VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/16(土) 17:26:28.43 ID:mErWz44DO<>─ ぷろろーぐ ─
ちゃーっちゃっちゃっちゃー♪(チープな電子音)
ナレーター「ここは剣と魔法のファンタズム世界。
かつて、この世界には『女神』と『邪神』がおり、二者は熾烈な戦いを繰り広げていた。
だが女神と邪神の力は互角、二者は戦いを続けていくうちに疲弊していき、やがて力を使い果たしたかのように揃って地上から姿を消した。
こうして地上の戦いは終局を迎えた……かのように思えたが、邪神の意思を継ぐ『魔王』率いる魔族と、女神の意思を継ぐ『勇者』率いる人間の軍が代行戦争をおっ始める。
そしてそれから数百年、戦いはまだ、終わっていないいないいないいない……(エコー)」
視界が上昇、星空にフェードアウトしていく。
─ ぷろろーぐ・完 ─
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1361003188
<>にゃあ
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/16(土) 18:10:38.31 ID:mErWz44DO<> ─ 城・玉座 ─
王様「勇者よ、遠路はるばるよく来てくれた!」
勇者(女)「王国の一大事とあらばこの勇者、世界のどこからでも駆けつけましょう」
王様「うむ! よくぞ言ってくれた勇者よ!」
──ズイズイ。
勇者(女)「か、かおが近いです王様……」
王様「おお、すまんすまん! 『国難に立ち向かうため勇者に助力を頼む王様』というシチュにワシ、ちょいと興奮してしまったわい!
と、そうじゃ忘れておった!」
好々爺としていた王様の顔が急にキリと引き締まった。
王様「勇者よ、我が王国のため、その力を貸しては頂けぬだろうか? 頼む、首を縦に振ってくれ!」
だが王様の役はすでに台無しになっている。
勇者は引きつった笑みを浮かべながら頷いた。
勇者「は、はい。というか、そのために城まで来たんですし……」
王様「おお! 感謝するぞ勇者よ!
……というわけでワシの話はおしまい、事務的な話は大臣から頼む」
大臣「それでは勇者様、お手元にあるプリント『旅の友』の5ページを開いてください」
勇者(女)「は、はい……旅の友という名前の割りに辞典みたいな厚さですねコレ」
絶対に旅の途中で捨てられそうな旅の友をぺらぺらと勇者がめくる。
すると、大臣が続けて説明を始めた。
大臣「まずここ百年の王国の歴史をば……先代国王がうんぬんかんぬん……」
勇者(女)「……」
大臣「おやつは三百円までで……」
勇者(女)「……」
──いつまで掛かるんだろう?
勇者は大臣に気づかれぬよう、旅の友に顔を隠しながら小さくため息をついたのだった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/16(土) 18:44:36.72 ID:mErWz44DO<> ─ 街・夕方 ─
勇者「結局、夕方までかかっちゃった」
見上げた空は夕焼けに染まり、辺りに整然と広がる石造りの街並みも同様にほのかな朱を帯びていた。
勇者「さて、王様から支度金も貰ったし、旅の友もちゃっちゃっとゴミ箱に放り込んだし、今日は宿でも取って……」
女性「う〜ん……うぅ〜ん……」
勇者「はっ! 路地裏で女の人がお腹を押さえてうずくまってる!?」
女性「だ、だれか〜……助けて〜」
勇者「だ、大丈夫ですか!? どうしたんですか、いったい!?」
女性「急にお腹が痛くなって……ところで貴女は勇者様?」
勇者「は? い、いちおうは勇者ですけど、それが……」
勇者がそう口にした瞬間、暗がりから一人の女性が目にも止まらぬ速さで飛び出して来た。
女性2「どっせい!」
勇者「げふぉっ!?」
そして女性は勇者の腹にそのまま右ストレート。
勇者は体を『く』の字に曲げて地面に転がった。
女性1「気絶したかしら?」
腹を押さえていた女性がケロリとした顔で立ち上がった。
勇者「う、う〜ん……」
女性2「あっ! まだ意識があるぞ!」
女性1「ていっ! 天界スタンガン!」
──バチバチーン!
勇者「ぎにゃーっ!?」
女性1「どうかしら?」
勇者「きゅう……」
女性2「よし! グッジョブ! 運ぶぞー!」
女性1「はいはい……じゃあ私は小指の先を持つから貴女は他全部を頼むわね?」
女性2「ぶっ飛ばすぞテメェ!?」
女性1「はいはい……」
ダウン追い討ちのスタンガンを食らって意識が遠退いていくなか、勇者は二人の女性にせっせと運ばれて行った。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/16(土) 19:59:49.57 ID:mErWz44DO<> 〜 ??? 〜
勇者「あ、あれ? ここはいったい? 私は何を?」
ふわふわと何も無い空間を漂う勇者。それも全裸で。
勇者「って、きゃ〜!? 何で服を着てないの私!?」
女性2「ええい! やかましい!」
勇者「あだっ!」
すぱこーん、と横から勇者の頭に突っ込みが飛んできた。
勇者「いたた……あ、貴女はさっき私にボディブローをかました!」
女性2「うむ、その節は悪かったな」
勇者「いや、謝られても……というか、ここどこ?」
女性1「ここは貴女の夢のなか、私たちは貴女の精神に直接話しかけてるのよ」
勇者「うわっ、もう一人いた!? ……って、貴女はお腹を押さえていた女性!?」
女性1「もちろん仮病よ? 貴女……勇者の気をひくための芝居、ね?」
勇者「あ、あなたたちは……いったい……それに何で貴女たちは服を着ていて私は全裸……」
自分の素性を知っている、見知らぬ相手。
勇者はごくりとツバを飲み込む。
二人の女性は不敵な笑みを顔に浮かべると、急にがばっと自らの衣服を脱ぎ捨てた。
女性1「私は女神」
女性2「アタシは邪神」
白い翼を広げる金髪の自称女神と、黒い翼とシッポを持つ灰色の肌の自称邪神がそこにいた。
「服を脱いだだけで何でそうなる?」という突っ込みをしてはいけない。
二人「我ら、ツインゴッテス!!」
そして揃ってキメポーズをとる自称女神と自称邪神。背景でザパーンと冬の荒波が白く散っていた。
それに対して勇者は……
勇者「……」
──この人たち、服をぬいでも服を着てるし何で? ……あっそうか夢だ。翼とかシッポとか生えてるし、変な夢だなぁ、早く目を覚まさないかなぁ……。
……現実逃避を始めていた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/16(土) 20:24:27.17 ID:mErWz44DO<> 〜 数分後 〜
女神「落ち着いたかしら?」
勇者「は、はい。なんとか……」
邪神「では話を……」
勇者「ちょっ、待ってください。貴女たちが本物の女神と邪神だとして、何でそんなに仲が良いんですか?」
女神「きゃっ、百合畜生って罵られちゃった!」
勇者「言ってませんよ!?」
邪神「気にするな、こいつはこーゆう奴だ。
勇者は『魔族』と『人間』が争うハメになった元凶がどうして一緒にいるのか、と聞きたいのだろう?」
勇者「はい。魔族と人間が争う事になった発端は邪神と女神の戦いなのでは……」
邪神「そうか、なら説明しよう」
女神「これは聞くも涙、語るも涙……」
邪神「あれは今から四百年前のこと、私たちが仲良く暮らしていた時の話だ……」
……………………………
………………… <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/16(土) 21:17:31.41 ID:mErWz44DO<> 〜 回想・神殿 〜
邪神「アタシのプリンを食ったのはテメェか!?」
バンッと勢いよく扉が開け放たれ、身体から湯気の昇るバスタオル姿で邪神が居間に入って来た。
女神「あら? どうしたの? 痴女プレイ?」
邪神「シャーラップ! 神官の話でお前が『黒』だってこっちはちゃんと分かってるんだ! アタシのプリン返せ!」
女神「……ちっ」
邪神「舌打ちしてないでちゃんと返せ! ぬすっと! 泥棒猫!
こっちは風呂上がりに楽しみにしてたんだぞ!」
女神「もう、うるさいわね。返せばいいのでしょう? 返せば」
──ヒュッ。
女神が気だるそうに透明のカップを片手で投げる。
カップは邪神の肩に当たってそのまま落下。石床とぶつかり、コツという硬い音を立てた。
邪神「あーッ!? もうカラっぽではないか!?」
女神「ごめんなさいね? あんまり美味しそうだったからつい、ね?」
邪神「フタに『邪神』と書いてるのにそれでも食うか! この食欲旺盛なメス豚め!!」
女神「メスブ……ッ!?」
邪神「謝れメス豚!!」
女神「そ、そう……謝罪を希望してるのなら、してあげましょうか。謝罪を」
邪神「早くしろメス豚!」
女神「ご〜めん〜なさ〜い(棒読み+舌を出しながら)」
邪神「しばくぞゴラァッ!」
女神「うっさいわよアバズレ! いちいちプリンくらいで目くじらを立てるんじゃないわよ!
あ〜あ〜、お布施の少ない不人気キャラはこんな小さな事も必死なんだから大変ね?」
邪神「きいぃ〜! 何が不人気だ! だいたい、お前こそ年々お布施が減ってるそうじゃないか? メス豚根性が露呈したのか?
……ああ、そうか。滲み出る気配で分かるくらいに根性が腐ってるもんな! お前!」
女神「ぶち殺しますですわよアバズレがッ!!」
邪神「がるるーッ!」
女神「きしゃーッ!」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/16(土) 21:20:06.91 ID:mErWz44DO<> 取っ組み合って睨み合う二人。
すると、騒ぎを聞き付けてやって来た巫女がおずおずと仲裁に入って来た。
巫女「あ、あの……お二人ともケンカは……」
邪神「貴女はどっち!」
巫女「え?」
女神「どっちの味方!」
巫女「あ、あの……」
邪神「ま、絶対にアタシの味方だろうな! 世界人口の九割九部九厘はアタシの味方だからな!」
女神「あらあら? 脳髄までイカレたのかしら?
貴女みたいな薄汚いグレーの肌に下劣な黒い翼になびく者なんて、一部のマニアしかいませんことですわよ?」
邪神「はっ! それはお前のことじゃないのか? 腹黒いくせに純情派を気取ってるからボロが出始めて賢い信者には見切りを付けられてるくせによ!
いっそ包み隠さず自分の内面を形にしてみたらどうだ?
おっと、それじゃとても見るに耐えない醜悪な姿になるか! ハッハッハッ!」
女神「言いやがりましたわね! 別段悪事を働きもしないのに邪神を語るこの腐れ中二病のアバズレが!」
邪神「うるさいぞ腹黒メス豚! なら試してみるか!?
どっちの旗の下にファンが多く集うかをよ!」
女神「いいですわ! やりましょう! 負けたら一生涯奴隷生活をエンジョイということでよくて!?」
邪神「いいぞ! 負けるのはお前だからな! ああ、お前を奴隷としてこき使え続けるのは楽しみだ!」
女神「言ってなさいアバズレが!」
女神「おっほっほっ……」
邪神「ハッハッハッ……」
巫女「あわわ……」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/16(土) 22:41:12.21 ID:mErWz44DO<> 〜 回想・ライブ会場 〜
女神「……というわけで、信者のみんな〜! 集まってくれたかしら〜!」
女神信者たち「うおー! 女神たーん!」
女神「アバズレ女なんかになびいたら五条河原に首をさらすわよ〜!」
女神信者「いえーす!」
そして邪神サイド。
邪神「みんな、集まってくれたか!」
邪神信者「はい!」
邪神「私はあのメス豚のように強制はしない! なぜなら私は、諸君らの心を誰よりも理解しているからだ!」
邪神信者「はい! 我々は死してもなお邪神様と共にありたいと魂に誓いを刻み込んでおります!」
邪神「ありがとうみんな! それじゃ、舞台に行って来る!」
邪神信者「御武運を!」
そしてステージ。
巫女「え、えっと……これから数日間、女神様と邪神様のライブやらパフォーマンスやらが延々と続きます。
やがて迎える終わりの日に多くの信者を獲得していた方が勝ちです……」
一般信者「おおー!」
巫女「そ、それでは……同時に舞台への入場を……」
女神「は〜い! もう来てま〜す!」
巫女「きゃあっ!」
邪神「フライングとはな、浅ましい奴だ」
女神「ちゃっかり自分もフライングしておいて何を抜かしてるのかしら〜?」
漂い始めた剣呑な雰囲気を感じて巫女がさっさと話を進める。
巫女「えっと! 伴奏はすべて魔楽器による自動演奏! 演目は同じ! 同一の行為だからこそ違いがはっきりするというわけですね!」
女神「そういうこと〜! じゃあ、さっさとアバズレの化けの皮をはがして無能をさらしてやるわ〜ん!」
邪神「こっちのセリフだ!」
そして女たちの熾烈な戦いが幕を開けた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/18(月) 02:50:31.14 ID:qUCsR3KDO<> 〜 人間の国・王城・玉座 〜
王様「女神様から書状?」
大臣「はい、こちらです」
王様「読め」
大臣「はっ!
『やっほ〜王様〜♪ 急な話でごめんなさ〜い♪
今みんなのためにライブやってるんだけど〜アバズレ邪神がメガミンの邪魔するの〜くすんっ。
だから王様〜、邪神信者をかたっぱしからブタ箱に放り込んじゃって〜♪
ついしん
いっぱい頑張ってくれたらメガミンが王様とデートしてあげる(は・あ・と)』
以上です」
王様「……そうか」
大臣「いかがいたしますか?」
王様「言うまでもない」
大臣「それでは……」
王様「邪神滅びるべし! 一匹でも多くのクソ虫どもを獄中に蹴り飛ばして、メガミンとキャッキャッウフフするもんね〜ワシ!!」
血走った、もといイッちゃった目で王様は口角からよだれを垂れ流しながら叫んだ。
ちなみに王様、女神の刺繍入りのハッピにウチワにハチマキ装備とフルアーマー仕様である。
大臣「王様ならそう言ってくださると信じていました! すぐに警官隊を組織して……」
王様「……いや、待て! ライブ会場には邪神信者もたくさんいると別情報で聞いてある!」
大臣「ま、まさか……王様……」
王様「乱入して『血の収穫祭』じゃーッ! ついでに公務をほっぽり出してメガミンのライブを見るチャンスじゃわい!」
大臣「王様……」
『あんた、ただライブ見に行きたいだけだろ』とは大臣も口に出さない。
なぜなら……
大臣「王様、私もお供します!!」
大臣も脳が腐ってたのだ。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/18(月) 21:29:45.82 ID:qUCsR3KDO<> 〜 魔族の国・王城・玉座 〜
魔大臣「邪神様から書状が届いております」
魔王「読め」
魔大臣「はっ!『忠義を果たせ』とのこと」
魔王「全軍に出撃命令を出せ」
魔大臣「それでは……」
魔王「邪神様に蔑んだ目で無能者と罵られるのも悪くはない。踏まれるのも悪くはない。いや、踏まれたい」
魔大臣「ならば……なぜ?」
魔王「決まっているだろう? 愛想を尽かされたらかまってさえくれなくなるし、それに……」
大臣に振り返った魔王の口元、尖った犬歯がキラリと光った。
魔王「たまには『いい子いい子』されたいじゃないか?」
清々しい、男の笑みだった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga saga<>2013/02/18(月) 22:00:30.63 ID:qUCsR3KDO<> 〜 ライブ会場 〜
女神「あなたのハートを〜♪」
邪神「ぶち抜いてあげるわ〜♪」
女神信者「うおーっ! メガミ〜ン!」
邪神信者「邪神様〜! ファイッ!」
女神(くっ! さすがにやるわね!)
邪神(だが、負けるわけには……)
王様「メガミ〜ン!」
魔王「邪神様〜!」
女神・邪神「なにっ!?」
土煙をもうもうと上げながらやって来る援軍に女神と邪神は驚き、だが事態を理解するとそろってガッツポーズを取った。
女神「援軍……のようね! 票が増えるわ! 私の圧勝かしら?」
邪神「貴様の目は節穴か? 私の援軍の方が数が多いぞ?」
不敵に笑い合う二人。
しかし、それから援軍たちの取った行動に二人は愕然とした。
王様「よっしゃ! 収穫祭だ! 魔族共を皆殺しにせよ!」
魔王「無能なる人間共を根絶やしにせよ! 進め!」
邪神・女神「……は?」
ぽかんと口を開けたまま二人は固まった。
意味がわからない。
だが固まる女神と邪神を放置したまま双方の王の号令一下、兵士たちは武器を片手に突貫し、ライブ会場を一瞬にして血みどろの戦場へと変じさせた。
女神信者「死ねやオラーッ!」
邪神信者「テメェが死ねやーッ!」
阿鼻叫喚の地獄絵図。
血飛沫舞う惨状に二人は「はっ!?」と我にかえる。
女神「ちょっ!? 何で殺り合ってるのよ!」
王様「は? ワシはメガミンのために殺ってるんじゃが?」
女神「いらんわッ!」
邪神「お前も何をやってる!」
魔王「いっぱい殺して『いい子いい子』してもらいたいのだ!」
邪神「アホかーッ!」
げしげしと邪神キックが魔王を襲う。
魔王「ああ……もっと私を蔑んで邪神様……」
しかし、魔王に効果は無かった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/18(月) 22:09:50.24 ID:qUCsR3KDO<> 「死ねーッ!」
「砕け散れッ!」
「燃え尽きるがいいッ!」
巫女「あわわ……最悪な事態ですぅ……」
女神「あちゃー」
邪神「『あちゃー』じゃないだろ! どうするんだ!」
女神「……」
邪神「……」
女神「に〜げろ〜ッ!」
──ばざばざばさー。
巫女「ああッ!? 女神様ーッ!?」
翼を羽ばたかせてすたこらさっさと大空高く飛んで逃げる女神に巫女が叫ぶが、女神はそのままランナウェイ。
巫女「……邪神様」
すがる目を、残った邪神に向ける巫女。
邪神「に〜げろ〜ッ!」
──ばざばざばさー。
巫女「邪神様ーッ!?」
そしてこちらもランナウェイ。
地獄に一人取り残された巫女は、
巫女「うわーん!」
泣いた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/19(火) 00:20:53.17 ID:RWhJArPDO<> 〜 現在・勇者の夢世界 〜
女神「……それから魔族と人間は仲違いしちゃったの」
勇者「ひどいっ!」
邪神「そうだな、魔王と人間の王はひどい無能だった、うんうん」
勇者「ひどいってのはアンタらの事よ!
ま、まさか戦争の発端がそんなくだらない理由だったなんて……」
女神「そう悩まないで勇者ちゃん、いつかいい事あるわよ?」
勇者「諸悪の根源が何を偉そうに言ってるのよ! つか、何で止めなかったのよアンタたち!」
邪神「いや、アタシらも争いは嫌いだから知ってたら止めてたぞ? きっと」
女神「でもライブ会場から逃げる途中で、ばったりドラゴンと出くわしちゃって二人まとめてパクリ」
邪神「しかも腹の中に私たちがいることを知らない大賢者が、ドラゴンごと私たちを封印したからさあ大変」
女神「数百年かけて現世に復活したけど、なんか人間と魔族は戦争しちゃってるし……」
邪神「あ、アタシらの心配はしなくていいぞ。ドラゴンの肉って美味しかったし栄養満点だったからな。
ああ、また食べたいなぁドラゴン肉……」
勇者「心配してない! よだれを垂らさない! つーか、もう黙って!
と、とにかく! あなたたちが原因なら、人間と魔族の争いを止める事ができるでしょう! このバカげた争いを止めさせなさいよ!」
女神「……勇者ちゃん」
勇者「な、なによ!」
邪神「もし、さっきの話を私たちがした所で、人間や魔族が信用して争いを止めてくれると思うか?」
勇者「……うっ」
女神「始まりはどうあれ、今は人間と魔族が自らの意思で争い合っているのよ。手綱はすでに私たちの手から離れているわ」
勇者「じ、じゃあ、やっぱり私が魔王を倒さないと……」
邪神「頭を潰した所で戦争が止まると思っているのか?」
勇者「な、なら部下もまとめて倒せば……」
女神「ひどいわ勇者ちゃん! あわれ、有能な統率者たちを失った魔族は人間の奴隷として一生を暮らすのでした」
勇者「ぐぐ……っ! ならどうすればいいのよ! もうあなたたちが解決すればいいじゃない! 一応は神なんだし、強いんでしょ!?」
邪神「それがな、長い封印生活で魔力が枯渇してな」
女神「しかも神を信じてお布施をしてくれる熱心な信者が激減しちゃったから、今の私たちは元の力の数百分の一程度のぱわーしかないのよ」
勇者「自業自得ね! ふんっだ!」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/19(火) 18:40:57.65 ID:RWhJArPDO<> 邪神「まあ……そこで、だ」
女神「私たちは考えたのよ、どうやってこの世界の争いを止めて元のウハウハアイドル生活に戻れるかを」
勇者「本音だだ漏れですね」
邪神「そういうわけで色々と考えた結果、我々は勇者に協力するという結論へと至ったのだ」
勇者「は? 私に協力?」
女神「そうよ、私たちツインゴッテスが勇者ちゃんをがっつりサポートしてあげるの」
邪神「勇者の性能はうなぎ登り、争いもすぐに止むという寸法だ。
さあ、この契約書にサインを!」
勇者「ま、待ってよ! あなたたち、さっき武力じゃ争いは止まないみたいな事を言ってなかったっけ?」
女神「言ったわよ? ただ私たちが強化してあげるのは武力以外のことなの」
勇者「武力以外を強化って……なによ、それ?」
邪神「それは……勇者が我々と契約するまでは教えられない」
女神「でも『武力以外で、かつ血を流さずに争いを終わらせられる事が出来る力』というのは確約出来るわ」
勇者「武力以外で、血を流さずに争いを終わらせられる……?」
邪神「しかし、この手段はお前にとって長く苦しいものになるだろう。それに一度契約したら破棄は出来ない。
お前は我々と契約したことを何度も後悔するかもしれないし、世界平和なんかほっぽりだして旅をやめたいと考え出すかもしれない」
勇者「……」
女神「だけど、これは勇者ちゃんにしか出来ないことよ。世界でただ一人、貴女にしか」
うつむく勇者。
じっと見つめる女神と邪神。
やがて、勇者はおもむろに顔を上げてその唇を小さく震わせた。
勇者「……わたし、これでも悩んでたんです」
女神「……?」
勇者「わたしは皆の笑顔を守りたいから戦ってる。
でも、魔族の人たちも同じように守りたい笑顔があるから戦っていて……そんな人たち同士で傷つけ合うのは本当に正しいことなのかなって……」
邪神「勇者……」
勇者「……さっき言ったこと、本当ですか?
武力以外の手段で、血を流さずに争いを終結させることが出来るって。
もし、それが本当なら……」
女神「本当なら?」
勇者「わたし、あなたたちと契約します」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/20(水) 07:10:02.42 ID:n0bh5zqDO<> 女神・邪神「よっしゃーッ!!」
勇者「『よっしゃー』!?」
女神「さあさあ、そうと決まれば契約書に血のサインを……」
勇者「ま、待って! 私の言うことを……!」
邪神「聞いてる聞いてる! 約束してやるぞ、血を流さずに全部解決してやる!
ほら、契約書を書くからこのナイフで腕をズバーといくぞ」
勇者「ソッコーで流血を強要されてる!?」
女神「痛い思いをするのは勇者ちゃんだけだから、ぜーんぜんだいじょうぶよ!」
勇者「どこが大丈夫なんだろう。
……はぁ……あの、ところで無血の解決法って具体的に何ですか?」
邪神「契約してからのお楽しみだ! ていっ!」
──ズバー。
勇者「痛い!? 血がー! 血がーッ!? つーか傷が深すぎるわよ!?」
女神「夢世界だから問題ナッシング! さて、勇者ちゃんの血でちょちょいとサインして……完了!」
勇者「あっ! 勝手に人の名前でサインを!」
邪神「よーし、じゃあアタシと女神のパワーをお前に注ぎ込みからなー!」
勇者「え? あ、はい」
邪神「じゃあいくぞ!」
女神「か〜め〜は〜め〜」
女神・邪神「波〜ッ!!」
女神と邪神が両手を勇者に突き出し、ピロピロピロピロという感じの安っぽい効果音と共にエネルギー波を勇者に送り始めた。
勇者「なんだかなぁ……」
──こんなんで本当に無血停戦とか出来るのかなぁ。
勇者は女神と邪神の送って来るエネルギー波(そよ風)を浴びながら顔を引きつらせた。
小型扇風機クラスの微妙なそよ風が勇者の不安を煽るが、勇者は「まあ、ダメ元でやってみるか」という軽い気持ちで女神と邪神のなすがままにエネルギー波を浴び続けたのだった。
それがとんでもない大失敗だったと気付くのは、すぐ後のこと。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/20(水) 17:23:22.01 ID:n0bh5zqDO<> 〜 数分後 〜
女神「ぜぃ……ぜぃ……」
邪神「はぁ……はぁ……終わったぞ勇者」
勇者「……えっと、何も変化がないように思うのだけれど……」
女神「そんなわけないわよ」
邪神「ああ、今の勇者、輝いて見えるぜ!」
そう言ってさわやかな笑みを浮かべながら親指を立てて来る女神と邪神。
勇者は苦笑いで答えた。
勇者「まあ、いいけどさ。ところで契約したんだからどうやって世界平和を達成するのか聞きたいのだけれど」
女神「あら? そう言えば、まだ言って無かったわね」
邪神「簡単なことだ。勇者であるお前は戦う代わりに世界中で愛を育めばよい」
勇者「愛を育む?」
女神「えっと〜具体的に言ったら〜」
邪神「勇者が世界中の男たちとヤリまくって子供をゲット。
家族同士なら戦争はやれないから、そこで戦争終結! ラッキー!」
勇者「ああ、なるほ……」
停止。
勇者「……」
それからたっぷり数十秒後。
勇者「はあァァァーッ!?」
勇者は雄叫びを上げた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/20(水) 21:26:40.74 ID:n0bh5zqDO<> 勇者「ちょっ!? なにをバカなこと言ってるのよ!」
女神「大丈夫よ勇者ちゃん! 今の勇者ちゃんは私たちのゴッドぱわーの影響で最上級の女……メスになってるわ! 例え相手がどんな種族でもオスなら瞬時に発情して子づくりに励む事が出来るのよ!」
邪神「それに生命力を限界まで上昇させているから『中出し=即妊娠』+『大量出産確定』
しかも今ならたった1日お腹が膨れるだけで、どんな種族でも翌日には出産可能ときているのだ! ハッハッハ!」
勇者「そんなこと聞いてないわよッ! というか、人の身体に何してくれちゃってるのよアンタたち!
戻せ! 今すぐ元どおりに戻しなさい!」
女神「え〜?」
邪神「もう契約したしなぁ〜」
勇者「破棄よ! 破棄!」
女神「最初に破棄出来ないって言ったでしょ? もう、わがままな勇者ちゃん」
勇者「ふ、ふざけないで! こんなバカげた話に私は付き合わないわよ!」
邪神「血は流れないし、お前も相手も気持ち良くなれる素晴らしい話だと思うんだがなぁ……」
勇者「こちとら処女真っ盛りな乙女よ! 初めての相手は白馬の王子様で、長い交流の中で色々とイベントを消化していって、ラストに感動的なベッドイン!
って、心に決めてるのよ私は!」
女神「……勇者ちゃん」
勇者「な、なによ? そのあわれみの視線は?」
邪神「あ〜、うん。人生は妥協が肝心だぞ?」
勇者「うっさーッい! もうアンタらどっか行けーッ!!」
女神・邪神「きゃー!」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/20(水) 22:08:08.50 ID:n0bh5zqDO<> 〜 翌日・早朝 〜
勇者「はっ!?」
そこで勇者は目が覚めた。
そして汗の浮かんだ顔をあわただしく振り乱し、辺りの状況を確認する。
床と壁は木目調。壁に掛かっている閉じられた木窓の外からは弾むような鳥のさえずりが、窓枠の隙間からこぼれ入って来た光と共に絶えず届いて来る。
どうやら、ここは宿屋の一室のようらしい。
勇者「ふう……何だ、夢か……」
清潔感溢れる白いシーツが広がるベッドの上で勇者は安堵のため息をつく。
勇者「嫌な夢だった……あんな内容の夢を見るなんて、まさか私って欲求不足なのかなぁ……」
右の手のひらで顔を覆い、うつむく勇者。
勇者「でも、考えてみればいつ宿屋なんかに……ん?」
ふと勇者は何かに気が付いて視線を下げる。
床に何かが転がっていて、それが微妙に動いているように見えたからだ。
しかしそれが何であるかを認めた瞬間、勇者の顔がピシリと固まった。
女神「すぴーすぴー」
邪神「ぐがーぐがー」
勇者「夢じゃなかったーッ!?」
フローリングの床に寝転がっていたのは、まさに勇者の夢中に出て来た二人の神様だった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/21(木) 08:31:58.49 ID:SqoGiz5DO<> 〜 草原 〜
勇者「逃げろっ……逃げろッ!」
勇者は走っていた。それも全力で。
女神と邪神の話が夢では無かったことを理解した勇者は、二人の元からすぐさま逃走を開始したのだった。
勇者「うぅ……あの気狂いたちと一緒にいたら私の貞操が危ない。白馬の王子様エンドを迎えるためには何としてでも純潔を守らないと……」
と、そこまで言って勇者は顔を赤らめた。
勇者「って、違う違う〜! そうじゃない! なにを言ってるのよ私は!
私は勇者! 魔王を倒して世界を平和にする! それだけ! 以上!」
勇者は目を閉じるとぶんぶんと頭を振り、脳内に浮かぶ雑念、もとい憧れの王子様を取っ払うように試みる。
だが、疾走中に一時でも目を閉じたのは失敗だった。
草むらを蹴り分けて進む勇者の爪先が、がつんと地面の凹凸に引っ掛かった。
勇者「わっ!? わわわっ」
勇者の身体が走る勢いそのままにぐらりと傾く。
そしてそのまま勇者は前のめりになって、草むらの中へと盛大にずっこけた。
勇者「あ、あたた……ぺっ、ぺっ……もうやだ!」
勇者は口の中に入った土を吐き出しながら悪態をつく。
そしてうつ伏せになったまま顔を上げて、
スライム「ぷよん、ぷよん」
勇者「……」
スライム「ぷよっ!?」
草むらから出て来たスライムと勇者の目線がバッチリ交差した。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/21(木) 17:31:47.35 ID:SqoGiz5DO<> 勇者「……」
スラ「……」
勇者(や、やばい!?)
時が止まったように互いを見つめたまま固まる二者。
しかし、そんな勇者の灰色の脳細胞は目まぐるしく思考の演算を繰り返していた。
勇者(落ち着け私! 旅に出てすぐの私とスライムの戦力は互角! きっと!
それに、スライムは動きが遅いと相場が決まっている! 逃げられる! 余裕で! 多分!
それに最近はスライムも人間慣れしているから、菓子や食料を放り投げると追って来ないとか言うし!
よし決定! 私、逃げる!)
そうやって地べたにうつ伏せのまま行動の如何を決定した勇者は、スライムを刺激しないようにゆっくりと立ち上がり始めた。
が……
スラ「ぷる! ぷるるっ!」
勇者「……?」
何だかスライムの様子がおかしかった。
スライムは透き通っていた自分の体表を桃色にして、ぷるぷると小刻みに震えている。
勇者は首をかしげて見ていたが、しかし心中に嫌な予感を覚えた。
勇者「……」
そして勇者が嫌な予感に突き動かされるまま、片膝をついた起き上がり途中の姿勢でじりじりと後退を始めた時だった。
スラ「ぷるぷるッ!!」
勇者「え? きゃーッ!?」
それはおよそスライムが出せるとは到底思えない、電光石火の速さだった。
スライムは空中高く飛び上がったかと思うと、液状の身体を風呂敷のように大きく広げ、瞬く間に勇者の身体を包み込んできた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/21(木) 20:09:16.72 ID:SqoGiz5DO<> 勇者はとっさに地面を蹴って飛び退く。
しかし、スライムの方が一枚上手だった。
スラ「ぷるる!」
スライムは空中で形を変えて風の抵抗を調整。
落下軌道を修正し、勇者の上に覆いかぶさるコースをとった。
勇者「きゃー!」
勇者はぶつかってきたスライムに押し倒される形で、再び地面に四つんばいに伏せさせられる。
生暖かい感触が、布の服越しに勇者の全身に広がってきた。
勇者「うぅ……ま、まけないんだから!」
不快に顔をしかめるのも僅か数秒、勇者はすぐさま闘志を奮い立たせて腰に提げた武器を手に取ろうとする。
腰下にあるのはひのきの棒。
刃物を他人に向けるのはちょっと……という、一般人気質の勇者が扱える中では最上級の武器である。
これで反撃して、すぐさま逃げる。
そう頭の中で戦術を組み立てていた勇者だったが、ひのきの棒に手が触れた刹那、反射的に声を上げていた。
勇者「あつッ!?」
肌を焦がす熱に、脊髄反射で伸ばした手が引っ込む。
おそるおそる勇者が首を回して自分の腰へと目を向けると、当のひのきの棒はブスブスと水泡を撒き散らしながら崩れていく最中だった。
勇者「……ひっ!」
──溶けてる!
熱の正体がスライムの強酸による溶解だと知るや否や、勇者の闘志はあっさりと吹き飛んだ。
勇者「い、いやっ! いやーッ!!」
生きたまま溶かされるという死の恐怖。
次第に全身に広がってきた衣服の溶ける熱が、恐怖を加速させていく。
こうなるともはや何も考えることは出来ない。
勇者は原始的本能にのっとり逃走、無我夢中で飛び起きようとする。
だが、獲物を捕縛したスライムの細胞は既に興奮状態へと移行している。
その体細胞内では多数の科学物質が合成され、やがて一種の炭水化物が化合物として生成される。
それは敵を逃がさないための接着剤。
大気に触れてその効力を発揮する科学物質は、スライムの表層部分を半透明に硬化させ、さらに勇者の露出した身体の箇所とスライムの硬化部位を固く引き結ばせる。
こうなってしまえば大型の魔獣ですらまともに抵抗することは出来ない。
勇者「う……動けない!?」
勇者の顔から血の気が引いていく。
勇者は歯を食い縛り、全力で四肢に力を込めるが、その身体は地中深くに生き埋めにでもされたかのようにぴくりとも動かなかった。
勇者「あ……ひっ……」
意識に反して身体が震え出す。
歯の根が合わず、カチカチと音を立て始めた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/21(木) 21:37:15.09 ID:SqoGiz5DO<> 勇者「う、うぅ……あれ? 熱くない?」
何もできずに涙目で震えていた勇者だったが、全身を覆う熱が消えていることにふと気が付く。
勇者「な、なんで……って、はうわッ!?」
拘束されていない首を回して自分の身体の様子を見た勇者は驚きに目を丸くした。
そこに広がっていたのは、透明なスライムに覆われた、一糸纏わぬ自分の裸体。
何の事はない。服すべてスライムが溶かし終えただけの話であった。
勇者「な、ななな……こ、こんな恥ずかしい格好」
勇者は今、赤ん坊のように四つんばいの姿である。
胸も股関も丸出しで隠せていない。
人気の無い草原という場所であるが、さすがにこれは恥ずかしい。
勇者は羞恥に顔を赤らめ、せめて股を閉じようと身をくねらせるが、スライムの拘束は強固でビクともしない。
勇者「無理か……は、はずい……で、でも何で私を溶かさないのかしら? もしかして草食系? 私を襲ったのは人間が怖くて先制攻撃を仕掛けただけ……とか?」
もしその考えが正しいならば、勇者が敵意を見せなければいつかはスライムも解放してくれるだろう。
少しだけ希望が見えてきた勇者は呼吸を整えるように小さく息を吐き出し、吸い込む。
勇者「はぁ……ふぅ……ん?」
しかし、ふと違和感。
勇者は首から下をスライムに覆われている。
それは生暖かい拘束服を纏っているのと変わらず、風が肌を撫でる事もない。
勇者の全身、硬化させたスライムに触れる感触と同じはずである。
だがしかし、股関の、特にデリケートな部分を何かが……
そう勇者が思うと同時だった。
勇者「ひ……ひゃんッ!?」
指でなぞるような確かな実感を股関に感じ、勇者は思わず上ずった声を出してしまった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/22(金) 01:59:27.14 ID:87CmPx0DO<> 勇者「な、ちょっ……どこを触ってるのよ!?」
尻に隠れて様子は窺えないが、この状況ではスライム以外に犯行へと及べる者はいない。
勇者は非難の声をスライムにぶつける。
だが、スライムに言葉を投げ掛けた所でその行為は止まなかった。
そもそも言葉が通じているかも怪しい。
勇者「……や、だめ……っ」
硬化されたスライムの一部が勇者の秘裂をなぞって無遠慮に上下に何度も往復する。
最初は子供のイタズラのようなくすぐったさしか感じなかった勇者だったが、身動きも取れないなかで十秒、一分とそれを何度も続けられていくうちに、やがてさざ波のような疼きが勇者の肢体を駆け巡り始めた。
勇者「な、なに……、う、うっ………、あっ……」
勇者はその感覚を知っている。
それは一人、部屋で秘事に耽るたびに何度も感じた悦び。
自慰によって高められ、揺さ振り起こされた勇者の『女』が悦楽に疼いている感覚だった。
勇者「……ぅふ、あっ……ああっ……!」
スライムは性行為に及ぶ際、強烈な媚薬を全身の体粘液から放出して異性へと浴びせるのが常とされる。
勇者自身はその事を知るよしもないが、全身をスライムの体粘液で包まれ、股関をまさぐられ続けた勇者にもスライムの媚薬がたっぷりと練り込まれていたのだ。
勇者「んッ! はっ、あ……うあっ!?」
急に、勇者の秘裂が左右へと押し分けられた。
健康的で血色豊かな肌に、鮮やかな桃色の淫靡な肉壁がのぞく。
そこが艶めかしく濡れているのは、決してスライムの粘液のせいではない。とめどなく溢れてくる勇者自身の愛液によるものであった。
勇者「ぁあっ……、うっ……」
スライムが勇者の内部へと侵入を始めた。
粘液が花弁をこすり、敏感な陰核が突出して燃え立つような情欲を主張する。
スライムの粘液が僅かに脈打つたび、えもいわれぬ快感が勇者の全身を走り抜けていく。
その都度、勇者は電撃を浴びたかのように背筋を仰け反らせ、スライムの魅了から逃げるため脚を閉じようとなけなしの抵抗をするが、スライムの拘束はそれらすべてを無慈悲に封殺する。
勇者に出来ることといったら、花弁の内壁を淫らにひくつかせることしか残されていなかった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/22(金) 20:18:11.83 ID:87CmPx0DO<> 目まぐるしく押しては引いていく快楽の波が勇者のブラウンの光彩を涙で滲ませた。
そんななかで勇者の秘部をもてあそぶスライムの硬手とは別に、新たなスライムの硬手が次々に作られ、勇者の肌という肌の上で蠢き始める。
勇者「や、やぁ……っ、む、むね……は……っ」
スライムの硬手が勇者の溌剌とした胸を左右から別々に挟み込み、その二つの双丘を縄で縛り上げるようにきつく締めつける。
それは痛みではなく、身体の芯を焦がす甘い刺激となって勇者の身体を小さく震わせた。
勇者「あっ……、ぁあっ……っ!」
そのままスライムの硬手は刺激で鋭敏になった勇者の起立した乳首を指で挟むようにつねり上げる。
喉奥から漏れてくる勇者の喘ぎが一層大きくなった。
勇者「あっ……、くっ……、うぅ……」
だが、そこで勇者は歯を食い縛り、心底に残った気合いを奮い立たせて自分の身体を這い回る快楽に対抗しようとする。
しかしスライムの愛撫は間断なく勇者を襲い、気合いはすぐに霧散しそうになる。
勇者「うぅ……、ぐ……っ、えぐ……っ」
滴となった涙が顔を伝い、勇者のアゴ先からポロポロとこぼれ落ちて地面に吸い取られていく。
どうして? なんで自分がこんな目に?
無力な自分がうらめかしく、何も出来ないことが悔しかった。
だが奮起した事で得られたそんな思考の余裕が、勇者をさらなる地獄へて叩き落とす。
──だけど、このスライムは『なにをしている』のだろうか?
今更ながらの疑問、傍目からは一目瞭然。
だが快楽に流されるままに流され続けた勇者の頭は霧の煙る湖のようにぼんやりとしており、自身の置かれた状況を客観的に見る事が困難になっていた。
否、もしかしたら、あえてその答えから目を背けていたのかもしれない。
事実、答えに行き着くまでの時間は非常に短いものであった。
──服を脱がして、まさぐって、ん……っ、まるで……。
まるで……、その後に勇者の頭に浮かんだ一文は、エッチ、もしくはSEX、はたまた性行為か。
その絶望的な、しかし同一の意味の単語群は、勇者の経験と記憶にすぐさま結びついて、今朝起こった印象的な出来事を勇者の脳内にフラッシュバックさせる。
女神『今の勇者ちゃんなら、どんな種族のオスも発情させて子づくりに励む事ができるわ』
邪神『しかも生命力を限界まで上げているから「中出し=即妊娠」+「大量出産確定」だ。ハッハッハッ』
自称神の二人が、アホ面さげたまま最悪の答えを紡ぎだした。
勇者「……っ!」
勇者の心臓が一度、大きく高く、とくんと鼓動を刻んだ。
同時に全身から、どっと嫌な汗が吹き出してくる。
勇者は四つんばいの格好のまま目を大きく見開き、身体は鋼を通したかのように硬直。息を、動きを完全に止めて彫像と化した。
勇者「……」
勇者は動かない。動けない。
自分を支える地面が一息に崩落したような衝撃が脳を揺らす。
今動けば奇跡的に釣り合っている最後の均衡が崩れて、深い奈落へと真っ坂さまに落ちていく。
そんな錯覚が勇者の時を止めたのだった。
歯牙に掛かった獲物の、進退極まった最期の思考。
そして、それは唐突に終わりを告げた。告げさせられた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/22(金) 23:31:22.13 ID:87CmPx0DO<> スラ「ぷるっ、ぷるるっ」
スライムの粘液が小刻みな振動を発し、次いで勇者の秘部を濡らしていた硬手がゆっくりと膣口から引き抜かれた。
勇者「ひゃ……っ」
硬手が引き抜かれた際の甘美な刺激が電流となって勇者を苛む。
先ほどまで硬手の侵入していた勇者の秘裂がぱっくりと硬手の跡の形に開き、性感の余韻を残して内壁が淫らにひくついた。
──お、終わったの?
もしそうなら、自分はスライムとまぐわずにすむ。
勇者の胸に一筋の希望が射し込んでくるが、しかし現実は非情だった。
スラ「ぷるる」
勇者「……ぅっ!?」
勇者の秘裂に、何か大きなものが、ずるりとあてがわれた。
四つんばいの勇者からは直接見えないが、それは勇者の柔肌を通して、太く、硬い、さっきまでの硬手とは比べ物にならない段違いの大きさの異物だと勇者に伝えてくる。
そのブツの用途が分からないほど勇者はバカではない。
勇者「ひ……っ!」
さっと勇者の顔から血の気が引き、端整な顔立ちが恐怖に歪む。
しかしそんなことお構い無しにスライムはその人間の男性器より遥かに大きい、大人の腕の太さほどはある生殖器官を、勇者の秘裂へと押し当ててゆっくりと挿入してきた。
勇者「ひぁ……っ、やめて! やめてーっ!!」
張り裂けんばかりに叫びながら勇者が必死にスライムから逃げようと抵抗するが、スライムは勇者を逃がす気がないらしく拘束が緩む気配は無い。
勇者の抵抗は尻が僅かに振れるに留まり、皮肉にもその煽情的な動きがスライムの獣欲を剥き出しにする。
勇者「ひぐ……っ、うぁ……」
ぐちゅっと小さな水音を立て、スライムの生殖器が愛液で濡れそぼった勇者の秘裂を突き進んでくる。
勇者「いや……、いやぁ……」
勇者はイヤイヤと涙ながらに首を振って拒絶するが、勇者の女の身体はスライムを一匹の男として受け入れるよう態勢を整えてしまっていた。
男を受け入れた事の無いはずの勇者の膣口は容易くスライムの生殖器の侵入を許し、肉ヒダが恋人との待ち望んだ邂逅を悦ぶようにキュッと収縮してスライムの生殖器をきつく握り締めた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/23(土) 20:16:39.61 ID:Gvyz1uQDO<> 勇者「ひっ……、はっ……」
下腹部に凄まじい圧迫感、そして肌を内側から切り裂かれるような激痛が勇者を襲う。
スライムの生殖器は勇者の膣口をこじ開けて進んでいるが、どうにも元のサイズでは侵入が難しいらしく、一度みずからの生殖器を収縮して勇者の膣内部に入った後、通過した部分を元の大きさに膨らますという荒技で乗り切っていた。
しかしこれに堪らないのは勇者である。
勇者「おっ……、おなかが……、裂け……ちゃう」
通過したスライムの生殖器が膣内で風船のように膨張し、勇者の肉筒を拡張する。
男を受け入れた経験も無い勇者にその圧迫感と苦痛が堪えられるはずがなく、勇者は緊張に身体を強らせた。
だが勇者の女の最奥からは愛液がとめどなく噴き出し、それを潤滑油とするために膣内の肉ヒダがスライムの生殖器へと愛液を擦り付けていく。
本人の意思も知らず行われるそんな勇者の奉仕もあってか、すんなりとはいかないまでもスライムの凶悪な太さの剛柱は勇者の未開の狭い産道を徐々にえぐって進んでいく。
勇者「んっ……、はぁ、あっ……、あぁ……っ」
焼け付くような痛みに合わせて、上等な酒をしこたま頭から浴びたような酩酊感が勇者の頭を霞ませる。
スライムの媚薬粘液を膣に直接擦り付けられることによって導かれる、普段から行う自慰とは比べ物にならない快感に勇者の表情はとろけきり、涙と唾液を抑えもせずに垂らし続けるメスの顔へと仕上がっていた。
勇者「あふ……っ、ひゅ……っ」
後背位の形で背後から膣にスライムの生殖器を押し詰められていく。
勇者はスライムの生殖器が徐々に突き進んでくる感覚に膣ヒダを波打たせた。
媚薬の効果なのだろうか、勇者の感覚は限界まで研ぎ澄まされている。
勇者の脳は膣ヒダの一つ一つの動きから触覚情報まで入念に受け取り、スライムの生殖器のもたらす快楽を余すところなく享受しようとしていた。
例え見えずとも、勇者の中にいるスライムの「男」の形は勇者の脳内ではっきりと再現されていた。
勇者「お……っ、あ、んあぁっ、ひぁ……っ、ああぁぁっ」
スライムの生殖器が膣ヒダを揺らし、膣壁をこするたびに激しい快楽の波が勇者の身体を襲い、膣が痙攣したように収縮を繰り返す。
まるで全身を性感帯にされてしまったかのような責め苦に勇者は小さく背中を仰け反らせ、獣のような喘ぎ声を切なく間延びさせる。
理性が瓦解する一歩手前。
しかし、勇者はまだ正気を失っていない。
淫らに迷走する勇者の精神を繋ぎ止めているのは、十数年と守ってきた純潔の証、それであった。
勇者「ま、まも……る、処女……だけ、は……、んぁ……っ」
性行為の興奮によって全身を赤く上気させ、身体中から甘いメスの香りを立ち昇らせてオスを誘惑しつつも、一人の勇者として快楽の奈落に落ちる寸前で踏みとどまる。
しかしそんな時、スライムの生殖器が不意に後退し、その先端部分にある『返し』が勇者の膣口を大きくえぐった。
電撃が火照った勇者の女芯を貫く。
空を仰ぎ見るように勇者の首が大きく跳ね上がり、がくりと脱力して下がる。
勇者「ふ……っ、ふぅ……」
荒い息を吐き出す勇者。
犬のようにだらしなく口外へと伸びた舌を、唾液がてらてらと光を受けながら艶めかしく流れ落ちる。
地面が頭について天地が逆さまになった状態で、恥らいなく開かれた自分の股ぐらが勇者の潤んだ瞳に映った。
両脚の間では熱心に身体を波打たせて蠢くスライムの姿と、そのスライムの表層に滲む、一筋の、赤い線が見えた。
勇者「……ふぇ?」
間の抜けた勇者の声が、熱気漂う辺りの空気に小さな波紋を打つ。
赤い線は勇者の陰唇付近を始点にスライムの体表を滴り落ちていき、やがて赤い雫となって落下。大地へと染み込んで黒ずんた跡となって消える。
勇者「……」
勇者はすへてを、先程から感じる焼け付くような切り裂かれるような痛みの正体を、やっと理解した。
処女はとっくの昔に散っていたという事を。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/24(日) 00:57:46.70 ID:/CX+lZQDO<> 勇者「あ……っ」
破られた純潔の証を見た勇者の頭の中で、ぷつんと何かが切れた。
勇者「あ、は……、ははっ……」
勇者の瞳から意思の光が消える。
代わりにその口元が満面の笑みを浮かべるよう大きく吊り上がった瞬間、
勇者「あはっ! あははハハハハハッ! アハハッ!」
勇者の口からけたたましい絶叫、笑声の奔流が溢れだした。
勇者「夢かっ! なーんだ、あはははははっ!」
自分は白馬の王子様と結ばれるのだ。スライムに純潔を奪われるなどあり得ない、あってはならない。
そもそも、スライムが生殖相手に人間を選ぶなどあるだろうか? いや、ない。
過剰な精神の負荷から逃がれるため、勇者の精神は目の前の現実を夢だと決め込んだのだった。
そして、その決定は勇者の理性のタガを完全に破壊する引き金となった。
勇者「んっ……、あふぅ……っ、気持ち、いいっ!」
スライムの生殖器が前後に往復しだし、勇者との結合部から空気の入り混じった淫らな水音を響かせ始める。
熱を帯びた塊の律動を胎内に感じながら、勇者は拘束で僅かにしか動かない尻を精一杯スライムの前後運動に合わせて動かし、貪欲に快楽をむさぼりだした。
どうせ夢ならば、苦しいよりも気持ちいい方がいい。
すべて夢だと思えば、スライムへの嫌悪や恐怖も勇者はまったく感じなくなっていた。
スライムの媚薬の前では破瓜の痛みなど無いも同然で、じんわりとした痺れる痛みもすぐさま新たな快感に変わる。
まるで自慰の延長線上のように、勇者は恥も外聞もかなぐり捨ててスライムとの性行為を嬉々として続けた。
スラ「ぷるぷる」
勇者が乗り気になったことでスライムも勢いづいた。
スライムは硬手の数を増やし、粘液で包み込んだ勇者の愛撫をより強く激しくする。
時には舌を這わせるように優しく勇者の肌をなぞり、時には勇者の乳首や陰核などの敏感な箇所を厳しくつねりあげる。
そんな緩急のついたスライムの全身愛撫が生み出す恍惚の境地に、すべて夢だと思い込むことで快楽を受け入れた勇者は堪えられなかった。
勇者「ぅあっ……、ぁああっ……! だめぇっ! んっ、来ちゃ……うぅっ!」
浮つくような高揚感が勇者の全身を支配し始めた。
スライムのストロークは勇者の胎内を乱暴に掻き混ぜ、勇者の狭い膣道に生殖器の形を刻んでいく。
男に征服されていく実感に勇者の胸中にある女の悦びが呼び覚まされ、勇者の肢体が至福に震えた。
勇者「あぁっ……! やぁっ……! ぁふっ……!」
スライムの前後する水音のリズムに合わせて勇者の嬌声が重なる。
そこにいるのはもはや勇者とスライムではなく、一対のつがいのオスとメスである。
メスは自分からねだるようにオスに尻を突き出し、オスは剛柱をメスの最奥へと力強く何度も突き入れていく。
メスの肉ヒダがオスの剛柱に絡みつき、膣壁が蠢いて求めるようにオスの剛柱をギュウと引き搾る。
子宮口がオスの剛柱でノックされるたびにメスが大きく喘ぎ、涙と唾液で濡れた顔を嬉しそうに振り乱した。
やがてオスの剛柱がはち切れんばかりに膨らむと、メスの胎内が来るべき時を予感してざわつく。
そして、二匹の獣は限界まで高ぶった精神を、本能のままに解き放った。
勇者「ぁひっ、ぅあ……っ、来て……! わたしの中に来てぇーっ!」
メスの膣が強烈に収縮した瞬間、オスの肉茎の先端がメスの子宮口に勢いよくねじ込まれ、そのままビクンとオスの肉茎が反り立つように跳ね上がった。
勇者「ひあっ! あ! あぁっ! うぁアァァアアーッ!!」
沸き立つ情欲の塊が、肉茎の脈動に合わせて何度もメスの子宮内壁を叩く。
生まれて初めて受ける射精の衝撃を子宮に覚えながら、メスは背筋をピンと伸ばして犬の遠吠えにも似た叫びを上げつつ絶頂を迎えた。
勇者「あ……っ、うふぇ……、んほぅ……」
オスの射精も終わり、焦点の合わない眼を彼方に向けながらメスは肢体を痙攣させる。
肉茎を突き込まれたまま完全に脱力したメスの身体は、硬化したオスの身体に受けとめられてその姿勢を維持。ガクリと俯いた絶頂の余韻に浸るメスの力無い顔が、オスによる蹂躙という行為の色合いを一際大きく引き立たせていた。
スラ「ぷるぷる」
そして、三十秒と経たずにオスがメスの中へと収めた肉茎を再度動かし始める。
このオスの種族はメスの膣口を粘液で覆って精液の流出を防ぎ、着床率を上げるという行為を本能にプログラミングされている。
そしてまた、メスの腹が膨張の限界を迎えるまで精液を注ぎ入れるというプログラミングも。
勇者「……ぁ、……が……っ」
メスは白濁していく思考の中で、子宮にオスの熱い迸りを受けながら、たゆたう快楽の海の中でその意識を静かに手放したのだった。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/24(日) 01:34:53.18 ID:/CX+lZQDO<> 〜 数時間後 〜
女神「勇者ちゃ〜ん!」
邪神「勇者ーっ!」
二神はパタパタと草原の上空を飛びながら声を張り上げていた。
女神「おっかし〜わね。感じる波動だと勇者ちゃんはここら辺にいるはずなのだけれど……」
邪神「まったく、アタシらを置いてどこに行ったのやら……ん?」
女神「あら? どうかしたの?」
邪神「誰か倒れてないか? ほら、あれ!」
女神「……っ! あら、本当!
それに、あの長く艶やかな黒髪と、すらりと伸びたしなやかな肢体は勇者ちゃんに間違いないわ!」
邪神「設定のいまさら感がすごいな」
女神「もう! 何をわけの分からない事を言ってるのよ! きっと魔物に襲われたのだわ、ぶつくさ言ってないで勇者ちゃんを助けに行くわよ!」
邪神「はいはい」
──ばさばさばさばさ。
女神「勇者ちゃ〜ん!」
邪神「助けに来たぞー!」
勇者「……ぁ、う……っ」
そこにいたのは、スライムの精液でパンパンに膨らんだ腹を空に向けた仰向けの格好で、カエルのように開いた股ぐらから白濁した液体をしたたらせる気絶した勇者だった。
女神・邪神「ヤリ捨てられてるーッ!?」
女神「あなたっ! 勇者ちゃんの介抱を!」
邪神「これは……スライムにやられたのか、まずは腹を押して精液を吐き出たせて……」
──ごぷり。
邪神が勇者の腹を両手で心臓マッサージのように押し込むと、勇者の膣口につっかえていた粘液塊がはずれて勇者の秘裂から精液が一気に噴き出してきた。
そして精液はひくつく勇者の秘裂から放射状に広がり、つーんとした臭いを辺りに放ち始めた。
女神「くさっ!? 生ぐさっ!」
邪神「よ、よし! これで大丈夫! そういや近くに村が見えたな、そこに運ぼう」
女神「誰が?」
邪神「……」
女神「……」
二神の目が合う。
目線はそのまま流れて、生臭い液にまみれた勇者へ。
女神「じゃんけんね!」
邪神「じゃんけんだな!」
女神「じゃあ行くわよ! 最初っーから!」
邪神「奥義グーチョキパー!」
女神「この卑怯者!!」
邪神「どっちがだ!」
やんややんやと子供のように目くじらを立てて言い争い始める二神──から少し離れた草むらの中。
スラ「ぷるぷる」
気絶した勇者の様子を、スライムがじっと見守るように窺っていた。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/24(日) 16:21:54.03 ID:/CX+lZQDO<> 〜 村・夕方・宿屋 〜
ベッドの脇には村を見渡せる窓。
勇者はベッドに深く腰を下ろし、スローライフな村の牧歌的な光景を眺めていた。
勇者「うふふ、今日も一日ご苦労様、私」
女神「勇者ちゃん……」
勇者「そう言えば、変な夢を見たのよ。その夢では私の初めての相手がスライムだったの。おかしいでしょ?
私、欲求不満なのかしら?」
邪神「現実を見た方がいいぞ勇者」
勇者「わかってるわよコンチクショーッ!!」
勇者はぶちギレた。
勇者「夢にしては生々し過ぎたし! 起きたら股関がヒリヒリと痛むし! それに何よ、この私のお腹は!?」
精液を吐き出して一時はへこんでいた勇者の腹は、しかし時間の経過によって徐々に膨らみ始め、今では臨月を迎えた妊婦のように、服の下からもその形が分かるくらいにぽっこりと張り出していた。
女神「妊婦服が似合ってるわよ勇者ちゃん。宿屋のおばさんに感謝しないとね」
邪神「妊婦服はマタニティーウェアともマタニティードレスともいうらしいな。
『マタニティー』って言葉、響きがなんかエロいな」
勇者「アンタは黙ってなさいよ! じゃなくて! ああもう!」
女神「もうっ、勇者ちゃん分かってるわよ。お腹が膨らんでる理由はね、そこに愛が詰まってるからよ」
勇者「強姦されて愛もへったくれも無いわよ!」
邪神「レイプから始まる恋もあるさ」
勇者「ねーよっ! って……、うぅ……」
女神「ほらほら、お腹の子に悪いから無理しないで、ね? ママさん」
勇者「だ、だれがママよ……ぐぐっ、この……っ」
邪神「しかし、勇者の精神が図太くてよかった。こっちがドン引きするくらい落ち込んでいたらどうしようかと思ったぞ」
勇者「……落ち込んでるわよ、私も。でも、落ち込んでるだけじゃ何にもならないでしょ?」
女神「勇者ちゃん……っ、それでこそ勇者ちゃんよ!」
勇者「ええ……、だから早くお腹の子を堕胎させ……」
女神・邪神「ばかーっ!」
──ドガッ。
勇者「ぐはぁっ!?」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/24(日) 16:42:14.09 ID:/CX+lZQDO<> 女神「見損なったわ勇者ちゃん!」
邪神「そうだ! まさか自分の子を殺そうだなんて!」
勇者「だ、だって……だってスライムの子なのよ!?」
女神「愛でカバーしなさい!」
勇者「そんな御無体な!?」
邪神「まったく、勇者がちゃんと出産してくれないと私たちの魔力も……」
女神「あっ、バカっ!」
邪神「あっ、しまっ……」
勇者「……魔力?」
女神「な、何でもないわよ勇者ちゃん! だからそんなジト目で見ちゃダメ!」
邪神「そ、そうだぞ!
決して『勇者が出産した子供たちが創る生命ネットワークの循環エネルギーの一部がおこぼれの形で私たちに少しずつ魔力をもたらしてくれるからその魔力を貯めて私たちの栄華を再びこの世界に取り戻そう名付けて妊娠ポコポコウッハウハ計画』なんて企んでないからな!」
女神「このドアホーッ!?」
勇者「……ほう? 私を利用してそんな計画を、ねえ?」
邪神「あ、あはは……」
女神「お、おほほ……」
勇者「うふふ……」
女神「……逃〜げろ〜!」
邪神「……逃〜げろ〜!」
──ばさばさばさばさ。
勇者「あっ、こら! 待ちなさい! ……ったく、もう」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/24(日) 20:48:44.05 ID:/CX+lZQDO<> 勇者「でも……本当にどうしよう……」
──トン。
勇者「……? お腹が……内側から……」
──トン、トン。
勇者「……」
しばし無言で、内側からコツコツと壁を叩いて自己主張してくる腹を衣服越しに見つめる勇者。
やがて勇者はゆっくりと両腕で自分の腹を左右から包み込み、衣服の上から優しくさすり始めた。
勇者「あなたたちも命を授かって生きているのね……、はぁ……、こうなったらもう、しょうがない……のかな?
でも、スライムの出産はともかく育児とか私にはサッパリだし……」
スラ「ぷるぷる」
勇者「そうね、私に種付けしたあなたなら育児が出来……って、ああぁぁーッ!?」
スラ「ぷる?」
勇者「あ、あんたいつから!? というかどこから!?」
スラ「ぷるぷる」
勇者「窓から? 何という器用な、じゃなくて!
あんたいったい何をしに来たのよ!?」
スラ「ぷる」
──コロコロ。
勇者「……レモン? ……それを私に?」
スラ「ぷる!」
勇者「え? なに? 無理矢理孕ませた女のご機嫌取りのつもり?」
スラ「……ぷるる」
勇者「はぁ……、あんたねえ……、ったく……」
スラ「ぷる……」
勇者「……ところで、あなた育児とか出来るの?」
スラ「……ぷるぷる?」
勇者「いい? 言っておくけど、あなたのためじゃないんだからね?
子供を堕ろすとかなったら、母胎にも危険が伴うの。
それにバカ神たちが言うには今日一日だけ我慢すればいいみたいだから、その……産んであげるわ」
スラ「ぷるぷる!」
勇者「勘違いしないで。私はあなたのこと大嫌いよ。そして約束して、私が子供を産んだらそのまま子供たちと私の前から姿を消して。二度と姿を見せないで」
スラ「……ぷる」
勇者「わかればよろしい」
女神「勇者ちゃん、初カレに厳しい!」
邪神「鬼嫁だ鬼嫁」
──ばさばさばさばさ。
勇者「あなたたちも戻って来ないで!」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga sage<>2013/02/25(月) 00:32:12.20 ID:ink29MSDO<> 〜 夜 〜
おばちゃん「ご飯持って来てあげたわよ」
勇者「わあ、ありがとうございます」
おばちゃん「いいのよ、身重な娘さんに無理はさせられないからね。ところで旦那さんはどうしたんだい?」
勇者「あ、いや……、その……」
女神「捨てられちゃったの」
邪神「孕まされるだけ孕まされてポイ。勇し……こいつは素直すぎたんだよ」
女神「そうそう、それで女三人傷心旅行ってわけなのよ」
勇者「あ、あんたら……諸悪の根源がよくもそんな口を……」
おばちゃん「おや、そうだったのかい、ごめんねツライ事を聞いて」
勇者「いえ、別に気にしてませんから。それよりもさっき頼んでいた水桶のことですけど……」
おばちゃん「ああ、持って来たけど何に使うんだい?」
勇者「それは……えっと……」
女神「旦那さんを入れるのよね勇者ちゃん?」
おばちゃん「……旦那を?」
勇者「あなたは黙ってなさい!」
女神「は〜い」
おばちゃん「はて? いったいどういうことだい?」
邪神「アイツは旦那のブツが恋しくて、それに似た張り型をいつも持ち歩いてるのさ」
おばちゃん「なるほど、それを洗ったりするのに水桶は確かに必要だね」
勇者「もういいや……いただきます」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga seag<>2013/02/25(月) 00:53:48.13 ID:ink29MSDO<> スラ「ぷるぷる」
女神「スライムちゃんったら、水桶にすっぽり入ってご満悦みたいね」
勇者「これで宿屋の人には気付かれずにすむわ。というか、羽やら尻尾のあるあなたたちが普通の人間扱いされている事の方が私にはびっくりなのだけれど」
邪神「擬視魔法で常人には普通に見せているからな。ちなみに、腹の調子はどうだ勇者?」
勇者「お腹? いや、別に……」
邪神「そうか、なら分娩は種付けされた時刻からみて……明日になるか」
勇者「……明日かぁ」
女神「勇者ちゃん、ふぁいと!」
スラ「ぷるぷる!」
勇者「あんたらって本当にもう……ん?」
邪神「お? どうした?」
勇者「ちょっとトイレ。確か一階だったわね?」
女神「ええ、でも一人じゃ階段を降りるのも大変じゃない? 手伝いましょうか?」
勇者「いいわよ別に気を遣わなくても」
邪神「もういっそ旦那にぶっかけたらどうだ?」
スラ「ぷるっ!?」
勇者「本気で怒るわよ?」 <>