◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 02:30:46.72 ID:ROmy1LdIo<>コンコン

「入りたまえ」

少年「……失礼します」ガチャ

バタン

先輩「やあ、来たね。今回も頼むよ」

少年「はい。で、どんな実験なんですか?」

先輩「ああ、それはね。この方陣なんだが、分かるかい」

少年「魔方陣……服従……の術式ですか?」

先輩「そうだ。相手を捕らえ、こちらの都合のいいように動かせるようにする。まあ、そんな術だ」

少年「へえ。なんか、いつものとは傾向の違う術ですね」

先輩「そうかな」

少年「はい。いつもは……その、ユニークな術ばかりだったので」

少年(不死とか、生命創造とかさ)

先輩「校長に頼まれてね。その校長も、どうやら軍に頼まれたようだが」

少年「軍……?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1359135046
<>少年「魔方陣……服従……の術式ですか?」先輩「そうだ」
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 02:36:51.63 ID:ROmy1LdIo<> 先輩「ああ。おかげで報酬が良くてな。そろそろ、私の研究資金も心許なくなってきているし、ちょうど良かった」

少年「はぁ」

先輩「さて、話はこれくらいにしようか」

少年「はい」

先輩「方陣の上に立ってくれ」

少年「はい」

先輩「では」

先輩「……」スッ

コオオオオオオオ

少年(……ん?なんだ?寒気が)

少年(それに、なんかすごい、気持ち悪――)

ドテッ <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 02:41:53.05 ID:ROmy1LdIo<> 先輩「ん?おや、どうしたんだい、急に倒れて」

少年「」

先輩「ふむ。息をしていない……」

少年「」

先輩「あ、そうか。ええと。生命活動、して良し」

少年「」ビクッヒューヒュー

少年「」パクパク

先輩「喋って良し」

少年「なッ、なんですか、これは!」

先輩「すごいだろ。相手の体のコントロールを完全に掌握できるんだ」

先輩「さらに、言葉だけで暗示や条件付けをすることができる」

少年(た、確かにすごいけど……)ゾゾッ

先輩「よし、立ち上がれ」

少年(か、体が勝手に)

先輩「気をつけ」

少年「」サッ

先輩「休め」

少年「」スッ

先輩「うん、術のかかりはいいようだな」

少年「じゃあ……そろそろ解いてくださいよ……」ハァ <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 02:48:52.27 ID:ROmy1LdIo<> 先輩「いや、君にはしばらくそのままでいてもらう」

少年(しばらくって……)

先輩「この術の効果時間や、命令の限界を知りたいのでね。そのためにも、しばらく私と共に生活してもらうよ」

少年「はぁ……わかりました」

少年(1ヶ月くらいか?いや、下手したら、2、3ヶ月ということも……)ハァ

◆◇◆◇◆

魔術学園外れ――先輩専用寮

少年(先生がしばらく教室にこなくていい。泊まりの準備をして行けって言ってたのはこういうことか……)

先輩「さて、最初のルールだ」

少年「ルール?」

先輩「そう。これから私は君に様々な命令をしていく」

先輩「どういった命令が有効なのか。どういった命令は無効なのか。矛盾する命令はどうなるのか」

先輩「そういった実験だ」

少年「はぁ」

少年(つまり、僕はそういった様々な命令によっていじくり回されるわけか……)

先輩「では、君に課す最初の制約だが。君は、私の許可無くこの寮を出ることを禁ず」

少年「……」

少年(……今のが命令?) <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 02:54:57.87 ID:ROmy1LdIo<> 先輩「試しに出ようとしてみたまえ」

少年「はい」

ガチャ...

少年「え、あ、開けられない」

先輩「扉には触れることはできるようだな。だが、ノブを回せないか」

少年「じゃ、じゃあ、窓は……!開けることはできる……でも、出られない!」

先輩「そろそろ全力で逃げようとしてみたまえ。敵に捕まったと想定して」

少年(扉も、窓もダメ……なら、出口を作れば!)

少年(ドアに、風穴を……!)スッ

少年(遠慮なんか、するものか……!全身、全霊の!最大威力――)

先輩「魔術を使うことを禁ずる」

少年「なッ!?」ビクッ

少年(展開した魔方陣が……霧散した!?)

先輩「済まんな。一々壊れたものを直すのも面倒だから、魔術そのものを禁じたよ」

少年「……すごい……ここまで完全に対象を抑えられるなんて」 <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 03:00:09.60 ID:ROmy1LdIo<> 先輩「君の魔術は、このまま封じさせてもらおう」

先輩「だが、もし使えそうだと思ったら、壁をぶち抜くなり、私を昏倒させるなりして全力で逃げたまえ」

少年「分かりました」

少年(でも……そんなこと、できる……のか?でも……できれば)グッ

先輩「……」ニヤッ

◆◇◆◇◆

先輩「ところで今日の夕食だが、君が作ってくれ」

少年「僕がですか?」

少年「……あの、正直、料理は得意ではないのですが」

先輩「だからだよ」

少年「は?」

先輩「学園の食堂で出せるレベルの夕食を作りたまえ。これが次の命令だ」

少年「そんな、無理ですよ」

先輩「無理かどうかを確かめる実験さ」

先輩「君の知識や実力以上のことをさせることができるのか」

先輩「夕食、楽しみにしているよ」

少年「はあ」

―――
――


先輩「……やはりダメだったか」

少年「すいません……」

少年「あの……先輩は食堂で食べてきたらどうですか?」

少年「僕はこの寮を出られないので、自分で作ったこれを処理しますから……」

先輩「いや、これでいい」 <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 03:06:58.11 ID:ROmy1LdIo<> 先輩「……しかし、美味しくないな」

少年「う」

先輩「……そうだ、じゃあこんな命令はどうだろう」

少年「はい?」

先輩「これから毎日、料理は君がしたまえ。そして必ず上達すること」

少年「それ……効果あるんですか?」

先輩「なきゃ困る。さすがに毎日これではな」

少年「……がんばります」

◆◇◆◇◆

一週間が経った。

先輩「さて、今日の実験だが」

少年「なんですか?」

少年(この魔術、確かにすごいけど……退屈だな)

少年(命令されて、それを淡々とこなすだけだしなぁ)

先輩「今日は、君の五感に制約を課そう」

先輩「そうだな……まずは、君の視覚を封じて見るか」

先輩「君の視覚は、見えなくなる」

フッ

少年(あ、目が……)

先輩「どうだね。君の目には一切障害はないはずだな」

少年「はい。でも、ほんとに見えなくなりました」

少年(……魔術を封じ、行動を封じ、五感までも封じる)ゾッ

少年(確かに、これならば文句なく最強の服従術だろう……) <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 03:11:04.64 ID:ROmy1LdIo<> 少年「……あ、あの、先輩?」

先輩「ん?」

少年「これ、ちゃんと治ります……よね?」

先輩「……」

少年「え」

先輩「そのための実験でもある」

少年「ちょっと!」

先輩「はは。まあ、なるようになる。無理でも魔術で私が治すさ」

少年「そういえば、新たな命令で古い命令は打ち消せるんでしょうか?」

先輩「そうだな。やってみようか」

先輩「君の視力は元に戻る」

少年「ん……」

先輩「どうだ?」

少年「見え……ます。大丈夫です」

先輩「おお。良かったじゃないか」

少年「ええ、ほんとに」

先輩「よし、次は聴力だ。しかし、ここで一つ問題がある」

少年「なんですか?」

先輩「命令によって、君の耳を聞こえなくしたとしよう」

少年「はい」

先輩「それを先程のように命令で打ち消そうとした場合」 <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 03:16:44.85 ID:ROmy1LdIo<> 先輩「果たして、その命令を聞こえるのかどうか」

少年「なるほど」

先輩「もともと君の耳は正常に聞こえるのを、命令によって聞こえなくしているわけだから、打ち消す命令をすれば治るかもしれないし」

先輩「命令をも聞こえなくなっているかもしれない」

少年「後者だった場合、怖いですね」

先輩「うむ。だから、最初の命令の時にこう条件付けする」ニヤッ

先輩「君の耳は、私が君の耳にキスをすると聞こえなくなる」

少年「え」

先輩「そして、耳が聞こえない状態でキスをすると、今度は聞こえるようになる」

少年「ちょっと、先輩」

先輩「ふふ、これも実験だよ。さあ、耳を出して」

◆◇◆◇◆

さらに数日が経った。実験開始からは、十日目が過ぎた。

先輩「……飽きてきたな」

少年(この人はまた……まあ、気持ちは分かるけど)

少年(実験は、僕が命令を淡々とこなしていくだけだし、その実験も、だいたいやり尽くした感もあるし)

少年「予定だとどのくらい実験するつもりなんですか?」

先輩「……半年」 <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 03:19:20.70 ID:ROmy1LdIo<> 少年「はぁ!?長すぎですよ。まだ十日ですよ」

少年「ていうか、もういいんじゃないんですか?この術は文句なく強力ですよ。それでいいじゃないですか」

先輩「だって、永続効果がどのくらいで自然消滅するかも実験しないと……」

少年「それで半年ですか……」

少年(……まあ、軍が運用したいという服従術ならば、それは重要なんだろうけど)

少年(ある日、いつの間にか切れていましたでは話にならないだろうし)

少年「半年もこの寮で缶詰ですか、僕は」ハァ

少年(こんなことなら、最初に期間聞いておけば良かった。寮の出掛けに、友達と約束したことがあったのに……)

先輩「……」 <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 03:22:39.75 ID:ROmy1LdIo<> 先輩「……なあ」

――この時、もっとよく先輩の様子を確認しておけばと、僕は後々後悔することになる。

少年「なんです?」

先輩「君が本気で嫌がりそうな命令、してもいいかい?」

――してもいいか?などと、普段の先輩なら、実験をするのにそんな風に断ったりしないという不自然さに。

少年「……どういう命令ですか」

先輩「そうだね」

――この時なら、まだ。

先輩「……君の目は、私と手を繋がないと見えなくなる」

少年「え」

フッ

少年「あ、ちょ」

少年「ぎゃ」コケッ

少年「いたたた……」

少年「せ、先輩?あの見えないです。本当に」

少年「ちょっと、助けてくださいよ、先輩?」

先輩「それは、私と手を繋ぎたいということかな?」 <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 03:26:35.93 ID:ROmy1LdIo<> 少年「え、だってあなたがそういう命令をしたんでしょうが」

先輩「……そうだな」

先輩「よいしょっと」ギュッ

少年「あ、見える」

少年「……」

先輩「……」

少年「これが僕が本気で嫌がりそうな命令ですか?」

先輩「……ああ」プイッ

先輩「なぜなら、この命令は、外出禁止のように、そのままにしようと思うからだ」

少年「この状態を?」

先輩「いけない、かな?」

少年(これは……確かに不便だ。それに、先輩の様子のおかしい。どうしよう……)

――そう、この時だ。これが岐路だった。

少年「まあ、寮から出れないですし、この中だけならいいですけど……」

先輩「では、半年よろしく頼むよ」ニヤッ

――僕は、彼女のこの笑みの意味に、気づくべきだった。

―――
――
― <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 03:32:55.62 ID:ROmy1LdIo<> 談話室

少年「……」

先輩「……」ペラッ

少年(すること、ないなあ……)

先輩「……」ペラッ

少年(手を繋いでいるのに、よく片手で本を読めるなあ)

少年(……これからは日常生活の中で実験していく、か)

少年(本気でやることがなくなったな。授業にも出れないし)

少年(僕はそろそろ家事でもしたいけど。手を離すと目が見えないし)

少年(この命令はやめておけば良かったかな……)

「……」

ブルッ

少年(あ、やば)

先輩「……」ペラッ

少年(と、トイレに……)

少年(でも、手を離すと目が……うう、どうすれば) <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 03:38:34.71 ID:ROmy1LdIo<> 少年(そうか……一人じゃ目が見えなくなるというのは、こういう問題があるんだ……)

先輩「……さっきからどうしたんだい?」

少年「い、いや、その」

少年(どう言う……?いっそ、正直にいって、トイレまで連れていって貰ってから、外で待っていて貰うのが一番――)チラッ

先輩「……」ニヤニヤ

少年「……分かってるでしょ、あんた」

先輩「トイレだろう?」シレッ

少年「……はい」

先輩「どれ、じゃあついて」

少年(ここでお願いします、とは言えばいいんだけど……)

少年(さっきの先輩の笑い方)

少年(……どういうつもりか知らないけど、彼女は、この状況を楽しんでいるんだ。冗談じゃない)

少年「大丈夫です、一人で行けます」

先輩「この手を離すと目が見えなくなるぞ」

少年「仕方ないでしょうが!」

少年(分かっているさ、そのくらい!) <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 03:43:09.68 ID:ROmy1LdIo<> 先輩「辺りに飛び散らされると困るのだが」

少年「……中まで一緒に来る気ですか」

先輩「嫌か」

少年「ええ。だいたい。もうトイレの場所は把握してますし、ちょっと目が見えないくらい」

少年(ここから、一番近いトイレは……)チラッ

少年(うん、いけそうだ。なんだ、あのくらい)

先輩「そうか……よし、ならば命令しよう」

少年「え」

先輩「まず、私の許可無く排泄をするのを禁ず」

少年「ちょ」

先輩「それだけじゃないぞ」

少年「え?」

先輩「さらに、小用をする際は君の性器を、大便の場合は君の肛門を、許可として私が舐めたら排泄をしても良しとする」

少年「」ポカーン

少年「へ、変態だったんですかあんた」

先輩「さて、どうするかな?」ニヤッ

少年「……ひ、一人で行きます。決まってるでしょ」

少年(彼女の調子に乗るもんか!なんとしても!でも……) <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 03:47:19.95 ID:ROmy1LdIo<> ―――
――


少年「な、なんとかトイレにはついたな……」

少年「えっと……」

少年(思い出せ!十日も使ったトイレじゃないか!)

少年(よ、よし、ここだ!あとは座って……)

少年「……」

少年(で、でない……)

少年(本当に?本当にあれされないと出ないの?)

『許可として私が舐めたら排泄をしても良しとする』

少年「くっ」

少年(ふざけてる。そんなこと。あってはならない。でも……)

少年「……で、でない」

コンコン

少年「……はい」

先輩「諦めはついたかな?」

少年「嫌です」

先輩「そのまま膀胱炎になってもしらんぞ」

少年「そのほうがマシです」

――三十分後。 <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 03:50:50.18 ID:ROmy1LdIo<> 少年「いっつ……」

少年(痛い……)

少年(我慢は限界のはずなのに……くそ)

少年(出ないのか?本当に?舐めてもらうしか?)

少年(なんなんだよ、これぇ……)

少年「……」

少年(……いっそ、今回だけでも頼もうか?)

少年(いや、ダメだダメだ。こんなこと……)

少年(こんな理由で、そんなことを女性にしてもらうなんて。でも……)

少年(でも、これも実験なんだから……)

少年(……参ったな。言い訳を模索している自分がいる。どうしようもないと、諦めている自分がいる)

少年(……先輩なら誰かに話すなんて……でも) <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 03:52:15.96 ID:ROmy1LdIo<> 『また先輩の手伝い?』

『そうなんだ。今度はどんなひどい目に合うかと思うと、気が重いよ……』

『それにしては、いつも断らないよね』

『そうかな』

『うん。まあ、先輩美人だもんね』

『ちょっと待って。それはまったく関係ないよ』
『だいたい、いくら美人でも、あの人はその、なんていうか、変人すぎて僕には……』
『そもそも僕が彼女の手伝いをするのは、僕自身の勉強になるからさ』
『たしかに、ひどい目にも合うけど、間近で先輩の魔術を見れるんだ』
『学園一、いや、学園始まって以来の天才と呼ばれる、先輩のね』
『それだけでも、少々ひどい目に合うだけの価値はある』

『ふうん、さすが我らが学年の年
間首席様。研究熱心ね』

『もうやめてよ。そろそろ行かないと、僕は先輩になにされるかわからないし』

『まあ、いいわ。終わったら私の提出用の研究も手伝ってよね』

『ああ、もちろん』 <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 03:57:20.12 ID:ROmy1LdIo<> 「……」

少年(……つい、十日前のことだった。十日前は、こんなことになるなんて思っていなかった。いや、半日前の時点でも思っていなかったのに)

少年(くそ、どうしたら出るんだ……?)

先輩「君」

少年「……なんですか」

先輩「君に次の命令を与える」

先輩「君は、私の問いかけには、一切の嘘偽りなく、必ず答えを言わなければならない。」

少年「……」

少年(や、やばい……)

少年(きっと、先輩は次にこう問いかけるつもりだ……ぜったい、こう)

先輩「では、問おう。君は今、何がしたい」

少年「う……あ……お、おしっこを……したい……です」

少年(くそっくそっ)

先輩「そうか。では、それはこのままでもできるのかな」

少年「できま……せん……」

先輩「どうしたらできるんだったかな」

少年「……せ、先輩に」

少年(やめてくれ……もう、たすけて――)

少年「先輩に……ち、ちん、ちんを……舐めて……もらわないと……できません」

先輩「そうか。では、最後の質問だ」 <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 04:02:22.31 ID:ROmy1LdIo<> 少年(き、聞いちゃダメだ。そうだ、耳を塞げば――)

先輩「そのまえに、命令の追加だ」

先輩「私が、君に向かって言葉を発している時に、君は耳を背けてはならない」

少年「うわ」

少年(この人は……)

先輩「君は」

少年(……わざとだ)

先輩「小用をしたいかい?」

少年(わざと。ゆっくりと。区切って)

先輩「私に、君の性器を舐めさせてでも」

少年(……最後の……質問を)

少年「あ……あ……し……」

少年「し……た……い……です」

少年(言ってしまった……)

少年(くうううう……)

少年(答えてしまった……)

先輩「そうか。いいだろう。私も構わない」

先輩「ならば、ここの扉を開けてくれ」

少年(まだ……まだ間に合う)

少年(今のは、質問に答えさせられただけだ……)

少年(ここを開けなければ……)

少年( でも……)

『いつまで?』

少年「」ビクッ

『いつまで開けない?いつまで出ない?』

『小便が出るまで?それはいつだ?』

『魔術が解けるまで?それはいつだ?』

少年(は、半年……後?) <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 04:04:45.09 ID:ROmy1LdIo<> 少年(……無理だ。絶対……そんなの……)

少年「せ、ぜんぱい……ううっ」

先輩「どうした?早く開けてくれ」

少年「ず、ずいまぜん……や、やめたい、です」

少年「お、お願いします……実験、の中止……を……魔術を、魔術を解いてください……」

先輩「嫌だ」

少年「うううう」

先輩「答えたまえ」

先輩「君には二択しかない」

先輩「そこに閉じ籠り続けるか、この扉を開けるか」

先輩「小用をしたいのか、したくないのか」

先輩「さあ」

少年「うううう」

『無理。無理。無理。無理、無理、無理、無理、無理無理無理無理無理無理ムリムリムリムリムリむりむりむりむ』


僕は、


扉を開けた。 <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 04:10:01.86 ID:ROmy1LdIo<> 先輩「何か、言うことはないのかな?」

少年「あ……あ……お、おねがい……します。お、おしっこが……し、したい……です」

先輩「それで?」

少年「したい……ので、ち、ちんちんを……なめ……て、くだ……さい」

先輩「よかろう」

先輩「おや、まだ脱いでなかったのか」

少年(履き直したんですよ……)

先輩「脱がせてやろうか?」

少年「だ、大丈夫です、自分で脱ぎます」

少年(うう、おなかいたい……)

先輩「……」ジー

少年(うう、み、見られてる……?)

少年(目が見えないのに、視線が、突き刺さるみたいに感じる……)

先輩「どうした。手が止まっているぞ?あと一枚あるだろ」

少年「は、はい」

少年(ええい、もう)

少年「……お、おねがい、します」

先輩「ふーん」ジロジロ

少年(なんなんだこれ、ほんと……)

先輩「よし、なめるか」

少年(よ、よし……!とにかく、早く済ませて――)

先輩「あ、その前に」

少年「な、なんですか?」ビクッ

先輩「私が先程、排泄に関して君に命じた内容を覚えているかな?」

少年「え、えーっと……その」

先輩「私は、君が小用をしたい場合、許可として私が君の性器を舐めたら排泄をしても良しとする、と言ったわけだが」

少年「……はい」

先輩「しても良し、つまり、しなくてもいい。すぐにしなくてもいいということだ」

少年「はあ」 <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 04:17:21.21 ID:ROmy1LdIo<> 先輩「……もし、私が君の性器を舐め、顔をどけるまでに小便を出して場合」

先輩「君に罰を与えるよ」ニヤッ

少年「そ、そんな!む、無理ですよ!」

先輩「ほう。じゃあ君は私の
顔に君の小水をかけたいと?」

少年「そ、う、いうわけじゃあ……」

先輩「じゃあ我慢しろよ。よし、舐めるぞ」

先輩「ちょ、そんないきな――」

ペロ...

少年「あ」

ペロペロ

少年「あ、あっ」

先輩「んん、ふふっ、皮を剥くぞ」

少年「うぁ……」

少年「ふぁ、あ……」

少年(ああ……で――)

先輩「……」ペロペロ

少年「せ、せんぱっ!で、で、でま、から!」

先輩「そうか?じゃあ――」

少年(は、はや、あ――)

チョロ...

少年(ああああ)

ジョロロロロロ...

少年(はぁあああ)

ピチョ...ピチョ...

少年「あ……あ……で、でちゃ……」

先輩「出したな」

先輩「よくも見事にかけたな。びしょ濡れだ」

少年「ち、ちがっ、だって、せ、先輩がっ」

先輩「私は言ったはずだ。罰を与えると」

少年「で、でも!」

先輩「いいわけ無用」

少年「そんな理不尽な!」 <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 04:19:10.85 ID:ROmy1LdIo<> 先輩「そんなことより、君への罰だが」

少年「ひっ」

少年「や、やめ」

先輩「そうだな。君の行動を制限しよう」ニヤッ

先輩「君は、私に手を引いてもらわねば、二足歩行ができなくなる」

先輩「さらに、立つことも掴まり立ちをしなければできない」

少年(先輩と手を繋がなければ、目も見えず、歩くことも立つこともできない……?)

少年(排泄は、先輩に舐めてもらって……そんな状況が、半年も……?)

先輩「ふふ、どうかな」

少年(僕は、どうなっちゃうんだ……?) <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 04:21:46.40 ID:ROmy1LdIo<> いったん切ります。
変態的な内容で申し訳ない。

ここまでは前にVIPのほうで書き、さらに後でちゃんとSSにしました。
ただ、この後の筆が進まないので、またこういった形式で
一度書き進めようと思ってスレを立てました。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/26(土) 05:36:14.22 ID:8w3yQBnBo<> すごく好きだわこういうの <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/26(土) 06:31:45.83 ID:LqBN9FPOo<> 前みたと思ったらやっぱりか
まあ頑張れ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/26(土) 08:31:52.18 ID:GM+7aaw5o<> とてもいい・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/26(土) 09:59:24.45 ID:QhwVsMRR0<> どうせあんまりネタないしセックスまで駆け足でやってもらいたい <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 10:37:46.70 ID:ROmy1LdIo<> 先輩「それにしても、すごい臭いだ」

少年「すいません……」

先輩「君が盛大に顔にかけてくれたから、口にも入ったし」

少年「……それ先輩が」ボソッ

先輩「ん?なにかな?」

少年「い、いえ、それは――それは、先輩のせいじゃ、ないですか」

先輩「ほう」

少年(な、なんで)

先輩「そういえば、さっき嘘をつけなくしたんだったな」

少年「う……あ……」

先輩「さて、私のせいだと、君はいいたいわけだな?」

先輩「人の顔に小水をかけておいて、君は」

少年「だって……」

先輩「……次はどんな命令をしようか」

少年「ひっ……」

少年「……お、おねがいします」

先輩「ん?」

少年「僕が……が、我慢できなかった僕が悪かったです……」

少年「おねがいします、許して、ください……おねがいします……」

先輩「ふむ。まあよかろう」

少年(うううう……)

先輩「……」

先輩「……ふっ、冗談だよ。別に本気で君のことを怒っているわけでも」

先輩「本気で罰を与えようと思っているわけでもない」

先輩「さっきのも実験の為だ。だから」

先輩「そんなにびくびくしないでくれ」 <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/26(土) 10:38:16.98 ID:ROmy1LdIo<> 少年(実験……?これが?こんな狂ったことが?)

少年(理解できない)

先輩「よし、そうだ、風呂に入ろう」

先輩「二人とも汚れてしまったし」

少年「そうですね……」

先輩「ここの風呂はそれなりに大きいからな、二人一緒でも入れるだろうし」

少年「え」

少年「い、一緒に?」

先輩「当然だろう?」

先輩「君は私と手を繋がなければ目が見えないし、歩けないんだぞ?」

先輩「一緒に入るしかあるまい。溺死したいのか?」

少年「……それは、そうですけど」

先輩「なら決まりだな」

少年「はぁ……」

先輩「まずは、着替えの準備をしないとな」

先輩「ほら、さっさと来たまえ」

先輩「それとも、風呂から出た後は、君は全裸で過ごせと命令されたいのか?」

少年「いやですよ、そんなん」シブシブ

少年「というか、先輩は一度顔だけでも洗った方がいいんじゃないですか?」

先輩「んー?別にいいんじゃないか?すぐ風呂には入るんだし」

少年「そうですか……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/26(土) 12:53:18.56 ID:wcdJ9VtT0<> ウホいい先輩 <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/27(日) 12:46:43.81 ID:DI4Zfv7yo<> 寮の一室

先輩「ふぅん、十日もいるのに、大して散らかってないんだな」

少年「まあ、この部屋では寝るくらいしかしてませんからね」

少年「……あ、ていうか。こんな状態で家事とかどうするんですか」

少年「片手で料理洗濯とか無理ですよ。それに先輩、朝起きられないのに」

先輩「そうだな……」

先輩「まあ、それは後で考えよう」

少年(この人、後先考えずにこんな面倒な命令したのか)

先輩「ほら、それよりもとっとと着替えを用意したまえ」

少年「はいはい」

―――
――


先輩「ふむ、君はそんな下着をつけているのか」

少年「そんなまじまじと見ないでくださいよ」

先輩「気にするな。どうせ、これから何度も見るんだ」

少年「この状況じゃ、そりゃそうでしょうけど」

先輩「ふむ」

少年「どうしたんですか?」

少年(また、嫌なことでも考えてそうだな)

先輩「君の着替え、それだけか」

少年「え、ええ。まさか、半年も泊まり込むとは思っていなかったので」

先輩「なら、そのうち君には私の服を着てもらうかな」ニヤッ

少年「」

先輩「そうだな。むしろいっそ、自分を女性だと自覚させてみるのも面白そうだな」

少年「な、なにを」

先輩「いや、気にならないか?」

先輩「男として育ち、男の脳を持っている君に」

先輩「女性の自覚を持て命令したら、どうなるのか?」

先輩「興味深い内容だろう?」

少年「思いませんよ……」

先輩「いやいや、それができるなら、例えば――捕らえた敵兵に、我々こそ祖国側だと思わせることができる」

先輩「ということも可能だというわけだ」

先輩「軍には必要な実験だな」

少年「やめてください……」

先輩「まあ、いずれそういう実験もするかもしれない、ということだ」

少年(絶対するつもりだ……)

少年(僕の自意識が女の子に……?)

少年「」ブルッ

先輩「次は私の着替えだな」 <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/27(日) 20:48:30.99 ID:4rY7wbgGo<> 先輩の部屋

先輩「えーっと」

少年(な、なるべく見ないように……)

先輩「なあ」

少年「は、はい?」

先輩「どの下着が君の好みだ?」

少年「み、見せないでください!」

先輩「いいから、選べ」

少年(う、あ、こ、答えなきゃ……答えたくないのにぃ)

少年「そ」

少年「それです……」

先輩「ほう」

先輩「ふぅん」ニヤニヤ

先輩「こういうのが君の好みか」

少年「……」

先輩「そうだ。これからは私の衣服は君に選んで貰おうかな?」

先輩「どうせ、寝食を常に共にするのだし」

少年「え」

先輩「なんだ、また驚いているのか?君は結構鈍いな」

少年「で、でも」

先輩「さっき言った通り、君は一人じゃ目も見えないし、歩けない」

先輩「四六時中私と一緒にいるしかないだろうよ」

少年「そんな……」

先輩「……嫌なのか」

少年「そりゃあ……だって、そんなの……」

先輩「……ふん、まあとにかく今は風呂だ。行くよ」 <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/27(日) 20:50:08.22 ID:4rY7wbgGo<> >>29
一応、色々考えてはいますので……
まあ、何かみたいネタがあればあげていただけば
ピンと来たのは使わせていただくかもしれません <>
◆2nkMiLkTeA<><>2013/01/27(日) 20:59:16.65 ID:4rY7wbgGo<> 廊下

先輩「……」

少年「……」

少年(……どうしたんだろう?急に黙りこんで)

少年(今回のことで、ほんとに、この人が何考えているのかよくわからなくなったよ)

少年(出会って三年ぐらいか。ある程度理解できるようになったかと思ってたんだけど……)

少年(変人だけど、まさかこんなことする人だとは思わなかった)

少年「はぁ……」

少年(早く終わりにしたい……半年、か)

先輩「……」ピタッ

少年「え」

少年「どうしたんですか?急に立ち止まって?」

先輩「用を思い出した。そこの談話室で待っていてくれ」

少年「は、はあ」

先輩「あと、ついでに風呂を沸かしてくる」

少年「わかりました」

談話室

先輩「じゃあ」

少年「はい」

先輩「……」スタスタスタ

―――
――
― <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/27(日) 21:44:34.76 ID:5Q/qZf1Ko<> アクシデントで先輩とはぐれて
目が見えなくて困ってるところを
他の女の子に助けられているのを見て病む先輩 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/28(月) 02:01:36.28 ID:+oCsKJ8wo<> 懐かしいなこれ
リアルタイムで見てたけどいつだったか… <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/28(月) 23:27:10.69 ID:1QGaM7ooo<> 食堂

少女(もう十日かぁ)パクパク

少女(あいつ、いつ帰ってくるのかしら)

少女(一ヶ月?せめてそのくらいで帰ってきてくれないと)

少女(手伝ってもらうはずだった研究の、提出期間に間に合わないじゃないの)ハァ

教師「――!○○教室の――!いないか!?」

少女「え?私?あ、はーい!」

少女(なに?なにかしたっけ?)

少女「はい、なんですか?」

教師「ああ、ちょっと頼まれごとがな」

少女「はぁ……?」

―――
――


先輩「ただいま」

少年「」ビクッ

先輩「くっくっく」ニヤニヤ

少年「……足音消して歩くのやめてくださいよ」

先輩「消しきれてはいないよ。君に聞こえないくらいの足音は立ててた」ニヤニヤ

少年「なら次は僕に聞こえるように音を立ててください……」

先輩「ふぅん、案外情けないね君は」

少年「」ピクッ

先輩「このところ研究ばっかりで」

先輩「ろくに戦闘訓練をしていない私の気配を感じ取れないばかりか」

先輩「そんな泣き言を言うとは」

先輩「それで現役と言えるのかな?」 <>
◆2nkMiLkTeA<><>2013/01/28(月) 23:36:06.08 ID:1QGaM7ooo<> 少年「わかりました。わかりましたよ。みてろよ」

先輩「そうそう、その意気だ。ま、そんなことはどうでもいい」

先輩「風呂だ」

少年(煽るだけ煽っておいてこの人は)

廊下

テクテクテクテク

少年(なんの用事だったんだろう)

先輩「……」

先輩「君の視線」

少年「は、はい!?」

先輩「用事はなんだったんだろう、そう聞きたいようだね」

少年「……ま、まあ」

先輩「大したことじゃない。夕飯のことだ」

少年「夕飯……あ、そうだ。今日どうするんですか?」

少年「片手で料理なんて益々無理ですよ」

先輩「うん。私も君の料理の手伝いも、もしくは料理している間君の横に突っ立っているのも面倒だな」

少年「……先輩が料理を作って、目の見えない僕は待ってるとか」

先輩「論外だ。というわけで私は現実的な手段に出ることにした」

少年「はぁ」

先輩「今日は食堂から夕食を二人分届けてもらうよう頼んできた」

少年「ああ、なるほど」

先輩「まあ、私一人の時はいつもそうしてもらっていたんだ」

少年「へぇ」

先輩「などと話している間に、ついたな」

少年(風呂……先輩と、二人で……か)ゴクリッ <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/01/28(月) 23:37:51.05 ID:1QGaM7ooo<> >>37
ああ、いいですねそれ <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/02/13(水) 11:50:46.08 ID:v5xKEJjQo<> 久しぶりのおやすみです
なんか台本形式で上手く進まないのでもう普通にSSとして書きます


 彼は少し緊張しながら、その扉をノックした。室内からの返事を受け、開ける。
 訪問者が入ってすぐに部屋の主と対面するように、彼女が座っているデスクはあった。彼女はこちらを見据えていた。
 来客の正体を、彼女は予め見越していたようで、何一つ予定調和だという態度で彼女は立ち上がった。
 彼女は若くしてこの魔術学園において、自らの研究室を与えられている才媛である。

「やあ、来たね。今回も頼むよ」

「はい。で、どんな実験なんですか?」

 返事をする少年も、彼女ほどとはいえないものの、非凡な才で頭角を現している若き魔術師であった。

「ああ、それはね。この方陣なんだが、分かるかい」

 先輩がいたデスクの前に、複雑な図形や文字のようなものが円となって書き示されていた。魔方陣である。
 間違いなく、先輩が描いた魔方陣だろう。その構成には無駄がなく、完璧だった。

「魔方陣……服従……の術式ですか?」

 この学園を経営している一族の魔術は、魔方陣を用いて魔術を行使する。学園で学んだ魔術師であれば、その構成から魔術の効果を予想できるのだが――先輩の魔方陣は、緻密な構成に加え、未発表の彼女の特別な式やアレンジが用いられているため、ひどく難解だった。
 それでも少年が魔方陣を読み取れたのは、これまでたびたび彼女の実験に付き合わされた――いや、実験台にされたおかげだった。

「そうだ。相手を捕らえ、こちらの都合のいいように動かせるようにする、そんな術だ」

 服従術というものは、ある程度の研究はされ尽くされた分野だった。魔術は永らく戦争や暗殺に利用されてきたため、その分野の発達は必然であった。
 そして、そういった術に先輩は今まであまり興味を抱いていなかったのだが。

「へえ。なんか、いつものとは傾向の違う術ですね」

「そうかな」

「はい。いつもは……その、ユニークな術ばかりだったので」

 ユニーク……まあ、ユニークといえるだろう。もはや誰もが匙を投げた分野の実験ばかりを、彼女は好んだ。
 不死や、時間転移、生命の創造等々。おかげで彼女は、影で他の生徒たちから、マッド呼ばわりされているのを、少年も聞いたことがあった。
 まあ、服従術というのも、アブノーマル的ではあるが。

「校長に頼まれてね。その校長も、どうやら軍に頼まれたようだが」

「軍……?」

 本来、一族秘伝というのが魔術師のモットーであり、孤児を集め魔術師として育成するこの学園は特異な存在である。しかし、学園の一族はこの国の王と結託し、その禁を破った。結果、ただでさえ驚異である魔術師という存在を大量に配下に加えたこの国は、大陸の覇者となった。
 魔術師と軍の関係が密接なのは、そのせいである。この学園の卒業生たちはほとんどが軍属魔術師になるか、軍魔術部の魔術研究者になる。
 先輩はそんな中、稀有な存在だった。もうとっくに卒業できるのに学園に残り、かといってどの教室にも属さず、教師になるわけでもなく、自由に自分の好きな研究をしている。
 聞いた話によれば、特権や金を得るためとはいえ、秘奥をここまで盛大に広めたことに危機感を覚えた一族が、軍に寝首をかかれないための秘密兵器とも言われている。
 学園の魔術研究が軍の魔術部よりも進んでいるのは、この先輩に依るところ大きい――なんて噂も、少年は耳にしたことがあった。 <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/02/13(水) 11:55:11.40 ID:v5xKEJjQo<> 「ああ。まあ、おかげで報酬が良くてな。そろそろ、私の研究資金も心許なくなってきているし、ちょうど良かった」

「はぁ」

 自分が、軍と魔術師の。ひいては大陸の平和の要だということを、きっとほとんど理解してないのだろうという当人の軽さに、思わず少年は生返事をした。
 相変わらず、研究しか頭にないんだろうな、とちょっと呆れて。

「さて、まあ話はこれくらいにしようか」

「はい」

 しかし、そんな俗世のことに囚われないところも彼女の魅力の一つでもある、と少年は密かに思っていた。
 そうして少年は、すぐに気持ちを入れ換え、目の前の実験に集中することにした。

「方陣の上に立ってくれ」

「はい」

「では」

 そう言った後、かがみこんだ先輩の手が、魔方陣に触れる。魔翌力の注入だ。少しして、魔方陣が光を放ち始めた。
 魔方陣が発動するには、それに必要なだけの魔翌力を注入しなければならない。だが、逆に言えば、必要なだけの魔翌力を注入した魔方陣は、例え術式に失敗があっても発動する。それが暴発である。
 もっとも、彼女が魔術に失敗したことなど、少年は見たことなかったが。
 さて、そしてついに先輩の魔方陣が発動したわけだが、少年は得たいの知れない気色悪さを感じた。まるで、体の奥底に何かが這い寄ってくるような……
 吐き気までもしてきたような感覚がして……少年は突然ぶっ倒れた。

「おや、どうしたんだい、急に倒れて」

 息ができない。目の前が白黒する。体が震えているようにも感じるし、全く思い通りに動かない恐怖感もあった。
 それなのに、先輩のやたらとのんきそうな声だけは嫌でも耳に入ってきていた。

「ふむ。息をしていない……」

 だからこんなに苦しいのか。もう考えるのも辛い。意識を投げ出したいと少年は思った。

「あ、そうか。ええと。生命活動、して良し」

 恍惚に至りそうな気がしたが、その頂点に到達する前に、先輩の声によって少年の意識は地上へと舞い戻ることができた。しかし、待っていたのは苦痛だった。
 かすれた呼吸音が耳障りだ。しかし、それを発しているのは自分だ。
 さっきまでの酸欠状態で目がちかちかする。しかし、現状の把握がしたい、と思って先輩に声をかけようとしたが、声を出せなかった。
 苦しいからとか、酸素が足りないとか、そんな理由じゃなく、喋れない。混乱して、ついには恐慌を起こしそうな自分の心を必死でなだめる。すると、

「喋って良し」

 という先輩の言葉で、跳ねるように言葉は口から出ていった。

「なッ、なんですか、これは!」

「すごいだろ。相手の体のコントロールを完全に掌握できるんだ」 <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/02/13(水) 11:57:33.97 ID:v5xKEJjQo<>  面白がるような、彼女の声。先程言った先輩の言葉を思い出す。生命活動を、して良し……?完全に掌握するというのも、あながち大袈裟では無さそうだと、少年は背筋は凍った。

「さらに、言葉だけで暗示や条件付けをすることができる」

(た、確かにすごいけど……)

 ここまで強力な服従術を、少年は知らなかった。一時的に身動きを完全に封じるような術や、相手を一種の催眠状態にするような術はあるが、ここまではっきりと意識はあるのに、命令は絶対遵守され、逆らおうとすることさえできないなんて。

「よし、立ち上がれ」

(か、体が勝手に)

「気をつけ」

 少年は一切力を込めようとしていないのに、体はてきぱきと命令をこなしている。

「休め」

 まるで、自分を俯瞰しているような感覚だ。 

「うん、術のかかりはいいようだな」

「じゃあ、そろそろ解いてくださいよ」

 先輩は満足げだったが、術をかけられた当の少年としては、とっととこんな実験は終わりにしたかった。自分の肉体が自分の自由にできないなんて、冗談ではない。

「いや、君にはしばらくそのままでいてもらう」

 そのしばらく、というのはいつまでだろうか。先輩は自分が満足するまで実験を続ける。下手をすれば、一ヶ月近くかかることも……

「この術の効果時間や、命令の限界を知りたいのでね。そのためにも、しばらく私と共に生活してもらうよ」

 こうなっては、拒否しても無駄だった。彼女が口に出したのは、承諾を求める問いかけではなく、今後の予定なのだから。

「はぁ……わかりました」

 今回もあまりいい目には合わなそうだ。ため息を吐きながら、諦めの境地で少年はそう言った。 <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/02/13(水) 12:01:16.55 ID:v5xKEJjQo<> ◆◇◆◇◆

 学園の敷地の外れに先輩専用の寮はある。
 彼女が使うためだけに建てられたのではなく、もともとはある教師のためのものだったらしいが、今や先輩の怪しげな魔術の実験場として噂され、近づく生徒は先輩以外では少年くらいだった。

(先生がしばらく教室にこなくていい。泊まりの準備をして行けって言ってたのはこういうことか……)

 教師のほとんどが、先輩に対して甘い。彼女の意向の方が、教師よりも優先されるほどだ。校長と教頭でも、彼女には頼んで何かをしてもらうくらいだし、学園の経営者たる一族のものたちが占める理事会すら、彼女にはおいそれと命令できないらしい。

「さて、最初のルールだ」

「ルール?」

「そう。これから私は君に色々な命令をしていく」

 今少年がある程度自由に行動できるのは、先輩の楽にしていいという命令のおかげだが、これから再び少年は枷をはめられていくようだ。

「どういった命令が有効なのか。どういった命令は無効なのか。矛盾する命令はどうなるのか」

 指を立てて数えるように先輩はこちらに言ってきた。つまり、自分はそれらの命令によっていじくり回されるわけかと、少年は陰鬱な気持ちになった。

「そういった実験だ」

「はぁ」

 先輩の言動は常に自信満々だった。こういうのを、カリスマ性というのだろうか。

「では、君に課す最初の制約だが。君は、私の許可無くこの寮を出ることを禁ず」

「……」

 話の延長のように言われたそれだったが、

(……今のが命令?)

 こんな簡単な言い方で、自分に一つ枷が増えたということが、少年には実感できなかった。

「試しに出ようとしてみたまえ」

「はい」

 促され、入ったばかりの寮の入り口の向き直る。ドアノブを掴み――

「え、あ、開けられない」

「扉には触れることはできるようだな。だが、ノブを回せないか」 <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/02/13(水) 12:17:46.84 ID:v5xKEJjQo<>  先輩の言葉の通りだった。そもそも、このドアというものは、どうやったら開けられるんだったのか……?そんな疑問さえわきそうだった。

「じゃ、じゃあ、窓は……!開けることはできる……でも、出られない!」

 続いて、ドアを離れ、一番近くの窓へと少年は駆け寄った。言葉の通り、窓は開けることはできた。が、ここは一階だというのに、出ようとすることができなかった。

「そろそろ全力で逃げようとしてみたまえ。敵に捕まったと想定して」

 言われなくても!少年の思考は既にそこに至っていた。

(扉も、窓もダメ……なら、出口を作れば!)

 杖を懐から取り出す。棒の先にある魔導水晶へと意識を集中する。

(ドアに、風穴を……!)

 先ほどの先輩の服従の魔方陣のように、必要な時にそのための魔方陣を描く時間や余裕がないということは、当然ある。
 魔導水晶は、それらの問題を解消し、学園出の魔術師を最強足らしめた要因だった。意識の中でイメージした魔方陣を、水晶は魔翌力によって空間に展開、描画する。実際に書くのと違い、その所要時間は一瞬。暴発しやすいという欠点はあるものの、それ目を瞑って余りある戦果をあげた。

「魔術を使うことを禁ずる」

 少年がイメージの魔方陣を完成させ、展開するまで、もはや一瞬もかからないという刹那。先輩の言葉が少年の耳を――魔術を縛った。

(魔方陣が、霧散する!?)

 先ほどまで、いくらでも強力な魔法を行使できた自分の魔術の蓄積が、魔方陣の術式の知識が、もやがかかったように思い出せない。
 それどころか、魔翌力を込める感覚さえ忘れてしまったかのようだ。魔翌力操作は、魔術の基本。これができなければ、魔術は暴発する段階にもいけない。お手上げだ。

「済まんな。一々壊れたものを直すのも面倒だから、魔術そのものを禁じたよ」

 驚愕する少年に、先輩はいつもの冷静な声で語った。

「……すごい……ここまで完全に対象を抑えられるなんて」

 驚愕は、いつしか感嘆へと変わっていった。これでは、この服従術をかけられたが最後、逆らえるものはいない。

「君の魔術は、このまま封じさせてもらおう」 <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/02/13(水) 12:20:52.22 ID:v5xKEJjQo<> すいません、ところどころ魔翌翌翌力になっているところは
普通に魔翌力です <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/02/13(水) 12:22:01.08 ID:v5xKEJjQo<> ん?なんだこれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/13(水) 12:25:41.48 ID:rWBWSTuho<> メール欄にsaga
sageじゃなくてsagaね <>
◆2nkMiLkTeA<>saga<>2013/02/13(水) 12:31:29.51 ID:v5xKEJjQo<> >>49
わかりました
ありがとうございます

 少年が先輩に向ける目に、いつも以上の尊敬の眼差しが含まれていても、彼女は気にしない。それが彼女だ。

「だが、もし使えそうだと思ったら、壁をぶち抜くなり、私を昏倒させるなりして全力で逃げたまえ」

「分かりました」

 そうは言ったものの、少年はそんなことは絶対無理ではないかと、内心そう思っていた。
 そして、それでも打ち破ることができたら……とも。

◆◇◆◇◆

「ところで今日の夕食だが、君が作ってくれ」

 先輩が少年にあてがった部屋で持ってきた荷物をほどいて、一休みしてから談話室に降りた少年に、先輩はこう言った。

「僕がですか?」

 この寮で二人きりで過ごすのならば、食事等の家事は二人でやるのは当然か。人混みを嫌い、気むずかしい先輩は、一般生徒の多い食堂には顔を出さないし、寮母のようなものも住まわせていないようだから。
 しかし、一応少年は断っておくことにした。

「あの、正直、料理は得意ではないのですが……」

 だから不味くても、許してほしいと先輩が汲み取ってくれるといいのだが。しかし、

「だからだよ」

「は?」

「学園の食堂で出せるレベルの夕食を作りたまえ。これが次の命令だ」

 そんな無茶を先輩は言ってきた。

「そんな、無理ですよ」

「無理かどうかを確かめる実験さ」

 そうして、にやっと先輩は少年に笑いかけた。

「君の知識や実力以上のことをさせることができるのか」

 目は好奇心で爛々と輝き、楽しくて仕方ないという様子だった。

「夕食、楽しみにしているよ」

「はあ」

―――
――


「……やはりダメだったか」 <>
◆2nkMiLkTeA<>saga<>2013/02/13(水) 12:35:39.79 ID:v5xKEJjQo<> 「すいません……」

 あれから一時間半。少年は先輩の期待には答えられなかった。

「あの、先輩は食堂で食べてきたらどうですか?」

 少年は、つい、こんなことを言ってしまった。

「僕はこの寮を出られないので、自分で作ったこれを処理しますから……」

 本当は、情けないから先輩とこの食事を囲みたくなかったわけだが。本心をそのまま言えるわけはない。
 申し訳ないという気持ちも、もちろんあったが。

「いや、これでいい」

 先輩が食堂を使いたがらないのは知っていたので、この答えは別段特別な意味があるわけではないだろう。それに、この人は他人を気遣うような性格ではない。

「……しかし、美味しくないな」

 こうやって、ずけずけ言ってくるのが普通だ。

「う」

 次の言葉も、特に意味はなかったのだろう。慰めとか、そういうものは。

「そうだ、じゃあこんな命令はどうだろう」

「はい?」

「これから毎日、料理は君がしたまえ。そして必ず上達すること」

「それ、効果あるんですか?」

「なきゃ困る。さすがに毎日これではな」

「……がんばります」

 それでも、少年は少し気分が良くなった気がした。

◆◇◆◇◆

 一週間が経った。
 少年は毎日色々な命令を受けていたが、まだ基本的な段階といっていいものだ。
 もともと彼にできていたことをさせたり。できないことをさせようとしてやっぱりできなかったり。できていたことを禁じたり――だ。
 そんな中で、初日にかけられて以来、ずっと効果を発揮し続けている服従術にますます感心するばかりだったが、

(すごいけど、退屈だな)

 と、思い始めていた。

―――
――


「さて、今日の実験だが」

「なんですか?」

 先輩は、朝が弱い。
 最初の二日こそ頑張って午前八時までに起きるよう心がけていたみたいだが、一週間が経った今や、お昼ぎりぎりまで起きてこないこともざらだった。
 そのため少年は、自然と午前中のうちに洗濯等の家事を済ませるようにした。
 食事を用意するのは初日に少年の仕事となったわけだが、それ以外の家事も、今やほとんど少年がやっている。
 仕方ない。魔術以外に興味を持つことはおろか、魔術以外を行うことがひどく億劫だという先輩は、自分のことは適当に自分でやるからと言っていたが、見るからに洗濯もの等が溜まっていくのを、少年は見過ごせなかった。さすがに下着や肌着等の洗濯ものは少年も手をつけられなかったが。
 そうして家事を済ませ、昼飯を用意する匂いに誘われ起き出てきた先輩は、食事を済ませて休憩してからやっと実験の開始を宣言した。

「君の五感に制約を課そう」 <>
◆2nkMiLkTeA<>saga<>2013/02/13(水) 12:37:53.30 ID:v5xKEJjQo<>  これは今までに受けた命令から、少し難度があがったようだ。行動ではなく、感覚の操作となると。

「そうだな……まずは、君の視覚を封じて見るか」

 先輩が、こちらの目を指差すように、眼前で人差し指を立てて言った。

「君の視覚は、見えなくなる」

 効果はいつもの如くてきめんだった。ふっと、一瞬で視界が暗くなる。

(目が……)

「どうだね。君の目には一切障害はないはずだな」

「あ、はい。でも、ほんとに見えなくなりました」

 外的要因は一切なく、目に異常が起きたわけでもなく、彼の目は見えなくなったのだ。

(魔術を封じ、行動を封じ、五感までも封じる……)

 改めて、ぞっとする。

(確かに、これならば文句なく最強の服従術だろう)

 しかもそれらは、術にかけてから命令するだけでいいのだ。
 これまでの服従の魔術は魔方陣の術式の段階で、相手にさせたいことを書き入れなければならなかった。だから当然、術式は複雑になるし、複雑だと当然ミスによる暴発も多かった。
 相手を催眠状態にする術というのも開発されたが、正直施術された相手の命令遵守率は高くなかった。それに比べて、この術なら、命令はまさに絶対である。

「あ、あの、先輩?」

 絶対だから故に少年は心配になった。

「ん?」

「これ、ちゃんと治ります……よね?」

 もしかしたら、このまま視力が回復しないのではないか、と。

「……」

「え」

「そのための実験でもある」

「ちょっと!」

 そんな、冗談ではない。

「まあ、なるようになる。魔術で私が治すさ」

 割と本気で怒っていたのだが、こうまで言われては、矛を収めるしかなかった。代わりに、思ったことを言う。

「そういえば、命令で命令は打ち消せるんでしょうか?」

「そうだな。やってみようか」

 おいおい。実験しなければわからないのか、とも突っ込みたくなかったが、ぐっとこらえた。視力回復の方が大事だ。

「君の視力は元に戻る」 <>
◆2nkMiLkTeA<>saga<>2013/02/13(水) 12:40:42.47 ID:v5xKEJjQo<> 「ん……」

 また、変化はすぐに起きた。一瞬ぼやけるような感覚のあと、また前と同じように視界が復活した。

「どうだ?」

「見え……ます。大丈夫です」

「おお。良かったじゃないか」

「ええ、ほんとに」

 言葉ほどの驚嘆がない先輩の言い方に、嫌みっぽく少年は返したが、彼女にはどこ吹く風。もう次の実験のついて話してくる。

「よし、次は聴力だ。しかし、ここで一つ問題がある」

「なんですか?」

「命令によって、君の耳を聞こえなくしたとしよう」

「はい」

「それを先程のように命令で打ち消そうとした場合」

 ちっちっち、と先輩が指を振る。

「果たして、その命令を聞こえるのかどうか」

「なるほど」

「もともと君の耳は正常に聞こえるのを、命令によって聞こえなくしているわけだから、打ち消す命令をすれば治るかもしれないし」

 一旦言葉を区切って目を瞑ると、少しして目を再び開いてから続ける。

「命令をも聞こえなくなっているかもしれない」

 そして、いつものにやっとした笑みをこちらに向けた。

「後者だった場合、怖いですね」

「うむ。だから、最初の命令の時にこう条件付けする」

 真剣な表情で悩む少年の耳に、先輩は手を添えた。いきなり触られたことで、びくっと体が震える。その後に続いた言葉は、さらに少年を困惑させた。

「君の耳は、私が君の耳にキスをすると聞こえなくなる」 <>
◆2nkMiLkTeA<>saga<>2013/02/13(水) 16:10:27.45 ID:qRUp2lYzo<> 「え」

「そして、聞こえない状態でキスをすると今度は聞こえるようになる」

「ちょっと、先輩」

 なんていう命令をするのか。その、“そういうつもり”は全くないのかどうかは知らないが、変な命令はやめて欲しい。

「ふふ、これも実験だよ。さあ、耳を出して」

 本当に、どういうつもりなんだか。先輩の胸中は、少年にはまるでわからない。
 さて、一応この実験の結果だが、耳が聞こえなくなると命令された後でも、先輩が命令したものは通った、とだけお伝えしておこう。
 つまり、少年が耳にキスをされたのは一回だった。それにほっとしたようであり、少し残念に思った気持ちも少なからずあり……

◆◇◆◇◆

 さらに数日が経った。実験開始からは、十日目が過ぎた。

「……飽きてきたな」

 先輩の言葉は、あんまりといえばあんまりだった。もっとも、少年も数日前から退屈はしていた。
 実験は命令を淡々とこなしていくだけなので、地味としか言えないし、その実験もだいたいやり尽くした感もあったからだ。

「予定だとどのくらい実験するつもりなんですか?」

 この時、少年はせいぜい一ヶ月くらいと予想していた。しかし、

「……半年」

 先輩から聞かされた言葉は予想を遥かに越えていた。

「はぁ!?長すぎですよ。まだ十日ですよ」

 なら、それだけで退屈したとか、言える立場ではないだろうにと、少年は思った。

「ていうか、もういいんじゃないんですか?この術は文句なく強力ですよ。それでいいじゃないですか」

 実際、実験をする意味さえないのではないかというほど強力だ。

「だって、永続効果がどのくらいで自然消滅するかも実験しないと……」

「それで半年ですか……」

 まあ、軍が運用したいという服従術ならば、それは重要ではある。ある日、いつの間にか切れていましたでは話にならない。

「半年もこの寮で缶詰ですか、僕は」

 先が長すぎて、ため息しか出ない。こんなことなら、最初に期間聞いておけば良かった。寮の出掛けに、友達と約束したことがあったのに。 <>
◆2nkMiLkTeA<>saga<>2013/02/13(水) 16:23:55.13 ID:qRUp2lYzo<> 「……」

 と。考え事に集中していて気づかなかったが、先輩がかつてないような難しい表情でこちらを見つめていた。
 そして、普段はしないような、おずおずとした態度で言ってきた。

「……なあ」

 ――この時、もっとよく先輩の様子を確認しておけばと、少年は後々後悔することになる。

「なんです?」

「君が本気で嫌がりそうな命令、してもいいかい?」

 ――してもいいか?などと、普段の先輩なら、実験をするのにそんな風に断ったりしないという不自然さに。

「……どういう命令ですか」
「そうだね」

 ――この時なら、まだ。

「……君の目は、私と手を繋がないと見えなくなる」

「え」

 視界がまた、一瞬で暗転する。

「あ、ちょ」

 思わず一歩踏み出して、どこかにつまずいた。

「ぎゃ」

 目が見えないため、あっさり転倒した。見えないのに、頭がきょろきょろと、さ迷うように動いてしまう。

「せ、先輩?あの見えないです。本当に」

 どうしたのだろうか。先輩の沈黙が長い。それがますます不安を煽った。

「ちょっと、助けてくださいよ、先輩?」

「それは、私と手を繋ぎたいということかな?」

 やっと先輩が応えたと思ったら、それはやたらと近くで、そして、普段とは違う雰囲気をまとっていた。

「え、だってあなたがそういう命令をしたんでしょうが」

「……そうだな」 <>
◆2nkMiLkTeA<>saga<>2013/02/13(水) 16:58:25.92 ID:qRUp2lYzo<>  理不尽に視覚を閉ざされ少しイライラしているところに、そんなふざけるようなことを言われて、少年はぶっきらぼうに言葉を返した。
 先輩は、普段以上に落ち着いた――ともすれば、暗い声とも取れるような声を発した。彼女の表情の変化は、目が見えない少年にはわからない。

「よいしょっと」

「あ、見える」

 手を引っ張りあげられる。同時に、視力が回復した。再び目が見えなくならないようにだろう。先輩は少年と手を繋いだままだ。

「……」

 気恥ずかしい。それに、気まずい。なんとなく、二人とも沈黙した。その空気に、先に耐えられなかったのは、少年だった。

「これが僕が本気で嫌がりそうな命令ですか?」

「……ああ」

 先輩はそっぽを向いた。またも、普段とは違う態度だ。

「なぜなら、この命令は、外出禁止のように、そのままにしようと思うからだ」

「この状態を?」

「いけない、かな?」

 少し考える。確かに不便だ。それに、先輩の様子のおかしい。どうしよう。
 ――そう、この時だ。これが岐路だった。
 しかし結局、少年はよく考えずに答えてしまった。

「まあ、寮から出れないですし、この中だけならいいですけど……」

「では、半年よろしく頼むよ」

 先輩が、いつものように、にやっと笑った。
 ――少年は、彼女のこの笑みの意味に、気づくべきだった。

―――
――


「……」

 少年と先輩は、手を繋いだまま談話室にいた。先輩は片手で本を読み、少年はぼーっとしていた。
 二人の話題は出尽くしていた。もう十日も一緒にいるし、少年はこの寮から出られないので、仕方がない。
 さらに、先輩から離れられないとなっては、彼女と同じように本を読むくらいしかないが、いまいちそういう気にはなれなかった。
 今日の実験はもう終わった。というより、これからは日常生活の中で実験していくらしい。こうなると、家事をしたいのだが、先輩から離れると、目が見えなくなるのが問題だった。

(この命令はやめておけば良かったかな……) <>
◆2nkMiLkTeA<>saga<>2013/02/13(水) 17:01:58.87 ID:qRUp2lYzo<>  はぁ、とため息を吐いたところで少年は自らの異変に気がついた。

(や、やば)

 焦る。まずい。これは、大いにまずい。

「……」

 先輩は、と思わずそちらに視線をやると、読書に没頭している。
 気づかれていないと安堵する反面、焦燥感は増していく。

(と、トイレに……)

 そう、尿意だった。これが普通なら、そっと一人で便所に行くのだが……

(でも、手を離すと目が……うう、どうすれば)

 これは本当にやばい。そうか、一人じゃ目が見えなくなるというのは、こういう問題があったか、と、今さら自分の迂闊さを後悔し、体は自然と尿意を我慢するために震えていた。

「……さっきからどうしたんだい?」

 気づかれた。いくら本に集中してたとはいえ、手を繋いだままで、身もだえしてれば仕方のないことか。

「い、いや、その」

 さあ、どう言うか。いっそ、正直にいって、トイレまで連れていって貰ってから、外で待っていて貰うのが一番――と、彼女の視線に気づいた。

「……」

 無言で、笑っている?これは。

「……分かってるでしょ、あんた」

「トイレだろう?」

 しれっと彼女は言った。あまりにも自然だったので、素直に少年も認めた。

「……はい」

「どれ、じゃあついて」

 お願いします、とは言えなかった。先ほどの、彼女の笑みが脳裏に張り付いて、引くに引けなくなってしまった。
 どういうつもりか知らないが、彼女は、この状況を楽しんでいるようだ。冗談ではない。

「大丈夫です、一人で行けます」

「この手を離すと目が見えなくなるぞ」

「仕方ないでしょうが!」

 分かっているさ、そのくらい。それでも嫌だった。

「辺りに飛び散らされると困るのだが」

 はっとする。もしかしてこの人……

「中まで一緒に来る気ですか」

「嫌か」

 またしれっと言った。もはや、この人に着いてきてもらうのは論外だ。

「ええ。だいたい。もうトイレの場所は把握してますし、ちょっと目が見えないくらい」

 言葉にすると、なんとかなるような気がした。談話室から、一番近いトイレの方を見る。いけそうだ。しかし、先輩はその希望を完膚なきまでに叩き壊した。 <>
◆2nkMiLkTeA<>saga<>2013/02/13(水) 17:04:40.09 ID:qRUp2lYzo<> 「そうか……よし、ならば命令しよう」

「え」

「まず、私の許可無く排泄をするのを禁ず」

「ちょ」

「それだけじゃないぞ」

「え?」

「さらに、小用をする際は君の性器を、大便の場合は君の肛門を、許可として私が舐めたら排泄をしても良しとする」

 意味がわからなかった。命令の内容も、命令をした真意も。これも実験?なんて的はずれな考えも浮かんだが、どう考えてもおかしかった。常軌を逸している。

「へ、変態だったんですかあんた」

 先輩の実験台になるようになって、どのくらいになるか。彼女と少年の年の差は五歳。最初に会ったのは、たしか三年前だったと思う。
 しかしこの三年間、彼女がこんな異常な人物だったとは、思いもしなかった。

「さて、どうするかな?」

 こちらが呆然としているのに、先輩は何故か自信満々といった風に、挑発するかの如くこちらを見返していた。

「……ひ、一人で行きます。決まってるでしょ」

 彼女の調子に乗ってはいけない。なんとしても。しかし……

◆◇◆◇◆

 ふらふらとはしたが――

「な、なんとかトイレにはついたな……」

 個室の中に入り、十日間使ったトイレの内装をなんとか思い出そうとする。

「えっと」

 壁伝いに進み、便座の位置を確認し、腰かける。そして、なんとか平常心を浮かべようと努力するが……

(で、でない……)

 どうしても出ない。力を抜いても、逆に力を入れても出ない。

(本当に?本当にあれされないと出ないの?)

『許可として私が舐めたら排泄をしても良しとする』

「くっ」

 ぶるぶると、顔を振って思い出した先輩の言葉を頭から吹き飛ばそうとした。
 ふざけてる。そんなこと。あってはならない。しかし。

「……で、でない」

 と。コンコン、とトイレの扉が叩かれた。この寮には、自分を含めて二人しかいないのだから、当然――

「……はい」

「諦めはついたかな?」 <>
◆2nkMiLkTeA<>saga<>2013/02/13(水) 17:06:46.82 ID:qRUp2lYzo<>  先輩がドア越しに語りかけてきた。即答する。

「嫌です」

「そのまま膀胱炎になってもしらんぞ」

「そのほうがマシです」

 本気でそう思う。

―――
――


 三十分後。

「いっつ……」

 手で痛みの出所を押さえる。

(腹が痛い……)

 先輩の言った通りになりそうだった。

(我慢は限界のはずなのに……くそ)

 普段なら、もう我慢しても意味がない限界を越えているはずなのに。

(出ないのか?本当に?舐めてもらうしか?)

 この十日間、少年にかけられた服従術の絶対性については、嫌というほど教えられた。命令されたのなら、少年にできることは、必ずそうなるのだ。そう、排泄すらも。

(なんなんだよ、これぇ……)

 脂汗とともに、若干涙が滲んできた。真っ暗な視界が、いっそう不安を煽る。心が弱くなる。

(いっそ、今回だけでも頼もうか……?)

 果たして、今回だけになるかどうかは怪しかったが、それしか手がないような気がする。でも、

(いや、ダメだダメだ。こんなこと……)

 理性は絶対にダメだと主張している。ありえない、と。まあ、ありえないだろう。
 こんな理由で、そんなことを女性にしてもらうなど。でも、

(でも、これも実験なんだから……)

 言い訳を模索している自分がいる。どうしようもないと、諦めている自分がいる。

 (先輩なら誰かに話すなんて……)

 でも、 <>
◆2nkMiLkTeA<>saga<>2013/02/13(水) 17:08:43.15 ID:qRUp2lYzo<> ◆◇◆◇◆

『また先輩の手伝い?』

『そうなんだ。今度はどんなひどい目に合うかと思うと、気が重いよ……』

『それにしては、いつも断らないよね』

『そうかな』

『うん。まあ、先輩美人だもんね』

『ちょっと待って。それはまったく関係ないよ』
『だいたい、いくら美人でも、あの人はその、なんていうか、変人すぎて僕には……』
『そもそも僕が彼女の手伝いをするのは、僕自身の勉強になるからさ』
『たしかに、ひどい目にも合うけど、間近で先輩の魔術を見れるんだ』
『学園一、いや、学園始まって以来の天才と呼ばれる、先輩のね』
『それだけでも、少々ひどい目に合うだけの価値はある』

『ふうん、さすが我らが学年の年
間首席様。研究熱心ね』

『もうやめてよ。そろそろ行かないと、僕は先輩になにされるかわからないし』

『まあ、いいわ。終わったら私の提出用の研究も手伝ってよね』

『ああ、もちろん』

◆◇◆◇◆

「……」

 つい、十日前のことだった。十日前は、こんなことになるなんて思っていなかった。いや、半日前の時点でも思っていなかったのに。

(くそ、どうしたら出るんだ……?)

「君」

 その声は、急に聞こえた。足音も何もせず、声だけが急に。
 先輩は、ずっとトイレの前にいたのかもしれない――そう思い至って、ぞっとする。得体の知れない恐怖を感じる。

「……なんですか」

「君に次の命令を与える」

 彼女は、淡々と告げてきた。それも怖かった。どういうつもりなんだろう。
 先輩が何を考えているのか、全くわからない。こんな素振り、今まで見せたこともなかったのに。

「君は、私の問いかけには、一切の嘘偽りなく、必ず答えを言わなければならない。」 <>
◆2nkMiLkTeA<>saga<>2013/02/13(水) 17:10:36.36 ID:qRUp2lYzo<> 「……」

 とにかく、その命令の意味を考える。今、彼女が、その命令をしてきた意味を。考えて。

(や、やばい……)

 ああ、きっと、彼女はこう問いかけるのだろう。予想は当たった。

「では、問おう。君は今、何がしたい」

「う……あ……お、おしっこを……したい……です」

 答えない、という答は当然できなかった。命令は絶対である。

(くそっくそっ)

「そうか。では、それはこのままでもできるのかな」

「できま……せん……」

「どうしたらできるんだったかな」

 平時のように、先輩の言葉には淀みがなかった。次々と問答が進み、そして追い詰められていく。

「……せ、先輩に」

 やめてくれ。心の中で叫ぶ。目頭が熱くなってきた。

「先輩に……ち、ちん、ちんを……舐めて……もらわないと……できません」

「そうか。では、最後の質問だ」

(き、聞いちゃダメだ。そうだ、耳を塞げば――)

 そういえば、まだ、実際に物理的な障害で耳が聞こえない場合の実験はしていなかった。もしかしたら、と思った矢先。

「そのまえに、命令の追加だ」

 耳を塞ぐ間もなかった。

「私が、君に向かって言葉を発している時に、君は耳を背けてはならない」

「うわ」

 ああ。ああ。

(この人は……)

「君は」

 わざとだろう。

「小用をしたいかい?」

 ゆっくりと。区切りながら、言ってくる。

「私に、君の性器を舐めさせてでも」

 最後の質問を。

「し……た……い……です」 <>
◆2nkMiLkTeA<>saga<>2013/02/13(水) 17:13:09.27 ID:qRUp2lYzo<>  言ってしまった。

(くうううう……)

 答えてしまった。

「そうか。いいだろう。私も構わない」

 構わない、じゃない。自分が構う。でも、逆らえない。

「ならば、ここの扉を開けてくれ」

 ぷるぷると、震えながら、ドアノブを掴もうとする手を、なんとか押し止めた。

(まだ……まだ間に合う)

 言い聞かす。ほとんど、心が折れそうな自分に。

(今のは、質問に答えさせられただけだ……)

 もう一度、奮い立つように。

(ここを開けなければ……)

 でも、

『いつまで?』

 体が震えた。

『いつまで開けない?いつまで出ない?』

 疑問が心の奥底からどんどん湧いてくる。

『小便が出るまで?それはいつだ?』

 悪魔のような、ほの暗い声で。

『魔術が解けるまで?それはいつだ?』

 悪魔の問いかけに、答えてはならない。前に、町に遊びに出掛けた時のことを思い出す。行き交う人に向かって、こう叫んでいた人がいた。
 神の子の教えだと言っていた。聞いた当時は気にもとめなかった。魔術師は神を信じていない。しかし、今なら分かる。悪魔の問いかけに耳を貸してはならない。
 それは、人がもっとも気づきたくない核心をつくのだ。

(は、半年……後?)

 最初から、心のどこかで、分かっていたことだった。命令が絶対遵守なら、魔術が尽きるまで待つしかない。しかし、それが、いつになるかなんて全くわからない。明日かもしれないし、半年後かもしれない。もしかしたら、もっと―― <>
◆2nkMiLkTeA<>saga<>2013/02/13(水) 17:16:34.62 ID:qRUp2lYzo<>
(……無理だ。絶対……そんなの……)

 もう、涙は、流れるほど出てきていた。それでもまだ、諦めきれずに、少年は言った。

「せ、ぜんぱい……ううっ」

「どうした?早く開けてくれ」

「ず、ずいまぜん……や、やめたい、です」

 最後の手段である。

「お、お願いします……実験、の中止……を……魔術を、魔術を解いてください……」

 心からの懇願。手はこれで最後。これがダメなら、

「嫌だ」

「うううう」

「答えたまえ」

「君には二択しかない」

「そこに閉じ籠り続けるか、この扉を開けるか」

「小用をしたいのか、したくないのか」

「さあ」

「うううう」

『無理。無理。無理。無理、無理、無理、無理、無理無理無理無理無理無理ムリムリムリムリムリむりむりむりむ』


 少年は、


 扉を開けた。

◆◇◆◇◆

「何か、言うことはないのかな?」

「あ……あ……お、おねがい……します。お、おしっこが……し、したい……です」

「それで?」

「したい……ので、ち、ちんちんを……なめ……て、くだ……さい」

「よかろう」

「おや、まだ脱いでなかったのか」

 一応、扉を開ける前に、ズボンは履き直した。しかし、

「脱がせてやろうか?」

「だ、大丈夫です、自分で脱ぎます」

 脱がなければ当然これからすることはできない。

(うう、おなかいたい……)

 ここまで小便を我慢したことはなかった。本当に膀胱炎になるかもしれない。早く出したい。

「……」

 そんな少年を、じっと見つめる先輩の視線が、目の見えない先輩を突き刺した。 <>
◆2nkMiLkTeA<>saga<>2013/02/13(水) 17:20:37.97 ID:qRUp2lYzo<> (うう、み、見られてる……?)

 手が止まる。恥ずかしい。

「どうした。手が止まっているぞ?あと一枚あるだろ」

「は、はい」

 もはや心は完全に屈服していた。急かされるまま。文句の一つも今は言えそうにない。

(ええい、もう)

 覚悟を決めて、下着も下ろして、便座に座った。

「……お、おねがい、します」

「ふーん」

 再び、視線が肌を這い回るのを感じる。

(なんなんだこれ、ほんと……)

 こんな体験、初めてだ。男として生まれ、性器を注視されたことなど、数えるほどしかない。しかも、相手が女性というのは、正真正銘初めてだった。
 ただただ、今の状況のおかしさが際立っていた。

「よし、なめるか」

 少し、ほっとする。舐めてもらえば、後は出して終わりだ。
 これから半年も、こんなことが何度も繰り返されるのかもしれないが、兎に角今という時は終わるのだ。

「あ、その前に」

「な、なんですか?」

 思い出すよう先輩が発した言葉が、少年を再び緊張させた。嫌な予感がする。

「私が先程、排泄に関して君に命じた内容を覚えているかな?」

「え、えーっと……その」

「私は、君が小用をしたい場合、許可として私が君の性器を舐めたら排泄をしても良しとする、と言ったわけだが」

「……はい」

 何度聞いても狂っている内容だ。先輩はよく何度もそんなことを口に出せると思う。

「しても良し、つまり、しなくてもいい。すぐにしなくてもいいということだ」

「はあ」

 腹の鈍痛が、頭の回転を鈍らせていた。つまるところ、彼女が何を言いたいのか、よく分からない。生返事をする。

「……もし、私が君の性器を舐め、顔をどけるまでに小便を出して場合」

 声の調子から、先輩のあの、にやっとした笑みが脳裏を過った。きっと今、あの顔をしている。

「君に罰を与えるよ」

「そ、そんな!む、無理ですよ!」

「ほう。じゃあ君は私の
顔に君の小水をかけたいと?」

「そ、う、いうわけじゃあ……」

「じゃあ我慢しろよ。よし、舐めるぞ」

「ちょ、そんないきな――」

 次の瞬間、体が固まった。

「あ」

 舐められている。生暖かい舌が、少年の陰茎をくすぐった。 <>
◆2nkMiLkTeA<>saga<>2013/02/13(水) 17:23:49.79 ID:qRUp2lYzo<> 「あ、あっ」

 その奥底から、むくむくと、湧いてこようとするものがあった。

「んん、ふふっ、皮を剥くぞ」

「うぁ……」

 少年は仮性包茎であった。皮を剥かれ、敏感な粘膜部分を舐められたことで、ペニスは完全に屹立した。そして、

「ふぁ、あ……」

 尿意も限界だった。

(ああ……で――)

 我慢して。我慢して我慢して我慢して、やっときた瞬間。もうすぐ出せる。だが、

「……」

 ペニスを舐める感覚はまだ続いていた。

「せ、せんぱっ!で、で、でま、から!」

 先輩がどかなければ。それまで我慢しなければ。出してしまったら。出したい。先輩にかかる。罰。

「そうか?じゃあ――」

 少年の脳裏には、色々なものが駆け巡っていたが、先輩の声はのんきだった。
 ペニスを舐める感触はなくなったものの、すぐ退くといった感じではない。そうこうしてるうちに。

(は、はや、あ――)

 ついに出た。

(ああああ)

 あんなに我慢していたのに、最初はちょろっとだけ。しかし、次第に勢いは強くなり……

(はぁあああ)

 少年は勃起させながら小便をしてしまった。ペニスを手で抑える暇なんて出なかった。ならば、当然――

「あ……あ……で、でちゃ……」 <>
◆2nkMiLkTeA<>saga<>2013/02/13(水) 17:24:17.25 ID:qRUp2lYzo<> 「出したな」

 先輩の声を聞いて、少年は大きく震えた。恐らく、結果は最悪だろう。

「よくも見事にかけたな。びしょ濡れだ」

 怒気は感じない。それがまた怖かった。人に小便をかけられて、この人は怒っていない。むしろ、そうなるように仕向けたような……

「ち、ちがっ、だって、せ、先輩がっ」

「私は言ったはずだ。罰を与えると」

「で、でも!」

「いいわけ無用」

「そんな理不尽な!」

 すっきりして、情けない姿を見られた記憶はあるが、言い返せるほどには心は回復していた。むしろ、こんなことになったのは、先輩のせいだと、はっきりそう言えると思った矢先、

「そんなことより、君への罰だが」

「ひっ」

 その一言で、意気地はすぐ折れた。

「や、やめ」

「そうだな。君の行動を制限しよう」

 またも、声の調子から、彼女はまた笑っているのだろうと感じた。それは最早、彼に恐怖を感じさせていた。

「君は、私に手を引いてもらわねば、二足歩行ができなくなる」

 背筋が凍った。なんだって?

「さらに、立つことも掴まり立ちをしなければできない」

 さらに、今は寒い季節でもないというのに、体が震えだした。

(先輩と手を繋がなければ、目も見えず、歩くことも立つこともできない……?)

 カチカチと、恐怖によって震えたため、歯の根が合わずに音が鳴る。

(排泄は、先輩に舐めてもらって……そんな状況が、半年も……?)

「ふふ、どうかな」

(僕は、どうなっちゃうんだ……?)

 震えるほどそれが恐ろしいのに、先ほどの小用で感じた我慢することの昂りと、解放の快感を自分がまた期待していることに、少年はまだ気づいていなかった。


つづく <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/13(水) 20:12:31.02 ID:UOLErGHbo<> わざわざ最初からやり直した意味が分からんが乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/14(木) 01:29:56.74 ID:xems0ySIO<> 乙! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/15(金) 23:41:51.83 ID:t7nD94ZIo<> エロパロ板でみたなこれ <>
◆2nkMiLkTeA<>saga<>2013/02/16(土) 23:51:07.28 ID:/ba7e4tIo<>  すべて夢であったなら。月並みだが、少年はそう思った。けれど、視覚以外の感覚がそれを否定している。

「それにしても、すごい臭いだ」

 先輩が言うように、嗅覚はその最たるものだった。
 立ち込める小便の臭いは、その元を出した張本人でさえ、顔をしかめるものだというのに、先輩の言い方はさほど気にしていないようであった。

「すいません……」

「君が盛大に顔にかけてくれたから、口にも入ったし」

 そんな酷い状態なのに、声の調子は変わらないらしい。そうなった元凶も彼女自身なわけだし、少年は思わず呟いた。

「……それ先輩が」

「ん?なにかな?」

「い、いえ、それは……」

 あなたのせいだ。言えるわけがない、そんなこと。
 明らかに言動がおかしいこの人に、今そんなことを言えば、どんな事態になるか。また狂った命令をされかねない。誤魔化そうとして――

「――それは、先輩のせいじゃ、ないですか」

「ほう」

 彼の口は、その意思に従わなかった。

(な、なんで)

「そういえば、さっき嘘をつけなくしたんだったな」

 確かに、そんな命令もされていた。これはもう、どうしようもない。

「う……あ……」

「さて、私のせいだと、君はいいたいわけだな?」 <>
◆2nkMiLkTeA<>saga<>2013/02/16(土) 23:55:02.72 ID:/ba7e4tIo<> >>69
そうですね。
元々は会話文だけでVIPで途中まで書いたのを、
地の文をつけてエロパロにあげました。上のがそれです。
ただ、あちらは規制されてるので、たまにしか書き込めないので
こっちで少しずつ完成して行こうと思います。
それで後々まとめてエロパロにもあげるつもりです。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/17(日) 04:04:01.19 ID:bgKV6mC6o<> >>71
なるほど
続編待ってたから期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/27(水) 18:05:30.07 ID:P21ggqoAo<> おお、こんなスレあったんだ。期待する <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/27(水) 23:58:46.92 ID:SMMvclgJo<> 待ってる <>
◆2nkMiLkTeA<>sage<>2013/03/12(火) 22:24:23.66 ID:JSltKH1Eo<> お待たせして申し訳ない……
もうちょっと仕事が落ち着いたら続き書きます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/15(金) 19:21:39.54 ID:WfgsbjB6o<> 待ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/05/05(日) 20:13:32.11 ID:CvqwJpoNo<> このレスを見たら
7日後以内に死にます
無残な姿で死にます
回避する方法は1つ
このレスをコピペしてほかのスレに7つ貼る事です。
100%これをやってください
本当に死にます
このレスを見たら
7日後以内に死にます
無残な姿で死にます
回避する方法は1つ
このレスをコピペしてほかのスレに7つ貼る事です。
100%これをやってください
本当に死にます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/05/11(土) 15:45:50.23 ID:UKDyKLcXO<> このスレ無関係でいられないから運営からのコピペするな

2013年6月8日から1ヶ月間誰の書き込みもないスレッドは自動的にHTML化されます。
詳しくは以下のURL先をご確認ください。
【運営から】 6/8から1ヶ月間書き込みのないスレッドは自動的にHTML化されます
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1368247350/

そもそもくるか怪しいがな <>