VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/26(火) 23:12:34.66 ID:PWbQ4u1ro<>救急車に乗り込む際
思い出したのは、鈴羽の言葉だった。

「シュタインズゲートは未知の世界線。何が起こるのかは、誰にもわからない。」
「もしシュタインズゲートに到達しても、その二日後に牧瀬紅莉栖は、命を落とすかもしれない。」

ふざけるな。命など落とさせるものか!

命は……命だけは……

頼む、神よ。せめて、せめて紅莉栖の命だけは、持っていかないでくれ。

世界を改変し、神を冒涜したのは俺だ。罰なら何だって受ける。だから、紅莉栖だけは……

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1364307154
<>紅莉栖「どうしたのよ辛気臭い顔して」岡部「紅莉栖…お前、記憶が…」 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/26(火) 23:25:31.25 ID:PWbQ4u1ro<> 20分前

まゆり「まゆしぃは、明日のコミマの準備もあるからもう帰りま〜す。」

紅莉栖「バイバイ、まゆり。風邪を引かないようにね。」
岡部「車に気をつけろよ。」

まゆり「うん!バイバ〜イ」


ダル「さてと、僕も帰りますかな。明日は暑い戦争が起こるからね。早く休んどかないと。」

岡部「暑い…て、今は冬だぞ。」

ダル「あめー、あめーよ。オカリン、[ピザ]が三人集まると、そこは既に南国だお」

ダル「てことで、お先」

岡部「お前も気をつけろよ。」

ダル「車になんかひかれねーっすよ先輩」

岡部「いや、俺が言ってるのは警察だ。」

ダル「ちょっ……なにそれひどいww」

紅莉栖「橋田も、体調管理ちゃんとしなさいよ。」

ダル「!? 牧瀬氏がデレた! これは、キマシ?」

紅莉栖「ねーよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/26(火) 23:44:05.27 ID:PWbQ4u1ro<> ダル「なんだ、ねーのか まいいや じゃあの」

岡部(コミマで運命の出会いをするだろう事を、言うべきだろうか……いや、止めておこう。ここは、シュタインズゲート。何が起こるのかは、誰にもわからないのだからな)

岡部「じゃあな」
紅莉栖「バーイ」

バタン


岡部「……」
紅莉栖「……」

空気が重い。
言葉が出てこない。


今は、シュタインズゲートに到達して紅莉栖と出会い三ヶ月ほど経った。
2010年12月末

紅莉栖と出会ったあと、驚異的な馴染み方で、紅莉栖はラボメンの主要人物となった。
恐らく、皆に無意識のリーディングシュタイナーが発動しているのだろう。


紅莉栖に会えた喜び。何よりも、求めていた出会い。その出会いを手にいれたとき、俺は嬉しくて嬉しくて…

自分の気持ちを伝えるのが億劫になるほど、今が心地よくて。日常が充実してて。
彼女がそばにいる。彼女のそばに居れるだけで日常が、いつも以上に映えた。


しかし、日常がいつ崩れるのかは、誰にもわからない。
こんな簡単に崩れるものだとは思ってもいなかった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/26(火) 23:58:21.47 ID:PWbQ4u1ro<> 岡部「さて…と、そろそろ帰るかな。」


時計をチラと見ると、6時半を指していた。

紅莉栖「…そうね」

ソファに腰掛けていつものように洋書を読んでいた紅莉栖が立ち上がる。


荷物をまとめ、二人同時にラボを出る。

ラボの鍵を閉め、いつものように先に階段を降りている紅莉栖を追いかけるように階段を降りる。

すると

紅莉栖「きゃっ」

眼下に捉えていた紅莉栖の姿が消える。

岡部「?」

瞬間、階段を転げ落ちていく音が聞こえた。

岡部「!? 紅莉栖!!」

階段を飛び降りるように降り、紅莉栖に駆け寄る。

ブラウン管工房の電気に照らされて、紅莉栖の顔が浮かび上がる。

岡部「紅莉栖!!紅莉栖!!!」

気を失っているようで呼びかけても反応しない。

天王寺「うるせーぞおかべ! まーた嬢ちゃんにちょっかいで……も……おいどうした!」

岡部「店長!救急車を!救急車をお願いします!」

天王寺「お、おう! 待ってろ! 今、呼んでやるからな!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/27(水) 00:09:07.45 ID:J5ZZ3s85o<> そして、今現在

紅莉栖は救急車に乗せられ、俺は付き添いとして同乗している。

命だけは、命だけは助けてくれ!

そう願うしか、今の俺にはできない。
自分の無力を呪う。

まだ、伝えてないのに。
日常がいつまでも続くと思い、自分の想いを伝えることをしなかった。
いざ、非日常が訪れると、己の無気力さにいらだちを覚える。

自分を蔑んでいる間に、総合病院に着いた。

緊急搬入口から紅莉栖を運び入れられる。

『彼氏さんは、ロビーでお待ちください』

隊員からそんなことを言われたが
待っていられるわけがない。

ロビーで座ることもせず、右へ左へウロウロしていると、看護師が俺を見つけて呼んでくれた。

『牧瀬紅莉栖さんの付き添いの人…ですよね』

岡部「紅莉栖は!? 紅莉栖は大丈夫なんですか!?」

『今から診察室で説明いたします。こちらへ…』 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/27(水) 00:20:17.24 ID:J5ZZ3s85o<> 医師「頭を強く打ったことによる、脳震盪だと思われます。命に別状はありません」

岡部「よ、よかったぁ」

『命に別状はない』

この言葉に胸をなで下ろす。

医師「念の為、一週間ほど入院してもらいますが、まぁ大丈夫でしょう。」

岡部「は、はい。ありがとうございます。」

感謝をこめて、医師に対して礼をし、退室した。

看護師に入院した部屋を聞き、紅莉栖のところへ行く。

ベッドに横たわる紅莉栖を見つけた。
未だ気を失っているのか、それとも寝ているのか、似て非なる二つの現象を見分ける術を、俺は持っていない。

とりあえず安心できたので、今日はもう帰ることとした、看護師に入院に際して必要なもののリストをもらい
「明日、また来ます」
と言い残し、病院を去った。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/27(水) 00:28:03.93 ID:J5ZZ3s85o<> 翌日

前日の夜にまゆりとダルに連絡を取った事もあり、朝の八時には皆ラボに集まっていた。

待ちに待ったコミマだというのに、それを投げうって紅莉栖のために集まってくれた。まゆりにいたっては、半年以上かけた準備期間を、すべて捨ててここにいるのだ。
頭が上がらなかった。

昨日、看護師にもらった『入院するに際して』の紙を見て、必要なものを手分けして集めた。
手分けして集めたかいがあって、ものの30分で全て集まった。
女性ものを手にいれるに当たり、まゆりがいてくれて、本当に良かった。
途中資金難に陥った時は、ミスターブラウンの計らいによりなんとかなった。本当に皆には、頭が上がらない。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/27(水) 00:34:51.88 ID:J5ZZ3s85o<> そして、病室

まゆり「トゥットゥルー♪くりすちゃ〜ん 調子はどう?」

ダル「いやはや、牧瀬氏が階段からズッコケたと聞いたときは、焦ったんだぜ」

岡部「調子はどうだ?助手よ」

紅莉栖「あ、まゆり。おはよう 橋田も。ごめんなさい、心配かけて。もう大丈夫よ。気分も悪くないし」

まゆり「くりすちゃんが階段から落ちたーって聞いたときは、びっくりしたのです。でもよかったー元気そうで」

紅莉栖「本当にごめんなさい。心配かけて…… で、ひとつ質問したいんだけど……」


紅莉栖「この方は……どなた?二人の知り合い?」

まゆり「!?」
ダル「!?」

岡部「!!??」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/27(水) 00:41:52.31 ID:J5ZZ3s85o<> まゆり「な、なにいってんのくりすちゃん!?オカリンだよぉ!」

ダル「ちょっ!牧瀬氏それはやり過ぎだお!いつもオカリンにバカにされるからって!」

紅莉栖「お、おかりん?なに?外国の人?」

岡部「く、くりす?」

紅莉栖「なに?あなた誰なんですか?」

岡部「お、俺は…お、岡部、倫太郎だ……」

紅莉栖「おかべ?りんたろう? ……あぁ、なるほどそれでオカリンか」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/27(水) 00:51:01.19 ID:J5ZZ3s85o<> 紅莉栖「初めまして……よね?」

岡部「い、いや……違う。」

紅莉栖「うそ!?ほんとに?」

岡部「あぁ……」

紅莉栖「まゆり、橋田。本当なの?」

まゆり「うん……」
橋田「知り合って三ヶ月は経ってるはず……」

紅莉栖「つまり……私は今、部分的な記憶喪失になってるってことかしら?脳科学的には……」

冷静に分析をはじめる紅莉栖
どうやら、まゆりやダルのことを覚えていたり、脳科学について覚えているということから推測すると
記憶喪失は、記憶喪失でも部分的に、歯抜けのようになっているのかもしれん

その一本が俺、岡部倫太郎ということだろうか… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/27(水) 00:54:10.11 ID:J5ZZ3s85o<>  現実にありえるのかはわからない
 そんな記憶喪失が起き得るのか、俺には確証が持てない。
 だが、この紅莉栖が嘘をついているとは考えられない。
 彼女の分析する表情を見ると真剣そのものであり、嘘で俺を騙して楽しんでいるとは思えない。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 01:02:38.93 ID:J5ZZ3s85o<>  一通り自分の頭脳で分析し終えたのか
 顎に当てていた手をおろし、申し訳なさそうに俺を見てくる。

紅莉栖「ごめんなさい、まさか私がこんなことになってしまうなんて、岡部…さん? なんて読んでたのかも思い出せないから、ごめんなさい。」

岡部「い、いや気にするな、記憶喪失というのは、一時的なものもあると云う噂を聞いたことがある。ひょんなことから、芋づる式で記憶が想起されるなど、よくある話ではないか。 ゆっくり思い出していけばいいさ。」

紅莉栖「そ、そうね。脳科学のてんからも記憶の想起は、エピソードが重要だから、今までにあったことなんかを私に話してくれたら、そのうち思い出すかも」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 01:05:36.35 ID:J5ZZ3s85o<>  紅莉栖の記憶を取り戻すに際し、なくした記憶の確認を行った。
 まずは、自分の名前、生年月日、両親の名前、など
 果てには、@chの事などを確認した。

 結果は、全て正常。
 抜けているのは、『岡部倫太郎』のみ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 01:11:21.30 ID:J5ZZ3s85o<>  確認を行うだけで一日を費やしてしまった。

岡部「む、もうこんな時間か」

紅莉栖「あ、ほんとだ」

岡部「今日話している間に、なにか…思い出したことはあったか?」

紅莉栖「それが…ごめんなさい」

岡部「そうか…気にするな、また明日、皆で見舞いに来る。ラボメンも何人か来てくれるはずだ。そうしたらより多く、想起のきっかけが出てくるはずだ。気に病むな。」

紅莉栖「ありがと……岡部って優しいんだね。」

岡部「ば、ばかいえ じゃあな また明日来るぞ。」

まゆり「ばいば〜い」
ダル「ほんじゃまた」

紅莉栖「今日はありがとね皆 また明日」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 01:26:49.81 ID:J5ZZ3s85o<> 『俺は、神をよほど怒らせてしまったのだろう。
日常に近づきつつあると思うと、直ぐに非日常に連れ戻される』


翌日[記憶喪失二日目]

フェイリス「にゃーん クーニャン調子はどうニャーん?」

萌郁「これ……店長から……お見舞いにって」

るか「牧瀬さん大丈夫ですか? 倒れたって聞いたからいてもたってもいられず」

まゆり「トゥットゥルー♪まゆしぃでーす」

岡部「元気か?助手よ」


紅莉栖「あらフェイリスさん、もう大分いい調子よ、ありがとね。 萌郁さんもありがとう、フルーツ詰め合わせか、その棚の上に置いといてください。店長によろしく言っておいて。 漆原さんも、ごめんね気をかけちゃって。 まゆりも、昨日ぶりね、ふふ」



紅莉栖「それで……あなたは?…誰?」


岡部「!!!???」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/27(水) 03:30:31.99 ID:UrVG2oRyo<> ワ、ワッツ…!?? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/27(水) 07:57:41.38 ID:0Wn+qtYe0<> 一日毎に記憶が……消えているのか……? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/27(水) 08:44:34.67 ID:9VP1i8mHo<> 何これえげつない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2013/03/27(水) 09:22:04.53 ID:KjJjtamF0<> これでジョークとかだったら、笑えない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/27(水) 11:45:49.09 ID:GhQ4IAqu0<> 岡部のみに対しての部分健忘で逆行性健忘と前向性健忘で一日しか持たないって感じかな
これはえぐいな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 12:28:47.33 ID:J5ZZ3s85o<> 岡部「く、紅莉…栖?」

紅莉栖「あなた誰? 白衣を着ているってことは、お医者様? 皆、この方はどなた?」

岡部「…」

フェイリス「牧瀬さん何言ってるの!? 岡部さんだよ!」

紅莉栖「おかべ?」

岡部「……」

萌郁「岡部……倫太郎くん」

紅莉栖「へぇ、岡部倫太郎さんか 初めまして…よね?」

岡部「……いや、違う……昨日も、こうして会った…」

紅莉栖「うそ!? ほんとに!? じゃあ私、記憶喪失に陥ってるってこと? でもなんで部分的に抜けてるのかしら……」

 考え込むクリスの顔は、昨日と何一つ変わらない。未来の脳科学の権威の顔が、そこにはあった。
 『なーにをふざけているのだっ!』と
 そんな言葉を投げかけるのを、躊躇するほどに、真剣な顔をして、思考を巡らしている。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 13:51:13.45 ID:J5ZZ3s85o<> るか「おか…凶真さん……」

岡部「ん…あ、あぁ…大丈夫だ。」

 そんな訳がない。昨日、一日掛けて思い出を話したが、全て紅莉栖には、引っかからなかった。
 つまり、昨日話したことは、記憶の想起には繋がらないのだと……
 そして、『岡部倫太郎』について、リセットされたということ……
 これが偶然なのか、必然なのかは、まだ誰にもわからない。

 気持ちを落ち着かせようとする。 とたん、紅莉栖が質問を飛ばしてくる。

紅莉栖「きょうま? 凶真って、あの鳳凰院凶真?」

岡部「?!」

 昨日、紅莉栖の記憶の確認をする際、@chのことも確認した。
 紅莉栖のコテハンを口に出した時の焦り様は、半端ではなかった。
 つまり、自分のコテハンは覚えている。という確認が取れたのだ。

 紅莉栖が自分のコテハンを覚えている。と確認が取れたのち
 俺は、覚えている限りの論破された議題、論破のされ方を全て事細かに説明した。 
 もちろん、紅莉栖は全て正常に記憶しており、
『そんなこともあったわね』と、懐かしむ素振りさえ見せた。

 だがひとつ、重要なことを確認し忘れていたのだ…  <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 14:18:28.31 ID:J5ZZ3s85o<>  議論した相手。今回の場合は、この俺、『岡部倫太郎』。コテハンは、言わずと知れた。『鳳凰院凶真』だ。

 俺自身は、紅莉栖…『栗ご飯とカメハメ波』に論破された議題を、想起すればいい話だが、紅莉栖は違う。
 紅莉栖は、いわゆる論破厨。
 自分の考えと違う人を見かけたら、つっかかって行く。
 その人数は、数え切れないほどであり。すべてを記憶しきれるのかどうかわからないほどである。
 その中の一人として、この俺『鳳凰院凶真』は確かに参加していた。

 昨日、確認に際し話した@chのエピソードが、全て『鳳凰院凶真』が関連している事は、本人である俺からした場合、言わずもがなである。
 しかし、紅莉栖は違う。昨日の紅莉栖が、全て『鳳凰院凶真』だと認識していたのか。
 それとも、漠然と記憶しており、『鳳凰院凶真』と認識していなかったのか。 今は誰にもわからない。紅莉栖でさえも…
 ただ確かなのは、紅莉栖の中で『鳳凰院凶真』のピースは欠けていなかったという事。
 それから推測すると、俺に関することすべてを、忘れたわけではなく『岡部倫太郎』を忘れたということ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 16:55:22.62 ID:J5ZZ3s85o<> 岡部「あぁ、確かに この俺が、鳳凰院凶真だ。」

紅莉栖「へぇ、あなたが。なんていうか……予想より落ち着いているわね。」

 落ち着いている原因は紅莉栖なのだがな

岡部「まあな、鳳凰院凶真であり、岡部倫太郎でもある。今は、岡部倫太郎だからな」

紅莉栖「なるほどね、ってことは、私は……なんて呼んでたかしら?」

岡部「お、岡部…と」

紅莉栖「そう、よろしくね。岡部」

 にこやかな顔を見せ、手を伸ばしてくる紅莉栖。

岡部「あ、あぁ」

 手を握り返す。 ふと、横に目をやると、まゆりが泣き出しそうになっていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 18:27:27.61 ID:J5ZZ3s85o<> まゆり「オ、オカリン〜」

 ボロボロと涙を落とす。

岡部「大丈夫だ。大丈夫…大丈夫」

 まゆりの頭を撫でながら呪文のように唱える。

 誰に対していった「大丈夫」なのか、分からない。まゆりに対してなのか、紅莉栖に対してなのか。
 自分に対してなのか… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 18:28:59.10 ID:J5ZZ3s85o<>  とりあえず、昨日の記憶との齟齬を確認した。
 結果は、またしても『岡部倫太郎』だった。
 端的な所では、俺の話した内容は削除され
 重要な所では、俺以外の誰かが話したことになっていた。

 まるで、紅莉栖の記憶の中から、俺だけを排除するように…

 また、俺のエピソードで一日が過ぎた。
 ラボメンは、俺のエピソードを紅莉栖に伝える事に、尽力してくれた。 ひたすら助けようと…

紅莉栖「皆、ありがとね。でも、今日はもう時間切れよ。」

面会時間が切れた。

紅莉栖「岡部…ごめんなさいね。忘れちゃって、でももう大丈夫。メモも録ったし、忘れてもまた記憶すればいいのよ。」

岡部「そうか……」

紅莉栖「うん……また、明日ね。」

 真冬の年末、雪の匂いがする中
『今日はすまなかった。皆、ありがとう』
 そう伝えて、ラボメンに頭を下げる。
 『なーに言ってるニャ』
 『だって……私たち…』
 『ラボメンですもの。』
 『くりすちゃん早く治ったらいいね。オカリン』

 本当に頭が上がらない。仲間に恵まれた幸せ。

『しかし、日常に近寄ると、それ以上に非日常に引きずり込まれる。』 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 19:11:55.68 ID:J5ZZ3s85o<> [記憶喪失三日目]

ダル「はろぉ〜牧瀬氏」

フェイリス「にゃーん」

岡部「……」

紅莉栖「あら、二日ぶりね、ハロー橋田。フェイリスさんも、なんどもありがとうね。 ……」

 紅莉栖が口をつぐむ。俺を見て、一瞬考え込むように。
 何か、この二日間とは違う感じ。
 何か、改善が起きたのか。それとも……


紅莉栖「鳳凰院…さんですよね?」

岡部「!」

 そうか、『岡部倫太郎』ではなく、『鳳凰院凶真』だと大丈夫なのか。

紅莉栖「一日ぶり、ですね。」

凶真「そうだな…」

紅莉栖「昨日は、ラボメンのみんなと一緒にありがとうございました。」

凶真「気にするな」

紅莉栖「ラボメンのみんなと一緒に居たってことは、あなたもラボメンに?」

ぐっ

凶真「あ……あぁ」


ダル「オカリン?」

凶真「ダル…いいんだ。」

紅莉栖「おかりん? 誰の事何ですか?」

凶真「俺の、親友だ……小学校の頃からのな……」

紅莉栖「へぇ、どんな方なのか。 一度あってみたいですね。」

凶真「いや、奴は…来ない」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 19:13:40.73 ID:J5ZZ3s85o<>  紅莉栖は、『おかりん』に興味を示し、俺に追求してくる。
 そんな追求を俺は、無視するように、深く解説はしなかった。
 また、俺が削除されそうで……

 そんな中ふと思い出した。昨日の紅莉栖のセリフ

 『でももう大丈夫。メモも録ったし』

 そうだ、メモを撮っていたはずだ。

 紅莉栖のICレコーダーを見回して探す。
 何のことはなく、紅莉栖の傍らにあった。

凶真「紅莉栖…そのレコーダー……」

 確認を取らせようと、紅莉栖に催促する。

紅莉栖「あぁ、これ? 不思議なのよね。」

 心臓が一瞬止まるように感じる。

 不思議? 何が? 確認を取るのが怖い。だが、取らなければと世界に急かされる。

凶真「ふ、不思議?」

紅莉栖「うん。みんなとの会話撮ったはずなのに、なんにも記録されてないのよ。」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 19:14:26.74 ID:J5ZZ3s85o<>  世界の選択なのか、必然か偶然か。またしても俺に関する記憶、記録が消えていた。

 俺とダルとフェイリスが打ちひしがれ、紅莉栖が小首をかしげていると、看護師が病室に入ってきた。

 『牧瀬さん、検査の時間ですよ。』

紅莉栖「あ、はい」

 『お付き添いの方もどうぞ。』

ダル「はい」
フェイリス「はいニャ」
岡部「……」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 19:17:46.61 ID:J5ZZ3s85o<>  昨日、紅莉栖の症状を医師に事細かに伝えた。
内容は
[岡部倫太郎に関する記憶の消去]
[ただし、岡部倫太郎のあだ名に関する記憶は保持]

それを聞いた医師は
 『 今日は、脳外科医が非番の為。明日、脳波の検査をしてみましょう』とのことだった。
 『検査を為に、明日岡部さんと、もう二人。牧瀬さんと親交があり、今の牧瀬さんと落ち着いて話せる男女それぞれ一人をお願いします。』
とのことだった。

 今の紅莉栖と落ち着いて話せる男女……
 男は、ダルで事足りるとして
 女子は……まゆりは、ダメだ。同調性が高く、落ち着いて話せない。
 紅莉栖と面を合わせると今のあいつは、泣き出しそうになってしまうだろう。
 まるで、紅莉栖が感じるはずの悲しみを、全て代わりに受けとったみたいに

 ほかのラボメンに頼るとすると、萌郁は口下手でしゃべるのが得意ではない。ルカ子は男だ。
 つまるところ、フェイリスに頼るしかなかったのだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 19:21:05.57 ID:J5ZZ3s85o<>  快く受けてくれたフェイリスは、鼻歌混じりで看護師の後についていく。
 その後ろにダル、そして俺、鳳凰院凶真がついていく。 

 検査室に着くと部屋の中には、ベッドがひとつ椅子が三つ並んでいた。

紅莉栖「まさか、私がこれを付ける側にまわるとは。」

 脳波をスキャンするための装置を被り、紅莉栖が言う。
 脳科学の実験で幾度となく、装着する所は見てきたのだろう。

医師「すいません牧瀬さん、いくらあなたといえど、被験者に詳細を公表することはできません。」

 脳医学の権威として名が通っている担当医師が言う

紅莉栖「ま、仕方ないですよね。こんな実験、自分でなきゃ私だって結果を見たい程ですもん。」

 心理医学のてんから、被験者に結果を知らせることはできない。
 今回は特に『岡部倫太郎』に関してのみ、部分的記憶喪失、健忘が起こっていることから
 特殊的措置を取らなければいけず、なにを忘れているのか、紅莉栖に事前に知らされることは禁じられた。
 精査な診断のためだという。

 検査室に入る前、診察室で検査の詳細の説明を四人揃って聞いた。
 何のことはなく、ただ
『いつもどおりの会話をしてくれ』だそうだ。
 注意点は、
 ・なるべく多くエピソードを話す
 ・なるべく多く登場人物を出す
の二点だと言われた。


『牧瀬さーん 先に入ってくださーい』

紅莉栖「あ、はーい」

 検査室から顔を出した看護師の声が聞こえた。

 紅莉栖を見送り、診察室の椅子に座ったままの俺達は、手持ち無沙汰になった。

 医師が口を開く。
 『お三方にもう二つ注意点がございます。』

 ・岡部倫太郎の話題を必ず出す。
 ・ただし、なるべく被験者本人。牧瀬紅莉栖の口から話題が出てくる事を期待する。
 最重要事項だという。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/27(水) 19:41:39.12 ID:thFqtx0qO<> 見ているぞ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/27(水) 20:06:44.33 ID:0rcmBh0Oo<> お前は知りすぎた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 20:11:33.43 ID:J5ZZ3s85o<>  紅莉栖「さて、と」

 ベッドに横たわり、楽な姿勢を取る紅莉栖
 その横にいつもの病室のように、三人揃って座る。

紅莉栖「まず…そうね、まゆりについて話していきましょうか。」

紅莉栖が引っ張ってくれる。

まゆりに関しての記憶、エピソード、口癖。

 ダルとフェイリスが受け答えをしてくれる。

 俺は……俺は、声が出てこない。何を話したらいいのかわからない。
 鳳凰院として話せばいいのか、岡部として話せばいいのか。

 迷っていると、話題はルカ子に変わっていた。

 いつもどおりの談笑をしようと、励んでくれている二人。

 しかし、紅莉栖の口から、『岡部』の文字が出てくることはない。

 萌郁の名前がでて末には、ミスターブラウンこと天王寺裕吾やその娘、天王寺綯の話題まで出てくる。

 しかし、依然として岡部は出てこない。

 痺れを切らしたのか、ダルがおずおずと話を切り出す。

ダル「牧瀬氏……オカリンって……わかる?」

紅莉栖「おかりん?」

 あぁ、やっぱりだ。確認したくなかった。 やはり、岡部倫太郎だけが消えていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 20:13:21.10 ID:J5ZZ3s85o<> ダル「ほら、よく二人で仲良く口げんかしてたじゃん」

紅莉栖「ごめん。ほんとに分からないわ。状況からすると、その『おかりん』ってのが今回の検査の一因なのね」

 というか、全因なのだが…

ダル「岡部倫太郎は? 聞き覚えは?」

紅莉栖「ごめん……ないわ……」

フェイリス「じゃあ見覚えは?! ほら!」

 フェイリスが俺を指さす

紅莉栖「ほらって……鳳凰院さんが何か?」

 フェイリスが声を荒らげかける。

フェイリス「何言ってるの?! 鳳凰院じゃなくて! おか…」

岡部「フェイリス…いいんだ…紅莉栖は悪くない。」

フェイリス「ぁ……」

 フェイリスが口を閉じる。
 目には、涙が溜まっていた。

紅莉栖「鳳凰院さんと、その…おかりん…て人は、そんなに似ているの?」

凶真「あぁ……常人なら見分けがつかないほどにな…」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 20:15:35.93 ID:J5ZZ3s85o<>  三時間ほどかかった検査が終了し、検査の結果を待つ間、病室に戻る。

紅莉栖「鳳凰院さん」

岡部「……」

紅莉栖「鳳凰院さん!」

凶真「あ、あぁ なんだ?」

紅莉栖「その、岡部さんに伝えといて欲しいことがあるの。」

凶真「う…うむ」

紅莉栖「『忘れてしまってごめんなさい。 必ず、思い出すから』と」

凶真「……承知した、」

 思わず、目の前が揺らぐ。
 リーディングシュタイナーが発動したのかと、この世界から脱出出来るのかと、希望を持ちそうになるが…

紅莉栖「泣いて……いるの?」

凶真「えっ?」

 何のことはなかった、涙で目の前が揺れただけだった。

凶真「ふ、ふぅーははは! 奴に伝えたら思わず泣くだろうと思ってな。」

 意味もなく強がる。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 20:16:34.49 ID:J5ZZ3s85o<>  『お三方、検査の結果が出ましたので、こちらへ』

 病室に顔を出した看護師に言われる。

岡部「はい…」
フェイリス「それじゃ、行ってくるニャ」
ダル「行ってくるお」

紅莉栖「行ってらっしゃい」
 手を振る紅莉栖に同じように手を振り答える。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 20:17:54.55 ID:J5ZZ3s85o<>  『まず、ご理解していただきたいのは、脳という臓器は未だ、9割以上が謎に包まれた臓器だ。ということです。』

 医師が説明を切り出した際、最初に言われたことだ。


 医師の説明を簡単に要約すると、

・脳の働きの中に、他人のことを考える際、それぞれ違う場所が活発になるという実験結果があるということ。

 より噛み砕くと、
 ダルのことを考えてる時は、側頭葉。
 まゆりのことを考えてる時は、前頭葉。
 人によっては、前頭葉と側頭葉が活発になる。
 など、それぞれ活発になる場所が違うというのだ。

 今回の検査でも、これを調査したらしい。

 すると、岡部倫太郎に関しての話題の時のみ、異常が見られた。

 脳に活動が見られなかったというのだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 20:19:14.51 ID:J5ZZ3s85o<> 岡部「そ、それは、どうゆうことなんです!?」

医師「分かりません。ただ、なんとなく言えるのは……これは、脳医学に従事した勘と言いましょうか……誠に申し上げにくいのですが…」

岡部「なんなんですか!? はっきり言ってください!」

医師「……まるで、牧瀬さんの脳は……岡部さんを拒否しているように見て取れます。……」

岡部「え…」

 紅莉栖が……俺を拒否している?……何故?

岡部「どうゆう……ことですか?…」

医師「最初に申し上げたとおり、未だ脳は未知の臓器です。なにか因果があったとしても、それを簡単に見つけ出すことは、まだできません。 現状では、この症状の詳細は誰もわかりません。 すみません。」

 ……聞きたくない……… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 20:20:44.70 ID:J5ZZ3s85o<> 医師「おそらく、岡部さんに関しての記憶は、保持されません。」

 聞きたくない……

医師「治療法は、……絶望的でしょう。 なんでもないことから、前のように戻るかもしれません。 しかし、その可能性は、未知数です。」

 聞きたくない…

医師「全く持って未知の症状ですので、何が起きても不思議ではありません。」

 聞きたくない!

医師「岡部さん、あなたにとって……紅莉栖さんは、どんな方ですか?」

 ……え

医師「命に代えても救いたい方ですか? 自分の名前を捨ててまで、傍に居たいですか?」

 ……なにを、言っているんだ?

医師「自分を捨てて、紅莉栖さんにとっての『鳳凰院凶真』として生きていくのか、 それとも自分は自分だと、『岡部倫太郎』を思い出させるのか。」

 道は、二つです。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 20:21:51.26 ID:J5ZZ3s85o<> 医師「現状況では、牧瀬さんに被害は出ておりませんが、この先も記憶の削除、再構築が行われるとすると、何が起きるかは分かりません。この意味…わかりますね?」

 ……最悪の場合、また紅莉栖を苦しめるかもしれないのか……俺が、俺であろうとするなら……

??「……わかりました。彼女が苦しむところ、いや彼女が苦しむ可能性は、認めたくありません。」

??「俺は… 俺は………」

_________________ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 20:22:39.79 ID:J5ZZ3s85o<>  ラボの扉を開ける。

紅莉栖「おかえり、凶真。」

凶真「あ、あぁただいま。」

紅莉栖「ドクペなら、冷蔵庫にあるわよ。」

凶真「おぅ……いただこう。」


 結果、俺は『鳳凰院凶真』を選んだ。
 紅莉栖が苦しむ姿を見たくなかったから、紅莉栖が、苦しむ可能性を認めたくなかったから、

 結局、未だ『岡部倫太郎』については、何も思い出せていない。
 だがこれでいいのだろう。
 『岡部倫太郎』でなくとも、紅莉栖がここにいる。紅莉栖の傍にいれる。
 まだ自分の気持ちを伝えれていないのは、恐らく『岡部倫太郎』の時のヘタレが残っているからであろう。

 そろそろ、勇気を出さないとな……

 そう考えながら、ドクペを開ける。

 プシュッとさわやかな音がした。

      FAKEend <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/27(水) 20:35:14.08 ID:XHAdV+KGo<> さぁ、本編に入ろうか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/27(水) 20:44:24.11 ID:8wpp1aAfo<> 序章が終わったのか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 21:20:39.84 ID:J5ZZ3s85o<> _________________
凶真「紅莉栖……大事な話がある。」

 ヘタれるわけには行かない。

紅莉栖「う、うん。ナニ?」

 紅莉栖の声がうわずっている。
 記憶を失ってからというもの、紅莉栖のイメージは、少し変わった。
 何と言うか、柔らかくなったのだ。
 前の紅莉栖とは、どこか違う……認めたくないが。

凶真「その……だな…」

紅莉栖「うん……」

 ええい、ままよ

凶真「俺は、お前が……好きだ。」

紅莉栖「……うん」

凶真「お前はどうなのだ?」

紅莉栖「……知りたいのか?」


 俺は、これを知っている。過去に一度、経験していた。
 前の紅莉栖が出てきたみたいで、やっと会えたみたいで、内心嬉しくて心が躍る。

 しかし、帰ってきたのは意外な答え。

紅莉栖「ごめんなさい」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 21:21:31.00 ID:J5ZZ3s85o<> 凶真「えっ」

紅莉栖「ごめんね、凶真。その想いには、答えられない。」

凶真「なんで……なんで」

紅莉栖「私ね、好きな人…居るんだ。」

 好きな人……誰なのか。確認したくない、だがしなければいけない。
 強迫観念に囚われた俺は、つまりづまり口を開く。

凶真「だ、だれだ? 誰のことなんだ?」

 ダルか? ルカ子か? それとも、全く別の誰かか?

紅莉栖「それが…なーんにも思い出せないんだ。」

 誰だ、思い出せないということは、過去にあった人物のはずだ。
 アメリカか? 誰だ? 誰だ?

紅莉栖「ただ……なんとなーく覚えているのはね……」

 凶真みたいに、いっつも白衣を纏ってるってことなの
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 21:22:42.70 ID:J5ZZ3s85o<> 紅莉栖「何度もその人のこと思い出すぞーって、頑張ってるんだけど、どうしても思い出せないの。」

 白衣を纏っていて、
 でも、凶真みたいに厨二病じゃなくて、
 いつも、仲間のために頑張ってくれる。

紅莉栖「そこまでは、思い出せたんだ。」

凶真「……」

 それが誰なのか、俺は良く知っている。
 いや、俺自身が良く知っている。

 そいつの名前は……

??「紅莉栖、落ち着いて聞いてくれ。」

紅莉栖「えっ? う、うん」

??「そいつの名前は、『岡部倫太郎』だ。」

紅莉栖「おかべ? りんたろう?」

??「そうだ。 そして、お前には、俺の本当の名前を言っていなかったな。」

紅莉栖「えっ? 鳳凰院凶真なんじゃないの?」

??「俺の本当の名前、我が真名は…」

岡部「岡部倫太郎だ。」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 21:23:57.70 ID:J5ZZ3s85o<> 紅莉栖「うそ…凶真が、岡部なの?」

岡部「あぁそうだ、凶真が俺というより、俺が凶真なんだよ。紅莉栖」

紅莉栖「えっ? えっ? ちょ、ちょっと待って、ストップ!」

岡部「いいや待たない。俺は、岡部倫太郎は……お前に伝えなければいけない事がある。」

紅莉栖「ほんと待って岡部、頭こんがらがってきた。」

岡部「俺は、お前が好きだ。」

紅莉栖「……ふぇ?」

岡部「お前は、どうなのだ?」

紅莉栖「うぅ…答えたいけど答えられない……」

岡部「どうして?」

紅莉栖「頭こんがらがって訳わからないからよ! このバカ岡部!」

岡部「じゃあ、落ち着いてからでいい。」

紅莉栖「頭痛い。考えがまとまらない。今日は、もう帰るわね。」

岡部「ちょ、ちょっと待て!今帰られたら、また忘れてしまうのではないのか?!」

紅莉栖「またって何の話よ? こんな衝撃的な話、忘れるわけがないでしょ。 じゃあね バーイ」

 逃げるように帰っていった。

 これで良かったのか? この選択は間違いではないのか?

 また、明日来た紅莉栖が
 『おはよー凶真』
 と、挨拶してくるのではないか……

 様々な憶測が嵐を呼び、頭の中で吹き荒れる。
_____________ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 21:25:18.42 ID:J5ZZ3s85o<>
 結局、あのあとラボに泊まったはいいが一睡もできなかった。

 後になって思い出す。医師の言葉…

 『この先も、記憶の削除、再構築が行われるとすると何が起きるかは分かりません。』

 俺の選択はあっていたのか、
 俺が、岡部倫太郎だということを、明かしたのは、良かったのか、悪かったのか。

 どれだけ思考を重ねても、答えは出てこない。 紅莉栖の反応は、全く予想ができない。


 ラボの階段を昇る足音が耳に届いた。
 紅莉栖だろう……と、心を構えて待ってしまう。

ガチャ

紅莉栖「ハロー……」

 続きの言葉が耳に届いてこない。
 俺の耳が拒否しているのか、紅莉栖が発していないのか。

 続きを待つ一瞬が永遠に思える。


紅莉栖「今日は、まだ岡部だけか……」

岡部「………えっ?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 21:27:03.77 ID:J5ZZ3s85o<> 紅莉栖「どうしたのよ辛気臭い顔して」

岡部「く、紅莉栖…お前、記憶が…」

紅莉栖「記憶? なんのことかさっぱりなんですけど」

岡部「お、お前、今日の朝、何かいつもと違うことでもしたのか?!」

紅莉栖「いつもと違うことなんかした覚えないけど? それに、昨日までやたら岡部が鳳凰院を名乗ってたって事の方がいつもと違うことなんじゃないの?  まあ寝起きは、いつもよりすっごく良かったわね。まるで……」

 永い悪夢から覚めたみたいに、炭酸飲料を開けた時みたいな、爽快感があったわ。

紅莉栖「頭の中にあった、霧が一気に晴れたみたいだったわ。 何に対してかかっていたのか。 今じゃわからないけど。」

岡部「そ、そうか……なにはともあれ、良かった。」

 それで、昨日のこと…覚えているか?

 昨日? なにかあったかしら。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 21:28:13.76 ID:J5ZZ3s85o<>
 どうやら、紅莉栖は、今日の朝覚醒したみたいだ。

 つまり…昨日の告白は覚えていない……俺はまた勇気を出さなければいけないということか……

 俺は何度勇気を出せばいいのだ!しかも一人に対して!
 恨むぞ!神よ!




 で? 昨日の事って?

 ……知りたいのか?

 う、うん

 ……目を、閉じろ。


        trueend <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/27(水) 22:29:43.89 ID:wW5SsiRso<> Happy Endはよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 23:11:00.61 ID:J5ZZ3s85o<>  結局、あのあと紅莉栖は黙りこくってしまった。

 俺はお前が好きだ。

 …うん

 お前は、どうなのだ?

 ……き…

 え?

 ……大好き…
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 23:11:53.74 ID:J5ZZ3s85o<>
 よ、良かったぁ

 結果は知っていたようなものだが、再認識して、戻ってきた日常に安堵する。

 ただひとつ、ひとつだけ引っかかっていた言葉、

『まるで、岡部さんを拒否しているみたいに見て取れます。』

 拒否なんてされていなかった。
 だからこそ、疑問が浮かぶ。

 なぜ、そんなことになったのか?

 紅莉栖に答えを期待することもなく聞いてみる。

岡部「なぁ……俺の事、なんていうか……」

紅莉栖「なによ?」

岡部「拒否というか……拒絶というか……そんな感じに思ったこと、あるか?」

 われながら訳のわからない質問。

紅莉栖「そんなことするわけ無いでしょ。 でも……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/27(水) 23:13:27.12 ID:J5ZZ3s85o<> 紅莉栖「岡部の事を諦めようか、と思ったことはあった…」

 諦める?

岡部「なんで?」

紅莉栖「あなたは、周りに恵まれすぎているから。」

 は? 言ってる意味がわからない。

紅莉栖「この鈍感男……」

 紅莉栖がなにかつぶやいたようだが、俺は既に思考に浸っていた。


 つまり、諦めかけて悩んでいた時に事故に遭い、思考が止まったから、『岡部倫太郎』を拒否したというのか? 意味がわからない。

 いやまて、だとすると紅莉栖が覚醒した理由は、俺が想いを伝えたから? 早く伝えていたら、こんなことにはならなかった?

岡部「ふ、ふふふ、ふぅ、ふぅーははは」

 なんてことはない。 俺が、ヘタレた事が原因だったのだ。

 もう既に、意味はないだろうが。安心、確信を持たせるためにこれは言わなければいけない。
 牧瀬紅莉栖のために、岡部倫太郎のために。

岡部「安心しろ、紅莉栖」

岡部「俺は、お前以外にうつつを抜かすことはない。」

岡部「俺には、お前しか考えられないのだ。」

岡部「諦めるなどと考える意味が無い。」


岡部「やっと、やっとお前と意思疎通を取ることができたのだからな!」





 『ようやくだな、岡部倫太郎…俺様よ』

 「ありがとな、鳳凰院凶真…俺よ」

 『もう、俺の仮面を被らなくても、彼女は大丈夫だな。』

 「世話になったな。」

 『気にするな、お前は俺で俺はお前なのだからな。フゥーハハハ』

 「ふっ、確かにな。」

 『さて、俺はもうそろそろ、消えるとするか。役目は、もう終わったからな』

 『それじゃ別れの挨拶と行くか』

 『わからない、なんて言わないよな。』

 『それじゃあな』

 「『エル、プサイ、コングルゥ』」


      HAPPPYEND <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/27(水) 23:21:56.89 ID:wW5SsiRso<> その伏線回収したか
やれば出来る子だな
おつかれ、それともまだ続くのか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>ago<>2013/03/28(木) 00:07:14.07 ID:cZJHExHDo<> もう無理ぽ 続き思いつかん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/29(金) 10:05:10.82 ID:uNByxLu2O<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/29(金) 12:56:54.84 ID:Ik68AR6oo<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/31(日) 03:05:40.50 ID:eBA2rmHKo<> なんか、あっけなかった <>