<> 今日はここまで。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/27(木) 10:06:59.34 ID:wLCtAfouO<> 「知りません」

「やはりそうか。……まあ、そうだろうな」

毛利刑事が溜め息をついた。

「ガキも一枚噛んでるってのは、さすがに考えすぎだろうよ」

「……そうかもしれないですね。城君、悪かったな。ただ、一応彼らの顔を見たら連絡してくれ。万一ということもある」

「は、はあ」

僕はもう一度、似顔絵を見た。……子供が、僕を?

「君を呼んだ要件は、基本的にはここまでだ。送っていこう。飯はどうする?俺のポケットマネーで奢ってもいいが」

「……いえ、結構です」

#

「ヤクを、使ったんですか」

帰りの車内で、僕は毛利刑事に訊いた。彼は前を見たまま、表情を変えない。

「君に話すことじゃない」

「でもっ……!」

「君が立ち入る話じゃない。彼女の意思だ、とだけは言っておく」

ヤクが、僕を止めようと?……何でそ
んな、危険なことを。

毛利刑事が続けた。

「君らの間に何があったか、俺は預かり知らない。ただ、君のことを彼女は強く思っている。君が思うよりも。
子供の恋愛感情とか、そういう甘い次元ではない。君は、それをもう少し考えるべきじゃないのか」

僕は黙った。何を言っても、言い訳にしかならない気がした。

毛利刑事が、チラリと僕を見る。

「佐倉翔一からは、離れるべきだ。一刻も早く。……手遅れになる前に」

「どういう、ことですか」

嫌な予感がした。

※60以上でイベント発生 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/27(木) 10:15:05.65 ID:er5WqumN0<> イベント <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/27(木) 10:16:35.03 ID:tG2k2fJM0<> きた……! <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/27(木) 13:19:48.96 ID:I16gRWOlO<> 毛利刑事は、少し言い淀んだ。言うべきか否か、迷っているようだった。
車は大通りを逸れ、住宅地に入る。僕の家の方向ではない。

そして、公園の横で車が止まった。

「……どうしたんですか、急に」

「覚悟、をしてもらう話になる。君にとっては、残酷かもしれない。しかし、言わねばならない。君のためにも」

毛利刑事が僕を見た。その鋭い眼光に、僕は気圧された。

「な、何だっていうんです」

「『アイスキャンディ』。持っているんだろ」

僕の身体が一瞬飛び跳ねた。……そんな、馬鹿なっ!?

「な、そ……そんなの、知りませんっ!」

「しらを切っても無駄だ。俺は『知っている』。それがどんな薬で、どんな結末をもたらすかも」

「なっ……??」

僕は逃げ出すかどうか、暫し考えた。しかし、毛利刑事の目は僕を責める目でない。どういうことだろう?

「アイスキャンディを持っていたとしても、それだけで君はしょっぴけない。あれは『まだ』合法だ。脱法、というべきか。麻薬取締法で、君を逮捕や補導はできない。
むしろ、俺がしたいのは、忠告だ。心からの」

「……忠告?」

彼が頷いた。外では小雨が降り始めている。

「まず聞こう。アイスキャンディを飲み始めて、どれぐらいだ」

「……それが何か、関係が」

あれを飲み始めたのは……昨年の年末だ。「勉強会」が結成された、最初だったと思う。

「ある。俺の読みだと、君に残された時間は、あまりない。
アイスキャンディが本来どういう薬かは、知らないだろうな」

「えっ」

「だろうな。当然だ。ただの合法ドラッグとしか、教えられてないだろうから。
あれは認知症の治療薬、それも試験段階のものだ。人間の脳の働きを活性化することでボケを治す。しかし、それが引き起こす副作用は、あまりに深刻だ」

副作用??そんなの、聞いてない!

毛利刑事は話し続ける。

「大方、脳の眠っている力を呼び起こすとか言われたんだろう。アレの謳い文句だ。しかし、現実は違う。
脳の将来使われる部分を先食いし、殺していく薬なんだよ。つまり」


背筋が一気に冷たくなった。


……嫌だ、やめてくれ。


<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/27(木) 15:22:18.81 ID:H17Vy1M/O<> 毛利刑事が、目を閉じ、そして口を開いた。

「……つまり、アイスキャンディは君の将来を食う薬だ。10年単位で脳の『余命』は削られ、やがては痴呆になり、廃人になる。
摂取の頻度にもよるが……飲み続ければ、1年もしないうちに壊れるだろう」


僕の座るシートが、地面に沈んでいくかのような錯覚があった。


「嘘だっ!!それに、何でそんなことをっ!!」

「俺は警官だ。君が考えるより、ずっと警察は優れている。隠せていると思っていることも、大体は分かる。
だからこそ、俺は佐倉を止めねばならない。被害がこれ以上拡がらないうちに。……取り返しがつかなくなりかねん」

毛利刑事が、まっすぐに僕を見た。僕の視界は、滲み始める。

「……ぼ、僕に何を……」

「それを今、考えている。副作用の進行次第だ。いつから飲み始めた」

「……きょ、去年の、年末です……」

胸の奥から、熱い何かが込み上げてくる。ただ、泣きじゃくりたかった。

※コンマ下
01〜20 毛利刑事は目を見開いた
21〜60 そうか……あと、1年といった所だな
61〜90 そうか……あと、3年といった所だな
91〜99 そうか……まだ君には、時間があるな
00 毛利刑事は目を見開いた(超特殊ルート) <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/27(木) 15:23:26.26 ID:7WYvnjNm0<> ジョーの寿命は何年かな? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/27(木) 15:35:14.86 ID:oaZ4REnd0<> 今北 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/27(木) 20:43:25.41 ID:NML7Dt61O<> 「そうか……やはりあと1年といったところか。自覚症状は」

僕は泣きながら首をブンブンと振った。ない。……ないはずだ。


「あと1年」。刑事の言った言葉が、まるで錐のように僕の脳内に刺さった。
そんなのはデタラメだ。そうに決まってる。


しかし、歪む視界の向こうにいる彼の顔は、哀れみで揺れていた。


僕は……僕は、あと1年しか生きられないのか??


<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/27(木) 21:00:32.98 ID:NML7Dt61O<> 「……う……ううっ……そ、それって、避けようが、ないんです、か……?」

毛利刑事は軽く息を吐いた。

「1年、というのは一般論だ。飲むのを今すぐやめれば残りが3年になるかもしれないし、飲み続ければ来月かもしれない。
……あるいは、もっと長く生きられる可能性も、なくはない」

「……どういう、こと、ですか」

「鍵は佐倉翔一が握っている。多分、奴はそれを知っているはずだ。だから」

彼は僕をじっと見た。

「……君の協力が必要だ。君がまだ動けるうちに、正気を保っているうちに、君の力で奴を逮捕したい」

「……翔一を、裏切れと」

「そうだ。奴は君を駒ぐらいにしか考えていないだろう。既に君は、裏切られている。
ならば、それを逆手に取る。簡単なことではないし、君も危険を冒すことになる。こちらも最大限のサポートはするが」

僕は、絶望しそうな思考を押さえ付けて考えた。この刑事は、随分と確信を持って喋っている。騙しているのかもと思ったが、そうじゃないらしい。
なら、翔一をこのまま裏切るとどうなる?……彼だけならともかく、矢向さんや唐川さん相手に、僕が勝てるわけがない。


何より、ヤクが危険に晒されるかもしれない。いや、既にそうなっているかもしれない。
心臓の音が、さらに速くなった。


「どう、裏切るんですか」

「それは、君からの情報提供次第だ。できるだけ、君には負担がかからないようにしたい。
佐倉と次会うのは、いつだ」

1 言う
2 言わない

※安価下3多数決

※仁への協力をし過ぎると、城への危険は高まります <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/27(木) 21:02:55.32 ID:MfZRl+M30<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/27(木) 21:14:54.06 ID:nP14EjCuO<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/27(木) 21:27:44.93 ID:mKyMvvvDO<> 1 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/27(木) 22:06:45.96 ID:NML7Dt61O<> 「……次の、日曜です」

僕は悩んだ挙げ句に、小さく言った。

「やはり、定期的に会っていたか」

毛利刑事の手が胸ポケットにあるタバコの箱に伸び、止まった。

「……しかし、難しいな」

大きな溜め息をついて、彼が黙った。

「何が、難しいんです」

「君の処遇だ。君は多分、佐倉からのボディガードに守られている。あれは、堅気ではない。裏を返せば、君が態度を豹変させたら、躊躇いなく君に牙を剥く。
さりとて、君が日曜に佐倉に会えば、多分アイスキャンディを服用させられるだろう。君にとっては、寿命を縮める行為だ。
あるいは、佐倉が勘のいい男なら……俺の『知る』佐倉なら……君の変化を見抜くだろう。そうなったら、君もただでは済まない。
……タバコを一本いいか。未成年者の前で吸うのは本来まずいんだが」

僕が小さく頷くと、「助かる」と彼はタバコに火を付けた。白い煙が立ち上る。

「……選択肢は、いくつかある。まず、君がこのまま、佐倉との付き合いを続けていくことだ。動きがあるまでは、現状維持でいい。ただ、時折情報を流すだけでいい。
その時になれば、俺たちが動く。君がすべきは、『何も知らないふり』だけだ。
ただ、繰り返すがこれは君の命に関わることだ。アイスキャンディのこれ以上の服用は、短い命をただ削るだけに過ぎない。
2つ目は、勝負をかけてしまうことだ。君に発信器を渡し、日曜かどこかの早い時期に、機を見て俺たちが現場に乗り込む。
ただ、佐倉翔一は現状、殺人の容疑者でも重要参考人でもない。決定的な何かが出ない限り、彼は無罪放免だろう。その後どうなるかは、全く分からない。
それに、発信器がバレたら一巻の終わりだ。君にはかなり負担を強いることになる」

毛利刑事がタバコを大きく吸った。

「3つ目は、君が失踪することだ。君は埼玉県警の保護下に置かれ、守られる。荒川の件も不問にしよう。
その代わり、君が知り得る全ての情報を吐いてもらう。一種の司法取引だ。
これにも難点がある。君の保護者、城寿美子の承諾がなければ意味がない。それに、君の大切な人――薬師丸英華さんに危害が加わる可能性は否定できない。
どれにもリスクはある。勿論、君は俺の提案を蹴ってくれてもいい。その場合は、俺は別のルートを探すだけだ」

再び白煙が、彼の口から吐き出された。

「決めるのは君だ。俺からは強いない」

静かだが鋭い目線が、僕を貫く。


僕の選択は……


<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/27(木) 22:10:13.18 ID:NML7Dt61O<> ※最重要選択肢です。

1 現状維持
2 発信器を持つ
3 埼玉県警に逃げ込む
4 仁の提案を蹴る
5 その他自由安価

※3票先取

※上記のように、どれにもリスクがあります。
※自由安価はあれば歓迎です。

※質問は随時受け付けます。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/27(木) 22:11:38.88 ID:NML7Dt61O<> なお、「アイスキャンディを服用した上で佐倉を捕らえる」のはほぼ不可能です。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/27(木) 22:51:53.23 ID:HcadJm1fO<> 上げます。0000までに有効得票数に達しない場合はリセットです。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/27(木) 22:56:04.75 ID:MpAz+SdDO<> 1 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/27(木) 23:27:05.34 ID:HcadJm1fO<> もう一度上げます。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/28(金) 00:03:26.32 ID:MHc6E5ImO<> 0000になりましたのでリセットします。

一応言いますと、どれを選んでも薬師丸英華が拉致されている可能性はあります。その場合は、城はある決断を迫られることになります。
ただ、選択肢によって助けるのがほぼ絶望的になるものと、そうでないものがあります。

引き続き質問は受付中です。よろしくお願いします。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/28(金) 00:55:22.55 ID:MHc6E5ImO<> 寝る前に上げておきます。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/28(金) 07:09:45.50 ID:FJmokdpxO<> もう一度上げます。

昼頃再開予定です。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/28(金) 07:41:16.08 ID:NwA/wwA0O<> 4 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/28(金) 07:56:55.37 ID:OM9lVAfy0<> 4 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/28(金) 08:16:38.91 ID:JTISf47/0<> 怖いね <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/28(金) 09:54:23.65 ID:6LxeVuDjO<> もう一度上げておきます。

協力しない場合は、城がどう動くかでかなり変わります。
このまま駒として使い捨てられるかもしれませんし、上手く立ち回れば別のルートに入るかもしれません。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/28(金) 10:40:52.69 ID:iuWERmGS0<> 2

城の勇気ある行動が自体を好転させることを信じて…!!ご愛読ありがとうございました! <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/28(金) 10:59:35.57 ID:6LxeVuDjO<> とりあえずヒントを。

1はローリスクローリターンです。ただ、有事には対応しやすいでしょう。

2は逆にハイリスクハイリターンです。ジョーのパートが早々に終わる可能性もそれなりに高いでしょう。

3は上手くすれば最大の果実が得られますが、ヤクが拐われたりもっと酷いことになる可能性も相当あります。

4はコンマ次第です。仁の捜査は遅れます。ジョーがこのまま佐倉に弄ばれる可能性はありますが、ヤクは比較的安全です(ただ、ジョーがどうなるかは別ですが)。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/28(金) 11:47:29.96 ID:ppR+8k/DO<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/28(金) 13:36:23.95 ID:wNkri7Oy0<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/28(金) 13:41:22.38 ID:JpwWKE7DO<> 1 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/28(金) 14:48:08.26 ID:6LxeVuDjO<> 「……僕の身の安全は」

「俺たちが保護するのでなければ、最終的には君自身が守るしかない。だから今はまだ、派手に動くのは避けるべきというのが俺の判断だ。
そう望まないなら、君には多くは求めない。君の安全のためにも」

毛利刑事が、車の灰皿にタバコを押し付けた。

「その代わり、君の命は削られることになる。俺たちの言葉で言えば、君は『泳がされている』状況だ。
『S』――スパイとして何かを積極的に行ってくれなくてもいい。何かしら異変があった時だけ、連絡をくれればいい。どうする」

僕は目を堅くつぶった。涙が絞り出される。


もう、残り少ない命なら。


脳裏に浮かんだのは、ヤクの笑顔だった。
彼女を守れる可能性が高いのは……多分、これだ。


僕は顔を挙げる。

「毛利さん、あなたの提案に……乗ります。いつも通りにして、翔一を観察すればいいんですね」

彼は小さく首を縦に振った。

「……ありがとう。心より感謝する。まず、連絡は極力、SMSかLINEで頼む。君の家に、盗聴機がないとも限らない。
それと……努めて『普段通り』にしてくれ。難しいのは分かっている。が、それが一番重要だ」

ゴクリ、と僕は唾を飲んだ。

「……どういう時に、連絡を」

「君を狙う人間が現れた時。そして、佐倉が何らかの動き――特に、アイスキャンディを広げようとした時だ。殺人など、重大犯罪に動こうとした時も含まれる。
いつ連絡するかは、君次第だ。だが連絡する時は決定的な局面の方がいい。俺たちも、できれば一発で決めたい」


毛利刑事の目が、僕のそれを見た。

「できるな」

「……はい」

<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/28(金) 14:50:15.19 ID:6LxeVuDjO<> ※コンマ下
01〜30 再判定
31〜95 通常ルート(コナンパートへ移行)
96〜00 特殊ルート <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/28(金) 14:54:34.60 ID:ppR+8k/DO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/28(金) 15:00:10.48 ID:6LxeVuDjO<> 再開は夜です。

なお、上の判定は有効にしますが一つだけ追加の判定を入れます。

※50以下で追加パートあり <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/28(金) 15:02:44.07 ID:RdaLa/Rw0<> 何だろ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/28(金) 20:21:19.16 ID:h9vDqhdLO<> 「さて………」

イグニッションボタンを押し掛けた毛利刑事が、直前で何かを思い出したかのように手を止めた。

「ちょっと待て。今、アイスキャンディを持っているな」

「……え?」

彼の目が、再び鋭くなった。

「念のため、こちらに渡してもらおう。解析などをする必要がある。これをもって君を罪に問うことはない」

今、僕の手元にあるのは……緊急時に飲むよう言われた、新型だ。
本当に危機が迫った時に飲めば、人の脳をフル活用できる……と翔一は言っていた。
だけど、これを手放したなら……僕を狙う奴に対抗できない。どうしよう。

※2票先取

1 渡す
2 渡さない <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/28(金) 20:28:53.66 ID:JpwWKE7DO<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/28(金) 20:31:15.51 ID:ppR+8k/DO<> 1 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/28(金) 20:41:27.20 ID:h9vDqhdLO<> 僕は鞄を見た。この奥に、それはある。強く目をつぶり、そして決心した。

「……これです」

たった一つの錠剤。アルミみたいな包みで覆われている。

「助かる。こちらで、慎重に取り扱おう」

毛利刑事は、それを懐に入れた。僕を守る切り札は、もうない。

車はゆっくりと走り始めた。翔一に会うのは、日曜。その時、僕は自然にしていられるだろうか?


刑事と会う前に感じていた下半身の疼きは、とうに消えていた。


<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/28(金) 21:04:11.69 ID:h9vDqhdLO<> 【6月19日、13時41分】


あれから、あたしとコナン君との間は、少しギクシャクしていた。……というより、あたしが一方的に意識してしまっているだけかもしれないけど。

あたしは、アイスキャンディの効果で肉欲に流された。それを直接見られはしなかったけど、それでもコナン君に気付かれた。
それがたまらなく恥ずかしくて、悔しかった。秋山の件も、最後にしくじってしまった。

自分を責めるな、とコナン君は言った。それはそうかもしれない。
ただ、あたしがコナン君に見合う人間なのか。……それは全く、自信がなかった。

<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/28(金) 21:09:18.35 ID:h9vDqhdLO<> #

秋山を殺した後、あたしたちはしばらくの自宅待機を命じられていた。
佐倉をどうするかは、落ち着いてから話し合う感じであるらしい。
家にいるだけだから、基本的には暇だ。コナン君はどこから持ってきたか、大量の本を読んでいる。
あたしもそのうちの一つを読もうと思ったけど、難しくてよく分からない。結局、スマホを弄るだけになる。

あたしは、窓の外を見た。今年は空梅雨だけど、晴れているわけでもない。薄暗い曇り空が、あたしを憂鬱にさせた。


その時、コナン君の電話が鳴った。


「はい。……え」

コナン君の表情が、たちまち厳しくなる。何回かやり取りがあり、彼は険しい表情で電話を切った。

「どうしたの?」

「……厄介なことになりました。埼玉県警が、僕らのことに気付き始めたかもしれない」

「……えっ!?」

私のドジのせいだ。秋山の件が、明るみになってしまったんだ。
あたしは、その場に崩れ落ちた。目には涙が浮かぶ。

「ご……ごめんなさいっ……!!あたしの、あたしのせいだっ……」

あたしの頭を、コナン君がそっと抱きかかえた。

「……自分を責めないでください。僕の責任でもある。それに、これはちょっと変だ」

「……変?」

コナン君が頷いた。何が変なんだろう?

「秋山の件は、多分僕らの犯行と勘づかれてます。捜査を主導しているのは、多分警察庁でしょう。
ただ、それなら群馬県警が僕らに気付いているはず。埼玉県警がというのは、どうにも妙だ」

「彼らが追っているのは、アゲハの件、なの?」

「らしいです。しかし、いきなり捜査方針が変わったとか。若い女と子供を調べろ、という話になっているそうです」

「……あたしが、見られたのかな」

コナン君が、強く首を横に振った。

「いえ、ならもっとずっと早く動いてるはずです。ひょっとしたら……」

何かをコナン君は考えているようだった。

「ひょっとしたらって、どういう……」

「……僕らの正体に、気付き始めている人間が、あの中にいる可能性がある。そして、その人間は僕と同じ存在かもしれない」

「同じ存在って、まさか」

彼は頷いた。額から汗が、一筋流れている。


「僕と同じ、覚醒者ですよ」



<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/28(金) 21:13:37.29 ID:h9vDqhdLO<> 覚醒者?未来から精神だけがこの時代に飛んだとかいう人、だっけ。でも……。

「覚醒者って、そんなにごろごろいるの?」

「分かりません。あの時、少なからぬ人が、『グラウンド・ゼロ』にいましたから。
ただ、そう多くもないはず、と勝手に思ってました」

※70以上でコナンに心当たりがある <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/28(金) 21:17:26.04 ID:TpxCKyLP0<> えい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/28(金) 21:25:54.35 ID:h9vDqhdLO<> コナン君が腕を組んだ。

「しかし、一体誰が……一つ言えるのは、とても動きにくくなったということですね。しばらくは、興也さんや由依さん、源さんに頼るしかない」

「……そんな」

「アユさんのせいじゃないです。こんな事態は、完全に想定外だ。しばらくは、城や鶴岡の監視を地道に続けるより外なさそうです」

コナン君も、窓の外を見た。彼が抱えている感情も、あたしと同じなんだろうか。晴れない気分は、しばらく続きそうだった。

※80以上で追加イベント <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/28(金) 21:30:32.61 ID:ppR+8k/DO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/28(金) 21:44:27.78 ID:h9vDqhdLO<> 今日はここまで。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/28(金) 21:47:19.89 ID:ppR+8k/DO<> 乙 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/29(土) 12:18:48.04 ID:7jCpdRkoO<> 【6月22日、9時31分】


「……えっ?」

遅めの朝ご飯を食べていたあたしたちの時間は、コナン君のスマホの着信音で破られた。
電話に出るなり、コナン君の表情が変わる。驚きと喜びが混じったような感じだ。
コナン君が素直に喜んでいるのを見るのは、とても久し振りな気がする。

「はい。……なるほど、そうですか。今日、ミーティングですね。了解です」

電話を切ると、コナン君はふーっと長い息を漏らした。

「どうしたの?」

「朗報です。埼玉県警と城隆一郎が、接触しました。アイスキャンディも押収したと」

「えっ??それって、ひょっとしてかなり良いことなんじゃ?」

コナン君が笑みを押さえきれずに頷いた。

「埼玉県警がやっと動き始めたようですね。これで、こちらも仕掛けやすくなる」

「城って子、逮捕されたの?」

「そうとは聞いてないです。『エス』として使うつもりでしょう。向こうも本丸の佐倉翔一が狙いでしょうから。
これから、実際に会ってのミーティングです。父さんは本業で来れないですけど、後は大体来ます」

やっとこのもやもやした日々から抜け出せるようだ。あたしはホッとした。コナン君との関係も、もう少し近くなるといいのだけど。

※70以上で追加イベント <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/29(土) 12:36:51.08 ID:KgFQly2uO<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/29(土) 14:00:38.17 ID:shzIicN+O<> ※追加キャラの登場はなし

「今日のミーティングは横浜だそうです。ちょっと遠いですが、いいですか?」

「横浜……行ったことあったかな……」

「意外ですね。僕の家からは近いですが」

「そうなの?」

コナン君が頷いた。そういえば、コナン君の家庭のことは、ほとんど聞いてない。

「母さんと妹で住んでるはずです。もちろん、僕らが何をしているかは知らないでしょう。一応、僕は父さんとアメリカにいることになっていますし」

「……そうなんだ」

あたしは、彼のことをあまり知らないのに気付いた。聞いてはいけないという感じがしていたからだ。それは、彼の正体を知った今でもそうだ。
でも、そろそろ知っておくべきなんだろうか。あたしが、コナン君と向き合うのなら。

#

「変わった形のビルだね。あれは何?」

「ホテルですよ。船の帆をイメージしたとか。……ここに入ります」

大きな、テレビドラマでよく見る観覧車を背にしてあたしはハンドルを切った。
ホテルに入り、上層階に向かう。いつも通りの合い言葉で、あたしたちは部屋に入った。

網笠さんが、一人海を見ている。コナン君が呼び掛けた。

「どうかされました」

「いや……感傷にふけっていただけだ。まだ、海がこんなに『綺麗』だとはね」

海がキレイ?東京湾の海だなんて、たかが知れてるのに。未来はそんなにひどいのだろうか。

網笠さんは、ふっと笑った。

「ともあれ、事態は動いた。埼玉県警は時期を見て動こうとするだろう。機先を制することが重要だ。
……にしても、埼玉県警の覚醒者とは……何者だ?藤原君、心当たりは」

「いえ。……『彼』も知らないようでした」

「……そうか。あの時、あの場所にいたのは限られている。埼玉県警の人間がいたかどうか」

※コンマ下
01〜80 通常ルート
81〜95 亜衣のことは知っている
96〜00 仁の存在に気付かれる <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/29(土) 14:08:43.24 ID:EqZkC+Gc0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/29(土) 14:39:44.32 ID:shzIicN+O<> 「可能性はあります。青山憲剛の件を追っていたのは、僕ら『東』の警視庁だけではなかったですから。古畑ら『西』の公安もいましたし、埼玉県警がいても不思議ではない。
ただ、それが誰かまでは。網笠さんは分かりますか」

「私にそこまでは分からんよ。せいぜい、警視庁の君たちと、『西』の連中までだ」

青山憲剛?……誰だろう。

インターフォンの音がした。興也さんが入ってくる。

「やっとですね。埼玉県警が藤原さんのことを勘付いたと知らされた時には、ヒヤッとしました」

「ただ、依然僕とアユさんは動きにくい。色々お願いすることになりそうです」

「了解です、と言いたいですが……僕や浅賀君、小峰君の面まで割れてたら厳しいですね。誰が『覚醒者』か、特定したいところですね」

またインターフォンが鳴る。ミーティングが、始まろうとしていた。

#

「……現況は以上だ。まず、厄介な埼玉県警の覚醒者が誰かだが。私と藤原君には心当たりがないが、君たちはどうか」

網笠さんが、興也さんたちに呼び掛けた。

※85以上で源が知っている、再判定 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/29(土) 14:42:59.09 ID:dahSrmVDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/29(土) 23:10:08.46 ID:shzIicN+O<> 「いや、ちょっと分からないです。あんたはどうなの」

「……俺に訊かれてもなあ」

源君の言葉に、由依ちゃんが大きな溜め息をついた。

「だと思ったわ。基本、あんとき皆安田講堂の方ばっかり気にしてたしね……」

安田講堂?東大で何かあったのだろうか。

「……ちょっといい?青山憲豪って、何者なの?」

あたしの質問に、コナン君がスマホを弄って画面を見せた。

「日本が誇る天才医学者にして物理学者、ということになってます。現在35歳。
この若さで東大教授というのは、まずあり得ない。ただ、奇人でも知られていますが。この時代においても」

「その人が、何かしたの?」

皆険しい顔になって黙った。どうやら、未来に関わる重要な話であるらしい。

コナン君が、沈黙を破った。

「あまり、詳しい話は言えないんです。ただ、僕らがここに来た理由を作り出したと思われる人物でもある。
アイスキャンディの元になる技術も、彼の発案です。とはいえ、彼は研究内容が何に使われるかに、酷く無頓着な人間ですが。
一つ言えるのは、彼の狂気が多分、僕らの世界を壊したということでしょうか」

「世界を壊した?」

コナン君が首を振った。どうにも物騒な話だけど、彼はコナン君たちの標的にならないのだろうか。

「現時点では、アユさんに言えるのはここまでです。
ただ、彼を殺していいものかは、まだ結論が出てない。彼の研究が、世の中を劇的に良くした面もあるからです。
まあ、今回の件とは、多分無関係でしょう」

そう言えば、どうして20年後からこんなにたくさんの人が「未来の記憶」を持っているのか謎だった。
いつかあたしも知る日が来るのだろうか。

コホン、と網笠さんが咳払いをした。

「話を元に戻そう。差し当たり、城の監視に誰か付いてもらおう。須田君、いつも通り頼めるか」

興也さんが難しい表情になっている。どういうことだろう。

「……城のボディーガードに気付かれているかもしれません。かなり遠間からの観察ですが、あいつはかなり勘が鋭い。
一度誰かに切り替えた方がいいかもしれません」

「そうか。なら小峰君。どうだ」

「了解です。ただ、平日に動けるのは今日ぐらいですね。一応これでも学生なので、ブッチ(ずる休み)は月2が限界です」

「私も同じ。てか、公安の増田もいるっぽいんでしょ?埼玉県警、増田、そしてあの男。結構ハードル高いね」

ふむ、と網笠さんが唸った。

「本来なら藤原君を使いたいが、誰が埼玉県警の『覚醒者』か分からないことにはリスクがあるな。
一応、『彼』に調査は依頼しよう。ただ、『彼』も心当たりがないというのは厳しいが」

「彼って誰ですか?」

あたしの問いに、網笠さんは短く「警察内部者だよ」と返した。だからここまで内情が筒抜けなのか。

「とにかく、藤原君と吉岡君は当面はフリーでいい。外出はしてもいいが、極力埼玉県外が望ましいな。
無論、城や鶴岡が寄りそうな場所は除外だ」

「了解です」

コナン君が鋭い目で返す。……どんなことになるんだろう。あたしの心のもやもやが、また増した気がした。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/29(土) 23:12:25.75 ID:shzIicN+O<> ※コンマ下

01〜10 ?????
11〜20 特に何もなし(仁パートへ移行)
21〜80 追加イベント(箸休め的なモノ)
81〜00 重要イベント

(特に99、00は今回のみ優遇します) <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/29(土) 23:17:40.60 ID:6CWT7tql0<> 1 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/29(土) 23:19:03.90 ID:shzIicN+O<> 今日はこれまで。年末年始は更新遅めになります。
<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/30(日) 09:20:20.96 ID:yM4GtFTPO<> 【6月22日、14時21分】


あの後、細かい動き方などの打ち合わせをして解散になった。基本的に、この後の行動は自由という。完全にプライベートの外出は、池袋の時以来かな。
あれから随分たった気がする。あたしの立場も、コナン君との関係も変わった。

「そういえば、ご飯まだでしたね。どこかで軽く食べましょうか」

コナン君が呼び掛ける。

「……あたしたち、出歩いてて大丈夫なのかな」

「僕らは指名手配犯でも、何でもないですからね。埼玉だと県警がマークしてるかもですけど、それにしても多分小規模です。
まして、横浜は神奈川県警の管轄ですから。警察の縄張り意識の高さからして、疑われることはまずないですよ」

「そんなもの、なのかな」

あたしたちはホテルを出る。横浜なんて、ちゃんと来たことはない。群馬の田舎者にとっては、まるで未知の街だ。

「せっかくだからさ、コナン君少し案内してくれない?あたし、横浜はほんと知らなくて」

「あっ、そうなんですか?……そうだな……」

1 みなとみらい、少し歩いてみます?
2 中華街まで行ってみましょうか
3 山下公園行きますか?
4 ちょっと方向違いますけど、ラーメン博物館行きます?

※2票先取
※コンマ次第でそれぞれ偶発イベントがあります <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/30(日) 09:23:53.17 ID:asbz8IrDO<> 4 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/30(日) 09:43:04.62 ID:um8Al+hh0<> 3 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/30(日) 12:01:43.00 ID:MUwGhYsFO<> 4 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/30(日) 21:53:27.18 ID:AmnL17/IO<> 「ちょっとここから距離はありますけど、新横浜のラーメン博物館行きますか?」

「えっ、ラーメン?」

「ええ。平日ですし、もうご飯時ではないですから空いてると思いますよ。昼ご飯ついでに、どうです?」

ちょっと意外だった。中華街とか、普通の観光名所を案内されるとばかり思ってたからだ。

「うん、いいけど。ラーメン、好きなの?」

「まあ好きなのもあるんですけどね。……『昔』、よく行ってたんです。懐かしくなって」

ああ、そうか。20年後は、ラーメン博物館もなくなっているのかもしれない。
そういうことなら、喜んで行こう。あたし自身、ラーメンはそんなに詳しくないけど。

「分かった。道はカーナビ入れれば大丈夫かな」

「ここからなら僕が案内できますよ。行きましょうか」

#

車は東神奈川の駅を通り過ぎた。コナン君が、遠い目で車外の風景を見ている。

「どうしたの?……ひょっとして、家ってこの近くなのかな」

コナン君が少し驚いたようにあたしを見た。

「……!そうです。母さんも妹も、まだこの近所に住んでるはずです」

「そうか……ここから新横浜って、近いのかな」

「車で10分もかからないですかね。よく、家族でラー博には行ってました。
年間パスポートも取ってましたね」

「年パス?そんなに好きなんだ、ラーメン」

バツが悪そうに、コナン君が頭をかいた。

「ま、まあ……父さんと母さんが好きなんで、その影響ですけどね。
アユさんは、ラーメンは?」

「群馬はあまりラーメンが美味しいとこって聞いたことないから……。
栃木だと佐野ラーメンとかあるけど」

「確か、アユさんの出身は高崎でしたよね。『なかじま』とか『くろ松』とか、結構美味しい所ありますよ」

あたしはビックリした。コナン君がそこまで詳しいとは思わなかったからだ。

「えっ、知らない。……落ち着いたら行きたいね」

「……そうですね」

あたしはそこまで言って思った。「落ち着いたら」ってどうなればいいんだろう。佐倉を殺したら?
でも、彼の仕事には終わりがあるとは思えない。お母さんや妹さんの元に帰る日は、来るんだろうか。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/30(日) 22:10:42.20 ID:AmnL17/IO<> #

新横浜の駅近くに、ラーメン博物館はある。ビル内の駐車場は平日だからか随分と空いていた。
入口で大人一人と子供一人分の入場券を買う。2人で410円か、以外としないんだな。

一階は土産物売り場みたいだ。奥の方に何か遊ぶところがあるみたいだけど、とりあえずお腹が空いた。

「お店は地下ですね。何か食べたいのありますか?」

「うーん……横浜って確か、家系が有名なんだよね。食べたことないんだけど」

コナン君が唸った。

「実は家系そのものは、ラー博にはないんですよね。近いのならありますけど、そこにしますか」

地下に行くと古い昭和の街並みのようなセットがあった。この中に、お店があるという感じらしい。

「やっぱり平日だからそんなに人いないね。休日は凄いの?」

「1時間とか待ちますね。今から行くところは、休みの日だと結構待つはずですよ」

※95以上で追加イベント
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/30(日) 22:11:17.86 ID:asbz8IrDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/30(日) 22:58:38.17 ID:AmnL17/IO<> ※コナン母との遭遇はなし

店の名は「無垢 ツヴァイテ」というらしい。変わった名前だな。

「『ツヴァイテ』?何語だろ」

「ドイツ語ですよ。ここ、本店はドイツなんです。
最近は、こういう『逆輸入ラーメン』が増えてるみたいですね」

コナン君は、慣れた感じで「無垢ツヴァイテラーメン」の食券を買う。
……1200円??ラーメンって、こんなに高かったっけ。

「あ、値段は気にしなくていいですよ。僕が出しますから」

「う、うん。でも結構高いね」

「まあ、元々ラー博は少しお高めですから。それに、食べてみれば値段の意味も分かりますよ」

客はあたしたちだけだ。食券を渡すと、店員が黙々と調理をする。
5分ほどして、丼が出てきた。スープが茶色くて、見るからに濃厚そうだ。上には野菜と、よく分からない茶色の個体が浮かんでいる。

「これが家系なの?」

「んー、スープの構成とかはかなり違いますけどね。ただ、味は比較的近いと言えば近いでしょうか」

麺は少し太めだ。スープの色に染まっている。啜ると……あれれ?

「……こ、これって。パスタっぽい、よね」

「そうですよ。ピザ用の小麦粉と、パスタに使うデュラム・セリモナ粉をブレンドしてるんです。面白いでしょ」

こんなラーメンは食べたことがない。それに、とても濃厚だ。豚骨醤油?

「うん、美味しい。それにしても、ちょっと変わった味……この固体が、またコクがあって」

「背脂をハーブとかに漬け込んだ、『スペック』ってドイツの食材ですね。上の白いのは、キャベツの酢漬け『ザワークラフト』。
ドイツにある食材を使ってラーメンを作ろうとしたら、こんな家系風の味になったみたいです」

コナン君は楽しそうに話し、麺を啜っている。こんな彼の顔を見るのは、初めてかもしれない。
あたしは、ひょっとしたら「本当のコナン君」をほとんど知らなかったのだろうか。

スープをレンゲですくって飲むと、複雑だけどどことなく懐かしい味がした。
これが、コナン君が家族と食べた味、なのかな。

#

「美味しかったね。今度は、本物の家系ラーメン食べたいな」

「そうですね。埼玉じゃちゃんとしたのないですから、やっぱり横浜になっちゃいますけど」

あたしは結局、スープまで全部飲み干した。こんな美味しいラーメンは、初めてだった。
カロリーはちょっと気になるけど。家に閉じこもってるから、少し運動しなきゃ。

少し1階奥にある、昔のミニ四駆――スロットカーというらしいけど――で遊んで、家で食べる用のラーメンをいくつか買った。
料理が上手いコナン君だけど、さすがにラーメンは難しいらしい。
「せいぜいチャーシューまでですかね」というけど、チャーシューを作れる時点で凄いと思う。

※80以上で特殊イベント
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/30(日) 22:59:49.02 ID:Yk1d3ycv0<> 特殊 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/30(日) 23:12:49.31 ID:AmnL17/IO<> ※横浜アリーナでイベントはなし

今日はここまで。少し進めてから仁パートになります。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/30(日) 23:19:22.68 ID:asbz8IrDO<> 乙です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/30(日) 23:35:22.87 ID:Yk1d3ycv0<> 乙乙 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/31(月) 09:58:16.39 ID:d1DgvRZ9O<> #

車に乗ると、コナン君はすぐ眠ってしまった。「表」に出るのは負担がかかるって言ってたけど、今日はずっと起きてたから大変だったのかもしれない。

助手席の寝顔を見ていると、本当に普通の小学生にしか見えない。あどけなくて、純真そうな寝顔だ。
あたしは信号待ちの間、彼の髪にそっと触れた。何か、不思議な気分だ。

その時、彼が小さく何かを呟いた。寝言かな。


「……お母さん……」


それが今のコナン君が言ったのか、それとも「9歳のコナン君」が言ったのか、あたしには判断がつかなかった。
ただ、胸がきゅっと締め付けられる感じがした。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/31(月) 10:10:55.15 ID:d1DgvRZ9O<> 【6月23日、8時14分】


俺は淹れたてのマンダリンを、一口飲んだ。深いコクが、俺の喉を通り抜ける。ふうと息をつき、天井を何ともなしに見た。
今日は久々の、フルの非番だ。ゆっくりと時間を過ごすことができる。

城からの連絡は、今のところない。明日会うということだが、俺との接触を見破られなければいいのだが。
押収したアイスキャンディの解析結果は月曜だ。伊香保で目撃された、若い女と子供の目撃証言も、今はまだない。
現状できるのは、ただ待つことだけだ。

そういえば、美和とちゃんと会えていなかったな。少し早いかもしれないが、電話でもしてみるか。

※25以上なら出る <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/31(月) 10:15:27.60 ID:Yzc98xR90<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/31(月) 10:32:57.56 ID:d1DgvRZ9O<> 『あ、仁さん?久し振り……ってわけでもないか。日曜に熊谷で会ったもんね』

「すみません、朝早くに。何か、声が聞きたくなって」

ふふっと美和が笑った。

『珍しいね。仁さんからそう言ってくるの。私もちょっと寂しかったし。今日は非番なの?』

「ええ。会えませんか?」

『そだね。明日は亜衣と会わなきゃだけど、今日は大丈夫。どこに行こうか?』

1 カフェ・ドゥ・ポワロに行きますか?
2 ラーメンでも食べに行きますか?
3 うちに来ませんか?

※2票先取 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/31(月) 10:43:41.76 ID:xiI9JEzDO<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/31(月) 11:10:49.71 ID:t5ZnuTT40<> 1 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/31(月) 14:19:16.54 ID:zreXmyImO<> 「カフェ・ドゥ・ポワロに行きますか?コーヒー教室以外で行ったこと、確かあまりなかったはずですし」

『いいね!でも混んでないかな』

兵さんの店は中年女性を中心に人気だ。シフォンケーキを目当てに長蛇の列ができていることも少なくない。
ただ、いい店なのも確かだ。慣れた場所でゆっくりするのもいいだろう。

「まあ、早めに行けば大丈夫でしょう。待ち合わせは?」

『そうだねぇ。川越駅でいい?』

「いや、大宮まで迎えに行きますよ。川越だと、電車代かかるでしょう」

『いいのいいの、そこは気にしないってことで。じゃあ10時半で』

「了解しました。では」

電話を切り、俺はふうと息を吐いた。どうにもここしばらく、張り詰めた日々が続いていた。たまには、羽根を伸ばしてもバチは当たるまい。

#

「お待たせ。雨降らなくて良かったねぇ」

美和はキャミソールの上に薄手のピンクのブラウスを羽織っている。これで5歳の子供がいるとは、あまり思えないだろう。

「ですね。行きましょうか」

俺はフィットのキーを回した。ここから兵さんの店までは20分もかからない。

「そういえば、この前はすみませんでした。途中で帰っちゃって」

「事件でしょ?しょうがないよ。私こそごめん。亜衣がいたから、あまり相手できなかったし。結局、待ち合わせは?」

俺は一瞬言葉に詰まった。本当のことを言っても、信じてはくれまい。仮に信じたとしたら、それはそれでショックだろう。
娘が本当は25歳で、しかも自分は来年4月に死ぬはずだと知ったら……俺なら卒倒するな。


そうはさせない。そのために、俺はいる。


「……仁さん?」

「あ、いや……空振りでした。そういうこともあります」

※90以下で通常ルート <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/31(月) 14:49:56.92 ID:evaLNjSB0<> ほい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/31(月) 21:11:27.58 ID:KBqX1UMZo<> 期待 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/31(月) 23:07:16.97 ID:zreXmyImO<> しばらく、妙な沈黙が流れる。それを破ったのは、美和だった。

「……本当?それ」

一瞬、俺の背中に電流が走った。まさか。

「……どういうことですか」

「私、仁さんと亜衣が何か話してるのを見ちゃったの。あれは、大人が子供に話してるのとは、違った」

美和が帰ってくる前に会話を打ち切ったつもりだったが、少し聞かれていたのか?

「気のせいじゃないですか」

「……そうかな。亜衣、あれから様子が変だったもの。妙に子供っぽいわがままを言ったりして。
まるで、何かを隠そうとしているかのように思った。仁さん、心当たりある?」

これは……真実を語るべきなのだろう。俺は溜め息をつきたい衝動に駆られた。

「……とても言いにくい話です。できれば、誰もいない場所で、腰を据えて話したい」

「言いにくい話?」

怪訝そうな表情の美和の目を見た。そうだ。俺がこの後も彼女と生きていこうとするなら、誤魔化すことはできない。

「ええ。そもそもの問題、信じてくれるか、正直に言って自信がない。
それに、受け入れがたい話でもある。できれば、亜衣ちゃんも交えて話したいですが……」

「亜衣も?……ちょっと話が見えてこないけど。じゃあ、予定変更する?
亜衣なら、熊谷の両親のとこにいるけど」

※85以上で白田の店の個室を借りれる
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/31(月) 23:07:59.00 ID:5L9eDS0D0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2018/12/31(月) 23:38:40.31 ID:zreXmyImO<> ※00のためある修正を入れます

「そうですね……。ただ、その場所は兵さんの店のままでいいですか。ちょっと時間はかかりますが。
頼めば、兵さんは個室を貸してくれるでしょう」

「え、あそこ個室なんてあったんだ」

「普段は解放してないんですけどね。ちょっと訊いてみます」

俺はコンビニの駐車場にフィットを入れ、兵さんの携帯に連絡する。まだ開店前だから、電話に出る余裕はあるはずだ。
果たして、すぐに彼は出てきた。

『おう、仁か。どうした急に』

「ちょっと個室を借りたいんですが。可能ですか」

『……また随分急な話だな。ただ、今日は予約も入っていない。
いいぜ。捜査に関わる、機密の話なんだろう』

「助かります。じゃあ……12時半、いや13時過ぎに伺います」

俺は電話を切り、美和を見た。

「OKだそうです」

「そう。……でも、そこで大丈夫なの」

「兵さんが警察用に、完全防音の部屋を作ってるんです。相手の情報が絶対漏れてはいけない事情聴取限定で使われる、シークレットルームです。
元々、捜査一課の刑事が使うことを想定してた店ですからね。こんなに繁盛するとは、本人も思ってなかったみたいですから」

あっと美和が声をあげた。

「そっか、兵さんって元刑事だもんね。でもそんな部屋があったなんて」

「でも、こういう話をするにはうってつけです。まず、亜衣ちゃんを拾いに行きましょうか」

#

美和の実家に行くと、不思議そうな顔の亜衣が出てきた。

「あれ、おかあさん?これからどこかにおでかけ?」

「そうよ。このお兄さんと一緒に、ご飯食べに行くの」

俺は亜衣の顔を見た。きょとんとして、首をひねっている。
そう言えば、「表」に出れるのは2時間が限界ということだったか。その時が来るまで、引っ込んでいるつもりなのだろう。

「うん、わかった。このおじちゃん、まえにあったよね」

「そう。新しいパパになるかもしれないの。仲良くしてね」

戸惑いがちに亜衣が頷いた。熊谷から鶴ヶ島までは1時間ほどかかる。妙な空気のまま向かうのも、ちょっと居心地が悪い。
俺はカーナビにCDを入れた。亜衣「ちゃん」には少し早いが、沈黙を消すにはいいだろう。

「Is this the real life?
Is this just fantasy?
Caught in a landslide
No escape from reality……」

「あ、『ボヘミアンラプソディー』。仁さんもQUEEN好きなんだ」

「ええ。流行り歌はついて行けなくて。美和さんも?」

「うん。父が好きで、その影響で聴くようになったんだ。凄い曲だよね」

「全くです。こんな展開の曲、何をどうやったら作れたんだか……」

今年の秋にQUEENの映画が大ブレイクするのは言わないでおこう。全てが終わったら、美和と一緒に「また」見に行きたいものだ。
ミラー越しに亜衣を見ると、すうすうと寝ている。


QUEENのベストアルバムが一通り終わった頃、「カフェ・ドゥ・ポワロ」に着いた。



<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/01(火) 00:15:18.99 ID:c0Q37NFbO<> 店の前には、既に行列ができ始めている。俺たちは断りを入れながら店内に入る。

「おう、来たか。……って美和ちゃんもか??まさか、プロポーズか」

大仰におどけながら兵さんが出迎えた。俺は苦笑する。

「残念ながら。それにそんなことで部屋は取りませんよ。いいですか?」

「……どうやら、マジな話らしいな。俺は引っ込んでるから、注文だけしてくれ」

「助かります」

店の奥に、その個室はある。分厚い扉を開けると、窓のない部屋があった。観葉植物が飾られ、テーブルには花が活けてある。
使われることはほとんどないはずだが、掃除は随分と行き届いているようだった。

「……で、話って?」

亜衣を見ると、寝起きだからか目を少しこすっている。

「ええ。亜衣、いいか」

目をぱちくりさせた後、亜衣の表情が変わった。

「……え?どうしたのおかあさん」

「演技はいい。気付かれていた。下手に隠すより、全部話そう。いつかは言わなければいけないことだった」

「……正気ですか」

俺は頷いた。美和が「えっ……」と絶句している。

「美和さん。これは嘘ではない。本当の話です。
俺と亜衣には『20年後の記憶』がある。亜衣の場合、時間限定でその頃の人格も」

#

説明には大分時間がかかった。美和は外資系運用機関の広報というエリートだけに、事あるごとに鋭い質問をしてきた。
途中で運ばれてきたカルボナーラがすっかり冷める頃になって、やっと美和の質問攻めは終わった。

「……信じられない。けど、信じないといけないみたい、ね」

「申し訳ない。俺に『未来の記憶』が『戻った』のはつい最近です。
亜衣は大分前からのようですが」

「……そうなの?」

こくん、と亜衣が頷いた。

「ごめんなさい。……1年前からです。でも、こんなこと言えないから……。
この状態の私が出れるのは1日2時間だけだし、お母さんと会っている時に出ることもほとんどなかった。
でも、仁さんの言う通りです。隠し事は、そうそう続かない」

「そんなに前から?……そっか、時々妙に賢いと思ってたけど」

美和が冷めてしまったコーヒーを飲む。

「で、私は来年4月に死ぬ。そして、仁さんと亜衣はそれを止めようとしている。
問題は、その容疑者が次々と誰かに殺されている。……そういうことね」

「ええ。それと付け加えるなら、その容疑者の一人もまた『未来の記憶』があるかもしれないということです。
非常に危険な麻薬を撒き散らそうとしている。それも止めなきゃいけない」

長い溜め息を美和がついた。

「何か、びっくりだなあ。……こんなSF小説みたいなことが、実際にあるなんて。
ケン・グリムウッドの『リプレイ』みたい」

「リプレイ?」

「そう。記憶を持ったまま過去に戻って、それを何度も繰り返してしまう男の話。
仁さんと亜衣はまだ1回目だけど、案外何周もしている人がいるのかもしれないわね」

そんな小説があるのか。……ん?


何周もしている人間がいる?そんなことがあるのか?


酷く引っかかった。しかし、そうであるなら何が起こる?


<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/01(火) 00:16:20.75 ID:c0Q37NFbO<> 今日はここまで。今年もよろしくお願いします。
<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/01(火) 11:11:26.34 ID:cj1Rmeo+O<> 「亜衣、繰り返されてる可能性は?」

亜衣も気付いたようだった。「あっ」と言ったまま絶句している。

「……なくはないかも……です。私も、なぜこの時代に飛ばされたか、細かい記憶まではありません。
ただ、ある事件の捜査で東大に行っていたことまで覚えてます」

「ある事件?」

亜衣が頷いた。

「東大教授にしてノーベル物理学賞と生理学・医学賞を受賞した、青山憲剛博士。彼が大規模テロを画策しているのではとの情報があったのを受け、警察が動いていたはずです。
私も、独自に動いていました。そのテロの内容如何では……それが何度も繰り返されているのかも」

「……それはあり得ることなのか?」

「私の妄想です。何せ、どういうテロだったのか覚えてないんですから。……仁さんは」

※95以上で記憶うっすらとあり。00のみ詳細あり <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/01(火) 11:20:47.37 ID:VlJwKz8DO<> はい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/01(火) 11:20:50.71 ID:710RUUiDO<> ううむ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/01(火) 20:57:21.21 ID:QKVXf9DaO<> 今日はここまで。今年もよろしくお願いします。
<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/01(火) 20:59:23.98 ID:QKVXf9DaO<> ミスタイプです。失礼しました。本編を再開します。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/01(火) 21:21:35.49 ID:QKVXf9DaO<> テロ?そもそも、俺の「未来の記憶」はまだ相当あやふやだ。
亜衣が覚えていないことを、俺が覚えているはずもない。

「いや。青山博士、か……バッドエンド・ブレイカーは彼を狙わないのか」

少し考え、亜衣が首を振った。

「……彼は世の中への貢献も大きいですから。
彼らがどういう基準で標的を決めているかは知りませんが、罪を犯したからすぐ殺すわけでは、どうもなさそうです」

「なるほど、な。……まあ、差し当たりは佐倉だな」

美和がぽかんとしている。彼女を置いてけぼりにしてしまったようだ。

「あっ、すみません。つい……」

「いいのいいの。気にしないで。仕事モードの仁さん、結構珍しいし。
それに、亜衣が将来こんな感じになるんだって思ったら、ちょっと感慨深くて。
父さんと母さんが、しっかり育ててくれたのね」

亜衣の顔が、少し赤くなる。

「いえ、その……。この状態で母さんと話すのは、何か照れくさいというか。
変な感じですね。『本当の私』と今の母さんとは、そう歳も離れてないですし」

「4歳違い、か。こういう部下、欲しかったわあ。
今度、ゆっくり話しましょ。明日実家に戻るし」

「……ありがとうございます。で、これからの方針は」

亜衣が俺を見た。

「大きくは変わらない。少し話したが、城とは接触できた。後は、彼からの連絡待ちだ。
もちろん、その過程でバッドエンド・ブレイカーの件を詰められればベストだが。
……あ、美和さん。言うまでもないですが、今日の件は内密に」

「勿論よ。こんな話、誰に話しても信じてもらえそうもないし。
私はいつも通り。そういうことよね」

「助かります。……妙なことになって、すみません」

「大丈夫。それに、私は仁さんと亜衣が守ってくれるのよね。うん、大丈夫」

美和が自分に言い聞かせるように言った。死の運命を教えられたのだから、内心穏やかであるはずがない。
それでも努めて明るく振舞う彼女は、強い人だ。俺はそのことに、心から感謝した。

※70以上で追加イベント <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/01(火) 21:23:03.76 ID:m91+/LEw0<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/01(火) 21:47:58.53 ID:QKVXf9DaO<> 「兵さん、混んでいるのに長居してすみませんでした」

ハハッと兵さんは笑う。時刻は16時近くになっている。「限界が来た」という亜衣は、目がとろんとして眠そうだ。
店は混雑のピークを過ぎたらしく、数人の客がいるだけになっている。

「構わんよ。問題は解決したか?」

「ええ、おかげさまで。今度は3人で、教室の方に来ます」

「おう。来月だな」

俺は一礼して、駐車場に向かおうとした。……その時。


ジジジジジッ…………


「っ!?」


脳内に、再びノイズが走る。……何だこれは。
と同時に、強烈な違和感を覚えた。

「仁さん、どうしたの?」

「いや……これはっ……!?」


白田兵次郎は、「前の週」でも「カフェ・ドゥ・ポワロ」を開いていた。
しかし、今思い出した。現状と違う点が、1つだけある。



「俺の記憶」にあるカフェ・ドゥ・ポワロには、こんな個室はなかった。



<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/01(火) 21:59:14.79 ID:QKVXf9DaO<> 未来が変わったからか?それとも、まさか。

20年後の白田兵次郎は、もう老齢だ。青山博士の件に関わっているとも思えない。
だが、もし万一彼も「覚醒者」としたら。

俺は踵を返した。

「えっ、仁さん忘れ物?」

「……のようなものです。亜衣と一緒に、先に車に行っててください。すぐに戻ります。多分」

兵さんはカウンターでコーヒーを淹れていた。サイフォンを器用に操っている。

「ん、どうした?」

俺は一瞬止まった。本当のことをストレートに言っても、白を切られるのが落ちだろう。
肚の底を読ませずに容疑者をはめるのは、兵さんの得意技だ。
……とすれば。

「いや、忘れ物です。ちょっといいですか」

「ん?構わんが」

俺は個室へと向かう。もし彼が覚醒者なら。そして、それが……警察に仇なす存在なら。
そこには、あるものがあるはずだ。

※75以上で発見 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/01(火) 22:01:17.70 ID:710RUUiDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/01(火) 22:12:06.78 ID:QKVXf9DaO<> 盗聴器があるならば、コンセント周り、観葉植物近辺、花瓶。手早くそれらを確認する。

……しかし、どこにも異常はない。取り越し苦労だったか。
俺は首を振った。どうにも考え過ぎている。

兵さんは変わらずカウンターにいる。

「失礼しました。どうも勘違いだったみたいです」

「そうか。まあ、どこかで見付かるだろ」

一礼して、店外に出る。個室があったのは、未来が変わったからか。
……それでも引っかかるものは残る。

昔の兵さんの教えだ。「引っかかるものがあれば、その裏には何かが必ずある」と。
彼が「覚醒者」である可能性は、切らない方がよさそうだ。

※50以下でコナンパートへ移行 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/01(火) 22:18:24.71 ID:VlJwKz8DO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/01(火) 22:21:19.60 ID:QKVXf9DaO<> 今日はここまで。

明日は仁のデート編延長戦です。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/02(水) 00:08:11.52 ID:onYERUwDO<> 乙です <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/02(水) 13:33:37.90 ID:BS/FkQ3bO<> #

「亜衣、すっかり熟睡してましたね」

「そうだね。やっぱり、疲れるのかな」

亜衣を美和の実家に送り、俺たちは帰路についた。実家にそのまま泊まらないのかと美和に訊いたが、「今日はいいかな」ということだった。

車は花園インターに入る。美和の自宅まで彼女を送って、今日は終わりだ。
羽根を伸ばすつもりが、こんな重たい日になるとは。ただ、いつかは話さねばならないことでもあった。先伸ばしにするよりは良かったのだろう。

車内にはQUEENのUNDER PRESSUREが流れている。俺も美和も、何を話せばいいのか分からなかった。

「あのさ……ちょっといい?」

沈黙を破ったのは美和だった。

「どうしました」

「言いたいことが色々あって、何から話せばいいか分からないんだけど……仁さんや亜衣みたいな『覚醒者』は、結構いるものなのかな」

「俺の知っている限り、亜衣以外にも何人か。バッドエンド・ブレイカーもそうらしいです。それと、あなたが死ぬはずの『熊谷大虐殺』の主犯格もその可能性が高いと」

「そっか……。ちょっと思ったんだけど。皆が未来を変えたがってるのかな」

「……多分。その向かう方向は、随分違いますが」

俺はヤス……もとい、古畑のことを思い出していた。あいつは、本当はどういう考えなのだろうか。
そして、佐倉。奴は未来を変えようとしているのか、あるいは元の歴史を再現しようとしているのか。それはまだ、分からないことだった。

「仁さんは、どうするつもりなの」

「俺は……警察です。法を犯した者を取り締まる。その積み重ねによってしか、この世界は保たれませんから。
結果として未来が変わることはあっても、未来そのものをどうこうすることはないです。自分のやるべきことを、するだけですよ」

「フフッ」と美和が笑った。

「仁さんらしいね。本当、亡くなった旦那に似てるなあ」

そう言えば、美和の亡くなった夫の話はあまりしてこなかった。男のつまらない嫉妬からかもしれないが。
「本来の歴史」でも、意識的にその話は避けてきた気がする。

「どんな人だったんですか」

「馬鹿真面目でね、仕事ばっかりだったけど優しい人だったなあ。……いい父親になれたと思うけど」

美和が寂しそうに窓の外を見た。

「……ねえ」

※コンマ下

01〜45 私の家に来る?
46〜85 今日、泊まっていい?
86〜00 ちょっと寄りたいとこがあるんだけど <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/02(水) 13:45:01.22 ID:onYERUwDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/02(水) 22:00:36.47 ID:BS/FkQ3bO<> 「これから、私の家に来る?」

彼女が俺の方を向いた。薄曇りから除いた夕日に、横顔が照らされている。
俺は思わず、それに見とれそうになった。

「いいんですか」

「……ええ。見せたいものもあるし」

車は川越インターに差し掛かる。車内にはSOMEBODY TO LOVEが流れていた。

#

美和の家は、大宮駅から徒歩5分ほどのマンションだ。
家賃は決して安くはなさそうだが、彼女の給料は俺の倍ぐらいはあるはずだからこれでも大丈夫なのだろう。

「ただいまっと」

「……お邪魔します」

部屋は1LDKだが、かなりリビングは広めだ。うっすらと、何かの香料の香りがする。
年頃の女性の部屋に上がり込むのは、仕事以外では相当久し振りだ。年甲斐もなく心拍数が高まる。

「前の周」では、美和と付き合いだしたのはもう少し先のことだ。確か、亜衣を紹介されたすぐ後に、あの事件が起きたはずだ。
だから、美和の部屋には「前の周」含めて上がったことがない。こういう辺りも、未来が少し変わっている影響かもしれない。

「仁さんはちょっと座ってて。お茶の準備してくる。お酒といいたいけど、車運転してるもんね」

「助かります」

俺は部屋を軽く見渡した。本棚には難しそうな金融関係の本が目立つが、漫画本やファッション誌もあるようだ。
そう言えば、結構美和は漫画を読むのだったな。俺はそんなに詳しくないが、その記憶はうっすらとあった。

美和がお盆にコーヒーとお茶菓子を乗せてくる。

「お待たせ。って、本棚見てた?……ちょっと引いちゃったかな」

「いえ、漫画は俺も読みますから。『三月のライオン』、いいですよね」

俺は「未来の記憶」を引っ張り出してみた。美和の顔がぱあっと明るくなる。

「だよね!なんか、繊細な心理描写がいいんだよね。『はちみつとクローバー』もそうだったけど」

「ですね。そうそう、スピンオフの『灼熱の時代』もいいですよ。テイストは大分違いますが」

「そんなのあるんだ。今度買ってみるね」

俺はコーヒーを飲んだ。これはモカ・マタリか。丁寧に淹れてある。

「旨いですね。さすが」

「あはは、褒めても何も出ないよ。見せたいものというのは、これ」

彼女が出したのは、一枚の写真だった。美和と、体格のがっしりとした男が笑顔でピースサインをしている。

※50以上で見覚えがある


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/02(水) 22:14:10.71 ID:kZj1psB20<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/02(水) 23:00:35.27 ID:BS/FkQ3bO<> 「……彼は」

「死んじゃった旦那。木崎小五郎っていうの。仁さんにも、少し知っておいてほしくて」


木崎……この顔には見覚えがある。ラガーマンのようながっしりとした身体と無精髭。
11年前の池袋での無差別通り魔事件。そこで遺族対応をした警視庁の警官に、彼によく似た男がいた気がする。
俺の妹百合は、その事件で18年の生涯を閉じたのだった。


その警官と、俺の記憶の中の男が同一人物かは知らない。ただ、随分情に脆い男だった気はする。
当時大学4年だった取り乱している俺と、一緒になって泣いたのはあの男だけだった。それにどれだけ救われたか。
犯人は責任能力なしということで無罪になってしまったが、警察が遺族と泣いてくれる存在と知ったことは、俺にとってとても大きかった。

もし同一人物なら、随分因果なものだ。
当時大手メーカーに内定が決まっていた俺が一転、警官への道を志した理由は……百合の死と、あの男の涙だったのだから。


「……どうしたの?じっと写真見ているけど」

「いや……少し、知り合い……というほどでもないですけど見覚えがある顔だったもので。
ご主人、情に厚い人だったんじゃないかなと」

「……えっ。た、確かにそうだったけど……小五郎君と、一緒に仕事したことが?」

「いえ。ただ、俺の人生を変えた人によく似てたんで。それで」

俺は百合の事件と警官の話をした。美和の顔は驚きへと変わり、そして涙目になる。

「そう……それ、やっぱり小五郎君だと思う。警視庁に最初配属されてたし。彼が仁さんと引き合わせてくれたのかな」

「かもしれませんね」

美和が木崎の昔話を始めた。彼は美和の幼馴染で、近所のお兄さん的な存在だったこと。
憧れは恋愛感情へと変わり、色々あった末に結ばれたこと。そして……亜衣の出産直前に殉死したこと。
彼が死んだ時の事件には聞き覚えがあった。大誠会絡みの強制捜査で、情報提供者が裏切り銃弾を至近距離から受けた……と聞いている。

美和が話し終わると、俺は大きく息をついた。

「……やはり、立派な男だったんですね。生きていれば、俺と同じ年ですか」

「……だね。ちょっと前まで、あの時小五郎君を無理矢理にでも引き留めてたらと思うことがあったの。
そうしてたら、彼は死なずに済んだのかなって。でも、後悔してもしょうがないと、最近思えるようになったの。
それは亜衣と、あなたのおかげ。やっと、本当の意味で前を向いて歩けるようになったのかもしれない」

コーヒーが入ったマグカップを、美和が少し揺らした。
俺もそうかもしれない。百合の死を、彼女に会ったことで10年以上かけてやっと消化できたのだろう。


俺はその時、気付いた。
この状況で、美和を失ったなら……多分、俺のどこかは壊れてしまうだろう、と。


「デッドマン」――「死人」が俺の未来での異名であるらしい。
俺の心は、「熊谷大虐殺」で死んでしまったのだろう。だから、苛烈な捜査を行うようになっていったのだろう。
今の俺の心は、幸いまだ死んではいない。そのためには……あの事件は起こしてはいけないし、美和を死なせるわけにもいかない。

<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/02(水) 23:18:51.69 ID:BS/FkQ3bO<> 「……美和さん。それは俺も同じです。妹の死の傷は消えませんが、やっと誰かと生きていきたいと、思うようになった」

「……えっ」

少し驚いた表情になった彼女の後ろに俺は移り、そっと後ろから抱いた。

「こんな所で言うのも何ですが……今夜、あなたを抱きたい。無性に、そんな気分になった」

愛おしさが溢れてくる。少し固くなっていた美和の身体が、ふっと柔らかくなったかと思うと、彼女が振り向いた。そして。


チュッ


唇に柔らかいものが一瞬触れる。そして、照れくさそうに美和が笑った。

「ありがと。……何か、仁さんがずっと近くに来てくれた気がして嬉しい。
凄く久し振りだから上手くできないかもしれないけど……いいかな」

「それは俺も同じですよ。……シャワー、浴びます?」

返事の代わりに、再び唇が俺に触れた。そして、今度は暖かい舌がゆっくりと挿し入れられる。俺はそれを迎え、自分のそれと絡めた。

「……んんっ……ちゅっ……っ!ぷはっ。……何か、時間がもったいないかも。しよ?」

「……分かりました。寝室は?」

「向こう。……あ、一つだけ。これから敬語禁止ね。何か、距離感じちゃうから」

俺は苦笑した。どうにも、人と距離を取る癖が抜けてないらしい。

俺は椅子に座ったままの彼女を抱きかかえる。いわゆる、お姫様抱っこの状態だ。
ふふっと、互いに笑う。そしてどちらともなく、再び唇を合わせた。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/02(水) 23:19:32.12 ID:BS/FkQ3bO<> 今日はここまで。次回からコナンパートです。その後ジョーパートになります。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/03(木) 08:00:57.64 ID:azyIpt890<> 乙乙 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/03(木) 17:28:53.23 ID:UvQ/Ah5vO<> 【6月23日】


「これ、肉ってどう縛るの?」

「適当にぐるぐる巻きでいいですよ。後は僕がやります」

コナン君がキッチンで青ネギを切りながら言った。あたしは豚バラ肉のブロックに、太めのタコ糸を巻いていく。
昨日、コナン君がチャーシューを作れると言っていたので、さっそくやってみることにしたのだ。

肉はネットスーパーで調達した。最近は家から出ずとも買い物ができる。こんなにAIスピーカーが便利とは知らなかった。

「アユさんは丼の準備を。お湯を入れて暖めとくといいですよ」

「分かった」

昨日のことがあったからか、少し会話が増えた気がする。それが少し嬉しかった。

コナン君はフライパンに油を敷き、肉に焦げ目を付け始めた。どことなく楽しげに見える。

「しかし本当に料理好きなんだねえ。どこで覚えてきたの?」

「……趣味と必然性ですよ。父さんと二人で生きていかなくちゃいけなくなったんで」

ああ、そうか。ラーメンが好きなお父さんのために、チャーシューを作るようになったんだ。
そう思うと、ちょっと胸がじんと痛んだ。

#

「あっ、これ美味しい!市販のラーメンでも、こんなに美味しくできるんだ」

コナン君が笑った。

「チャーシューのタレを混ぜると、市販のスープでもコクが出るんです。麺だけはどうしようもないですけどね」

「チャーシューも柔らかくていいね。今度また作ろうかな」

「ですね。薫製にするとか、他のバリエーションもありますよ」

「ふふっ、楽しみ」

あたしは麺を啜った。昨日のも美味しかったけど、今日の方が良かった気がする。

※80以下で通常ルート <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/03(木) 17:30:26.74 ID:vSmxm0EX0<> ん <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/03(木) 22:40:00.45 ID:UvQ/Ah5vO<> #

コナン君は、かなり長い昼寝をする。あたしの前にいる時の彼は、常に「29歳の藤原湖南」だ。
その分、消耗は激しいらしい。「9歳の彼」が下手に出てくるとパニックになるからそうしているという。

ラーメンを食べた後、彼はすぐに眠りについた。3時間ぐらいしてからだろうか。
スマホが鳴ると、彼は飛び起きた。

「はいっ、僕です。……え?」

また真剣な表情で話している。1分ほど話すと、彼は深い息をついて電話を切った。

「誰から?また、警察内部の人?」

「ええ。僕らを疑っている男が分かりました。ちょっと緊急で会議をやります」

「えっ?随分早いね」

確か、覚醒者ってのが埼玉県警にいるかもしれないという話が出たのはつい数日前だ。

「彼も幸運だったと言ってます。それだけじゃなく、他の覚醒者の存在も分かったと」

それにしては、コナン君の表情があまり冴えない。

※コンマ下

01〜70 仁の名前は知っている
71〜95 仁と面識がある
96〜00 仁とはかなり近い関係だった <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/03(木) 22:41:17.81 ID:VY6zk1FDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/03(木) 22:58:57.78 ID:UvQ/Ah5vO<> 「……どうしたの?」

「いや、彼は知っているので。何回か会ったこともある。
敵に回すと極めて厄介です。獰猛で、食らいついたら話さない。手段も選ばない。……少なくとも20年後は」

あたしの背中に冷たいものが走った。そんな刑事がいるんだ。

「それって……マズいんじゃ」

「味方に引き込めればこれ以上心強い男もいないですが。
ただ、そう簡単に転ぶ相手とも思えない。向こうが僕を見て反応しないことを祈りますが」

コナン君が珍しく落ち着かない様子だ。どんな男なんだろう?

#

【6月23日、18時00分】


「皆さん、大丈夫ですか」

コナン君がタブレット越しに呼びかける。興也さんと由依ちゃん、そして源君が出てくる。

『オーケー。網笠『総理』は欠席ね』

「彼も多忙ですからね。メッセージで連絡だけはしています。
あなたたちの所にも、『おやっさん』からの連絡が来てるはずです」

『うん、来てる。さすがだね。しかし土曜の今日に来るとは思わなかった』

由依ちゃんが険しい表情で言う。興也さんが頷いた。

『彼が昨日『仕掛けた』と言ってましたからね。思いの外餌に食いつくのが早かった、ということでしょうか』

『しかし驚きましたね。あの『デッドマン』とは……。まあ、彼は確かに『グラウンド・ゼロ』にいても不思議じゃないですが』

「デッドマン?」

あたしの問いにコナン君がこちらを見た。

「『死人のような眼をしている』というのと、『ゾンビのようにしぶとい』という点、
そして何より『殺人事件に異常な執着を示す』ことから付けられた異名です。
元埼玉県警捜査一課刑事、毛利仁。今は当然現役ですけど」

『そうそう。少しでも隙を見せたら食いちぎられるよ。
『おやっさん』が言うには、覚醒レベル2らしいけど。……さらに注目すべきは、他に覚醒者がいるという点だね。それも複数』

『複数?由依、それって本当か?』

由依ちゃんがやれやれと首を振った。

『あんた、ほんっとに人の話聞いてないのね。一人の覚醒者は毛利仁の恋人の娘。『亜衣』って言われてた。
どうも、20年後は警察やってるみたいね。この子のことは、私は知らない』

※90以上なら亜衣のことも知っている <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/03(木) 23:01:08.01 ID:RSw+rVvDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/03(木) 23:19:58.46 ID:UvQ/Ah5vO<> 「僕も彼女は初耳です。正直、どういう人物かは不明ですが……。
多分、僕より年下です。『表に出れる時間が2時間』と言ってましたから」

『じゃあ警戒しなくていいかな?』

『いや、恐らく幼い女の子でしょう。とすると、一番警戒しえない存在でもある。
気が付いたら何かされているという可能性も否定できない。要注意です』

興也さんが静かに否定する。

『……むしろ、もう一人の覚醒者が問題です。彼も確信を持てているわけではなさそうだった。
ただ、こちらはフリーにしているとマズい気がする。正体が分からないですから」

「正体不明、なの?」

あたしの問いに、コナン君がふうと息を吐いた。

「彼は『もう一人いるかもしれない』程度の話しぶりでしたからね。
最悪、毛利仁を中心とした別の覚醒者のグループがいるのかもしれない。警戒すべき相手が、また増えたということです。
……ただ、逆に言えば相手が誰か分かったのは大きい。彼の顔は分かります。その分、立ち回りやすくなった。
それに、やるべきことも変わらない。明日、多分城が動きます。その動向から、佐倉の居所を突き止める。
そうなれば、今回のミッションの達成も視野に入ってくる」

タブレット越しに、全員が同意した。

「とりあえず、明日の予定です。朝、城を迎えに来る車のナンバーだけ確認する。
直接尾行は、先週みたいに振り切られそうだ。だから、Nシステムで大雑把な滞在場所まで押さえる。ここまでいいですね」

『了解。今までの行動パターンからして、佐倉は都内の高級ホテルを転々としているわ。
だから、目星をつけて興也さんと源で洗いざらいチェックする。滞在ホテルが分かれば、後はいくらでもやりようがある』

「そうです。警察より先に佐倉の居場所を特定でき、かつ彼らがまだ動いてない場合は、僕も満を持して動きます。
勿論、城が警察と接触したことで、彼が危険な目に遭う可能性も否定しない。
その場合は、彼の『利用』も含め臨機応変に対応しましょう。よろしいですか」

『了解』

『大丈夫です』

『分かりました』

コナン君がゆっくりと首を縦に振った。

「では、作戦開始と行きましょう。とにかく、深追いせず、かつ臨機応変に。頑張りましょう」
<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/03(木) 23:20:57.89 ID:UvQ/Ah5vO<> 明日はジョーパートです。ただ、視点がちょくちょく切り替わるかもしれません。
できるだけ分かりやすく動かすつもりですが、よろしくお願いします。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/04(金) 00:20:20.68 ID:QdhxKqFe0<> 乙 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/04(金) 09:43:45.07 ID:lPgcq2iMO<> 【6月24日、6時16分】


酷く寝苦しい夜だった。寝ようとすると、心拍数が異常に上がった。おかげで、ほぼ一睡もしていない。

今日は翔一と会う日だ。どう立ち回ればいいのか、僕にはまるで分からなかった。

#

毛利刑事と会ってからの数日間は、とりあえず無難に過ぎていった。
矢向さんの目が心なしか厳しくなっていた気はしたけど、表面上はこれまで通りの生活を送れていた。

ただ、心の中はぐちゃぐちゃだった。アイスキャンディの正体。翔一の意図。そして……僕に残された時間は、もうあまりないという宣告。
バッドエンド・ブレイカーが僕を襲ってきたとしても、身を守る術はもうない。何を信じていいか、よく分からなくなっていた。

学校の小テストも、まるで解答が浮かばなかった。こんなはずじゃないのに。
それが僕の中の混乱によるものなのか、それともアイスキャンディの副作用が表れ始めたのか、僕には分からなかった。

ただ、金曜日は家に帰って、泣いた。ただひたすら、泣いた。
昨日も部屋に閉じこもり、勉強と称して塞ぎ込んでいた。何かを手につける、気力は微塵もなかった。

※85以上で追加イベント <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/04(金) 09:58:01.80 ID:de5IBYoC0<> ほい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/04(金) 12:50:11.76 ID:lMixMAVeO<> ※母親の干渉なし

母親は相変わらず何も言ってこなかった。そもそも家にすらいなかったけど。
ただ、こういう時不干渉というのは、かえってありがたかった。今は、ただ一人になりたかったから。


そして、時間がたつにつれ湧いてきたのは……恐怖。


翔一は、まず僕を疑うだろう。警察に何か吹き込まれてはいないかと。
その時、平静でいる自信は、僕にはない。先週までのようにできるわけがない。矢向さんらを使って、僕を痛めつけるかもしれない。
それだけならまだいい。ヤクに手を出してこない保証はない。無関係の彼女に累が及ぶのは、何としても避けたかった。

眠気は吹き飛び、焦りと恐怖と混乱と、そして絶望が僕を苛む。
しかし、逃げ出せない。そんなことができないのも、また明らかだった。


僕は、歪む視界の中、机の引き出しを見る。鍵がかけられたそこには、翔一からもらったアイスキャンディが何錠かある。
あれを飲めば、少しはこの感情も収まるだろうか。しかし、それは僕の命を削るだろう。

僕は……

※3票先取

1 飲む
2 飲まない

※飲む場合は城が覚悟を決めます。今後の判定に大幅なプラスが付きますが、副作用の進行も早まります。
飲まない場合は副作用の進行はありません。ただ、判定にペナルティが付く可能性があります。
<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/04(金) 13:16:30.77 ID:lMixMAVeO<> 再開は夜に少しの予定です。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/04(金) 17:39:22.20 ID:9dtdA9Tm0<> 2 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/04(金) 18:07:29.14 ID:zr7X5+GAO<> 上げます。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/04(金) 20:57:28.87 ID:zr7X5+GAO<> もう一度上げます。2130前後から再開可能ですが、決まるまで待ちます。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/04(金) 21:47:14.25 ID:zr7X5+GAO<> とりあえず0000までをデッドラインとします。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/04(金) 21:48:40.76 ID:/uIHiM+DO<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/04(金) 21:49:43.63 ID:DRjjfAKDO<> 1 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/05(土) 01:47:32.18 ID:Iy5kuTBZO<> 2で決定とします。続きは恐らく明日。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/05(土) 23:15:11.59 ID:u3lSHmGbO<> 僕は、引き出しから目を背けた。……飲めばその場は乗り切れるかもしれない。でも、僕の命は……確実に削られる。

毛利刑事は、あと1年と言った。認知症が発症するのは、多分そのずっと前だろう。
つまり、僕が僕でいられるのは、もう本当に長くはない。

そのことが、たまらなく怖い。今はまだいい。でも明日は?明後日は?
ひょっとしたら、もう発症しているのかもしれない。


……僕の脳裏に、ヤクの笑顔が浮かんだ。


ごめん。僕は、君よりずっと早く逝く。ならば……せめて、君だけはちゃんと守らせてくれ。2年前と、同じように。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/05(土) 23:30:25.78 ID:u3lSHmGbO<> 僕は、急いで顔を洗った。目に隈ができてて、酷い顔だ。
母親の化粧道具が洗面所にあったのを思い出し、先週「サクラ」に教わったのと同じやり方でメイクしていく。
適当にやっただけだけど、それでも大分ましにはなった。……後は、何とかするしかない。

冷蔵庫からウイダーを取り出すと、一気にそれを胃に流し込んだ。時間は7時31分。ベッドでうなされているうちに、結構時間がたっていたらしい。
矢向さんが来るのは8時頃だ。僕は身支度を整える。

……覚悟を決めなきゃいけない。恐怖心に打ち克たなきゃいけない。
そんな思いが、僕の中をグルグルまわっていた。

#

「どうぞ」

矢向さんはいつも通り恭しく後部座席のドアを開けた。僕は小さく頷くと、そこに滑り込む。

エンジンの重く鈍い音が響いた。

※コンマ下
01〜80 通常ルート
81〜95 ……しつこい鼠だ
96〜00 矢向与一。任意同行願う <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/05(土) 23:32:14.37 ID:CAiNMbn/0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/05(土) 23:41:10.38 ID:u3lSHmGbO<> 先週と違い、追ってくる奴はいないようだった。僕はかすかに安堵する。
ミラー越しに、矢向さんが僕を見た。

「……よく眠れましたかな」

僕は心臓を握られた気分になった。あの程度のメイクでは、やはり隠し通せなかったのだ。
でも、嘘が明らかであっても、動揺は見せられない。

「い……え、ええ。大丈夫です」

「……そうですか。それならそれで」

矢向さんは黙った。車の向かう先に何が待つのか。……何事もなければいいんだけど。

※コンマ下、車の向かう先は……

01〜25 軽井沢方面
26〜75 東京、赤坂方面
76〜00 上+α

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/05(土) 23:42:30.56 ID:ecOdik+DO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/05(土) 23:59:18.38 ID:u3lSHmGbO<> 【6月24日、8時42分】


着いた先は赤坂だった。上に丸い展望台のようなものがあるビルに、車は入っていく。ここもホテルなんだろうか。
駐車場を出ると、重厚な設えのエレベーターがあった。上層階に昇ると、見るからに特別そうな赤い絨毯が廊下に敷かれていた。

そのうちの一室で、矢向さんが立ち止まる。

「城様がおいでに」

その部屋で僕が目にしたものは。

※重要コンマにつきコンマ下3

01〜05 翔一と、その横にいる全裸の女性……いや、あれは……
06〜20 翔一、そして……
21〜40 翔一と……「ジョー?」
41〜65 翔一と、鶴岡だ
65〜90 翔一がコーヒーを飲んでいる
91〜00 「サクラ」が待っていた

※99、00は特殊ルートへ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/06(日) 00:01:23.37 ID:quJAXyCR0<> ksk <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/06(日) 00:07:45.98 ID:1kwR84lV0<> あ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/06(日) 00:21:35.33 ID:Sf6hYDDDO<> 高コンマ来て <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/06(日) 09:16:07.23 ID:SXifGXd3O<> そこで僕が目にしたものは……ソファに悠然と座る翔一と、その向かいで震えている薄褐色の少女だった。

それを見た瞬間、僕の背中から何かが抜け落ちたような強烈な虚脱感を覚えた。

……まさかっ……!!

「ジョー!!」

ヤクの叫び声で、何とか僕の意識は現実に戻った。でも、頭はぐちゃぐちゃだ。視界が急速に歪む。

「……ヤク……どうして、ここに……」

「この人に変な薬をかがさ……むぐっ!!」

屈強な男の人――唐川さんだったか――が、ヤクの後ろから彼女の口を塞いだ。
翔一は愉快そうに笑っている。

「唐川さん、勢い余って殺さないように。彼女が今日のゲストなんだから。
それと、薬師丸さん、だったかな。大人しくしていれば君に悪いようにはしない。後でとても気持ちよくなれるから。
……さて、と」

翔一が口の端を歪めて、僕を見た。

「警察で事情聴取を受けたそうだね。……何を話した」

「……何も話してないっ!!ただ……僕らを追っているかもしれない二人組の似顔絵を見せられただけだっ!!
だからすぐにヤクを離せっ!!すぐにだっ!!!」

「ほう」と、翔一が微かに驚きの表情を見せた。

「アゲハの父親が死んで多少は動きがあると思ったが、バッドエンド・ブレイカーの正体にまで迫れるとは。……驚いたよ。
……で、どんな顔だった」

コーヒーを一口飲み、彼が身を乗り出してくる。

「そんなことよりヤクを……」

「ぐぐっ……!」

凄く苦しそうなヤクの呻き声が聞こえた。唐川さんが、力を強めたんだ。
翔一がカラカラと笑う。

「忘れてやしないか?君の大切で大切で仕方がない幼馴染みの生殺与奪の権利は、僕が握っている。君は僕に従うしかない。賢明な君なら、分かるだろう?」

僕は絶望でその場に崩れ落ちそうになった。ヤクを助ける方法は……今の僕には、ない。
この後のことを考えると、さらに無力感が増してきた。僕はどうなってもいい。でも……ヤクが汚されるのは……耐えがたい。


それでも、僕に選択肢はなかった。涙で視界が歪む。


「……子供と、若い女の人だっ。女の人の顔は……そんなにちゃんとは覚えてない……。でも、子供は分かる。
……名探偵コナンの、コナンを少し大きくしたような、そんな感じだっ……」

※コンマ下
01〜65 子供?
66〜85 コナン?
86〜00 翔一の顔が険しくなった <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/06(日) 10:06:22.78 ID:VP2Mwxpb0<> えい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/06(日) 13:11:35.31 ID:PGbUV137O<> 「コナン?」

翔一の表情が、一瞬止まった。

「どうしました、翔一様」

「いや……まさかね。……でも、あり得なくはないのか」

しばし、翔一が口をつぐんだ。

「……ここに長居するのは危険かもしれない。今日でここを引き払おう。思っているより、相手は厄介な気がしてきた」

「と言いますと?」

「バッドエンド・ブレイカーがプロだとは思っていた。ただ、僕の想像通りならかなり強敵だ。他の皆が殺されたのも当然と言える。
ここを突き止められるのも時間の問題だろう。とりあえず都内は危険だ。人気の少ない所に移ろう」

「……かしこまりました」

矢向さんが深く一礼した。翔一が僕の方を向いて笑う。

「……警察に僕を売ったかと思ったが、いい仕事をしたみたいじゃないか。とても、とても参考になる情報だったよ。
……まあ、それでも君が裏切らないよう牽制はしなきゃいけないが。唐川さん、あれを」

唐川さんがポケットから銀色の包みを取り出した。……まさかっ!!

「待てっ!!それは……それだけはっ……!!!」

「へぇ」と翔一が声を出した。ヤクは口を塞がれたままもがいている。

「もちろんアイスキャンディだよ。これを薬師丸さんに飲んでもらう。その素晴らしさを実感できるはずだ。
何分こっちも駒が減ってきちゃったしね。和人はお兄さんの海外遠征を口実に顔も出しゃしない。まあ、近いうちに彼を『仕付けて』やらないといけないけど」

「だからヤクを巻き込むのは、やめてくれっ!!汚れるのは僕だけで……」

ふふん、と翔一が嘲笑した。

「今更戻れるとでも?まあ君にも後で飲んでもらうよ。最高の快楽に浸れば、君も彼女も考えが変わる……」

彼が言葉を止めた。

※コンマ下
75以下で通常ルート <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/06(日) 13:55:14.85 ID:Sf6hYDDDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/06(日) 17:36:13.18 ID:2NeMg7nrO<> 一瞬の間に、僕は心底恐怖した。僕がアイスキャンディの正体を知っていることを悟られたのなら……ただじゃ済まない。

しかし、翔一はすぐに笑顔を取り戻した。

「……まあ、いいや。じゃあ唐川さん、よろしく頼むね。ジョーには特別な趣向を用意してあるから、薬を飲んだ上で向こうの部屋に」

ぽい、と僕に錠剤が放り投げられた。これを飲まないという選択肢は……多分ない。
ただ、最悪の事態だけは避けられた。毛利刑事との会話の内容は、決して吐けない。

問題はヤクだ。このままだと、アイスキャンディを無理矢理にでも飲まされる。そうなると……良くて寿命が大幅に縮んでしまう。
翔一のことだ。もっと厳しいことにもなるだろう。彼はヤクを「駒」として使うつもりだ。


僕のために、彼女の人生が台無しになっていいはずがない。


僕は意を決してアイスキャンディを舐めた。不自然な甘さと共に、五感が急速に鋭敏になるのを感じる。
それと共に感じたのは、強い喪失感。僕の命が、また削られた。でも、今はそれどころじゃない。

ヤクは唐川さんの腕の中で、ぐったりしかけていた。息はある。ただ、抵抗する力はなさそうだ。
唐川さんが無表情に錠剤の封を切った。……猶予はない。

※50以上でイベント発生、90以上なら特殊イベント、50未満なら安価選択へ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/06(日) 17:51:18.87 ID:wAGXMs+DO<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/06(日) 18:22:32.45 ID:2NeMg7nrO<> 「……唐川さん、ちょっと」

僕は涙を拭って、彼を見た。瞬間、刺さるような殺気が僕の前後から浴びせられた。

「……何だ」

「ヤクへのアイスキャンディの投与、待ってもらえますか。僕が自分でやります」

「何故だ」

「……ヤクはパニック状態です。少しでも落ち着かせた方が、飲ませやすいですし。何より効き目が出るんじゃないかと」

唐川さんがじっと僕を見た。これは賭けだ。ほんの少ししか時間は稼げない。ただ、考える時間はできる。それだけでも、相当大きい。

「クロックアップ」。アイスキャンディの効果の一つだ。いや、これがむしろ本当の効果なのかもしれない。
あれは五感を鋭敏にするだけではない。短時間で超高速での思考を可能にする。
本来十番中になんて入れるはずがない和人が、あそこでトップというのはこの効果によるものだった。
わずかな時間で常人の10倍、いやそれ以上の思考を展開できる。

問題は、その時間を唐川さんがくれるかどうかだ。

「……いいだろう。必ず飲ませろ」

僕は頷いた。再びアイスキャンディが投げられる。

「ゲホッゲホッ!!ジョ、ジョー……!?」

涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で、ヤクが僕を見た。ゆっくり近付き、彼女の肩を抱く。

「……ごめん。こんな目に遭わせて。少し、待ってくれ」

「……え」

視線を上げる。唐川さんは無表情のまま、僕を見下ろしていた。矢向さんも同じだ。

「……説得する時間を下さい。3……いや、2分」

「いいだろう」

※コンマ下70以上で洗面所へ退避、未満ならその場で行動
(洗面所へ退避した場合、この後の選択の幅が広がります)
※ゾロ目か90以上で特殊イベント開始 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/06(日) 18:24:41.71 ID:qiLSdXp80<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/06(日) 18:37:32.79 ID:2NeMg7nrO<> 僕はヤクの腕を引いた。洗面所なら、ある程度自由に話ができる。
呼び止められると思ったが、二人は止めなかった。……まだツキはある。

広めの洗面所のドアを閉め、鍵をかけた。

「ジョー!助けてよ……!」

「静かに」

指を唇に当てる。ゴクリ、とヤクが息を飲んだのが分かった。

「君にこの件には巻き込ませない。薬も飲ませない。こいつは、強力な麻薬で、毒薬だ。飲めば良くて寿命が大幅に縮む」

「……え、だってジョーも飲んだ……」

「僕にはどのみち未来がないからいい。ただ、君だけは守る。それが僕の誓いだ。
詳しいことは、ここを脱出できたらゆっくり話す。まず、これからどうするかだ」


さあ考えろ。考えるんだ、城隆一郎。


思考を全力で回転させる。時間が止まったかのような錯覚があった。




<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/06(日) 18:51:33.43 ID:2NeMg7nrO<> まず、ここから普通に脱出するのはまず無理だ。僕がアイスキャンディを飲んだとはいえ、矢向さんと唐川さん二人を相手に正攻法で逃げるのは不可能といっていい。
まして、ヤクがいる。二人一緒に逃げるのは、諦めた方がよさそうだった。

自分が犠牲になるか。命を捨てるなら、ヤクだけは何とか逃がせるかもしれない。
しかし、それが正しいのかどうかは僕には分からない。残り少ない命だけど、まだ生きていたかった。

なら、奇策を打つか?洗面所の鍵はかけている。ここに立てこもるのは、一つの手だ。
正面からは戦えない。ただ、洗面所の側にはシャワーがある。こいつの温度を最大にすれば、怯ませるくらいは可能だ。
もちろん、その後勝てる保証はない。ただ、この場所に混乱を起こすことはできる。……僕がどうなるかは、やっぱり難しいのだけど。

あるいは、飲ませたふりをして乗り切る手はある。アイスキャンディの廃棄は可能だ。途中までヤクには演技をしてもらい、隙を見て逃げ出す。
ただ、演技がバレたら……全ては終わる。

どれも一長一短ある。もっといい方法はないのか?

※50以上で特殊イベントへ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/06(日) 18:56:32.79 ID:wAGXMs+DO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/06(日) 20:32:44.28 ID:2NeMg7nrO<>

……チリリリリリ……!!



遠くで何かが鳴る音がした。……これは?


「ホテル地下駐車場で火災が発生しました。宿泊客の皆さんは、念のためホテル外かホテル庭園へと避難お願いします。繰り返します、ホテル地下駐車場で……」

今度はハッキリと、部屋にホテルからの放送が聞こえた。これはっ!?

「ヤク、逃げるチャンスかもしれない。僕の指示に従って。大丈夫、何とかする」

「……分かった」

僕の袖を握りながら、ヤクが小さく首を縦に振った。
洗面所から出ると、怪訝そうな顔で翔一が待っていた。

「……火事、だそうだ。一度室外に退避しよう。話はそれからだ」

「分かった。……痛っ!!」

僕とヤクは、手首を唐川さん、そして矢向さんにガッシリ握られた。手首が砕けるような痛みを感じる。
アイスキャンディの効果で、痛みも倍増しているんだ。……これは辛い。

非常階段には宿泊客が殺到していた。外国人、品の良さそうな老婦人、少しガラの悪そうな男の人……酷い混雑の中を、僕らはゆっくり下っていく。
火の熱はもちろん、煙も特に感じない。本当に火事があったんだろうか。

「ジョー……怖いよ」

「大丈夫。僕が守るから」

小声で、震えているヤクに呟く。やっと1階だ。ここから外に出るらしい。
入口前には、何台もの消防車とパトカーが既に来ていた。野次馬もたくさん集まっている。

※コンマ下
01〜20 何もなし
21〜40 一人の男が、にやけながら野次馬の中から歩いてきた
41〜85 一人の青年がゆっくりと野次馬の中から歩いてきた
86〜00 よう、いつかの坊主 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/06(日) 20:36:23.73 ID:lVP8Y0puO<> ソイヤ!ソイヤ! <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/06(日) 20:54:02.93 ID:2NeMg7nrO<> その時だ。

「すみません、警察です。通してください」

一人の若い男の人が、野次馬をかき分けて現れた。何かを探しているようだ。

そして、僕と目が合うと……歩くペースを早めた!?

「ジョー!逃げろっ!!」

翔一の声が響く。後退した翔一を守るように、矢向さんと唐川さんが壁のように立ちはだかった。

手首を持っていた唐川さんの手が振りほどかれる。今だっ!!

「ヤクっ!!走るぞっ!!」

僕はヤクの手を握り、野次馬の方へと走り出した!唐川さんが捕まえようとしたのと、男の人が何かを取り出したのがほぼ同時だった。


ビシュッ


「うぐおおおおお!!」

唐川さんの叫び声が聞こえる。僕は振り返らない。ただひたすら、手に感じるヤクの掌の感触を忘れないように走った。
驚く野次馬と警官の間を、僕は無理矢理にすり抜ける。アイスキャンディのおかげで、走力も腕力も増している。大丈夫。このまま行けば、大丈夫だ。

赤坂見附に向かう橋の入口まで、なんとか辿り着いた。はあはあと息をつき、僕は振り返る。

「ヤク、大丈夫?」

「うん、何とか……」

※コンマ下50以上で? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/06(日) 20:56:52.45 ID:wAGXMs+DO<> さて <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/06(日) 21:17:12.82 ID:2NeMg7nrO<> ※コナンたちは現れず

追ってくる人は、誰もいない。……逃げ切れたみたいだ。
心臓が、破裂しそうなほど早く脈打っている。これは多分、全速力で走ったからだけじゃない。

「はあ、はあ……よかった。本当に、よかった……」

僕はその場に泣きながら崩れ落ちた。ホテルから聞こえる消防車とタクシーのサイレンが、どこかとても心安らぐものに聞こえたんだ。

道行く人が、好奇の目で僕たちをチラリと見る。……いつまでも泣いていられない。

「……行こう。うちに、帰ろう」

「……うん」

お金なら、多少はある。赤坂見附から新座なら、二人でも問題なく帰れるだろう。
僕はスマホを取り出し、メッセージを打った。宛先は、毛利刑事だ。

#

ホテルニューオータニで、ヤクが拉致されました。自力で僕と脱出に成功。詳しい話をしたいので、連絡下さい

#

2分ほどして、返信が来た。

#

了解した。最寄りは和光市駅だな。迎えに行く

# <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/06(日) 21:18:13.37 ID:2NeMg7nrO<> ※視点が切り替わります。2票先取

1 コナンパート
2 仁パート <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/06(日) 21:19:26.59 ID:wAGXMs+DO<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/06(日) 21:24:34.92 ID:m5IUSRkr0<> 2 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/06(日) 22:03:01.93 ID:2NeMg7nrO<> 今日はここまで。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/07(月) 09:37:54.89 ID:fmJv9w1rO<> 【6月24日、9時12分】


「んっ……」

背中の暖かな感触で、俺は目を覚ました。少し部屋に湿気を感じる。
後ろを振り向くと、美和が幸せそうな寝息を立てていた。
そっと髪を撫で、俺は身体を起こして軽く伸びをした。腰の辺りに、軽い怠さを感じる。
昨晩のことを思い返す。……3回、いや4回は射精しただろうか。お互い久しぶりだからというのもあるが、随分したものだ。
しかし、10代のガキのような激しいセックスをするには、やはり年齢が堪えているらしい。俺はそれを思い、苦笑した。

壁にかかった時計を見ると、もう9時を過ぎている。外が曇天ということもあって、時間に気付かなかったようだ。

「美和さん、起きてください。もう9時過ぎてますよ」

「ん……敬語禁止て言わなかったっけ……って本当だ!しまったなあ、お昼には熊谷行かなきゃいけないのに」

「間に合いま……じゃなかった、間に合う?」

「んっと、シャワー浴びてメイクして……まあ間に合うかな。仁さんは、今日はオフ?」

「一応……あ」

今日は城が佐倉と会う日だ。何もなければいいが、一応動ける態勢にはなっておいた方がいい、か。

「すまない、俺も昼には家に戻った方がいいかもしれない。シャワー、美和が使った後でいいから貸してくれないか?」

「ん、分かった。……スマホ鳴ってない?」

枕元のスマホがヴーヴーと震えている。そこにあったメッセージを見た瞬間、俺の気だるさは吹き飛んだ。

「……美和、ちょっと俺が先に出ることになりそうだ。シャワー、俺が先でいいか」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/07(月) 12:46:50.15 ID:UUshZFR5O<> 【6月24日、10時01分】


待ち合わせの和光市駅改札に行くと、既に城と薬師丸がいた。二人が深く頭を下げる。

「すみません、呼び出してしまって」

「構わない。人払いをした方がよさそうだな。最寄りの署に向かうか、ここだと朝霞だな」

私用のフィットに二人を乗せる。城の目の下には隈ができ、薬師丸も酷く疲れた様子だ。

「自力で脱出とは、無茶をしたな。アイスキャンディの服用は」

小さく城が首を縦に振った。

「……それは、避けられませんでした。でも、ヤクを救えただけで十分です」

「あのボディーガードは」

少しの沈黙の後、戸惑い気味に城が口を開く。

「それが……話すと少々長くなりますが」

城が説明を始めた。アイスキャンディの効果なのか、随分と落ち着いているように見える。ずっと黙ったままの薬師丸とは、大分違う。
いくつか疑問が生じたが、俺は黙って聞いていた。特に最後、唐川という男に攻撃した青年。ひどく引っ掛かる。

……ひょっとしたら、バッドエンド・ブレイカーは組織なのか?しかし、そうすると色々な疑問が氷解する。
全国各地で犯行があること。手掛かりをほぼ残していないこと。そして、今回だけ手口が違うこと。
複数犯、それも相当規律だった組織なら分からなくもない。そして、彼らも城が今日佐倉と会うことを知っていたということになる。

警察内部に内通者がいた、ということなのだろうか。今日、城をマークしていたのは赤木警部だ。だが、彼ではあり得ない。性格上、最もあり得なさそうな人物だ。

……とすれば誰が?

スマホが震えた。赤木警部も、朝霞署に向かっているという。話さねばならないことは、多い。

#

城の説明が終わる頃、俺たちは朝霞署に着いた。当直の署員に簡単に事情を説明した後、小さめの会議室に入る。

「よう。悪かったな、休みのところ」

「いえ、職務ですから。赤さんもお疲れ様です」

「おう。……しかししくったぜ。赤坂近辺とNシステムが言うからオークラから先に行っちまった。ニューオータニだったか。
まあ、それでも収穫は十分だ。坊主、嬢ちゃん、座んな」

二人が緊張した様子で席に着いた。

「話は大体聞いた。まず、薬師丸さん。誘拐された時の状況を」

ビクッと、彼女の身体が跳ねた。そして、急に震えだす。恐怖が蘇ったのだろう。

「あ……あの……」

「無理はしなくていい。実行犯が唐川という男というのは分かっている。身柄確保に向け、動いているはずだ」

唐川は野次馬から現れた青年に、何かで攻撃されたという。ただ、その続報は今のところない。
赤木警部が、警視庁に連絡を取っているはずだ。唐川、ないしは奴を攻撃した青年の身柄を押さえられていれば、話は早いのだが。

薬師丸が、しゃくりあげるように泣き出した。

「あ……あのっ……あ、あたし、日課のランニングをしようとしてたんです。……そうしたら、後ろからハンカチのようなものを押し当てられて……。
気付いたら、ホテルで。何がなんだか分からないうちにジョーが来て……えっ、えぐっ…………」

「……無理はしなくていい。気付いたことは」

※80以上である <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/07(月) 12:48:53.92 ID:Ww8zDho80<> ほい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/07(月) 20:58:21.50 ID:e0sYD8SwO<> 「き、気付いたことですか……?気をすぐ失って……あ」

薬師丸が数秒黙った。

「……あたしが起きて、唐川って人が暴れてたんです。『薬の効きが悪い、早くくれ』って。あれも、アイスキャンディとかいうやつなんですか」

俺は赤木警部を見た。

「やはりそうです」

「そうか。唐川にせよ矢向せよ、『前』(前科)はなかったからな。
アイスキャンディには、ドーピングの効果でもあんのか」

「肉体の反応速度は倍加するはずです。あるいは、城からもらった改良型かも」

「解析結果は明日だったな。やっぱり、皆ヤク中ってことか……ん?」

赤木警部が身を乗り出した。

「おいっ、佐倉もアイスキャンディを飲んでたんだよな?あいつに異変はないのか?」

「いえ、今のところは……翔一も、副作用のことは知らない?」

俺は首を横に振った。佐倉翔一は、20年後も健在だ。「前の周」でアイスキャンディを服用してたかは知らないが、副作用について知らないはずがない。

とすれば奇妙だ。城と少なくとも同じペースで飲んでいたはずだ。なぜ副作用を躊躇しないのか?噂に聞く、特殊酵素の持ち主なのか?
どうも、まだアイスキャンディには何かが……20年後でも分からなかった何かがある。

俺は城の目を見据えた。

「佐倉は、どのくらいの頻度で飲んでた?」

「……僕より多かったはずです。知り合う前から持ってたみたいですし……翔一も、もうすぐ死ぬんですか」

やはりか。佐倉は何かをまだ隠し持っている。奴を捕まえねば。

「いや、多分それはない。俺の読みでは、副作用を知っててなお敢えて飲んでいる。つまり、今後も生きていく自信があるということだ。
赤さん、その後ニューオータニの火災の情報は?」

赤木警部がスマホを弄り、大きく溜め息をついた。

「や……地下駐車場が火元で、テロの可能性があるって点程度までしか報じられてないな。
唐川の話や、その後犯人が捕まったという話もない。佐倉は、多分逃げたな。……とすれば唐川はどこに消えた?」

「警視庁に聞きましょうか」

俺はスマホを握った。

※コンマ下
01〜75 情報なし(通常ルート)
76〜95 ……おたくが逮捕したと聞きましたよ?
96〜00 今、こちらです。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/07(月) 21:01:16.59 ID:R8bkdZCm0<> ん <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/07(月) 21:20:15.33 ID:e0sYD8SwO<> #

「……やはり知らない、か」

警視庁の捜1と連絡を取ったが、「初耳だ」との反応だった。唐川への急襲は、混乱の中で消えてしまったらしい。

「まずいな。となると……襲ったのがバッドエンド・ブレイカーとすると、唐川はその手の内に落ちたのか」

「かもしれないですね……」

唐川という男を、俺は知らない。ただ、城らの話から察するに相応の巨体だ。男一人でどこかに運べるものだろうか。
共犯者が、まだあそこにいたはずだ。それが誰かは分からない。だが、間違いなくいたはずだ。

そしてもう一つ、訊かねばならないことがある。

「城、それとは別に一つ質問だ。佐倉の行き先に心当たりはあるか?」

※コンマ下95以上である <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/07(月) 21:26:20.02 ID:TufsumsDO<> いけ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/07(月) 21:34:40.23 ID:e0sYD8SwO<> 「……いえ。ただ、都内は危険だ、人気の少ない所に行かないとみたいなことは言ってました」

「都内は危険?」

「ええ。毛利さんが見せてくれた、似顔絵の子供に心当たりがあるみたいで。翔一は、かなり警戒してました。……何者なんですか」

佐倉があのコナン似の子供を知っている?しかも、急に警戒させる程度には恐れている。
俺は20年後の記憶を探った。……あの顔に、俺は見覚えがない。だが、成長した姿なら?

※コンマ下70以上で思い出す <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/07(月) 21:38:13.61 ID:j04H1RZDO<> はい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/07(月) 21:39:16.74 ID:TufsumsDO<> ほい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/07(月) 21:44:52.08 ID:e0sYD8SwO<> 今日はここまで。

なお、仁が思い出すタイミングはまだあります。また、思い出すことでコナンには不利になります。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/07(月) 21:46:29.31 ID:TufsumsDO<> 乙でした <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/07(月) 21:48:37.69 ID:j04H1RZDO<> 乙 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/08(火) 09:11:41.94 ID:Xml5UqmGO<> ……やはり思い出せない。ただ、間違いないことが二つある。

あの少年が事件に関与しているであろうことと、彼が危険な存在であるということだ。
未来から来た覚醒者であるなら、見た目の幼さは問題にはならない。それは亜衣でよく分かっている。

「……いや、俺も知らない。ただ、君も警戒はしてくれ」

「ちょっと待て仁。あの似顔絵のガキが、バッドエンド・ブレイカーだなんて言いやしねえよな?」

「しかし否定する要素もありません。確実に言えるのは、佐倉があの少年を知っていて、しかも恐れていることだけです」

赤木警部が「んな馬鹿な」と息をついた。

「30前後の医療資格者というプロファイリングの結果ともあまりにかけ離れるぜ?第一、ガキが自分の意思で殺すとでも?」

「注射ならあの女性が手を貸しているかもしれません。一応、所轄にマーク対象として投げておきますか?」

「……まあお前のこった、それなりに自信はあるんだろうが……一応、言うだけ言ってみるか」

目の前の二人は、かなり消耗している。薬師丸はもちろんだが、城も元から疲労があったらしい。あまり拘束するのも辛いだろう。

「じゃあ、とりあえず今日はここまでとしておこうか。他に気付いた点があるなら聞くが」

※コンマ下30以上で追加 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/08(火) 09:17:31.40 ID:YAqI9eIDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/08(火) 09:31:46.72 ID:Xml5UqmGO<> 「……あっ」

城の顔色が変わった。

「翔一は、和人……鶴岡和人に手を出すかもしれません。『仕付ける』とか言ってましたから……」

「仕付ける?」

城が頷く。額から汗が、一筋流れた。

「和人は、翔一と距離を取りたがってました。理由はよく分かりません。ただ、僕も最近は彼を見てない。
確か、今はお兄さんたちのトレーニングに付き合う形で海外にいるはずです。日本にいつ帰るかまでは知りませんが」

赤木警部が険しい顔になった。

「ということは、帰国次第そこの嬢ちゃんみたいに拉致られるかもしれねえってことか。
仕付けるってことだが、内容は?」

「……分かりません。ただ、僕もあの火災がなかったら、それを受けていたはずです。『特別な趣向』とか言ってましたから……。
殺すまでは、きっとしないと思います。駒が足りないと言ってましたし。ただ、和人が危うい目に遭うのだけは、間違いないかと」

「鶴岡の保護が必要だな。とはいえ、どこの国にいていつ帰るか分からねえことには、打つ手がないが。心当たりは」

※コンマ下
01〜80 知らない(通常ルート)
81〜95 行き先は知っている
96〜00 帰国日も知っている <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/08(火) 09:48:50.50 ID:+xcMCRBn0<> 和美ちゃん爆誕! <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/08(火) 12:41:33.50 ID:TkAmtD2lO<> 「いえ……和人とは、仲がいいわけじゃなかったので」

「なるほどな。まあ、長男の光輝はインスタやってるはずだから、本当に海外に行ってるならそれで分かるが。……どうだ」

俺はスマホを操作する。光輝は確かにフィリピンにいるようだが、画像には次男の大和はいても和人の姿はない。

「分からんですね。海外に行ってること自体がフェイクかもしれない。たまたま写ってないだけならいいですが」

「参ったね。とりあえず、身柄を押さえたいもんだが。……アイコス、いいか」

「ええ」

加熱式タバコを懐から取り出すと、首を振りながら赤木警部がそれを吸った。軽くコーンが焦げたような香りがする。

「とりあえず、唐川がいなくなったことで鶴岡には接触しやすくはなったな。しばらく、青か白をそっちに張らせる。お前は、城の方を見てくれ。俺は佐倉を追う」

「了解です」

俺は城と薬師丸を見た。

「すまなかったな。今日は帰って結構だ。送ろうか」

「ありがとうございます。……これからどうすれば」

「いつも通りでいい。ただ、身辺警護は俺が中心になってやる。薬師丸さん、君も警護対象だ。
当面は、佐倉を警戒した方がいい。こちらもできるだけはやる」

薬師丸の表情が強ばった。いきなり命の危険に晒されたのだ。無理もない。

「分かりました。じゃあヤク、行こうか」

「……うん」

二人が立ち上がる。……俺は一つ、伝え忘れていた。

「ああ、すまない。5分ほど、エレベーターの前で待っていてくれ。少し赤木警部と話さなきゃいけない」

「……?分かりました」

二人を追い出した後、俺は赤木警部と向き合った。

「……どうした、真剣な顔で」

「警察内部に、内通者がいます。バッドエンド・ブレイカーに繋がっているはずです」

「……お前もそう見たか」

白い煙が立ち上る。

「変だとは思ってた。Nシステムを使って追尾してたが、俺より先に、しかも正確に城の居場所を突き止めている。
しかも、もしあの女とガキがバッドエンド・ブレイカーだとすれば……若葉の証拠隠滅を何故か知っていた。内部者でなければ、分からないはずだ」

「そうです。少なくとも、埼玉県警捜査一課か、それにかなり近い人物がバッドエンド・ブレイカーにいます。心当たりは?」

※コンマ下85以上である
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/08(火) 13:15:05.80 ID:JoA8Y4hiO<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/08(火) 20:40:01.62 ID:6CEoSO+7O<> 「……いや、ねえな。お前は?」

「同じく……」

俺の脳裏に、一人の男の顔が浮かんだ。白田兵次郎。元捜査一課の刑事である彼ならば?
しかし、今でも捜査一課にパイプがあるとは考えにくかった。城がどこに向かったかなどの情報は、現役の警察でないとまず手に入らない。退職後の彼では、無理なはずだ。

……一度、行ってみるか。

「とにかく、捜査一課内をそれとなく探ってみます。赤さんも頼みます」

「おう。悟さんにも、伝えた方がいいか?」

俺は一瞬躊躇した。木暮管理官が内通者とは考えにくい。ただ、万一ということもある。

1 伝える
2 伝えない

※安価下3多数決 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/08(火) 21:00:35.04 ID:FBbFcrpDO<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/08(火) 21:02:25.63 ID:+bK8RZe90<> 1 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/08(火) 21:40:13.86 ID:6CEoSO+7O<> 「……そうですね。お願いします」

「了解だ。悟さんがどう炙り出すかな」

赤木警部がにやりと笑う。もし、木暮管理官が内通者なら、俺たちの立場は危うくなる。これは賭けだ。ただ、分のいい賭けだではあるが。

#

「Mama, just killed a man
Put a gun against his head
Pulled my trigger, now he's dead……」

城と薬師丸を新座の自宅まで送る車内には、ボヘミアンラプソディーだけが響いていた。
薬師丸はすうすうと眠り、城は車外を眺めている。

荒川のホームレス射殺犯である彼に、この曲は酷か。俺はカーステレオを弄ろうとした。

「変えるが、いいか」

「……いえ、このままで。どうせすぐ着きますし。……翔一は、何者なんでしょう」

「……俺も分からない。ただ、あれは普通の中学2年生じゃない。それだけは断言できる」

嘘は言っていない。ただ、彼に俺が未来の記憶を持つ覚醒者であると、伝える必要もない。
未来における奴は、実業家だ。名前も顔も変えたが、あれは間違いなく熊谷大虐殺の犯人の一人、佐倉翔一だ。
だが、それを伝えて何の意味になるか。俺にとって、そして彼にとって重要なのは、今の奴だ。

城が軽く息をついた。

「結局、誰も分からないんですね」

「君はどう思う」

「……分からない、としか言いようがないんです。まるで、名前のない怪物みたいな……」

その寂しげな顔に、俺は城が佐倉のことを恨みきれてないのではと直感した。理由はなんであれ、惹かれる部分はあったということか。

「理解したいのか」

「そういうんじゃないんです。ただ……本当にあいつは、人を駒としか思わない人間なのかなって。もしそうだとしたら……どうやって、あいつは生きてきたんでしょう」

「……さあな。着いたぞ、薬師丸さんを起こしてやれ。親御さんには、俺が説明する。立派な、未成年者誘拐事件だからな。君も被害者ということにしておこう」

城が静かに首を縦に振った。これが済んだら……鶴ヶ島に向かおう。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/08(火) 21:52:28.07 ID:6CEoSO+7O<> #

状況説明には、小一時間かかった。薬師丸の両親は号泣し、娘の無事を喜んだ。
ただ、まだ狙われるかもしれないと伝えると表情は凍りついた。彼女の一家に平穏が訪れるのは、まだ先だろう。

城の母親、寿美子は現れなかった。「休日でも仕事ですから」という。薄情な親だ。

「繰り返すが、俺たち警察は君らを完璧に守れるわけじゃない。だから君ら自身も、警戒してくれ。
身を守るのは、究極的には君ら自身しかいない」

去り際にそう告げると、二人が固い表情で頷いた。佐倉は、恐らくはまた二人の前に現れるだろう。根拠はないが、俺はそう感じた。


その前に、捕まえられるだろうか。


【6月24日、14時32分】


俺は城たちと別れると、車を一路鶴ヶ島へと飛ばした。「カフェ・ドゥ・ポワロ」は……

※コンマ下
01〜20 休んでいる?
21〜65 かなり混んでいるようだ
66〜85 そこそこ空き始めている
86〜00 休んでいる?……いや、カウンターには兵さんがいる <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/08(火) 21:55:57.31 ID:Mk/iYbBl0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/08(火) 22:12:09.83 ID:6CEoSO+7O<> 「カフェ・ドゥ・ポワロ」はかなり混んでいるようだ。兵さんと学生バイトで回しているようだが、ここで俺が行っても兵さんとは話せまい。
落ち着いた頃に、もう一度来るか。2時間もすれば、多少は空くだろう。

しかし、2時間という時間は中途半端だ。自宅に帰ろうにも落ち着かない。
さて、どうしたものか。

1 美和に連絡、合流する
2 入間西警察署に行って調べものをする
3 射手矢記者に連絡を取る
4 その他自由安価

※2票先取
※自由安価は歓迎です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/08(火) 22:41:41.05 ID:grK5SwSzO<> 2 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/08(火) 22:53:19.51 ID:6CEoSO+7O<> 一応地理が分からない人のために説明します。

1 片道1時間弱かかります。時間は3時間は最低要します。戻ったら閉店しているかもしれません。
2 片道10分程度です。何を調べるか次第(それとコンマ次第)です。
3 川越で落ち合うため片道30分程度です。会話の内容次第ですが、2時間はかかりません。
4 行動次第では劇的に話が進む可能性があります。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/08(火) 23:22:16.23 ID:YAqI9eIDO<> 2 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/08(火) 23:33:43.72 ID:v78sDDVMO<> 今日はここまで。仁パートが終わり次第コナンパートになります。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/09(水) 08:51:12.42 ID:OZSA/1pkO<> 確か、近くに入間西警察署があったはずだ。休日だが、時間は潰せるだろう。

だが、本庁の刑事が所轄に出向くには相応の理由がいる。
入間西は坂戸や鶴ヶ島一帯を管轄しているが、川越北部の事件まではタッチすることが多い。
とすると、今回の発端である鬼束の死について、何か情報があるかもしれない。行ってみる価値はありそうだ。

#

「本庁の、毛利刑事ですか」

当直の若い刑事が怪訝な顔をした。

「済まない。川越で5月7日に起きた、鬼束直哉少年の変死についてだ。何か資料が残ってないか」

「あれは川越署の担当ですが……一応、うちにもあったかな。しかし、あれは自然死ということだったのでは?」

「話が変わってきていてな。金路アゲハの殺人と絡んでいる可能性が高い。連続殺人として捜査規模を拡大したいが、なかなか裏が取れない。
担当として少しの間調べたいのだが、いいだろうか」

「……俺の独断じゃ無理ですね。一応、あなたが本当に本庁の人か調べますんでちょっと待っててください」

刑事はどこかに電話している。

※15以上で閲覧可能 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/09(水) 09:04:23.77 ID:/u0KL4wG0<> ほい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/09(水) 12:05:21.30 ID:jHAniu7aO<> 「……なるほど、了解です。毛利警部補、失礼しました。どうぞ」

若い刑事が書庫へと案内した。埃と紙の入り交じった匂いがする。

「鬼束少年のは……あった、これだ。資料は元に戻してください。しかし、休日に仕事熱心ですね」

「たまたま近所に来たから寄ったまでだ。……薄いな」

「急性心不全による病死の線で早々に固まりましたから。目撃証言もほぼなかったですし」

俺は数枚の資料をパラパラとめくる。

※コンマ下75以上で情報あり

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/09(水) 12:09:43.02 ID:R1oQNFNtO<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/09(水) 12:16:37.37 ID:jHAniu7aO<> 資料は淡々と、事実の羅列に終わっている。手口上仕方ないが、殺人の線を強く疑わなかったのは初動の遅れの原因でもある。
グレーな案件はできるだけ「白」にしようとする警察官は少なくない。なかったことにすれば、仕事量は減り楽ができる。
殺人の捜査は手間も体力もかかる。それを避けたいというのは、あり得る心理だ。

しかし、それで事件が隠れてしまったなら意味がない。まして、これは連続殺人だ。
事件担当の刑事を呼びつけ、一通り怒りをぶちまけたい衝動に駆られた。ここで恐らく無関係の、この若い刑事に当たっても意味がないのだが。

「収穫、ありましたか?」

「……いや。邪魔したな」

俺は資料を戻した。

※コンマ下50以上で追加イベント <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/09(水) 12:21:23.09 ID:JmbKEQHP0<> ふむ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/09(水) 12:44:01.02 ID:jHAniu7aO<> ※追加イベントなし(コナンパートでは有利になります)

#

早々に入間西警察署を出た俺は、軽く本屋で時間を潰した後で兵さんの店に向かった。店はまだ空いている。
客はそこそこいるようだが、これなら話はできるかもしれない。

「いらっしゃ……仁か?どうした、連日。しかもスーツ姿で」

「いえ、兵さんに聞きたいことがあって。後で少し、時間いいですか」

「おいおい、俺を取り調べるつもりかよ……どうやらマジなようだな」

俺の目を見た兵さんは真顔になった。

「美樹ちゃん、今日は5時上がりでいいぞ。店も閉める」

「マスター、本当ですか?」

「ちょい急用ができた。美樹ちゃんも適当に上がってくれ。……さて仁。案件は」

「昨日、美和たちとここを訪れたことに関連することです。言いづらいので、人払いを」

「……なるほど、な」

兵さんはカウンターに向かった。

「時間まではまだある。それまでコーヒーでも飲んでくれ」

サイフォンがポコポコと泡をたてている。……白田兵次郎は、覚醒者なのか。どう切り出すべきか、俺は悩んでいた。

#

※コンマ下60以上で重要イベント開始 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/09(水) 12:52:22.68 ID:sJmOBBaDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/09(水) 18:50:36.39 ID:lE789N4kO<> 「待たせたな」

コーヒーがすっかり冷めた頃に、兵さんが俺のいる窓際のテーブルに来た。店内に残るのは、俺たち2人だけだ。

「いえ。あの部屋でいいですか」

「おう。コーヒー淹れ直すから、ちょっと待ってろ」

また、防音室に通された。昨日来た時はそうでもなかったが、無機質で落ち着かない。
しばらくすると、マグカップを持った兵さんがやってきた。

「そら。長い話になると思って、多めに淹れておいた。うちの自慢のブレンドだ、旨いぞ」

口にすると、ダークチョコレートのような甘い香りが拡がった。深いコクも感じる。ローストは深め、フレンチローストに近いか。

「さすがですね」

「お世辞を言っても何も出ねえよ。……疑ってるんだろ、俺を」

電流が走り抜けた気がした。……悟られていたか。

「どうして、それを」

「簡単なことだ。昨日、一度戻ってたな。忘れ物と言ったが、ありゃ口実だ。
盗聴機が仕掛けてありそうな鉢やコンセントの辺りに、お前のものらしき指紋べったりと、な。
つまり、俺を何かの理由で疑っている。違うか」

兵さんはニヤニヤと笑みを浮かべている。この人に、嘘は通じない。

「……ええ。信じてくれるか分かりませんし、理解してくれるかも分かりませんが、率直に言います。
未来の記憶、ありますか」

「ある、と言ったら?」

「あなたに次の質問をすることになりなす」

兵さんがマグカップに口を付けた。

「何の質問だ」

「それはまだ。ただ、今追っている事件に関わる……」

「バッドエンド・ブレイカー」

俺は目を見開いた。……やはり彼も、覚醒者か。

「その分だと、お前もだな。20年後のお前は噂でしか知らんが、今のお前はそれとは違うようだ」

「……そこまで……なら、俺の言いたいことも、分かるんじゃないですか」

「内通者じゃないか、ってことだな。答えはノーだ。俺は、傍観者を決め打ちしている」

本当だろうか。兵さんは、海千山千の兵だ。犯罪者を落とす話術で、彼以上は見たことがない。
それはつまり、嘘をつく達人ということでもある。

※2票先取

1 傍観者って、どういうことですか
2 なら、なぜこの部屋を
3 内通者の心当たりは?
4 コナン似の少年、知りませんか
5 なぜ、この時代に
6 その他自由安価

※質問回数はコンマ次第です <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/09(水) 19:46:08.69 ID:lE789N4kO<> 上げます。2200までは多分更新なしです。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/09(水) 19:50:46.05 ID:sJmOBBaDO<> 4 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/09(水) 20:22:06.39 ID:3tUp7iVu0<> 2 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/09(水) 21:43:38.00 ID:uIzQl40OO<> 上げます。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/09(水) 21:47:27.42 ID:j98XyqjO0<> 4 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/09(水) 22:09:33.42 ID:uIzQl40OO<> 訊きたいことは色々ある。だが、今一番知りたいのは、この情報だ。

「そうですか。それはそうと、名探偵コナン似の少年、ご存知ですか。彼が、バッドエンド・ブレイカーに関わっている可能性が高い。
あなたが覚醒者なら、ひょっとしたら知っているのでは?」

※コンマ下
01〜75 知らんな
76〜90 ……知らんな
91〜00 そこまで知っているか <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/09(水) 22:32:54.31 ID:j98XyqjO0<> 知ってる <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/09(水) 22:41:08.92 ID:uIzQl40OO<> 「知らんな」

兵さんは即答した。内通者なら知っていたとしても答えられるはずもない。あるいは、本当に知らないのかもしれない。

「……そうですか。あるいは、と思ってましたが」

「まあ、繰り返すが俺は傍観者だ。世間のことには積極的には、関わらないようにしている。
仮にバッドエンド・ブレイカーが俺に接触したとしても、断る以外の選択はないな」

傍観者という点を随分と強調する。何かあったのだろうか。

※2票先取

1 傍観者って、どういうことですか
2 なら、なぜこの部屋を
3 内通者の心当たりは?
4 なぜ、この時代に
5 その他自由安価

※質問が確定しているのはここまでです。3問目以降からはコンマ次第になります。
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/09(水) 22:56:37.12 ID:sJmOBBaDO<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/09(水) 23:05:33.83 ID:GAc6m/ad0<> 1 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/09(水) 23:19:28.36 ID:Kyr6osxDO<> 1 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/09(水) 23:19:38.63 ID:ng4JTAWlO<> 上げます。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/09(水) 23:20:05.66 ID:ng4JTAWlO<> 1で決定します。今日はここまで。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/09(水) 23:20:07.23 ID:3tUp7iVu0<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/09(水) 23:23:32.41 ID:sJmOBBaDO<> 乙です <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/10(木) 09:20:18.29 ID:xhkmgwWPO<> 「傍観者って、どういうことですか」

俺の問いに、兵さんは無言でコーヒーを飲んだ。

「さっき言った通りだ。俺は歴史改変には関わらない。ただ機を待つだけだ」

妙だった。兵さんは、明らかに何かを知っていて、敢えて黙っている。

俺は美和の言葉を思い出した。……まさか。

「兵さん、ひょっとして『何周かしてますか』?」

「……どうしてそう思う」

兵さんの手が止まった。

「勘です。それと、一度歴史改変をしたことがあるような……そんな口振りでした」

「……さすが、優秀な生徒だよ。御名答だ」

ふっと彼が笑った。

「何周目なんです。この世界は」

「少なく見積もって4周。もっとかもしれん。ただ歴史には修正力がある。未来を変えたつもりでも、大体はどこかで帳尻が合ってしまう。
Aという事件を解決したら、Bという別の――大体はより大きな惨事が世界のどこかで起きる。そういうようになっている。
2周目で俺は失敗し、3周目では裏方に回ったが無駄だった。なら、今回は勝負どころまで極力動かずにいた方がいいと思った。それが、傍観者という言葉の意味だ」

「……4周も??」

兵さんは頷いた。そんなに繰り返されていたのか?
俺の記憶は、当然「前の周」しかない。それ以前の記憶は、全くなかった。

「まあ、俺みたいに何周もしている奴が他にどれぐらいいるかは知らない。一応言うなら、バッドエンド・ブレイカーはこの周になって初めて現れた存在だ。
ああいう強行手段で未来を変えようとする発想は、俺にはない。その影響がどんな形になるか読めないからな」

「……そうですか。佐倉の存在も?」

※コンマ下
01〜75 気になったのは前の周からだ
76〜95 特殊イベント
96〜99 特殊イベント(真相が見え始めます) <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/10(木) 09:41:59.06 ID:ENiLqpVDO<> それ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/10(木) 12:19:46.65 ID:vE/8HqCuO<> 「佐倉……熊谷大虐殺のか」

「ええ。何か知ってますか」

「……あれが気になったのは前の周からだ。その前にも熊谷で何かあった記憶があるが、あれだけの大事になったのはあれが最初だ。
佐倉の件を追っている、そうだな」

俺は頷いた。

「……奴をできるだけ早く確保する必要があります。アイスキャンディの流通が、本来に比べて早すぎる。
あれが日本を大きく混乱させたのは、兵さんもご存じでしょう」

「まあ、な。……そうか」

一瞬、兵さんが黙った。

「どうしました」

「……いや、何でもない。とにかく、佐倉は行方知れずというわけだな」

「そうなりますね」

※コンマ下90以上で?? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/10(木) 12:23:37.33 ID:nSFx3xpDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/10(木) 12:33:19.59 ID:vE/8HqCuO<> 「佐倉の行方は知るよしもない。ただ、今回の周は色々とイレギュラーだ。一度、腰据えて話した方がいいな。
今度、また来てくれ。美和ちゃんの子供も、多分俺たちと同じだろう?」

「……!よく分かりましたね」

兵さんは苦笑した。

「お前は顔に出過ぎなんだよ。それと、この部屋を使いたいといった時点で何かあると思った。
お前が覚醒者なら、それに関する話だろう。美和ちゃんが覚醒者であるはずがないから、子供の方だ」

「……さすがですね。今度は亜衣も一緒の方が?」

「だな。来週、コーヒー教室があるだろう。その後にでも話そうか。美和ちゃんも、二人が覚醒者とは知ってるわけだな」

「ええ。美和も一緒ですか」

「ああ。まあ、これ以上隠しても仕方ないからな」

彼がコーヒーを飲む。俺もそれにならった。

※コンマ下50以上で追加質問へ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/10(木) 12:39:16.81 ID:7ealnVJ10<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/10(木) 12:41:35.88 ID:vE/8HqCuO<> ※追加質問です。2票先取

1 内通者の心当たりは?
2 「西」の公安も動いているらしいです
3 歴史が元に修正されるなら……美和は死ぬんですか
4 なぜ、この時代に
5 その他自由安価

※自由安価は歓迎します <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/10(木) 13:50:50.18 ID:xhkmgwWPO<> 再開は夕方以降です。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/10(木) 14:18:31.90 ID:7ealnVJ10<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/10(木) 15:46:18.19 ID:3bUxWNNU0<> 3 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/10(木) 15:55:06.03 ID:nSFx3xpDO<> 3 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/10(木) 20:14:34.69 ID:vE/8HqCuO<> 一つ、引っ掛かる点があった。「歴史の修正力」。それは、つまり……。

そこに考えが及んだ時、ぞわっと背中が逆立つほどの恐れを感じた。
俺は身を乗り出す。

「兵さんっ。歴史を変えようとしても、元に修正されるなら……美和は死ぬんですか」

「……3周目では熊谷大虐殺の被害者だったな。あの時のお前の取り乱し様と、その後の変貌はよく『覚えてる』よ。
結論から言おう。それは分からん」

「分からない、ですって……!?」

兵さんはコーヒーを再び口にした。

「ああ。歴史に修正力があるといっても、限度がある。歴史は運命じゃない。意思の力で変えうるものだ。
もちろん、歪みはできる。美和ちゃんが死なずにすんだ場合、世界のどこかで誰かが望まぬ死を迎える。そういうもんだ。
ただ、お前次第で彼女が生き延びることは、可能だ」

彼がふっと観葉植物を見た。何かあるんだろうか?

「ああ、気にしないでくれ。……俺の場合、ある奴を2周目では死なせた。3周目では生き延びさせたが、消息は絶えた。今の周は、今のところ上手くはいっている。
つまり、立ち回り次第でなんとかなる。油断すれば、歴史の波に呑まれるがな」

「俺次第、ですか」

「そうだ。だから、お前が本気で彼女を守りたいなら……覚悟を決めろ。全ては、お前が握っている。忘れるな」

俺は唾を飲み込み、小さく頷いた。

※80以上で追加情報 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/10(木) 20:20:51.35 ID:vE/8HqCuO<> ※修正します。

01〜50 何もなし
51〜80 1〜2周目の仁及び美和の情報あり
81〜00 上+α <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/10(木) 20:22:50.82 ID:DnZEO7xf0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/10(木) 20:37:13.21 ID:vE/8HqCuO<> 「そういえば……1周目と2周目の俺のことも、兵さんは知ってるんですか」

「……お前をちゃんと知るようになったのは、3周目だ。最初の周は、自分のことでそれどころじゃなかった。次の周も、似たようなもんだ。
ただ、2周目ではお前が恋人を事件で亡くしたという、うっすらとした記憶はある。あるいは、それが美和ちゃんかもな」

「……そうですか。ならば……」

兵さんが俺の目を見た。

「そうだ。お前が守ってやれ。愛する女は、そうするもんだ」

俺もコーヒーを飲む。大分冷めてはいたが、深いコクと苦味は残っている。むしろ増しているかもしれない。

「兵さんも、そうしたんですか」

「ぶっ」

思い付きで訊いたが、どうも図星であったらしい。珍しく顔が赤い。

「い、嫌なことを訊くな。さすがは『デッドマン』だ」

「今の俺は違いますよ。ひょっとして、あのバイトの?」

「……老らくの恋、と笑えよ。しかも『実年齢』は100歳以上だ。変態ジジイであるのも、否定せん。
だが、美樹を手元に起き続けることは、あるいは世界を変えることに繋がるかもしれん。ただの下心じゃない」

そう言えば、確かに「前の記憶」では、カフェ・ドゥ・ポワロは兵さん一人で切り盛りしていた。バイトもいなかったはずだ。
それにしても、あの大学生風の子が、それほど重要なのだろうか?俺にはどうも分からない。

とにかく、俺にできること。それは美和を守ること。そしてそのためには……佐倉を捕まえねばならない。

※コンマ下70以上で追加質問可 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/10(木) 20:45:30.57 ID:nSFx3xpDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/10(木) 20:59:28.18 ID:vE/8HqCuO<> 「さて……と。要らんことまで喋っちまったな。そろそろ明日の仕込みに入らなきゃならん」

「仕込み?」

「飲食業は色々面倒なんだよ。……お前の疑問には答えられたか?」

俺は一瞬躊躇した。兵さんが内通者でないという確信は、ない。
ただ、かなり疑いが晴れたのも確かだ。内通者なら、自分が複数回世界をループしている話などしないだろう。バッドエンド・ブレイカーと繋がっている印象も薄まった。
残った疑問は、今度訊こう。それでも、問題はないはずだ。

#

「お邪魔しました。では、また来週」

「おう、気を付けろよ」

小雨がぱらつく中、俺は駐車場に向かった。

しかし、兵さんが何回もループしている覚醒者とは……予感はあったが、驚きは正直ある。だが、それ以上に胸のうちから沸き上がって来たのは……疑問だ。

兵さんはなぜ、どうして4回もループしているのか?
そして、彼のような存在は他にもいるのか。……それは、まだ謎だ。

モヤモヤした気分を抱えながら、俺はキーをひねった。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/10(木) 20:59:56.74 ID:vE/8HqCuO<> ※コナンパートに切り替わります。少し休憩。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/10(木) 22:19:19.69 ID:5cf9jliSO<> 【6月24日、7時45分】


朝起きると、コナン君は既にリビングにいた。タブレットで何か作業をしている。

「もう作戦、始まってるの?」

「ええ。スタンバイはできてます」

ちらりとタブレットを見ると、由依ちゃんが映っていた。どこかのビルの屋上のようだ。

『あ、アユさんおはよう。とりあえず、出番はまだ先だから寝てていいよ』

「そこは?」

『市営住宅の屋上。セキュリティが劇甘な上に、城隆一郎の家がちょうど見える。多分ボディガードが迎えに来るだろうから、ここから確認するってわけ』

「カーナンバーを?」

『ま、それもあるけど。Nシステムへのハッキングだけじゃ、正確にどこに行ったかまでは分からない。
だから今日は、こいつを使う』

由依ちゃんが掌に小さなおもちゃを取り出した。……いや、これはおもちゃじゃない。

「ドローン?でも、こんなに小さなのが飛ぶの?」

『20年も経てば、エネルギー効率のいい電池とか色々できるもんなの。それをこの時代で作るのも、協力者がいればわけない。
一度カーナンバーを捕捉できれば、後は自動追尾してくれる。場所が分かったら興也さんと源の出番ってわけ。『おやっさん』にも動いてもらう感じかな』

コナン君が静かに笑った。

「仕込みは準備万端です。今日で佐倉を討てればいいですが、そうでなくとも大きく動かすことができる。
今までは『天岩戸』に籠っていたけどそうはいかない」

『『警視』殿、来たよっ』

「了解。では始めようか。『アマノウズメ』作戦、開始」

『了解っ』 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/10(木) 22:19:48.82 ID:5cf9jliSO<> 今日はここまで。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/11(金) 09:22:54.94 ID:btnR9p80O<> 【6月24日、8時45分】


『こちら浅賀、目標を確認。霞ヶ関インターで降りる模様。Nシステムによる自動追尾を解除』

「了解。そこからは目視での追尾に切り替えてくれ」

緊迫した空気が流れる。あたしは自分が場違いな所にいる気がしてきた。

「……一応、確認なんだけど。あたしは何もしなくていいんだよね」

「ええ。佐倉か、その周辺の誰かを捕まえてからが僕らの出番です。尋問は、指定の場所で僕らが行うことになる」

「ってコナン君がやるんじゃないの?」

コナン君が首を横に振った。

「僕がどこまで『表』にいられるかは分からない。だから、万一の時のためにアユさんがサポートしてほしいんです。
このマニュアル通りに訊いてくれれば、それで構いません。佐倉が捕まるのなら、網笠さんに急遽来てもらうことになりますが」

確か彼は政務で沖縄にいるはずだ。コナン君のお父さんも、本業でアメリカにいる。
つまり、残ったメンバーでこのミッションを成し遂げなければならない。

「……分かった。とりあえず興也さんたちを待つ。そういうことね」

「ええ。……由依さん、どうですか」

タブレットの向こうにいる由依ちゃんの声が弾んだ。

『車が建物に入りそう。ホテルニューオータニね、間違いない。
興也さんと源は、後10分で着くと思う。『炙り出し』は、20〜30分後かしら。『おやっさん』からは連絡がないけど、多分似たようなタイミングで合流するかな』

「了解。順調だ」

コナン君は静かに言った。

「『炙り出し』って、大丈夫なの?」

プランでは場所を特定した後、そこで火災を起こし佐倉たちを外に出させる計画だ。
ただ、「爆弾」を使うとも聞いている。巻き添えに遭う普通の人は、いないのだろうか。

コナン君は柔らかく微笑んだ。

「大丈夫です。この時代にはない、色々な仕掛けを僕らは持ってる。源さんがスマホを落とせば、それだけで完結するんです」

「スマホ?」

「ええ。まあ見てて下さい」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/11(金) 14:52:20.08 ID:heQ0/TgpO<> 【6月24日、8時57分】


「源さんですか。着きましたか、では予定通りに始めて下さい。僕が起爆します」

スマホで短く話すと、コナン君がタブレットの画面を切り替えた。……駐車場?

「スマホのカメラを起動させたんです。駐車場に源さんを送り込み、スマホを落とす。防犯カメラが撮っていても、見えないかただの落とし物にしか見えないはずです」

「……って起爆はコナン君がやるの??」

「カメラで周囲の安全を確認した上で、です。一般市民を傷つけては意味がないですからね。3分後メドに始めます」

部屋の時計が時を刻む音だけが聞こえる。9時1分になった時、コナン君は画面をタップした。


ヴィー、ヴィー……

ヴィー、ヴィー、ヴィー、ヴィー……


バゴンッッ!!!!!!


つんざくような音と共に、画面が砂嵐になった。

「よし」

「えっ!?な、何をしたの??」

「スマホカバーの裏に、粘土状のプラスチック爆薬を仕込んであったんです。小型信管がスマホのバイブの振動に反応し、そして爆発する。小型ですが、至近距離なら車1台を吹っ飛ばすぐらいの威力はある。
そして、それは警報器を鳴らし、爆弾テロと錯覚させる。後は、出てきたところを叩くというわけです」

「……そんなことって、できるの……?」

「この時代ではまだ。ですが、20年後なら問題はない」

コナン君が立ち上がった。

「移動しますよ。行き先は六本木。詳しくは、僕が案内します」

※コンマ下15以上で通常ルート <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/11(金) 15:07:22.33 ID:D/MYsJjQ0<> むん <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/11(金) 15:15:35.36 ID:heQ0/TgpO<> #

車内でコナン君はしきりに連絡を取り合っている。何回かのやり取りの後、コナン君が薄く笑った。

「……了解です。興也さん、お疲れ様でした。先に行ってます」

「上手く行ったの?」

※コンマ下
01〜80 鶴岡付きのボディガードしか確保できませんでしたが。それでも十分だ
81〜98 上+発信機の取り付けに成功
99、00 上+特殊情報あり <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/11(金) 15:20:53.59 ID:heQ0/TgpO<> 追加です。

※コンマ下2が20以上で通常ルート <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/11(金) 15:38:10.36 ID:x0u7Km0V0<> や <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/11(金) 15:50:33.57 ID:hZAYpTeDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/11(金) 20:15:21.45 ID:ISqvLbJ/O<> ※古畑による追跡はなし

「鶴岡付きのボディガードしか確保できませんでしたが。それでも十分だ。
これで鶴岡を切り崩せる。城が無事かどうかは知りませんが、翼の両翼を落とせば佐倉に打つ手はなくなる」

その目は、コナン君とは思えないほどギラついていた。あたしが感じたのは、狂気と恐怖。

「……コナン君……」

チラッと彼を見ると、はっと我に返ったようだった。

「……すみません。どうにも私情が入っていけない。……やはり、僕よりはアユさんの方が尋問に向いていそうだ」

「えっ、でもあたしなんてそんな話術もないし、尋問なんてやったこと……!」

「僕では感情が入りすぎる。他の皆も、多かれ少なかれ奴には恨みを抱いている。アイスキャンディを未来で流通させ、日本をズタズタにした張本人ですし。
……僕が起きてる間、もし僕が暴走しそうになったら。その時は止めて下さい。
あなただけが、ニュートラルに尋問できるんです」

真っ直ぐな彼の視線を受け、あたしは「……うん」としか言えなかった。

#

着いた先は、いつぞやのタワーマンションだった。「マティーニ」とコナン君が言うと、中から興也さんが現れる。

※85以上で「おやっさん」もいる <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/11(金) 20:32:15.41 ID:vjNmQ63T0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/11(金) 20:49:09.70 ID:ISqvLbJ/O<> 中には、椅子に座らされ縄でぐるぐる巻きにされた大男と、興也さんがいた。

「『おやっさん』は?」

「長くここにいたら怪しまれると、こいつを運び込んですぐに引き上げました」

「そうですか。彼も大変ですね」

ふうとコナン君は息をついた。「おやっさん」、実に謎の人物だ。

コナン君は気絶している大男の頬を、ペチンとはたく。

「……ぐ……」

「やはり今の僕の腕力じゃ厳しいかな。しかし、キレイに気絶したもんだね」

「テーザーガンだけでここまで長時間の気絶はしませんからね。アイスキャンディでしょう」

「まあそうだろうね。……無理矢理にでも叩き起こすか」

「お望みとあらば」

※2票先取

1 止める
2 そのまま見ている <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/11(金) 21:25:39.86 ID:vjNmQ63T0<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/11(金) 21:26:56.84 ID:2wAmBmmDO<> 2 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/11(金) 21:37:36.87 ID:ISqvLbJ/O<> ※軽い拷問シーンが入ります <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/11(金) 21:44:58.81 ID:ISqvLbJ/O<> 私は黙って見ていることにした。コナン君はチラッとあたしを見る。

「アユさん、刺激が強いかもしれない。席を外してもいいですが」

「いい。ここで見とく」

「……分かりました。興也さん、ブラックジャックを」

ブラックジャック?医者、のことじゃないよね。
そう思っていると、興也さんは黒く短い棒のようなものを持ってきた。革の先端には何かが入っていて、少し重そうだ。

コナン君はそれを受け取ると、思いきり大男の肩の辺りに叩き付けた。


「ぎゃああああああああ!!!!」


部屋中に男の悲鳴が響き渡る。あたしは思わず、耳を塞いだ。

「……起きたかな?」

「いで、いでえええよぉぉぉ!!!て、てめえら……」

バチンッ

「うがああああああ!!!!」

再び苦痛の叫びが響いた。……こんなに辛そうな悲鳴は、初めて聞く。
コナン君は、黒い革の棒を見た後、無表情に男を見た。

「抵抗はしないことだ。アイスキャンディの効果で、痛覚は倍化している。ブラックジャックの一撃でも、想像を絶する苦痛のはずだ。
あまり受け続けると、ショック死するがそれでもいいか」

あたしはコナン君が言っていた意味をやっと理解した。……拷問を、見せたくなたかったんだ。

男は……

※コンマ下
01〜20 息を整え、ニイと笑った。
21〜40 わ、分かった!
41〜90 息を整え、「……好きにしろ」と吐き捨てた
91〜00 俺も、終わりか <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/11(金) 21:46:39.46 ID:hZAYpTeDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/11(金) 21:56:53.84 ID:ISqvLbJ/O<> 男は息を整え、「……好きにしろ」と吐き捨てた。

「……往生際がいいね。佐倉に雇われていたか。名は」

「どうせ死ぬんだろう?好きなように呼べばいい」

「殺すかどうかは、まだ決めてない。君は恐らく罪人だろうが、無意味な殺しはしない主義だ。第一、君はリストに載ってない」

「……リスト、か。……翔一の反応からしてお前のことを知っていたようだったが、やはり恐れるだけのことはあるのか」

コナン君はブラックジャックを構えた。

「ご託はいい。……城が佐倉に、僕のことを?」

「そうだ。『都内は危険だ、人気のないところに移る』とな」

コナン君の顔が厳しくなった。

「……そうか。どこに移ったか、教えろ」

※コンマ下
01〜30 教えられない、な
31〜80 知らない。俺に嘘をつく理由はない
81〜95 情報あり
96〜99 詳細情報あり <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/11(金) 22:07:41.91 ID:2wAmBmmDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/11(金) 22:38:29.75 ID:ISqvLbJ/O<> 「……分かった。その前に、タバコを一本くれ。てめえは持ってないだろうから、そこのあんちゃん。ねえか」

「アメスピならありますが。『警視』、いいんですか」

コナン君はじっと男の目を見た。

「……いいだろう。興也さん、タバコを」

コナン君は火の付いたそれを受け取ると、男にくわえさせた。
すうと大きく吸い込んだのを確認し、タバコを口から離す。

「……ありがてえな。人生最後の一服だ。アイスキャンディのお蔭で、うめえわ」

「……やけに素直だな」

「どうせこのままなら、俺は数時間……いや、もっと短いか……で死ぬ。それを知ってるからな。
俺の脳は、もうスカスカだ。アイスキャンディなしじゃ、マトモに話せなくなっちまった」

コナン君の目に、わずかに光が戻った。

「末期か」

「やっぱり知ってるか。その通りだ。気付いたら全て手遅れだった。まあ、随分愉しい思いもさせてもらったが……ここまでらしい」

「アイスキャンディの代わりに、佐倉に仕えていたということか」

タバコをくれと、男が催促した。コナン君がそれに応じる。男が白煙を吐いた。

「……うめえ。まあ、そんなとこだ。俺は最強になりたかった。裏で最強になれば誰もがひれ伏す。そんな存在になりたかった。
そこに翔一が現れ、アイスキャンディをくれた。ただのじゃない、『新型』だ。別人になった気分だったよ。
そして、1年もしないうちに俺はそうなった。そして、それは終わりの始まりだったってわけだ」

自嘲気味に、男が笑う。あたしの胸が痛んだ。

「同情はしない。質問に答えろ。居場所に心当たりがあるのか」

「正確には知らねえ。知ってるのは佐倉と、執事の矢向だけだからな。
ただ、北関東……いや、群馬にあいつの実家が持つ別荘があるとは聞いた。そこでアイスキャンディのフェスをいつか開きたい、と」

「……群馬のどこだ」

「さあな。だが、人気がないって言ってたから、観光地じゃないはずだ」

コナン君が興也さんを見た。

「……どう見ます」

「別荘があって、メジャーな観光地じゃないとなると、それなりには絞られますね。探り当てるには、少しかかるかもしれませんが」

「ですね。……協力助かる。佐倉に恨みが?」

男は笑いながら首を振った。

「恨みというかな……ただ、最期まで良いようにされるのが、癪だっただけだ」

「……そうか」

※70以下でコナンに限界が来る <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/11(金) 22:42:54.78 ID:vjNmQ63T0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/11(金) 22:50:33.67 ID:ISqvLbJ/O<> コナン君は静かに、しかし深い溜め息を付いた。

「まだ話せるな」

「多分。存外、話は通じるようだな。問答無用で殺す、ただの殺人鬼かと思ったが」

「人を殺めた数で言えば、僕は立派な殺人鬼だ。お前より殺しているかもな」

「……そのなりでか」

男が目を見開いた。コナン君は答えない。

「……次の質問に移ろう。お前の意識があるうちに、聞き出せることは聞き出す」

※2票先取

1 アイスキャンディの製造先は
2 矢向とは何者だ
3 佐倉はなぜアイスキャンディを服用しても無事なのか
4 佐倉は逃げた先で何をするつもりだ
5 自由安価 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/11(金) 22:53:05.19 ID:vjNmQ63T0<> 3 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/11(金) 22:59:10.15 ID:2wAmBmmDO<> 3 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/11(金) 23:05:45.78 ID:ISqvLbJ/O<> 今日はここまで。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/11(金) 23:47:09.02 ID:hZAYpTeDO<> 乙です <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/12(土) 15:15:43.02 ID:di5s/A+rO<> コナン君が少しだけ男に顔を近付けた。

「佐倉もアイスキャンディをやってるはずだ。なぜ、あいつには異変がない?」

そうだ。1錠飲むだけで、寿命が10年は縮まる薬だ。単純に5錠飲めば50年縮まるという性質のものでもないみたいだけど、それでも佐倉って子が無事というのは、確かに変だ。

※コンマ下
01〜80 特殊体質だから、としか聞いてねえ
81〜95 特殊体質だから、としか聞いてねえ。……いや、おかしい
96〜00 男の顔が憤怒で赤く染まった <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/12(土) 15:18:33.15 ID:+0ynFenP0<> 頼みます <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/12(土) 15:24:09.01 ID:di5s/A+rO<> ※上の内容をやや変更します。指定ミスのため再判定

01〜65 知らねえ。……言われてみれば……妙だ
61〜80 いや、特殊体質だからとしか聞いてねえ
81〜95 いや、特殊体質だからとしか聞いてねえ。……いや、おかしい
96〜00 男の顔が憤怒で染まった <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/12(土) 15:24:59.48 ID:5T5X9o9DO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/12(土) 15:44:56.46 ID:di5s/A+rO<> 「……知らねえ。言われてみれば、妙だ」

男が唸った。コナン君がふうと息を吐く。

「まあ、だろうな。知らされていることはないと思ってたが」

「……なぜだっ?あいつは俺より先に、アイスキャンディを飲んでいた。俺とする時も飲んでいた。量も、俺より多いはずだっ!
なぜ、なぜあいつは壊れない!あるいは、壊れてるのに隠してんのかっ!?」

男の叫びに、コナン君は首を横に振る。

「詳しくは言わないが、壊れてることはあり得ない。あいつは放っておけば最低でも20年は生きる。……だから、その謎を知りたかっただけだ。
特殊体質説やら何やら、色々ある。だが、どれも決め手に欠けてた。ひょっとしたらと知ってるかと思ったが、仕方がない」

淡々とした言葉の端々に、落胆が滲んでいた。男が微かに震えている。

「……じゃ、じゃあ何か?『僕もすぐ逝く』とか言ってたのは……」

「大嘘もいいとこだな」


「……うう。ううう……うおお…………うおおおおっっっ!!!!!」


男は大きく咆哮した。

「絶対、絶対ぶっ殺す!!死んでも化けて、憑き殺してやるっ!!」

「……あまり叫ぶな。佐倉は僕たちが殺す。だから落ち着け」

※70未満でコナンが限界を迎える(コンマ下)

※コンマ下2
・コナンが限界を迎えてなければ50以上
・そうでない場合は65以上で追加質問 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/12(土) 15:50:01.71 ID:7me34mDu0<> ほい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/12(土) 15:53:00.47 ID:bjRioi0DO<> どれ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/12(土) 16:07:01.64 ID:di5s/A+rO<> 「殺す殺す殺す殺す殺すころすころすころすコロスコロスコロコロ…………!!!!」

口から泡を噴き、男が身をよじって暴れた。……まるで故障寸前のおもちゃだ。

あたしは思わず目を背けた。……ああ、人はこうやって壊れるんだ。秋山を殺した時の光景が脳裏をよぎり、あたしは吐き気を感じた。

「……くそっ、ストレスで臨界点を突破したかっ。……ここまでだな」

コナン君はテーザーガンを取り出し、縄がほどけかかった男に撃った。

「……あがっ」

一瞬身体を硬直させると、男は椅子ごとその場に倒れた。

「……殺したの」

「いえ、気絶させただけです。ただ、もう彼から話は聞けないでしょう。……興也さん」

「これですね」

彼は注射器をコナン君に手渡した。

※80未満で通常ルート、80以上だと唐川の最期が少し変わります <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/12(土) 16:20:28.69 ID:5T5X9o9DO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/12(土) 22:38:07.72 ID:cg6gGm3VO<> あたしの体温が下がった。コナン君は……彼を殺す気なんだ。

「やめてよっ!!ここで殺すことなんて……」

「放っておいても彼は死ぬ。そう言いたいんでしょう?でも、仮に意識を取り戻したとして、彼は白痴同然にさまよい、呼吸することも忘れて死ぬんです。
……それは、ここで殺すよりも、よほど残虐だ」

あたしには返す言葉がなかった。コナン君が唇を噛んでいる。

「……僕らはリストに載ってない人間は殺さない。殺すべき相手しか殺さない。そういう誓いを立ててきました。
しかし……彼を殺すことは、それに反する。興也さんは、リスト外の殺人は」

「ないですね。……他支部含め、追放事例以外ではなかったはずです」

「……そうですよね。僕もまた、処罰の対象となるのかもしれない。
ただ……僕は医者でもある。本当に救えない患者をどうすればいいのか。高々2時間程度の延命のために、苦痛を与えていいのか。そう考えると……僕にはこれしかない」

そうか。これは、安楽死なんだ。今の日本では、安楽死は合法じゃない。ただ、未来は状況が変わっているのかもしれない。

看護士として、死を間近にした患者が安楽死を求めるのは多く目にしてきた。そして、大体は無駄な延命処置を受け、苦痛のうちに死ぬ。
モルヒネを使って苦痛を和らげる尊厳死は広がってるけど、多くの医師は延命を選択する。そっちの方が儲かるからだ。

ただ、コナン君は……儲けに縛られない。そして、法にも縛られない。

興也さんが息を吐いた。

「……状況が状況です。網笠『総理』も理解するでしょう」

「……そうだね。アユさん、異論は」

「……ないわ」

あたしはうつむいた。コナン君にとっても、これは苦渋の決断なんだ。それを分かった今、反対する理由はなかった。

コナン君が、男のそばに寄る。注射した数秒後、男の身体がバタンと一回だけ大きく跳ねた。
男はそれっきり動かなくなった。コナン君の額から一筋の光るものが流れる。

「……死にました。処理は彼に依頼を」

「了解です」

次の瞬間、コナン君が崩れ落ちた。

「コナン君っ!?」

「……限界が来たようです、ね……僕を連れて自宅、へ……」

#

※コンマ下
01〜15 特殊イベント
16〜40 ジョーパートへ移行
41〜90 帰宅後エピソードへ
91〜00 上+α <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/12(土) 22:41:16.95 ID:IKfO6ozS0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/12(土) 23:52:53.59 ID:cg6gGm3VO<> ※周辺情報など解禁、その他展開が有利に

【6月24日、19時21分】


「……すみません、随分長く寝てしまっていたようです」

リビングに現れたコナン君は、どこか憔悴しているようにも思えた。多分昼の件では、精神的な疲労がすごかったのだろう。

「ううん……お疲れさま。ご飯、今作ってるよ。そろそろ起きる頃かと思って」

「何から何まですみません。……あの後は」

「網笠さんからは連絡があって、今回はお咎めなしって。安楽死だとあたしが説明したら、納得してくれた。
あの男の人の死体は、魚塚さんって人が来て引き取っていったよ。ヤクザにも、コナン君みたいな人がいるんだね」

コナン君が苦笑した。

「彼は一種のリザーバーです。警察じゃないですし……。ただ、意欲も能力もある男なので汚れ仕事や武器調達などで協力をしてくれてます。
その他、バッドエンド・ブレイカーじゃなくても協力してくれている覚醒者は、何人かいるんです」

そんな感じだったのか。由依ちゃんのドローンや源君の「爆弾」も、そういう人の手によるものなのかもしれない。

「そうなんだ……。あ、ご飯だった。肉じゃがとお味噌汁、付け合わせにこの前のチャーシューを使った『ちゃざく』を作ってみたんだけど」

「『ちゃざく』?初めて聞きますね」

「うん。前にどこかのラーメン屋さんで出てたのを思い出しながら作ったんだ。料理そんな得意じゃないから、失敗してたらごめんだけど」

あたしは肉じゃがを暖め直し、ご飯をよそう。一通りの料理をテーブルに置くと、コナン君が「おお」と声を出した。

「アユさん、料理結構できるじゃないですか。僕が好きで作ってたけど、アユさんのを食べてこなかったのは損失だったかもしれない」

「いや、見た目だけだよ。肉じゃがなんて、誰にでも作れるしさ。じゃ、食べようか。あたしも、あんま食べてないし」

いただきます、と手を合わせる。肉じゃがの味の加減は……うん、いい感じだ。
コナン君の箸が止まった。……気に入らなかったのかな。

「あ、ごめん……やっぱ美味しくなかっ……」

「……歩美のと同じだ」

「えっ?」

歩美さんって、確かコナン君の「未来の恋人」だったはずだ。どういうことだろう?
コナン君は、肉じゃがを口に運ぶ。何かを確信したかのように頷く。……手が微かに震えていた。

「……いや、間違いない。赤ワイン入れてますよね……これ」

「う、うん。お母さんが作ってくれたのは、赤ワインを入れた洋風肉じゃがだったから。……それがどうかしたの?」

「いや……まさか。そんなことが……アユさん、ご兄弟は」

※コンマ下50以上で一人っ子
(重要性低め) <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/12(土) 23:56:17.77 ID:bjRioi0DO<> そい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/12(土) 23:57:24.83 ID:cg6gGm3VO<> 今日はここまで。次回R15要素があるかもしれません。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/13(日) 00:01:17.63 ID:+fZk4kLDO<> 乙 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/13(日) 10:22:21.88 ID:Ybp3lrmxO<> 「いないよ。一人っ子だけど……」

「……そうですか。歩美が、あなたの血縁者なんじゃないかと思ってたんですが。とすると……」

コナン君が少し考えている。ただの他人の空似じゃないのかな。

「……まあいいです。食べましょうか」

#

久々にちゃんと作った料理は、思いのほか好評だった。肉じゃがもそうだけど、「ちゃざく」はとても喜んでもらえた。
うなぎの蒲焼きを細切りにしたものときゅうりと合わせた酢の物で、「うざく」というのがある。
そのうなぎをチャーシューに代えただけだけど、コナン君はとても美味しいと言っていた。
「この年齢ではお酒が飲めないのだけが残念ですね」と言ってたけど。確かに、お酒のおつまみになりそうな味かもしれない。

食後のコーヒーはコナン君が淹れてくれた。一口飲んで、少し息をついた。長い一日が、やっと終わる。

「……幻滅したでしょう」

コナン君が、口を開いた。

「お昼のこと?」

「ええ。……あれが、僕の本性です。犯罪者には、どこまでも冷酷になれてしまう」

「殺したことは……仕方ないよ。あたしも看護士だったから、よく分かる。合法じゃないかもしれないけど、間違ってたとも言い切れない」

「そっちもですけど……僕は、彼に暴力を行使した。不必要だったかもしれない」

ブラックジャックという武器で、あの男の人を殴ったことか。……確かに、あれは驚いたし、怖かった。でも……。

「でも、その後は殴ったりしてないよね。やっぱり、コナン君はコナン君なんだって、少し安心したんだ。あの男の人は助けられなかったけど……」

「……そうですか」

コナン君は、微かに微笑んだ。

「それはそうと、佐倉の居場所。見つかるかな」

「興也さんなら、すぐに絞り込んでくれると思います。後は、調べるだけです。……アユさんにも、協力をお願いするかもしれませんが」

あたしは頷いた。

「もちろん。今度は失敗しない」

※話題を決めます。2票先取

1 歩美のこと
2 佐倉の次の行動について
3 城の処遇について
4 協力者について
5 自由安価

※自由安価はあれば歓迎します <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/13(日) 10:25:50.50 ID:+fZk4kLDO<> 3 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/13(日) 10:58:33.49 ID:7tnFxGVDO<> 3 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/13(日) 20:06:34.88 ID:puDX+dt+O<> あたしは思い出した。そういえば、佐倉と一緒に城って子もいたんだっけ。
女の子も確かあの場にいたらしい。……彼らはどうするんだろうか。

「そういえばさ、城って子。これからどうするの?
興也さんから話を聞いたけど、多分佐倉に拉致られてたよね」

コナン君はコーヒーを飲んで、少し天井を見た。

「警察に接触してたらしいですからね。恐らく、裏切りを防ぐため何かしらされるはずだったはずです。
一緒にいた子は、人質でしょう。下手したら、消されていたかもしれない」

「消すって……!?」

「そのくらいはするでしょう。ただ、状況から察するに難は逃れたはずです。
……問題はこれからですね。僕らとしては、城をリストから外すことはできない。
熊谷大虐殺の被害者のうち、半分が彼によるものです。
今の彼がどうであるかは不明ですが、依然危険人物ではある。佐倉の次に処理しなければならない相手です」

「……そうなのかな。命を狙われたのなら、上手く使えばこっちに協力してくれるってこともあるんじゃない?」

「いや、城は警察が先に手を付けてます。しかも『デッドマン』が担当刑事です。
下手に手を出したら、こちらの方が危ない。むしろ気になるのは、一緒にいた少女です。
確か、薬師丸英華という子だったはずです」

「知ってるの?」

※コンマ下
01〜20 ええ。ただ1カ月後に……
21〜60 ええ。ただ、熊谷大虐殺の後に……
61〜80 ええ。確か東京五輪の……
81〜00 いいえ。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/13(日) 20:16:06.95 ID:Kri0Tnua0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/13(日) 20:49:54.81 ID:puDX+dt+O<> コナン君が厳しい顔になった。

「……いいえ。それがそもそもおかしい。
僕には未来の記憶がある。『熊谷大虐殺』関連の情報も、成人してから一通り頭の中に入っている。
当然、犯人の人間関係もです。佐倉はともかく、その他の5人についてはどういう交友関係があったか認識していたつもりです。
しかし、本来の城に、親しい友人はいなかったはずなんです。まして異性の友人など」

「……どういうことなの」

「……僕の仮説が当たっているとすれば、状況はかなり妙な方向に向かっている可能性があります。
それはアユさん、あなたにも関係があるかもしれない」

「あたしにも関係?……ちょっと分かるように説明して」

あたしは身を乗り出した。

「あくまで仮説段階です。本当かどうかは立証できない。
ただ、少なくとも城とその周辺は、『本来の歴史』とは随分と違った流れになっているかもしれない。
僕らの活動のせいか、僕らがここに飛ばされてきたことそのものの副作用かは知らない。
ただ、『本来そこにいるはずのない人物』が、この時空には存在している」

「え?」

彼がもう一口、少し多めにコーヒーを飲んだ。まるで自分を落ち着かせるように。

「つまり、かなりの程度既に『本来の歴史』と『今の歴史』はズレているということなんです。
あるいは、本来20年後にいるはずの人物が、別の立場で今に存在する。……アユさんがそうかもしれない」

「……ちょっと待ってよ。あたしが、その……歩美さんって人と、同じってこと?」

「ちょっと違います。遺伝的には別人……のはずです。そもそも、年齢も違う。性格も少し違う。
ただ、『大枠において』同じ存在かもしれない。あの肉じゃがを食べて、そう感じたんです。
あるいは本来の吉岡愛結と、今のあなたでは見た目すら違う可能性もある。
そして、薬師丸英華の存在。突拍子もない思い付きでしたが、それが本当かもしれないと思い始めた……」

ぽかんと口を開けているあたしを見て、コナン君が苦笑した。

「……すみません。自分の考えに没頭していると、相手を忘れてしまうのが僕の悪い癖で。
変だと思ったでしょう。忘れてください」

「……ううん。そうかもしれない」

そうだ。初めて会った時から、彼のことはずっと心に残っていた。何であの時、見捨てなかったのか。
あたしが昔、親友を見捨てたことの負い目があったとしても、警察に連絡しなかったのは自分でも変だと思う。


でも、あたしが歩美さんの……ある種の「生まれ変わり」だとしたら。
今、自分が抱いている気持ちも、説明がつく気がした。


コナン君が、少し目を見開いている。

「あ、いや、無理しなくていいんです。自分でも荒唐無稽だと思ってますし」

「そうでもないと思う。少し、自分の中で整理できたから。
……あたしのことは後。もしそうだとすると、薬師丸英華って子は……」

「『イレギュラー』、ですね。城は僕らのことを知っていても、彼女は多分違う。
ちょっと、彼女に接近してみましょう。佐倉が今後、何か彼女に仕掛けるかもしれない」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/13(日) 21:05:24.81 ID:puDX+dt+O<> 「あたしにできることは?」

「彼女と親しくなってください。薬師丸英華は、五輪も狙える水泳選手だ。
だから、取材と称して一度彼女に接近してほしいんです。大丈夫、名刺などはこちらで準備します。
その過程で……これを」

コナン君はリビングに行くと、薄いシールのようなものを持ってきた。真ん中には宝石のようなものがある。

「超小型の発信機です。金路アゲハにつけたのと、同じものです。
服でもいいですが、もっと別の所につけられれば理想です。例えば、通学用のバッグとか」

「これで彼女の行動を?」

「ええ。佐倉が体勢を整え直すには、しばらくはかかるでしょう。
ただ、反撃をしようとした時、僕らよりもまず城を揺さぶりにかかるんじゃないかと。
僕らには手掛かりがないですけど、城は逃げられないですからね。
その時、恐らくは覚醒者である佐倉は、『イレギュラー』への興味も込みで薬師丸英華を狙う。
僕が考えついたぐらいです。佐倉も多分『本来の歴史』に彼女がいないことを知っていたはず」

「つまり、彼女を守れば……」

彼が強く頷いた。

「あるいは、佐倉に近付けるかもしれない」

※80以上で追加質問へ、80未満で特殊イベントへ(バッドイベントではありません) <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/13(日) 21:10:27.91 ID:7tnFxGVDO<> それ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/13(日) 21:14:00.21 ID:puDX+dt+O<> ※追加質問可、2票先取

1 歩美について
2 協力者について
3 鶴岡について
4 その他自由安価

※自由安価は歓迎します。
※これで一応ラストの質問です。その後特殊イベントになります。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/13(日) 21:15:37.95 ID:7tnFxGVDO<> 3 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/13(日) 21:16:20.43 ID:Kri0Tnua0<> 3 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/13(日) 21:55:41.59 ID:puDX+dt+O<> あたしはテーブルに置いてある小さな板チョコを一口放り込んだ。
コーヒーとの相性がいいということで、コナン君が置いている。確か、「カレなんとか」という名前だったと思う。

「そういえば、鶴岡。城の方は色々動きがあるけど、あっちは全然だよね。
佐倉がそっちに回ることはあるのかな」

「鶴岡は……大誠会との絡みもあってマークしづらいというのはあります。堅気じゃないんですよ。
それに、ちょくちょく海外に出ていて行動が捕捉しにくい。
金路アゲハ殺害後、佐倉に的を絞ったのもあって敢えて放置していたというのもあります。
……ただ、確かに今後はその可能性があるかもしれない」

コナン君が腕を組み、唸った。

「佐倉は追いつめられているはずです。とすると、城ではなく鶴岡を取り込もうとするかもしれない。
……僕ならどうする?」

「鶴岡の場所は?」

※コンマ下
01〜50 不明
51〜80 不明だが……
81〜00 知っている <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/13(日) 22:01:07.93 ID:+fZk4kLDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/13(日) 22:08:15.57 ID:puDX+dt+O<> ※コンマ下、追加判定

50以上で国内、未満で海外 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/13(日) 22:09:34.49 ID:X3fiASrxO<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/13(日) 22:23:37.20 ID:puDX+dt+O<> 「一応、ずっとウオッチはしてましたからね。源さんが粘り強くやってくれました。
彼がいるのはメキシコです。どうも佐倉を警戒しているのか、兄と一緒にフィリピンに行くと見せかけそこからメキシコへ飛んだらしい」

「……そこまで分かるんだ」

コナン君が笑いながら、さっき見せた超小型の発信機を見せた。

「こいつが付いているのに、どうも気付いてないらしい。
これがある限り、世界中のどこにいても場所だけじゃなく会話内容まで分かる。
まあ、近くに本人がいないと会話まで聞き取れませんがね。
……どうも鶴岡、アイスキャンディが身体を蝕み始めている。
まだ本格的じゃないみたいですが、それが佐倉と距離を取るようになった理由みたいです」

「とすると、いつ戻ってくるかが問題よね。それは?」

「そこまでは。ただ、学校をずっと休んでもいられませんからね。
期末テストは、恐らくすぐです。一週間後までには戻るでしょう」

「そこで確保する。そういうこと?」

彼が頷いた。

「週末は成田ですね。警察がそこまで嗅ぎ付けてれば別ですが……。
後は、動きがない古畑たち『西』の公安ですね。あまりに動きがなさすぎる」

それもそうだ。彼らは何を考えているんだろう?

コナン君はコーヒーを飲み干した。

「まあ、考え過ぎても仕方ありませんね。ちょっと、お風呂に入りましょうか」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/13(日) 22:25:09.84 ID:puDX+dt+O<> 今日はここまで。特殊イベントから再開です。

なお、古畑サイドもちゃんと陰で動いています。すぐに分かる予定です。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/14(月) 10:34:40.72 ID:ytJ8VoZUO<> 【6月24日、21時46分】


「じゃあ、そろそろ寝ましょうか」

「そだね。おやすみ」

あたしとコナン君の寝室は別だ。一緒に寝てもいいのだけど、「それはさすがにまずい」とコナン君が断ったのだ。
コナン君の中身は29歳の、大人の男性だ。そりゃ、一緒に寝たらまずいと思って当然かもしれない。

……あたしはそれでもいいんだけどな。

その考えを、あたしは頭を振って打ち消した。いけない。そういう趣味はないはずなのに……参ったな。
さっきコナン君が、あたしが彼の恋人の「生まれ変わり」だなんて言うから、妙に意識しちゃってる。

その話がどこまで本当なのかは分からない。でも、もしそうだとして……コナン君は、歩美さんをあたしに重ねてるだけなのかな。
その想いを寝て忘れるために、目を閉じる。……でも、なかなか眠気はやってこない。

※2票先取

1 アユがコナンの所に行く
2 コナンがアユの所に行く <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/14(月) 10:37:54.48 ID:StcHhg4DO<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/14(月) 11:46:00.47 ID:BFYOJJ+DO<> 2 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/14(月) 20:42:11.48 ID:ytJ8VoZUO<> 時間が経っても目が冴えるばかりだ。……困ったな。

昔なら、こういう時は自分を慰めていた。一通り達すると、疲労からすっと眠れるのだ。
ただ、コナン君が来てからはそういうことはしないようにしていた。聞かれるかもしれないし、何より彼に悪いと思ったからだ。

アイスキャンディの効果で、情欲に流されてしまったのが最後のオナニーだ。
それ以外ではしてないし、セックスなんてもう半年以上してない。
……欲求不満、なのかな。でも、壁を挟んだ向こう側には彼がいる。……我慢しなきゃ。


コンコン


その時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。

「……コナン君?」

「すみません、夜遅くに。寝てました?」

「う、ううん。何か寝れなくて。何か話があるならリビング行くよ」

「いえ、いいです。……部屋、入っていいですか?僕も寝れなくて」

「……え」

コナン君が申し訳なさそうに頭を下げた。

「ベッドのとこ、座っていいですか」

「う、うん。いいけど……珍しいね」

ぽすっと、コナン君がシングルベッドに腰を下ろした。
すっぴんを見られるのはいつものことだけど、何か恥ずかしい。

「ごめんなさい。多分寝れないの、僕のせいです。
コーヒーをちょっと飲ませ過ぎちゃいましたね」

「ああ、うん。それはいいの。でも、どうしたの」

「……いや、ただアユさんと話したくなって。迷惑だったら引き揚げます」


ドクン、と胸が鳴った。


「め、迷惑じゃないよ。何か、話したいことって」

※コンマ下
01〜50 歩美のことです
51〜80 ずっと、謝りたいと思ってました
81〜00 僕の中には…… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/14(月) 20:42:33.14 ID:jXT0sOq40<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/14(月) 21:12:09.00 ID:ytJ8VoZUO<> 「……歩美のことです。さっき、変なことを言っちゃって」

「ううん……気にしてないよ。それに、あくまでもコナン君の推測に過ぎないってことだし」

「いえ……誤解があると嫌だったんで」

「誤解?」

コナン君が頷いた。

「僕がアユさんのことを守りたいというのは、あなたが歩美の『生まれ変わり』だからじゃないってことです。
歩美は歩美で、あなたはあなただ。それだけは、言っておきたくて」

一瞬、言葉に詰まった。それは、まさにさっきあたしが考えていたことだ。
コナン君が苦笑する。

「やっぱり、そう思わせちゃってたか……。ごめんなさい」

「ああ、うん。大丈夫。ねえ、あたしからも一つ、聞いていいかな」

「……どうぞ」

あたしは息を吸った。言うのに、少しの勇気がいるから。

「どうして、コナン君はあたしをそんなに思ってくれるの?
ずっと思ってた。コナン君にとってあたしって、何だろうって」

彼が目を閉じた。

「正直に言います。……最初は成り行きと打算でした。上手く行動するには、隠れ蓑が必要だった。
そのうちに、あなたが秋山の被害者であると知った。あなたと一緒に動いていれば、秋山も討てるかもしれないと判断した。
ただ、その過程で……あなたに少しずつ惹かれていったのも事実です。
最初は歩美の代替だったかもしれない。
でも、困難に直面しても乗り越えていこうとするあなたの強さ。その裏にある優しさ。
そして……どこか放っておけない脆さ。その全てが、僕の心を動かしたんです」

鼓動が早くなる。次の瞬間、あたしの唇に彼の小さなそれが触れた。


「僕の姿は、9歳です。中身が29歳であったとしても、受け入れてもらえるかずっと不安だった。
でも、僕はもう心に嘘をつけない。

……好きです。愛してます」


<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/14(月) 21:21:33.43 ID:ytJ8VoZUO<> 言い終えた後、コナン君はふっと我に返ったように身体を離した。
あたしの顔は、今まで感じたことがないぐらいに熱くなっている。

「……すみません。もし嫌なら……忘れてください」

腰を上げようとする彼を、あたしは後ろから抱きしめた。彼の身体が、固まる。


「あたしも……好き。こんなにちゃんと人を好きになったのは、初めてかもしれない」


コナン君が振り返った。……目にはうっすらと涙を浮かべている。

そして。

※コンマ下20以上でR15(?)展開へ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/14(月) 21:22:57.68 ID:BFYOJJ+DO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/14(月) 21:54:55.99 ID:ytJ8VoZUO<> 「むぐっ!?」

再び、唇が押し付けられた。……さっきの、触れたようなキスとは違う。
あたしの唇を割るように小さな舌が挿し込まれ、あたしの舌と絡み合う。

「じゅるるっ!!……あむっ……れるっ……ちゅる……」

彼の舌があたしの舌を強く吸ったかと思うと、歯の裏を優しく撫でた。情熱的なのに、とても繊細で、優しい舌使いだ。
そうかと思うと、唇を甘噛みされる。胸の所と下半身の奥の方に、一気に熱いものを感じ始めていた。

久しくご無沙汰だったのもあるけど、これはそれだけじゃない。……物凄く、巧い。

「ぷはっ。……ご、ごめんなさい。……我慢が利かない」

コナン君の表情は、どこか切羽詰まっていた。……そうか、彼も我慢してたんだ。
もし彼が9歳の身体じゃなく、29歳の本来のそれだったとしたら。彼はもう少し素直に、あたしを抱けたんだろう。

そう思うと、どこかおかしくなった。

「……ふふふ」

「……え、嫌、でしたか」

「違うの。二人とも同じだったんだなって」

あたしは彼がすごく愛おしくなって、今度は自分から舌を挿れた。

「むむっ……あむっ……ちゅるる……んんっ!?」

キスしながら、彼の下半身を探った。……少し小さいけど、彼のそれは既にカチカチに硬くなっている。
彼とのセックスを妄想しなかったわけじゃない。一番不安だったのは、大きさだ。
でも、これなら……なんとかなりそう。

ゆっくりと、パジャマ越しから優しく上下にさする。コナン君の舌の動きが、少し鈍くなった。
子供の性感は、大人のそれより鋭いって聞いたことがある。これでも、少し刺激が強いかな。

その時。

「チュッ……んんんっ!!?」

彼の右手が、あたしのショーツの中にすっと入っていった。小さな指が実に器用にあたしの硬い部分を探り当て、円を描くように撫でる。
別の指は遠慮がちに入り口をタンタンとタップした後、ぬるりと中に入っていった。

コナン君の目が笑っている。あたしは耐えきれず、自分から唇を離した。

「ぷはっ……ああっ!!ちょっと、良すぎ……!!」

「……よかった。僕も『2年近く』してなかったから、上手くできるか不安だったんです。
子供の身体だからどこまでアユさんを満足させられるかは分からないですけど……できるだけ、愛してあげますね」

コナン君は微笑むと、あたしのパジャマのボタンをはずした。
思いが通じ合った喜びと、これからの快感への期待感で、身体が震える。
そして、あたしはベッドに倒れ込み、下から彼を抱きしめた。

「それはこっちの台詞。いっぱい、気持ちよくしてね」

<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/14(月) 22:10:47.65 ID:ytJ8VoZUO<> 【6月25日、9時34分】


「ん……」

彼の体温で、あたしは目を覚ました。少し、身体の芯が重い。
一体、何回しただろう。コナン君の「男の子」はやっぱり少し小さかったけど、とにかく的確にあたしの感じる所を突いてきた。
何より、とても回復が早かった。これには本人も驚いてたけど。

あたしも高崎の時に「売り」をやってた時のテクニックを色々駆使したけど、コナン君に気持ちよくさせられた回数の方が多かった気がする。
……やっぱり「実年齢」の差、だったのかな。それにしても、こんなに巧い人は初めてだった。

そして今この世界には多分いないだろう歩美さんに、あたしは少し嫉妬した。
彼をここまで「育てた」のは、きっと彼女のおかげだろうから。

ふと、枕元のスマホを見る。……ついさっき、着信があったらしい。由依ちゃんからだ。
気怠さを押し殺し、あたしはコールバックする。すぐに彼女が出た。

「もしもし。どうしたの?」

『『警視』、そこにいる?さっきから電話しても出ないんだけど』

あたしははっとなって、コナン君を揺さぶった。彼女の声色が、何かあったことを示していた。

「ねえ、コナン君、起きて。……電話だよ?」

「ん……んん……誰から?」

「由依ちゃんから」

その名を聞いた時、彼の目が鋭くなった。

「しまった。……代わりました。……え?」

コナン君から、表情が消えた。そして、すぐに電話を切る。

※コンマ下
01〜25 「おやっさん」が、消えた??
26〜90 「おやっさん」は、しばらく動けない?
91〜00 魚塚さんが、消えた? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/14(月) 22:10:56.41 ID:StcHhg4DO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/14(月) 22:32:36.42 ID:ytJ8VoZUO<> 「『おやっさん』は、しばらく動けない……」

「えっ、どういうこと?」

「『公安』が動いたんですよ。埼玉県警捜査1課に、増田清良が配属された。
古畑の時は、こちらもそこまで動いてなかった。だから、まだそれほど内通者の存在を怪しまれてもいなかった。
鬼束と練川については、アゲハの犯罪を恐れた若葉が勝手に自然死として押し進めてくれてましたしね。
どういうことか、アゲハの時に古畑を引っ込めてくれたのも幸いでした。
しかし……今回は完全に埼玉県警、それも捜査1課にバッドエンド・ブレイカーがいると決め打ちしている。
しばらく、情報提供はできないと『おやっさん』が」

浮かれていたあたしの気分は、一気に冷めた。
コナン君たちは、追いつめられるかもしれない。

「それって、かなりまずいんじゃ……」

「まだ『おやっさん』の身元は特定されてません。ただ、特定されたら……一気に古畑は喉元に食いついてくるかもしれない。
増田は、古畑の同僚です。『西の公安』の、もう一つの切り札と言ってもいい」

彼が大きく溜め息をついた。

「……これからの行動には、細心の注意が必要ですね」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/14(月) 22:34:27.25 ID:ytJ8VoZUO<> 今日はここまで。その前に一つだけ判定を入れます。

※コンマ下、50以上で次はジョーパート(未満なら仁パート) <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/14(月) 22:35:50.72 ID:Kyx7jSoH0<> 乙 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/15(火) 13:07:02.17 ID:j3Dur38MO<> 【6月24日、17時46分】


チン、と電子レンジの音が鳴った。僕は夕食の冷凍パスタを取り出す。
母親は帰ってこない。家に帰るとしたら1時頃。彼女の睡眠時間は、一日4時間弱だ。
毎日の職務は超人的とも思うけど、尊敬はしない。ただ金を落とすだけの存在、それがあの女だ。

僕にとっての家族は、ヤクの一家だった。小学生の頃、辛い時にはヤクの両親が慰めてくれた。心から尊敬している。
その彼らに、僕は深い傷を付けてしまった。手を出したのは翔一だけど、ヤクが拐われるきっかけを作ったのは、僕だ。
毛利刑事が上手く説明してくれたからか、ヤクの両親は僕を責めなかった。でも……罪の意識は、重い。

化学調味料まみれのパスタを、僕は野菜ジュースで流し込んだ。アイスキャンディの効き目が残ってるせいか、酷く不味く感じる。
今日はもう、寝てしまおう。寝れるかどうかは分からない。でも、とにかく今日のことを忘れたかった。


ピンポーン


チャイムが鳴る。インターフォンから玄関を確認すると、そこにはヤクがいた。鍋を抱えている。

僕は出るかどうか、迷った。彼女に合わせる顔なんて、あるはずがない。

でも、僕はヤクに、本当のことを伝えていない。
なぜ彼女が拐われなければならなかったのか。佐倉翔一とは、何者なのか。
アイスキャンディや、僕の余命についても、教えてない。そして、僕が犯した2つの殺人についても。

ここで出なければ、きっと彼女は帰るだろう。僕を見放してくれるかもしれない。
ただ、もし……僕が彼女と残る時間を生きたいのなら、ちゃんと話すべきだ。それが、彼女を再び危険に巻き込むことになったとしても。


僕は……


※3票先取

1 居留守を使う
2 出た上で玄関で軽く話す(真相については教えない)
3 出て彼女を家に上がらせる。真相を部分的に話す(勉強会の存在とアイスキャンディ関連、過去の殺人などについては黙っている)
4 出て彼女を家に上がらせ、全てを告白する(拒絶される可能性はあり)

<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/15(火) 13:08:27.84 ID:j3Dur38MO<> 3は勉強会、アイスキャンディ関連は話すという意味です。念のため。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/15(火) 13:17:13.95 ID:BkZwROhDO<> 3 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/15(火) 13:29:03.74 ID:NYemt36+0<> 4 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/15(火) 14:03:09.95 ID:eI6aRHVDO<> 4 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/15(火) 14:14:25.05 ID:o9/kvrwb0<> 3 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/15(火) 14:52:29.70 ID:tkp49o7X0<> 4 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/15(火) 20:36:34.51 ID:xifgnLDqO<> 僕は、全てを話すことにした。ヤクが僕を拒絶するなら、それはそれで構わない。
ただ、彼女がこんな目に遭った本当の理由は、ちゃんと知っておいてほしかった。

意を決して、インターフォンに出る。

「ヤク」

『……ジョー?あの、おかず持ってきたんだけど……』

「うん、ありがとう。大事な話が、あるんだ。上がってくれないか」

『えっ……』

玄関を開けると、ヤクが一瞬ビクッと震えた。僕のただならぬ気配に、気付いたからだろうか。
僕は無理矢理に微笑み、「上がって」と促す。小さく頷くと、ヤクは鍋を落とさないようそおっと靴を脱いだ。

「今日のは?」

「おじや。オレが、食欲ないだろうからって、ママが」

蓋を開けると、ふわっと鶏の香りが拡がった。まだできたてみたいだ。

「熱くなかった?」

「平気。このぐらいは」

僕は茶碗と匙を持ってきた。ヤクがおたまでおじやをよそう。

「……何か、新婚さんみたいだね」

「……そうだね」

ヤクが言う、そんな未来もあり得たんだろうか。でも、それは決して来ない。瞼の裏が熱くなる。
僕は必死でそれを耐えた。……泣いちゃダメだ。

「……ジョー?」

「いや、何でもない。まずおじや、食べようか」

#

食事はどことなくぎこちなく進んだ。ヤクが週末うちに来るのはたまにあることだけど、こんなに居心地が悪いのは初めてかもしれない。

一通り食べ終わり、僕は食後のお茶を出す。

「……大事な話があるって言ってたけど、それって何?」

俯き加減に、ヤクが切り出した。僕は軽く唇を噛んで、口を開く。

「……ごめん。……ヤクが拐われたのは、僕のせいだ。翔一は、僕を狙った。警察に協力するのを防ぐために」

「……知ってる」

「え」

「……知ってるよ。『勉強会』のこと。その勉強会のリーダーが、あの翔一って奴なんでしょ。
でも、何でそこまでされなきゃいけなかったかは、オレには分からない。何か隠していること、あるんでしょ?」

僕は少し驚いた。そこまで知ってたのか。あるいは、毛利刑事から聞いたのかもしれない。
ただ、細かく説明する手間は省ける。僕は警察に感謝した。

「……うん。ショックかもしれないけど、落ち着いて聞いてほしい。
……僕は、人を殺している。それも、二人も」

長い1時間が、始まった。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/15(火) 21:13:45.05 ID:xifgnLDqO<> #

酷く、時間が遅く感じられた。ヤクはもっと怒ったり泣いたりすると思ってたけど、ずっと俯いて、何かに耐えているように聞いていた。

僕がヤクのストーカーを殺したこと。翔一になぜかそれを知られ、半ば脅されるような形で「勉強会」に入れられたこと。
腐った社会を壊すための「革命」を持ちかけられ、愚かにもそれに乗ったこと。
決意表明と銃の練習を兼ねて、ホームレスを皆で射殺したこと。そして……その過程でアイスキャンディを飲んだこと。その全てを、僕は打ち明けた。

「勉強会」がバッドエンド・ブレイカーに狙われていることも話した。そしてその流れの中で毛利刑事と出会い、それを悟られたのが今日の誘拐の原因だとも。

ヤクが一番反応したのは、アイスキャンディの下りだった。僕の余命が1年しかないと言った時、ヤクは静かに涙を流した。

「……嘘、だよ、ね」

「……僕だって、信じたくはないよ。でも……あの刑事は、そう言っていた。彼が嘘をつくとは、思えない」

「……そ、んな……ひぐっ……」

僕も感情を抑えきれなくなりそうだった。……未だに、実感がないんだ。でも、あの刑事の言うことを否定もできなかった。
あんな薬に、副作用がないわけがないんだから。

部屋には、二人の泣き声があった。……でも、これで終わりじゃ、ない。

「……ごめん。僕は、人間失格だ。ずっと、ヤクを騙していたんだ。
そしてまた……狙われるかもしれない。翔一には、人間として大事な何かが、全くないんだ。
今日は逃げたみたいだけど、翔一は警察に捕まらない限り、また追ってくる。その時は……今日みたいに逃げられるかは、分からない」

「……何が、言いたい、の」

「……分からない。でも、ヤクが今まで通りの生活を送りたいなら……僕とは二度と、関わらない方がいい。
僕はゆっくりと朽ちていく。ヤクは、僕のようなカスに関わらず、普通に生きていけばいい」

ヤクはしばらく黙っていた。

そして。

※コンマ下
01〜20 黙って部屋を飛び出した
21〜65 ふざけないでよっ!!
66〜85 ごめんね……
86〜00 ねえ……そっち、行って、いい? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/15(火) 21:17:38.03 ID:BkZwROhDO<> ううん <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/15(火) 21:27:24.40 ID:xifgnLDqO<> バンッ!!

机を叩いたかと思うと、ヤクは無言で部屋を飛び出していった。涙の飛沫だけを残して。

「……は、はは……」

僕は一人残った部屋で、乾いた笑いを浮かべた。

ああ、これでいい。ヤクは僕を見棄て、僕は静かに死んでいく。あるいは、翔一が僕の命を奪うかもしれない。
ヤクが傷付けられるなら、僕はその身を投げ出そう。だけど、そうなる前に僕は命を差し出すだろう。


馬鹿は僕一人でいい。

僕のような馬鹿のために、ヤクの人生が台無しになる必要はない。


そう思いながら、僕は虚ろに笑い続けた。

※コンマ下30以下で重大イベント(99か00で別のイベントに差し替え)
31以上で仁パートへ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/15(火) 21:28:52.53 ID:eI6aRHVDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/15(火) 21:29:22.67 ID:xifgnLDqO<> 今日はここまで。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/16(水) 09:24:35.41 ID:+NLtchCfO<> 【6月25日、8時31分】


職場に行くと、何やらざわついていた。木暮管理官と誰かが、何やら話している。……女か?

「毛利君か」

木暮管理官が、渋い顔でこちらを見る。女もこちらを向いた。……こいつは。

「おお。毛利刑事じゃないか」

「知り合いか」

「いや、別の現場で会いましてね。どうも、増田清良警部補です。よろしく」

差し出された手を握るか、俺は一瞬躊躇した。躊躇いがちに右手を出すと、存外に強い力で握られた。……警告か、牽制か。

「増田君は安川君の代わりに、警察庁から派遣された。堺課長代理からは、くれぐれもよろしくということだ」

「ああ、君らの邪魔はしないから。あくまで一刑事として、職務に邁進いたします……と。
堺課長代理に呼ばれてるんで、一旦失礼。後で会議があるんですよね?」

「ん、0900からだ」

「了解。んじゃまた」

ひらひらと手を振りながら、ショートカットの女が去っていく。

「……どう思う」

木暮管理官の言葉に、どう返すべきか。

1 さあ……ただのヤスの穴埋めとも思えませんが
2 ……ちょっと、後で重要なお話が(内通者の件について話す)
3 ……すみません、後で重要なお話が。できれば赤さんも交えて(覚醒者など一通りのことを話す)
4 自由安価

※2票先取 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/16(水) 09:29:56.71 ID:hogi4yVd0<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/16(水) 10:26:06.57 ID:qaaRYSmDO<> 2 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/16(水) 13:20:31.56 ID:2iyQ5pqmO<> ……今大事なのは、警察内部の内通者のことだ。あれは、俺だけを監視しているんじゃない。別の狙いもある気がする。

「……ちょっと、後で重要なお話が」

「ここでは話せない、か」

「ええ。できれば赤さんも交えて。……ちょうど来ましたね」

「ん?」と赤木警部が俺たちを見た。

「赤木君、今から少し時間はあるか」

「ああ、いいですが。……仁もいるということは、昨日の話か」

「そうなります、ね」

俺たちは煙草部屋に行った。幸い、まだ誰もいない。ここならば小声で話す分には聞かれないだろう。

#

「……なるほど、な」

一通り話を聞いた木暮管理官が白煙を吐いた。彼がマルボロの灰をトントンと落としたのに続いて。赤木警部が口を開く。

「俺より先にバッドエンド・ブレイカーが来てた点からして、行動を先回りされてたと思います。
で、話を総合するに、察庁の増田って女はこちらの内通者を押さえるために送られた、と」

「俺が警察庁に呼び出されたのも、あるいは疑われたからかもしれません、ね」

俺は嘘をついた。覚醒者の話は、少なくともまだできない。
木暮管理官がタバコをもう一度吸った。

「しかし、そうなると安川君も同じ目的だったことになるな」

「どうでしょう。あるいはそうかもしれません」

これも嘘だ。ヤス、いや古畑の狙いは俺だった。あるいは、彼自身が「西の公安」のS(スパイ)だった。
恐らく、向こうでも何かあったのだろう。そして、俺の監視も兼ねて、増田を送り込んだ。そんなところか。

木暮管理官が大きく息を吐いた。

「彼は買っていたんだがな。……そうか」

「で、どうします?察庁に荒らされるだけ荒らされるのは嫌っすよ?これは俺たちのヤマだ」

「増田君が、過度に介入しない限りは放置だ。無論、察庁マターということで押さえ込みにかかったなら、全力で抵抗させてもらうがね。
そのためにも、先に内通者を特定せねばならないが……心当たりは」

※3票先取

1 いえ……
2 それはあなたです
3 それは青葉です
4 それは白島です
5 ひょっとしたら、という男がいます(白田を疑う)

※推理パートです。伏線は張ってますが、かなり難しいかと思います。
1でも話は進みます。間違えるとその分色々遅れます。
2〜5の場合、推理考察があるのが望ましいです。

※夜再開予定です。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/16(水) 13:22:25.02 ID:2iyQ5pqmO<> 自信がない場合は1をお勧めします。

ヒントは金路アゲハと若葉周りの記述です。ある人物が不自然な行動をしているはずです。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/16(水) 16:27:22.71 ID:CAdyMkMtO<> 上げます。

目安として2100までに決まらない場合は強制的に1となります。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/16(水) 20:21:29.64 ID:7xN+ZO5cO<> 上げます。2100で強制終了です。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/16(水) 20:34:53.20 ID:ZGjzM8rDO<> 1 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/16(水) 20:59:08.05 ID:7xN+ZO5cO<> では1とします。通常進行ルートです。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/16(水) 21:53:43.52 ID:7xN+ZO5cO<> 誰だ?怪しい動きをしていた奴は思い浮かばない。3係でなく、4係だろうか?

「いえ……今のところ、見当も」

「俺もです。ただ、しばらく情報は……」

赤木警部に、木暮管理官は頷いた。

「そうだな。当面、バッドエンド・ブレイカーと佐倉翔一関連の捜査は君ら2人に任せる。無論、青葉君や白島君にもやってもらうが……コアなのは君らだ。この件は隠密に頼む」

「了解です。……と、そろそろ会議ですね」

時計は9時に迫っている。増田の紹介と、アイスキャンディの鑑定結果報告の3、4係合同会議が始まる。

#

「……っと。本日付で着任しました、増田清良です。一兵卒として頑張ります」

増田の自己紹介が終わったが、パチパチと拍手はまばらだ。俺たち3係だけでなく、4係も不満そうに彼女を見ている。

「ありゃりゃ、あんま歓迎されてないみたいだね……」

「まあそのうち慣れる、気にしないで欲しい。……さて、3係の毛利警部補が城隆一郎少年から押収したアイスキャンディの鑑定結果だ。
今日は科捜研の協力をあおいだ。担当の絹川研究員だ。よろしく説明頼む」

小柄な男がぴょこりと頭を下げた。

「アイスキャンディの組成はグルタミン酸の異性体がメインです。ただ、こんなことをぐだぐだ言っても仕方ないので、これは後回し。
重要なのは、その効果と毒性。こいつは強烈です。まず効果から。人間の脳のリミッターを外すだけじゃなく、思考まで加速させる効力を持ってます。しかもご丁寧に、筋肉に働きかけるホルモンを分泌させる。強力なアナボリックステロイドみたいなもんです」

会議室がざわついた。アナボリックステロイドと同等の効力があるアイスキャンディ?聞いたことがない。
やはり城に渡されたものは、俺の知るそれではなさそうだ。

木暮管理官が、険しい表情で訊く。

「毒性は」

「こちらも強烈ですね。正確には詳細な分析が要りますが、効力が出ると小脳海馬の――人体の制御を司る箇所です――そこの機能が麻痺します。
つまり、体温などのコントロールが利かなくなるわけですね。そうなると、恐らく多くの場合……飲んで一定時間後に高熱に冒されます。まあ、大体は数時間以内に死ぬでしょう。
そしてよしんば耐えられても、脳細胞はかなり壊死する。効力が鈍くなるんで副作用は低減されるでしょうが、まあ飲み続けたら当然死にますね」

部屋がざわついた。増田の顔を見ると、余裕の笑みは消えている。彼女すら知らないものだったか。

「ありがとう。……こんなものを野放しにしていたら、間違いなく社会は混乱するな。
捜査4課にも話をつけておこう。立派な脱法ドラッグ、それもとびきり危険なものだな。
この出元である佐倉翔一を、重要参考人と指定する。まだ少年だが、少なくとも生産者とは繋がっているはずだ。
なおメディアへの漏洩は厳に控えてもらいたい。与える混乱が大きすぎる。カク秘案件として、捜査願いたい」

「「「了解」」」

木暮管理官が、辺りを見渡す。

「埼玉県警の威信が懸かっていると言っていい。若葉前課長の一件については、一部メディアが嗅ぎ付きつつある。
そのことも踏まえ、全力で当たること。本日夕方に、捜査4課も交えたブリーフィングを行う。金路アゲハ殺害事件との絡みもある、4課マターだからといって手を抜かぬこと」

「「「はいっ!!」」」

俺は部屋を見渡した。もし内通者がこの中にいるなら、多少の動揺はあってしかるべきだが……

※コンマ下95以上で手掛かりあり <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/16(水) 21:55:07.17 ID:ZGjzM8rDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/16(水) 22:02:21.20 ID:7xN+ZO5cO<> ちょっと中途半端ですが今日はここまで。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/17(木) 09:29:56.98 ID:xPRbsPutO<> 青葉も白島もいつも通りだ。4係の連中にも妙な所は見受けられない。
そう簡単に尻尾は出さない、ということか。それとも……。

会議室を出ようとした俺を増田が捕まえた。

「……君は、知ってたのかい」

「何をだ」

「アイスキャンディだよ。あのタイプは聞いたことがない」

「いや、初耳だ。嘘じゃない」

「なるほどね……」

増田が黙った。俺は彼女をその場に残し、立ち去ろうとする。

※コンマ下
01〜35 フフっと増田が笑った
36〜70 何もなし
71〜00 ちょっと、取り引きしないか <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/17(木) 09:35:18.69 ID:YYVeAE1j0<> ほい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/17(木) 09:55:45.71 ID:xPRbsPutO<> 増田が何かを言いかけたようだったが、俺は無視した。邪魔をするなと言ったのは、彼らの方だ。大体、親しくする義理は今のところない。

デスクに戻ると、私用スマホに亜衣からのメッセージが入っていた。昨日の夜、城の話などをまとめて送った返信だろう。
警察のメールでは傍受の可能性があるので、連絡方法は切り替えている。

#

『昨日の件、了解いたしました。週末の件も了解です。
佐倉、及び鶴岡についての情報は今記憶を探っている所です。追ってご連絡いたします。ただ、あまり期待はしないでください。

P.S お母さんと上手く行っているようで何よりです。』

#

最後の一文を読んで、俺はふっと笑った。悟られたか。
ともあれ、俺より記憶が鮮明な亜衣が今のところの頼みの綱だ。

赤木警部が俺の肩を叩く。

「何だ、スマホ見てにやついて。女か?」

「……違うような、そうであるような、という感じですね」

「何だそりゃ。まあ、仕事一筋のお前に潤いができるのは、悪いことじゃねえが。
……さて、どうするよ。一応悟さんからはツーマンセルでフリーに動けるようにはしてもらってるが」

「まずは警視庁、ですかね。ただ昨日の反応からして、望み薄ですが。爆弾騒ぎの捜査が、どこまで進展しているか」

「だな。後は城、薬師丸へのヒアリングか。一晩たって何か動きがあったかだな」

まだ佐倉、そしてバッドエンド・ブレイカーに辿り着く手掛かりには足りない。警視庁に行った後、どこに向かうべきか。

1 城に会う
2 英華に会う
3 増田の様子を見る
4 勾留中の若葉に会う
5 その他自由安価

※2票先取 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/17(木) 10:07:54.67 ID:egnoieXa0<> 2
昨日の城からの告白は大人からのフォローがないとヤバイよね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/17(木) 10:42:07.23 ID:eykpMJ0DO<> 2 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/17(木) 12:56:18.98 ID:xPRbsPutO<> 城も心配だが、やはり一般人である薬師丸英華の精神状態は心配だ。一度、訪問しておこう。

「とりあえず後で薬師丸の家に行きましょうか。では、桜田門に向かいましょう」

#

「警視庁捜査1課、強行4係係長の兵藤です。どうぞこちらに」

対応することになったのは、小柄な初老の紳士だ。刑事にはかなり珍しいタイプと言える。

「ありがとうございます。埼玉県警の赤木です。こちらは、毛利。金路アゲハ殺害事件の担当です」

「……ああ、あの。どうですか、その後」

「直接の手掛かりは。しかも、察庁から来た課長代理主導で捜査が動かされていて、窮屈で仕方ありませんよ。
そんなわけで、別動隊として俺らが勝手にやっているということです。名目上は、別の事件の捜査で」

「……ほう?」

興味深そうに兵藤が身を乗り出してきた。

「詳しくお話を聞かせてもらえませんか」

赤木警部が俺を見た。

「これについては私が」

俺は一通り、今回の事件の概略を話した。バッドエンド・ブレイカーの関与、そしてアイスキャンディ。もちろん、覚醒者や公安の存在については伏せておいた。
兵藤は目を輝かせてそれを聞いている。

話し終わると兵藤が「……いやあ」と声をあげた。

「確かに警察庁が出張る事件のはずですね。私が直接触れないのが残念でなりません。
で、あなたたちが狙う本命は、アイスキャンディの出元である佐倉翔一、と」

「ええ。昨日の爆弾騒ぎの中で薬師丸英華という少女が誘拐されています。彼女は佐倉のグループの一人、城と一緒に自力で脱出に成功しました。
その誘拐犯の主犯は、間違いなく佐倉です。間違いなく、あの現場にいたはずです。
そして、爆弾騒ぎを起こしたのはバッドエンド・ブレイカーの可能性が極めて高い。奴……いや、奴らの狙いも佐倉翔一でしょう。
そこで、現状の捜査状況をうかがいに来たわけです」

兵藤はティーカップに口を付けた。紅茶党らしい。

「なるほど。あなた方がここに来た理由、よく分かりました」

※捜査状況は……

(バッドエンド・ブレイカー関連、コンマ下)
01〜60 手掛かりなし
61〜80 興也の情報あり
81〜90 上+源の情報あり
91〜97 上+協力者の情報あり
98〜00 身柄特定済み

(佐倉関連、コンマ下2)
01〜80 手掛かりなし
81〜95 移動先がかなりの程度判明
95〜00 気になることがありましてねえ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/17(木) 12:56:53.29 ID:/D4VFV3u0<> え <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/17(木) 12:57:39.42 ID:pHReUsODO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/17(木) 20:16:05.55 ID:sYiKhNXXO<> 「……しかし、生憎捜査が進んでないのです。爆弾テロということで、真っ先に過激派を疑ったのですが、初動を間違えましたね」

「目撃者もない?」

「あれだけの騒ぎですからね。いて不思議ではないのですが、騒ぎで隠れた格好です。昨日の電話を受けて調べましたが、現状では何も」

兵藤が首を振る。

「爆弾の方は?」

「それについてはある程度。スマホが起爆スイッチになっていたようですねえ。ただ、破散したスマホ以外に物証がない。
バッドエンド・ブレイカーが、あなた方の言う通り複数のプロであるとするなら、相当に厄介です」

「……そうですか。進展があると、期待していましたが」

「お役に立てず、申し訳ない。ただ、警視庁の威信にかけて、爆弾犯は検挙してみせます」

赤木警部が溜め息をついた。予想はしていたが、なかなかしんどいものだ。

※コンマ下50以上で会話継続
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/17(木) 20:18:41.66 ID:sDi8/I1S0<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/17(木) 20:27:42.43 ID:sYiKhNXXO<> 「それにしても、いくつか気になることが」

「何ですか?」

兵藤が紅茶を一口口にする。

「いえ、大したことではないのですが。まず、バッドエンド・ブレイカー。なぜあなたは複数犯と感付いたのですか?
第2に、アイスキャンディ。ほとんど市場に出回ってないのに、それが危険に過ぎる麻薬と問題視するのは?鑑定結果が出る前から動いているのは、やや不自然です。
そして最後。……あなた方が、バッドエンド・ブレイカーより佐倉翔一を重視しているかのように見える理由です。
大量殺人犯ではなく、子供、それも麻薬の横流ししかしていないように見える彼を躍起になって追っている。実に不思議です」

俺の顔は固まった。こいつ、油断ができない。

フフフと兵藤が笑った。

「気になることがあると、聞かずにいられないのが私の悪い癖でして。……そこの毛利刑事。まだ何か隠してませんか?」

※コンマ下65以上で追加情報 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/17(木) 20:28:44.24 ID:33Nm6WhNo<> はい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/17(木) 20:29:17.17 ID:rDLD3ocW0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/17(木) 20:36:34.09 ID:sYiKhNXXO<> ※仁の「記憶」に兵藤はない

こいつ……相当に切れる。だが、覚醒者などの話は、そう迂闊に人に話すものでもない。「西の公安」を完全に敵に回す可能性もある。
さりとて、正直に言わねば警視庁の協力は得られないだろう。

「おい、あんたうちのに何突っ掛かってんだ」

「赤さん、落ち着いて」

俺は赤木警部を制した。

ここは……

※2票先取

1 それは言えません。関係のないことです
2 信頼できるネタ元からの情報です。ただ、それはあなたには明かせない
3 仕方ない……信じるも信じないも勝手ですが、本当のことをお伝えします <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/17(木) 20:46:07.24 ID:6R1iSekDO<> 3 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/17(木) 20:49:43.77 ID:pHReUsODO<> 3 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/17(木) 21:28:02.25 ID:sYiKhNXXO<> ここは……仕方ない。全てを話した方がいいだろう。この男を納得させるためには、それもやむを得ない。
それに、警視庁に味方が増えることは、決して悪くはない。口止めだけは、しっかりやっておく必要はあるが。

「……赤さん。そして兵藤係長。ちょっと、話が長くなりますが、いいですか」

「……本当に、隠し事があるっていうのか」

俺は頷いた。赤木警部が信じられないと言いたげに、目を見開いていた。
兵藤は好奇心を隠さずに前のめりになっている。

「やはり。どんな事情がおありなのでしょう」

「……まず、この件は口外しないで頂きたい。俺の刑事人生に関わることです。
そして、信じないなら捨て置いて下さい。今から話すことを、すぐに真実であると証明するに足るものを、俺は持たない」

俺は、説明を始めた。

#

時間にして2時間。長い説明が終わった。赤木警部は唖然とし、兵藤は「……素晴らしい……!」と感嘆の声を漏らしている。

「奇想天外ですが……なるほど、そうですか。バッドエンド・ブレイカーについては、これでかなりの疑問が解決します。
犯行の痕跡がほとんどないこと、凶悪犯の前にだけ現れ、犯行前に殺していること。ひどく組織的であること。納得がいきます。
あなた方が佐倉翔一を優先している理由も理解できました。まだ起きていない事件の犯人とはいえ、アイスキャンディは流通し始めているかもしれない。
それほどの凶悪な麻薬であるなら、それを追うあなた方の行動も理解できる。
毛利刑事、あなたに未来の記憶が本当にあるのかは分かりませんが、これだけは言えます。……私の長い刑事人生で、これは最大のヤマだ」

兵藤は興奮ぎみに頷いた。事件そのものの解決を楽しむタイプの男のようだ。

「仁……なぜ黙ってた」

「申し訳ありません。俺は警察庁……いや、『西の公安』にマークされてます。迂闊に人に言えなかった。
今日、内通者として俺が疑われたから警察庁に呼び出されたと言いましたが、あれは嘘です。
初めから、俺が覚醒者だと疑われていた。それで、引き抜きにあったんです」

「じゃあ、ヤスも」

「ええ。そもそもが偽名でした」

ダンッ!!

赤木警部が唇を噛み、机を激しく叩いた。空っぽのティーカップが倒れる。

「……ざっけるなっ!!全部、全部嘘だったってのか!?じゃあ、あの増田も」

「俺は面識はないですが、間違いなく覚醒者です」

「クソがっ!!」

もう一度、赤木警部が机を叩く。身体がわなわなと震えていた。

「……本当に、申し訳ありません。俺の中にしまうつもりでした。無駄な混乱を、生じさせたくなかった」

「……他には、誰にこのことを」

「宮原美和……俺の恋人と、その娘亜衣。亜衣は覚醒者です。情報提供者、SHELLYでもある。
そして、白田兵次郎。彼は複数回のループを経験しているそうです」

「兵さんが?」

赤木警部が呆然とし、「嘘だろ」と一口、呟いた。

兵藤は相変わらず興奮ぎみだ。

「実に興味深い。私としては、あなたが現代に戻った原因となった出来事が何かに興味が向きますが。
ともあれ、これだけの話です。うちとしても、是非協力をしたい」

「その気持ちはありがたいですが……赤坂の爆破事件で動きがあったら、それを伝えるだけで当面はいいです。
もちろん、アイスキャンディや佐倉翔一の情報でも歓迎ですが」

「いいでしょう。その程度なら喜んで」

※コンマ下80以上で追加情報 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/17(木) 21:29:19.96 ID:rDLD3ocW0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/17(木) 21:38:58.40 ID:sYiKhNXXO<> ※兵藤は白田を知っている

「それにしても……白田さんですか。実に、実に興味深い」

「あんた、兵さんを知ってるのか」

赤木警部に、兵藤は笑いかけた。

「勿論ですとも。埼玉県警捜査1課が誇る名刑事。私も昔、何度か現場でお会いしたものです。
彼はコーヒー党、私は紅茶とそこは趣味が合いませんでしたが、色々勉強させてもらいましたよ。彼は、今どこに」

「鶴ヶ島でカフェを。結構な評判店です」

「そうですか。では、今度行かせてもらいますか。店名は」

カフェ・ドゥ・ポワロの名を告げると、うんうんと兵藤が頷いた。ひょっとしたら、週末にでも押し掛けてくるかもしれない。

「ありがとうございます。いや、実に面白い話を聞かせてもらいました。赤坂の捜査の重要情報です。心より感謝します」

「え、ええ……」

どうにも妙な男だ。ただ、心強い味方となるかもしれない。とりあえず、今はそう思おう。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/17(木) 21:39:25.37 ID:sYiKhNXXO<> ここで中断します。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/18(金) 08:55:03.62 ID:YvWinhg1O<> #

「……しかし、お前がタイムスリッパーとはなあ。いや、厳密には違うのか」

薬師寺英華の家に向かう途中、赤木警部が車外を見て呟いた。

「すみません。……騙すつもりは」

「ああ、そりゃもういい。ヤスにはキレてるが、お前の事情は分かった。責めねえよ。
というか、今はお前の方が随分年上になるのか。敬語使うべきかね」

「いえ、あくまで未来の記憶があるだけで、人格は20年後の俺とは大分違うらしいですから。
今まで通りの対応で構わないです」

「ははっ、冗談だよ。……なあ、一つ聞いていいか?」

赤木警部が、真剣な表情で俺を見た。

「何ですか?」

「未来の日本、東西に分裂するとかひでえことになってるんだろ?俺についての記憶、あるのか」

※コンマ下が05以下か95以上である <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/18(金) 08:58:38.26 ID:/gL1qtvDO<> どれどれ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/18(金) 09:22:44.56 ID:YvWinhg1O<> 「いえ……熊谷大虐殺の後、精神的に壊れかかった俺は1年休職していたようです。戻ったら、もう赤さんはいませんでした。木暮管理官も。
事件の責任を取らされ、更迭させられたと見るのが自然です。だから、詳しいことは何も」

「そうか。まあ、未来のことを知りすぎても面白味はねえしな。それに、未来はもう変わってるかもしれねえ。
愚問だったな、忘れてくれ」

赤木警部が苦笑しながら窓の外を見た。梅雨時とは思えないほどの快晴のせいか、妙にさっぱりしているようにも見える。

「しかし、どうするかね。お前のこと、悟さんに報告するか?あまり情報は拡散してほしくなさそうだったが」

「警察内部にバッドエンド・ブレイカーの協力者がいる点を踏まえれば、慎重になるべきですね。
兵藤係長に教えたことですら、結構なリスクだと思ってるぐらいなので」

「だよなあ。まあ、俺は黙ってるが、あのおっさん妙に肚の底が読めねえ。信用していいもんなのかね」

「頭がキレるのは確かです。俺たちだけじゃ動くのにも限界がある。増田の目もありますしね」

「それもそうか。……っと、この辺だっけか」

薬師丸英華の家が近付いている。

※コンマ下
01〜20 今日は具合が悪いと……
21〜70 英華はまだ帰ってない
71〜90 今日は具合が悪いと……「刑事さん?」
91〜00 英華なら、東京のスイミングスクールの方に <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/18(金) 09:24:40.41 ID:JIc6lUqgO<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/18(金) 19:20:22.06 ID:WOz2BMvHO<> #

「そうですか、では改めて」

薬師丸英華はまだ帰宅していなかった。

「休んでいる可能性も考えて、少し早めに来たがちと早すぎたな」

「まあまだ15時そこそこですからね。授業が終わるかどうかといったところですから、部活があるなら3時間は待ちそうです」

「くー、このクソ暑い中で長時間の車内待機は辛いな。城のとこにも行ってみるか」

薬師丸と城の家は徒歩3分と近い。試しに行ってチャイムを鳴らしたが、やはり留守だった。こちらもまだ戻ってないらしい。

「空振りです」

「だよなあ。じゃ、とりあえず待つか。そのうちに帰ってくるだろ」

薬師丸の自宅近くのパーキングに車を停め、入れ替わりで待つ。空梅雨が心底恨めしい。

※コンマ下
01〜20 帰ってこない
21〜80 ……もう帰ってきたぞ
81〜00 帰ってこない……? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/18(金) 19:24:26.23 ID:RgpsxSP00<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/18(金) 19:33:42.40 ID:WOz2BMvHO<> 待つこと20分。……下を向いて、とぼとぼ歩いてくる少女がいた。
髪は乱れ、元気さの欠片もないがあの肌の色は間違いない。……もう帰ってきたのか。

「……薬師丸英華だ」

普通に考えれば学園大学駅からここまで小一時間かかる。恐らく、早退だろう。
俺は彼女に近付く。

「薬師丸さんだね。昨日はありが……」

俺の存在に気付いていないかのように、彼女は俺を素通りした。……これは何かあったな。
俺は彼女の前に回り込み、立ち塞がる。

「……一体何が?」

「…………」

か細い声で聞き取れない。

「……何だって?」

※コンマ下
01〜30 もう、関わらないで下さい……お願い、します
31〜70 ……どうして、どうしてこうなっちゃったんですかっ!!?
71〜00 ジョーを、ジョーを助けてっ!! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/18(金) 19:37:35.00 ID:BsulPWFDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/18(金) 19:50:28.96 ID:WOz2BMvHO<> ※00のため特殊展開になります

薬師丸が顔を上げた。目が涙でグシャグシャに濡れている。

「……助けて……ジョーを、ジョーを助けてよっ!!」

彼女が俺の胸を掴み、「うわあああああ!!!」と泣き出した。……やはり、何かあったか。
しばらく泣かせたいだけ泣かせ、少し時間をとる。落ち着き始めた所で、俺は静かに語りかけた。

「昨日の夜、何かあったな。……ここだと往来がある、君の家に行こ……」

激しく首を振られ、拒絶された。

「家は……ダメです。パパとママを、これ以上心配させたくないから」

なるほど、何とか取り繕って登校したはいいが、限界がきたということか。

「分かった。……少し、落ち着こう。絶対に会話が漏れない所がある。警察署じゃないから安心してくれ」

俺はスマホを取った。

「赤さん、薬師丸英華が帰宅しました。車をこっちに。少し移動します」

『えらい早かったな。しかし、どこに?』

「鶴ヶ島へ。兵さんのところに行きます」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/18(金) 20:19:02.95 ID:WOz2BMvHO<> #

「えっ……えうっ……」

後部座席で薬師丸がすすり泣いている。ふうと赤木警部が息を付いた。

「嬢ちゃん、すまねえな。しかし仁、わざわざ鶴ヶ島まで行く意味は?」

「単純に完全防音の部屋があるってことと、今日の話を兵さんに伝えるためですよ。秘密を知る者が、2人増えたんですから」

「なるほどねえ。しかし嬢ちゃん、城に何が?」

薬師丸はしゃくりあげながら、短く話し始める。

「じょ、ジョーが人殺じをしでて……さぐらって奴に狙われでて……もう"一年じが生きられない"っで……」

再び嗚咽が激しくなった。

「あいつ、全部話しちまったのか……そいつぁショックだっただろ」

赤木警部の言葉に、彼女が激しく首を横に振る。

「ぢ、違うんでず……ジョーは、二度とかがわるなっで……ひどりでじぬって……。それがジョッグで、逃げでぎちゃって……!!」

「全部自分で抱え込んで、死ぬ気なのか」

薬師丸は泣くだけだ。……あの馬鹿が。

「……分かった。とりあえず、どうすればいいかは着いてから話そう。城は今日、学校には?」

※50以上で来ていない <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/18(金) 20:20:12.56 ID:RgpsxSP00<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/18(金) 20:36:57.47 ID:WOz2BMvHO<> ふるふると薬師丸が否定する。

「……ジョーは、来なかった。もう、会えないかも……」

居留守だったかっ!

「それを早く言えっ!!」

ギャルルルッ!!

俺はハンドルを思い切り切ってUターンする。兵さんの所に行く前に、まず城だ!!
高速に入る前で助かった。これなら、比較的すぐ戻れる。

#

再び城の家の前に来る。鍵は、当然かかっている。

「ちょっと待ってくれ」

俺は懐から十徳ナイフと小さな針金を取り出す。見たところ、築30年近い古い家の鍵だ。多分これで開く。
鍵穴を少しガチャガチャやると、他愛なくドアは開いた。

「赤さんと薬師丸さんは、ここで待って」

「……凄い」

「刑事の裏技だよ、お嬢ちゃん。あまり見ない方がいい」

赤木警部が苦笑した。部屋は2階らしい。音を立てないよう、ゆっくりと俺一人で上がっていく。

幾つかの可能性がある。最悪なのは、自殺。しかし、薬師丸の言うことが正しいなら、自ら死ぬことだけは避けるはずだ。死ねば薬師丸英華は守れない。
アイスキャンディを自棄になって服用というのも考えにくい。2錠以上は致死量だ。それ以下でも命は縮まる。

とすると……

「毛利だ、入るぞ」

※コンマ下20以上で通常ルート <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/18(金) 20:55:18.32 ID:BsulPWFDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/18(金) 21:00:03.96 ID:WOz2BMvHO<> ※城は部屋にいる

中断します。なお、20以下だと一人で佐倉を殺しに行ってしまってました(すぐ捕まるかは低確率)。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/18(金) 21:00:31.71 ID:WOz2BMvHO<> >>921
20未満です。訂正いたします。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/19(土) 11:46:24.57 ID:zzQaXFpXO<> 部屋に鍵はかかっていない。そっと開けると、中は真っ暗だ。遮光カーテンが引かれているらしい。

その片隅に、人の気配があった。……良かった、「まだ」いたか。

「……何しに来たんですか」

「お前を迎えにな。全部自分で決着を付けるつもりだっただろう」

返事は返ってこない。俺は話を続ける。

「……薬師丸英華に全て話したらしいな。彼女から聞いた。
受け入れてもらえればそれでよし、拒絶されたら全て抱えて一人で消え、佐倉を討ちに行くつもりだった。違うか」

「……放っておいて下さいよ。そもそも、住居不法侵入罪じゃないですか」

「お前を逮捕する、という口実なら?しようと思えばすぐできるぞ。まだアイスキャンディ、持ってるだろ。
あれは近いうちに合法でなくなる。少なくとも、現状で既に脱法ドラッグと同じ位置付けだ」

大分暗闇に目が慣れてきた。ベッドの片隅にうずくまっている城が見える。

「アイスキャンディを持っているって、何を根拠に」

「佐倉とやるなら、武器がいる。銃か何かを持っていたとしても、アイスキャンディ服用の相手に素面じゃ勝てない。
ならば、一縷の望みを託してアイスキャンディを飲み、特攻する。それぐらいしか考えられない」

「ハッ」と嘲笑が聞こえた。

「あんたに僕の何が分かる」

「薬師丸英華のためだろう?」

城が黙り込んだ。

「今回の件で、彼女の安全はもはや危うくなった。すぐにではなくても、佐倉が態勢を立て直したら間違いなく今回の落とし前を付けにくるだろう。
その時狙われるのは、お前以上に彼女だ。それだけは、絶対避けなきゃいけない。
ならば、今のうちに追撃できればあるいは何とかなるかもしれない。そんなとこか」

「……全て推測でしょう」

「9割以上当たっている確信はあるがな。しかし、佐倉の手の内が分からない以上、それは多分自殺行為だ。
いや、自分が死ねば、彼女は無事だとでも思ってるのか?」

返事はない。俺は溜め息をついた。

「佐倉は、そんなタマじゃない。あれはお前を殺したとしても、薬師丸英華を狙うぞ。自分の正体を少しでも知る者を、放っておくと思うか?」

城が少し動いた。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/19(土) 15:22:16.33 ID:lFmCatZZO<> 「……翔一について、詳しいんですね」

ぼそり、と城が呟いた。

「……俺は刑事だ。その程度の情報は……」

「しかしあなたは、翔一の人格まで知っている。そもそも、アイスキャンディの性質も知ってる。ただの刑事さんでも、そこまで分かるものなんですか」

しまった。俺は内心思った。確かに、普通の刑事ではここまで知ることは不可能だ。
あくまで俺に「未来の記憶」があるから、知っているにすぎない。城は、その不自然さに感付き始めている。
だが、彼に「覚醒者」の情報を知らせるべきではない。少なくとも、今はその時じゃない。

「君に理由を教える義理はないな。捜査情報源は、どの警官にとっても最重要機密だ」

城は黙っている。

※コンマ下
01〜20 何かを隠してませんか
21〜95 そういうことにしましょう
96〜00 特殊ルート <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/19(土) 15:36:54.13 ID:xw2GUfa80<> えいや <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/19(土) 15:47:55.78 ID:lFmCatZZO<> 「……何かを隠してませんか」

小さな、しかししっかりとした声で城が言う。

「隠しているとして、何をだ」

「あなたの正体。最初に会った時と、今のあなたでは何かが違う。まるで、色々なことを『前もって知っている』ような……」

ゴクリ。俺は唾を飲み込んだ。城隆一郎が、頭の回る少年とは知っていた。
しかし、想像以上に勘が鋭い。まるで誤魔化しが利かない。

俺は溜め息をついた。

1 言えないものは言えない
2 信頼できる筋からの情報、とだけ言っておく。今はこれで勘弁してくれ
3 分かった。……下に薬師丸さんがいる。少し、落ち着いて話せる場所に行こう
4 自由安価

※2票先取 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/19(土) 15:51:32.26 ID:xw2GUfa80<> 3 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/19(土) 16:02:27.61 ID:YSUcV1aDO<> 3 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/19(土) 22:02:12.76 ID:zzQaXFpXO<> 「分かった。……下に薬師丸さんがいる。少し、落ち着いて話せる場所に行こう」

「……ヤクが?」

「君が死ぬつもりだと見抜いていたよ。それがショックだったと。間に合って良かった」

俺は電気を付けた。酷く疲弊した城が、ベッドに体育座りでいた。多分ろくに寝てなかったのだろう。

「……会わせる顔がない」

「だが、向こうは謝りたがっている。とりあえず、コーヒーでも飲みながら腰を据えて話したらどうだ」

腕を掴むと、城は抵抗しなかった。

「じゃあ行こうか。少々時間を取らせるが、勘弁してくれ」 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/19(土) 22:03:52.78 ID:zzQaXFpXO<> ※視点を切り替えますか?

1 仁パートのまま
2 ジョーパートに移行

※2票先取 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/19(土) 22:17:35.79 ID:T9y55WDd0<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/19(土) 22:36:10.62 ID:nUZL1hLDO<> 2 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/20(日) 20:48:22.82 ID:6mBMQvB6O<> 【6月25日、15時51分】


毛利刑事に促され、僕は階段を下りた。玄関には、もう一人の刑事――赤木刑事と、ヤクがいた。

「……ヤク……昨日は、ごめ」

バシッ!!

左頬に、鋭い痛みを感じた。ヤクが、涙目で僕を見ている。

「……ふざけないでよっ!何が『僕とは二度と関わるな』よ!!
全部自分の中だけで片づけないでよ!!……あたしの気持ちも、考えてよぅ……」

彼女が僕の胸を掴んだ。僕はただ唇を噛み、立ち尽くすだけだ。僕の視界も、涙で歪む。

「……ごめん……本当に、ごめん……」

何分そうしていただろうか。ヤクが、僕から離れた。

「……死ぬなんて、言わないで……たとえ本当に寿命が近いとしても……」

僕は小さく頷いた。……最期の時まであがくだけあがいてやろう。
翔一を殺すことより、生きるだけ生きてみよう。それが、ヤクの望んだことだ。

#

車に乗ると、空気が重かった。これからどうするのかを、別の所で話し合うらしい。
警察署じゃないのかと思ったけど、「もっと安全な場所」とのことだ。どういうことだろうか。

「……ところで、毛利さん。あなたの秘密って」

助手席の赤木刑事の血相が変わった。

「おいっ!!仁、まさかあのことを話すんじゃねえだろうな!!」

「城をなめてました。想像以上に勘がいい。黙っているより、全部明らかにして協力関係を強めるべきと判断しました」

「しかしなぁ、その話はできるだけ漏らさない方がいいと自分で言ってたじゃねえか。
あの増田って女に感付かれたら厄介なことになるんだろ?相手は察庁、というか副総理だろうが」

「判断が難しいですが、俺はこっちを取ります。すみません」

「……お前らしいわ」

赤木警部が肩をすくめた。どういうことだろう?
信号で停まった時、毛利刑事がこちらを振り向いた。

「かなり理解しがたい話だと思う。だから、詳しくは着いてから話す。
赤さん――赤木警部に理解してもらうまでは2時間以上かかった。
とりあえず、端的に言おう。俺には『未来の記憶』がある。一種のタイムスリッパ―だ。
そして、今までの情報を総合するに……佐倉翔一も、だ」
<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/20(日) 21:26:50.50 ID:6mBMQvB6O<> 【6月25日、16時37分】


小一時間ほどして、車はどこかの住宅街の一角に入った。
毛利刑事からの告白を受け、僕の頭は混乱していた。
要は、「この世界にはタイプスリッパ―が何人もいて、歴史を変えようとしている」らしい。

僕らが狙われていた理由も分かった。
来年4月に「勉強会」のメンバーは「熊谷大虐殺」と呼ばれる無差別殺人を起こし、
そして僕はその主犯として射殺されるのだという。

「バッドエンド・ブレイカーは『未来の凶悪犯』を殺すプロの集団だ。
そして、こいつらも『覚醒者』と呼ばれる俺の同類である可能性が極めて高い。
鬼束や練川、そして金路アゲハが殺されたのもこの理由だ。
君や鶴岡が狙われなかったのは、恐らく彼らの中で真の主犯が佐倉翔一であると確信できたからだろう」

車が停まった。駐車場のようだ。

「とにかく、これからの方針を話し合う。
君らの立ち振る舞いにも関わることだ。ちゃんと聞いてくれ。薬師丸さんもだ」

ヤクがこくんと頷いた。

毛利刑事は家――いや、カフェに入っていく。ここで話すのか?
彼はマスターらしい初老の男性に話しかける。

「すみません、連日」

「ん?仁、どうした?それに赤も、雁首揃えて……。ああ、例の部屋を貸せと」

「話が早くて助かります。お願いできませんか」

「……その分だと、赤には教えちまったみたいだな。そこの坊主と嬢ちゃんは」

「事件関係者……というより、バッドエンド・ブレイカーの標的である城隆一郎と、昨日佐倉が人質に取った少女、薬師丸英華です。
捜査の過程で、2人にも教えざるを得なくなりました。申し訳ありません」

ふうとマスターが息を吐いた。

「……あまりそういうことはペラペラと話すもんじゃないがな。まさか他にも?」

「警視庁の兵藤という刑事に。やはり、異常に勘が鋭く……」

※コンマ下(兵藤関連)
01〜10 ……厄介なことを
11〜30 知らんな……
31〜90 ああ、あいつか
91〜00 あいつか!

※コンマ下2(英華関連)
01〜70 無反応
71〜00 嬢ちゃん……変だな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/20(日) 21:28:13.11 ID:gd+YZfbe0<> ん <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/20(日) 21:29:14.84 ID:N6QVa4NDO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/20(日) 21:53:01.73 ID:6mBMQvB6O<> 「知らんな……話して大丈夫なのか、そいつは」

「警視庁とのコネクションを作る上で、話さざるを得ませんでした。優秀なのは確かです。
ひょっとして、週末来るかもしれません」

「面倒なことにならんといいがな。それにしても嬢ちゃん。もう一度名前を」

少し驚いたように、ヤクが自分を指さした。

「あたし、ですか?……薬師丸、英華です」

「……やはりな。変だ」

「変だ、とは?」

「それは後で話す。割と重大な話かもしれん」

どういうことだろう?僕とヤクは視線を交わした。

「とりあえず、先に行っててくれ。まだ客が少し残ってる。ちょっと待たせるがいいか」

「了解です。すみませんね」

毛利刑事を先頭に、僕たちは店の奥へと進む。そこの一角に、観葉植物と花瓶に入った花だけの、窓のない部屋があった。

「ここが『安全な場所』か」

「完全防音、らしいです。何故兵さんがここを作ったのか知りませんが。
なお『前の周』にはなかったものです」

赤木警部が、ふむと辺りを見た。

「こういうことが起きるのを予期して作ったのかね」

「……あるいは。ただ、兵さんは『傍観者』だと自分では言ってましたが」

「よう分からんな。……お」

眼鏡の若い女の人が、ケーキとコーヒーを持ってきた。

「どうぞ。特製チョコレートケーキとグァテマラです」

「気が利くねえ。姉ちゃん、バイトかい」

「えっと、そんなとこです。そちらの方は、昨日も来られてましたね。お二人は、兵さんの昔の部下とか」

「ええ。すみません」

「いえいえ、今後ともごひいきに」

笑顔を浮かべて彼女が去って行った。

「兵さんもまだ男なのかねえ。あんな若い子をバイトに雇うとは」

「……ですね」

毛利刑事の反応が微妙だ。何かあるんだろうか。
<>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/20(日) 22:21:03.82 ID:6mBMQvB6O<> #

「よう、皆待たせたな。っと、そこの坊主と嬢ちゃんは初めてか。
白田兵次郎だ。そこの二人の刑事とは、昔一緒に働いてたことがある。
ひょっとしたらもう聞いているかもしれんが、俺も『覚醒者』だ」

「マジですか……しかしどういうことっすか」

赤木警部が口をぽかんと開けて言う。マスターが苦笑した。

「話せば長くなるし、言えないこともそれなりにある。まあそれはおいおい、だな。
で、まずはさっきの話の続きから行こうか。英華ちゃん、だったな」

ヤクが戸惑い気味に「……はい」と返した。
マスターが険しい表情になる。

「はっきり言っておこうか。俺にその子の記憶は、ない。
知らないんじゃない。その子は、本来いるはずのない人間だということだ」

「どういうことですかっ!?」

僕は思わず声を張り上げた。マスターは軽く目を閉じる。

「俺の『未来の記憶』には、当然君の情報も入っている。『前の周』では、ひっそりと裏で色々やらせてもらってたんでね。
だから君が『前の周』でどんな人間だったかというのも、ある程度は分かっている。
勉強一辺倒で生真面目。学校では孤立しがちで、その過程で佐倉翔一と出会う。
そこで危うい選民思考を植え付けられ、暴走。小学生の時に誤っていじめた相手を突き落として殺害したことも、強請の材料になっていたようだが」

マスターがコーヒーを飲んだ。

「とにかく、そうやって君は『熊谷大虐殺』に加担した。そして警察の手により射殺。それが『前の周』での歴史だ。
アイスキャンディを、他の4人より早く服用していたらしいという噂も聞いたがね。まあそれはいい、大事なのはここからだ。
……『前の周』において、君に友人はいないんだよ。一人たりとも」

「えっ」

「兵さん、どういうことですかっ?」

僕が何か言う前に、毛利刑事が叫んだ。……まるで理解できない。

「つまり、歴史が変わった結果……本来その場所、その時代にいるはずのない人間が存在するに至った、ということだ。
これは『過去』のケースではなかったことだ。ただ、1、2例ほどそういう奴が出始めたのは俺も確認している。
言ってみれば『イレギュラー』ということだ。歴史は大枠じゃ変わらない、はずだ。
しかしあまりに変わった結果、変調を来しているのかもしれない」

「だとしたら、この子は?」

※コンマ下80以上で重大事実判明 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/20(日) 22:26:09.11 ID:HSeVu3aDO<> いけ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/20(日) 22:32:04.56 ID:6mBMQvB6O<> ※重大事実は判明せず

今日はここまで。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/21(月) 17:27:55.12 ID:jIYnRO6gO<> 「さあな。俺には分からん。ただ、この子がここにいる意味は、何かしらあるはずだ。歴史は無意味には動かん」

「毛利さん、この人は……」

「ああ、まだ言ってないな。この世界は『何周か』しているらしい。俺にあるのは前の周の記憶だけだが、兵さんは4周はしている。詳しくは俺も知らないが」

マスターがニヤリと笑った。

「まあ、坊主にはあまり関係のないことだ。忘れて構わん。だが、幾つか言えることがある。
まず繰り返すが、坊主の前に嬢ちゃんが現れたということは、何かの意味があるってことだ。それが何かは、そのうち分かるかも知れんが。
それと……ここからが重要な話だ。佐倉は嬢ちゃんを優先的に狙うかもしれない」

「「え」」

嘘だ。翔一は、僕を狙ってくるはずだ。そうじゃなかったら、ヤクを人質に取ったりなんて……。
全身から冷や汗が出ている気がした。ヤクも顔から血の気が引いている。

「馬鹿な……」

「坊主、聞いたかもしれないが佐倉翔一も『覚醒者』だ。そこがミソなんだよ。
佐倉は『薬師丸英華』って子がお前の周りにいなかったことを知っている。つまり、嬢ちゃんがイレギュラーであるのに気付いている。そこに関心を持っている可能性は高い。
捕まえて何をするつもりかは知らん。だが、ロクなことじゃないだろう」

僕は、先週のことを思い出した。なぜヤクの名を出した時、翔一が笑ったのか。

あれはつまり、そういうことだったのか。

マスターが少し、身体を前に出してきた。

「つまり坊主。お前が嬢ちゃんの騎士(ナイト)になるしかねえんだよ。赤も仁も、始終彼女を見ていられん。警察はボディーガードじゃねえんだ。
もちろん、警察も佐倉を捕まえるために全力は尽くすだろう。ただ、普段はできるだけ、一緒にいてやれ」

僕はヤクの顔を見た。

「……お願い」

男勝りなヤクが、こんな表情をするのを初めて見た。僕は「分かった」と短く言う。

「問題は、佐倉の出方だ。……」

※コンマ下80以上なら白田に心当たりがある <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/21(月) 17:33:33.55 ID:jIYnRO6gO<> 上の判定を取り消します。矛盾点があるためです。ご承知おきください。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/21(月) 17:38:47.69 ID:jIYnRO6gO<> こちらに差し替えます。

※コンマ下80以上である追加情報あり <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/21(月) 17:42:55.68 ID:TPcgm+Or0<> む <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/21(月) 17:43:04.31 ID:Lje8PRtz0<> 出るかな <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/21(月) 22:24:00.97 ID:jIYnRO6gO<> ※??について情報なし

「……正直に言って、ハッキリとは読めない。ただ、数日間は静かにしているだろう。向こうの戦力がもっとあるなら、今日にでも仕掛けてきただろうからだ」

「とすると、戦力補充ですか。海外に出ている鶴岡を引き入れるんですかね」

「鶴岡、確か熊谷の実行犯だな。行方は」

毛利刑事が首を振った。

「分かりません。多分、海外にいることまでしか」

「ふむ」

マスターが唸った。

※コンマ下
01〜30 厳しいな
31〜60 とすると……増田を使うか
61〜90 とすると……嬢ちゃんが鍵か
91〜00 いや…… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/21(月) 22:24:54.87 ID:WKXP3EzV0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/21(月) 22:42:00.77 ID:jIYnRO6gO<> 「……とすると、嬢ちゃんが鍵か」

「あ、あたし、ですか」

ヤクが自分を指差した。

「ああ。ふと考えた。バッドエンド・ブレイカーがプロで、かつ覚醒者であるとするなら……奴らも同じ結論に達したはずだ。
つまり、嬢ちゃんがイレギュラーである、ということ。そしてそれは、奴らが近いうちにこの子に接触するということでもある」

「それを機に、彼らを捕まえると?」

「いや、むしろ逆だ。乗ってやるんだよ、向こうの流れに。
俺の読みじゃ、向こうは赤や仁よりも1、2手先を行っている。ならば、奴らに教えてもらうのがいい」

「……どういうことですか」

毛利刑事の言葉に、マスターがニヤリと笑った。

「佐倉を潰すための、共同戦線を張るんだよ。嬢ちゃんを通して、な」

「そんなことができるわけ……!」

「まあ赤や仁には無理な話だわな。向こうは曲がりなりにも犯罪者だ。だが、嬢ちゃんはできる。
向こうさんも、嬢ちゃんは保護対象と認識しているはずだ。とすれば、上手く取り入れば向こうの動向も分かる。それに……」

マスターが口ごもった。

※コンマ下40以上である事実が発覚 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/21(月) 22:44:38.45 ID:xfzKxCADO<> こい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/21(月) 22:53:14.19 ID:jIYnRO6gO<> 中途半端ですが今日はここまで。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/22(火) 00:16:06.38 ID:JcEy3fBI0<> 乙乙 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/22(火) 09:42:22.74 ID:8Cus5mghO<> 「……まあ、言っても構わんか。そろそろ潮時だろう」

意を決したように、マスターがコーヒーカップをあおった。

「……それに、俺とバッドエンド・ブレイカーには繋がりがある」

「え!?」

「ちょっ!!?」

赤木刑事と毛利刑事が叫んだ。マスターは「まあ話を聞け」となだめる。

「一応言うが、内通者じゃねえぞ。これは誓って言える。実は、バッドエンド・ブレイカーの一人が俺をスカウトしに来た。
仁、すまんな。昨日のは嘘だ。しらを切っていた。コナン似のガキは知っている。5月の上旬、俺のとこに来た」

「……何ですって」

「はっきり言っとくが、俺は断ってるぞ。『この周』では、ギリギリまで動かないと決めてたからだ。それは昨日言った通りだ。
ただ、向こうのやることに干渉しないことも言っておいた。向こうのトップは、俺の盟友なんでね。まあ、賛同もできなかったが」

「じゃあ、バッドエンド・ブレイカーの正体も知っていると?」

「まあ、な。あれも警察だよ、『未来の』な。ただ、仁は知らないかもな。
あっちは『東』の警視庁。埼玉県警で『デッドマン』として一匹狼になってたお前にその記憶がなくても驚かない」

※コンマ下80以上で記憶が戻る、未満でコナンらと面識がないのは確定 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/22(火) 09:45:34.08 ID:kM6gPUADO<> はい <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/22(火) 10:14:04.77 ID:8Cus5mghO<> 毛利刑事が「そんな……」と絶句している。赤木刑事は顔を真っ赤にして、語気を強めた。

「何で俺たちに今までそれを言ってくれなかったんすか!!」

「……悪い。まず、曲がりなりにもダチは裏切れん。だから、バッドエンド・ブレイカーのトップが誰かは、口が裂けても言えん。
それともう一つ。……ありゃ、逮捕できねえんだよ。少なくとも、今回の案件は」

「え?」

僕はハッとなった。……それは、もしかして。

「……子供、だからですか」

「坊主、正解だ。そもそも熊谷大虐殺自体、少年法と永山基準の穴を突いた犯罪だった。
しかもイスラム原理主義に洗脳されたという『フェイク』をマスコミが流せば、まずもって死刑にはならねえ。佐倉翔一は、そうやって社会にのうのうと復帰した。
他の共犯者もそうだ。まあ、皆20前後でくたばったが」

マスターが僕を見据える。

「多分、坊主も佐倉にそんなことを言い含められてたんだろ?いくら殺してもリスクフリー、せいぜいが数年の医療少年院暮らしだ。
昔も死刑相当の猟奇殺人を犯したガキが、そうやって社会復帰してるからな。
それを知ってるからこそ、バッドエンド・ブレイカーの犯人が『子供』だとしたら、逮捕不能であることに気づいた。そうだろ」

僕は小さく頷いた。

「……あの似顔絵の子、僕よりは年下ですよね」

「まあな。補導の対象にしかならねえ。少年院送致すらない、正真正銘のリスクフリーだ。
万一奴の犯行と露見しても、精々公安が継続的に監視するしかない。だからこそ、堺や安川が動いている。
連中は『西の公安』だ。少なくとも赤や仁たちよりは行動の選択肢が広い」

毛利刑事が、うつむいて呟く。

「……じゃあ、どうすりゃいいんですか」

「逮捕できないなら利用する。嬢ちゃんに奴らが接触してきたのを確認し次第、嬢ちゃん経由で俺に通す。
向こうは俺の申し出は断れん。奴らにとっても、佐倉翔一の殺害は最優先事項だからだ。そして、俺が媒介する形で共同戦線を張る。
まあ、佐倉翔一を最終的にどうするかでは決定的な目的の違いがある。お前らは逮捕したい。バッドエンド・ブレイカーは殺したい。
だが、そこに至るまでの道は同じだ。何より、うざったい公安も一緒になれば対応しやすくなる」

マスターがニィと笑った。

「どうだ、妙案じゃねえか?」

※2票先取

1 ……僕も、そう思います
2 やめといた方が……

※2のみ理由と代替案必要 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/22(火) 10:30:25.00 ID:1nCKjN4DO<> 1 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/22(火) 11:47:01.69 ID:8Cus5mghO<> 上げます。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/22(火) 12:13:05.12 ID:lwDv2sSB0<> 1 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/22(火) 13:01:51.72 ID:8Cus5mghO<> 「……僕も、そう思います」

「ジョー……」

不安そうにヤクが僕を見る。

「今の僕らに、翔一に近付く情報はない。なら、バッドエンド・ブレイカーと組んで、ある程度情報を共有するのも手じゃないですか」

毛利刑事が目を閉じた。

「そうなると、警察内部にいる内通者は」

「協力関係が築け次第、保護しとく必要はあるな。ただ、特定は」

「できてません。増田は間違いなく、そいつの特定と確保を狙ってます」

「参るな……とりあえず、赤と仁はそっちを優先してくれ。今お前らがいる3係の面子は」

「木暮管理官、青葉巡査部長、白島巡査部長ですが」

※コンマ下
01〜25 情報なし
26〜85 一定の情報あり
86〜00 特定へ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/22(火) 13:03:39.72 ID:DZQzW3bY0<> コンマの神よ! <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/22(火) 13:12:14.81 ID:8Cus5mghO<> マスターが「ふむ」と唸った。

「その中だと悟は除外していい。……覚醒者ではあり得ないからな。後の二人は知らん。ちょっとマークしておいてくれ。増田に先を越されんようにな」

「了解しました」

「おう。……しかし、もう少し『見』を決め込むつもりだったんだがな。歴史は俺を放っておいてはくれねえか」

はは、と乾いた笑いをマスターが浮かべた。

※質問安価です。最低1問は質問できます。2票先取

1 白田さんは、どのぐらい生きてるんですか
2 ヤクにバッドエンド・ブレイカーが接触したら、僕はどうすれば
3 僕の命……延びますか
4 その他自由安価

※自由安価は歓迎します <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/22(火) 13:19:31.26 ID:1nCKjN4DO<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/22(火) 13:32:54.06 ID:DZQzW3bY0<> 3 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/22(火) 14:50:04.24 ID:RmkQ1jjLO<> 3 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/22(火) 19:42:51.44 ID:u9g9UY2RO<> 「マスター、一つ、いいですか」

僕は恐る恐る手を挙げる。どうしても聞いておきたいことがあった。

「おう、マスターじゃなくて兵さんでいいぞ。どうした」

「毛利刑事から、聞きました。アイスキャンディの副作用。摂取開始時期から逆算して、僕が死ぬまであと1年だと。
でも……僕は死にたくないっ。僕の命は、延びますか」

※コンマ下
01〜70 ……分からん
71〜95 延びる可能性は、ある
96〜99 ……ちょっと待て
00 ……ちょっと待て? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/22(火) 19:48:11.12 ID:1nCKjN4DO<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/22(火) 19:58:33.43 ID:u9g9UY2RO<> マスター……いや、兵さんは静かに首を振った。

「分からん。というより、1回壊れた脳細胞は、元には戻らん。
『過去』にもアイスキャンディの摂取者をどうするかについては色々あったが……少なくともこれまでは、手の打ちようがなかった」

「そんな……」

僕は肩を落とす。ヤクが涙を流していた。

「じゃあジョーは、このまま死ぬしかないんですかっ!?」

「……歴史が変わっていることに、賭けるより他あるまいよ。前の周ではなかった治療法が、あるいはあるかもしれん。
あるいは、極々限られた体質――アイスキャンディの副作用がない体質であるのを祈るしかねえな。
佐倉翔一は、その可能性が高かったらしいが」

「……やだよぉ……そんなの……!!」

ヤクが僕にしがみつき泣いている。僕も唇を噛み締めた。

……やはり、残る命を燃やすしかない。

「……悪いな。残酷な宣告になって。ただ、俺は医者じゃない。医者なら、もう少し適切なアドバイスができるだろう」

「医者?」

※コンマ下30以上で追加情報 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/22(火) 19:59:40.18 ID:u/yI10+Q0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/22(火) 20:02:16.01 ID:u9g9UY2RO<> 失礼しました。上の判定は取り消します。
(仁が当然知っているはずの情報でした。申し訳ありません) <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/22(火) 20:08:55.26 ID:u9g9UY2RO<> 「……もしかして」

毛利刑事が呟いた。

「今回の事件、プロファイリングでは医療従事者という分析が出てます。とすると、そのバッドエンド・ブレイカーと思われる少年は、医者か何かかもしれない」

「というと」

「注射が正確すぎるんです。ほぼ一発で血管に刺している。少年と一緒にいた女かもしれませんが……」

兵さんが「ああ」と声をあげた。

「確かにそうだったな。まあ、あのガキに会うようなら――そしてチャンスがあるなら、訊いてみるといいかもな。
俺よりは、ちゃんとしたアドバイスをくれるはずだ」

バッドエンド・ブレイカーの少年……あのコナン似の少年か。会うことは、あるんだろうか。

※コンマ下50以上で追加質問へ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/22(火) 20:09:46.86 ID:u/yI10+Q0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/22(火) 20:14:56.63 ID:u9g9UY2RO<> ※質問安価です。最低1問は質問できます。2票先取

1 兵さんは、どのぐらい生きてるんですか
2 ヤクにバッドエンド・ブレイカーが接触したら、僕はどうすれば
3 兵さんは、そのコナン似の少年を詳しく知ってるんですか
4 その他自由安価

※自由安価は歓迎します <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/22(火) 20:23:36.44 ID:tPvG1w2o0<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/22(火) 20:23:48.10 ID:1nCKjN4DO<> 3 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/22(火) 20:29:07.54 ID:u/yI10+Q0<> 3 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/22(火) 21:04:18.61 ID:u9g9UY2RO<> 「ところで、兵さんはそのコナン似の少年を詳しく知ってるんですか?」

兵さんはコーヒーを一口飲む。

※コンマ下
01〜30 名前と立場だけな
31〜60 名前と立場だけな。ただ……
61〜85 それなりにはな。前に何度か顔を合わせたこともある
86〜00 よく知ってるよ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/22(火) 21:05:25.63 ID:kM6gPUADO<> はい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/22(火) 21:05:44.36 ID:1nCKjN4DO<> どれ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/22(火) 21:24:45.99 ID:u9g9UY2RO<> 「……それなりにはな。『昔』、何度か顔を合わせたこともある。だから、あいつはここに来た」

「……どういうことっすか」

赤木刑事が訊いた。兵さんは頷く。

「さっき言ったが、ガキは俺をスカウトしに来た。俺は断ったが、なかなかしつこくてな。
多分、このためにうちの近くにアジトを作ったんだろう。結構な頻度だったよ。
ガキの名は、藤原湖南。20年後の警視庁捜査一課強行4係係長にして、監察医でもある」

「コナン……まさか本名とか」

「茶化してねえよ、赤。まあ、親父さんがコナンのファンで、そこから付けたと聞いた。まあんなことはどうでもいい。
奴は『3周目』、『エス(スパイ)』として動く俺と繋がりがあってな。なかなか優秀な奴だった。俺から幾ばくか指導したこともある。
弟子、ってほど長くいたわけじゃねえ。だが、優秀だ。使命感が強すぎるきらいはあるがな。
あいつなら金路アゲハを殺すことなんて雑作もない。たとえ身体がガキで、相手がアイスキャンディを飲んでようとだ」

赤木刑事と毛利刑事が息を飲んだのが分かった。

「そんな奴なんですか」

「おう。『なし(話)』は付けられるかもな。話の通じん男じゃない。
まあ、『あいつ』がどう言うかだが』……」

「『あいつ』?」

「や、こっちの話だ。忘れてくれ」

※コンマ下70以上で追加質問へ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/22(火) 21:26:31.78 ID:e5Jhw6zm0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/22(火) 21:33:15.83 ID:u9g9UY2RO<> ※質問安価です。2票先取

1 白田さんは、どのぐらい生きてるんですか
2 ヤクにバッドエンド・ブレイカーが接触したら、僕はどうすれば
3 ……そう言えば。矢向さんは、ご存じなんですか
4 その他自由安価

※自由安価は歓迎します <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/22(火) 21:36:04.47 ID:1nCKjN4DO<> 2 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/22(火) 21:37:03.21 ID:Y00dF4az0<> 2 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/22(火) 22:07:44.88 ID:6nwJfAcUO<> 今日はここまで。 <> ◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/23(水) 09:40:17.80 ID:cfx07EsaO<> 僕はヤクをちらりと見た。泣き止んではいるが、時々しゃくりあげている。……まだショックが残っているらしい。
僕の命のことは確かに心に重く残る。ただ、今は目の前のことが重要だ。

「兵さん。ヤクにバッドエンド・ブレイカーが接触したら、僕はどうすれば」

「正直、向こうの出方次第っちゃ出方次第だ。ただ、嬢ちゃんは向こうに俺の存在を匂わせてくれ。コナンなら、多分こちらの意図を悟れる。
その時、坊主も一緒に動けるようにしとくのが理想的だ。まあ、分かりやすいのは……恋人のふりでもしておくことだが」

「え」

僕とヤクの顔が一瞬で赤くなった。クックックと兵さんが笑う。

「おうおう、若いねえ。青春ってのはいいもんだ。好き合ってるんだろ?ならこれを機にどうだ」

※コンマ下
01〜40 そ、そんなことを、急に言われても
41〜70 えっ……ジョー、どうしよう
71〜90 ……そ、そうですよね……
91〜00 ヤクが僕の裾をぎゅっと掴んだ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/23(水) 09:44:38.36 ID:/tjc/dYDO<> はい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/23(水) 09:45:01.25 ID:hOrFY8tw0<> あ <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/23(水) 10:00:44.89 ID:cfx07EsaO<> 「……そ、そんなことを、急に言われても……」

ヤクは戸惑っている。まあ、そりゃそうだ。
彼女にとって、僕は出来の悪い兄のようなものだ。いきなり恋愛対象にしろなんて言われても、正直ピンとは来ないだろう。

「はは、悪りいな。冗談だ。ただ、一応ふりだけでもしといた方がいいだろうな。
後はどう向こうが動くか。さすがに極端に怪しまれるようなことはしてこねえだろう。あくまで自然な形で、嬢ちゃんの行動を監視するはずだ。とすると……」

兵さんが何か考えている。

「……嬢ちゃん、学校外での予定は」

「えっ!?……確か」

※コンマ下
01〜30 2週間後に、記録会が
31〜60 土曜に、記録会が
61〜95 明後日、取材を受けることになってます
96〜00 その時、電話が鳴った  <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/23(水) 10:02:14.28 ID:Xqy3AKBo0<> てい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/23(水) 10:02:30.89 ID:bohGjzmV0<> うん <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/23(水) 10:09:42.85 ID:cfx07EsaO<> ※鶴岡の空港イベントには間に合わず

以降は次スレとします。以降は質問コーナーです。
なお、1000が70以上の場合上の判定を緩くしてやりなおせます。 <>
◆C9vIqtyVF2<>saga<>2019/01/23(水) 11:57:23.92 ID:U04Lv4yCO<> 次スレを立てました。移動お願いします。

【安価】殺人鬼コナン2【コンマ】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1548212158/

なお、現在で大体ストーリー全体の60〜70%ぐらいのイメージです。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/23(水) 15:09:02.10 ID:hRC+EwwA0<> 埋め <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/23(水) 15:09:32.20 ID:hRC+EwwA0<> 埋め <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/23(水) 15:10:00.06 ID:hRC+EwwA0<> 埋め <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/23(水) 15:10:29.32 ID:hRC+EwwA0<> 埋め <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/23(水) 15:10:58.12 ID:hRC+EwwA0<> 埋め <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/23(水) 15:11:34.19 ID:hRC+EwwA0<> 埋め <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/23(水) 15:12:05.25 ID:hRC+EwwA0<> 埋め <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/23(水) 15:13:00.14 ID:hRC+EwwA0<> 埋め <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/23(水) 15:13:28.80 ID:hRC+EwwA0<> 埋め <> 1001<><>Over 1000 Thread<>                  ヽ人人人人人人人人人人人人人人人ノ
         / ̄(S)~\  <                      >
       / / ∧ ∧\ \<  嫌なら見るな! 嫌なら見るな!  >
       \ \( ゚Д,゚ ) / /<                      >
         \⌒  ⌒ /  ノ Y´`Y´`Y´`Y´`Y´`Y´`Y´`Y´`Y´`Yヽ
          )_人_ ノ  
          /    /
      ∧_∧ ■□ (    ))
     (   ; )■□  ̄ ̄ヽ
   γ⌒   ⌒ヽ  ̄ ̄ノ  ノ       SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|        http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/

<> 最近建ったスレッドのご案内★<><>Powered By VIP Service<>【イナズマイレブンGO】天馬「今日から雷門に通えるんだ!楽しみ!」【安価・コンマ】 @ 2019/01/23(水) 14:03:08.91 ID:FRvMsN5/0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1548219788/

エルメロイ二世「大根が食べたい」 @ 2019/01/23(水) 13:40:50.15 ID:AeYC311Ao
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1548218449/

【安価】殺人鬼コナン2【コンマ】 @ 2019/01/23(水) 11:55:58.08 ID:U04Lv4yCO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1548212158/

【ポケモン】セレナ「サトシの愛が重すぎる///」 @ 2019/01/23(水) 01:44:55.18 ID:E13+0vga0
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  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1548162954/

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