VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/06/28(木) 23:39:56.93 ID:u9vNKFcf0<>※EVOLの話です
※アニメ本編終了後の話なのでネタバレあるかもです
※キャラ同士の呼び方がうろ覚えなので微妙です



殴られた頬が痛んだ。
何十倍にして返したのか覚えてないけど、もう両手が痛くて傘が持てないほど腫れてる。
小雨の中を走って駆け抜けた。さっさと家に、仕事場に戻ろう。

「クスリはやらないって決めてんのに、どうして逆ギレするかな」

思わずぼやいた。
それがまずかった。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1340894396(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
<>アマタ「……久しぶりだね」 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)<>sage<>2012/06/28(木) 23:44:24.38 ID:NoserDYWo<> これは期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/06/28(木) 23:49:39.98 ID:u9vNKFcf0<> 人ごみを掻き分けて走っている途中、腕を掴まれた。
突然のことにつんのめる。

「アマタ! アマタよね、その声!」

誰だよ、いきなり。
俺は腕を振り払ってから、そいつを見る。
緑の髪が、俺の知っているのより少し長い髪が、雨に濡れていた。
やめろ。思わず天を仰ぎそうになる。何で、何でここにいるんだ。今更どの面を下げてきたんだ。

腹の底で瞬時に沸騰した言葉に蓋をして、ここ数年で得意になった『笑顔』を浮かべる。
どうしてまた会ってしまったんだ、ゼシカ。

「……久しぶりだね」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/06/29(金) 00:01:30.26 ID:bc4AD3lO0<> 俺の仕事は映画館の管理だ。
先代の館長は俺が聖天使学園から帰った時には死んでいた。アクエリオンの戦闘に巻き込まれたのか、どうか、知らないけど。
その後、館長の遺族からの打診を受け、俺がこの映画館の館長になった。
アクエリアに舞う空もたまに上映しているが、大体は最近の話題作。方向性を変えた。ストレートに言ってしまうと、普通の映画館にした。

「その辺に座ってて。タオル取ってくるから」

濡れたままのゼシカを部屋まで案内した。
俺は映画館の二階にある管理人室に住んでいる。一人暮らしには広すぎるぐらいの空間に、ポスターとかプラモデルとか、安物の皿とか煙草の灰皿とかがぶちまけられていた。
いくら顔見知りが相手とはいえ、少々気恥ずかしいものがある。タオルを取ってきたら片付けよう。

階段を下りていると、そろそろ行う予定の映画会社との打ち合わせがふと脳裏に浮かんだ。
今の売れ筋は子供向けの特撮モノ。戦争が終わって、人々がハードなアクションよりハッピーエンドの約束されたヒーロー活劇を嗜好するようになった、とどこかの学者が偉そうに語っていたのを思い出した。今回もやはりそういった映画が多いのだろう。
洗面所に下りて、タオルを二枚手に取る。

「はい」
「……うん」

覇気のない返事。俺は彼女に気を遣うこともなく、胸ポケットから煙草のケースを取り出した。良かった、湿気ていない。

「吸ってるの」

驚いたように彼女が顔を上げる。そんなに意外だったのか。
僕は頷いてから部屋の隅に転がっているライターを拾い上げた。
火をつける。紫煙が肺を満たし、部屋の空気を汚した。ゼシカが少し嫌そうな表情をした。

「体に悪そう」
「悪くなきゃ煙草じゃない」
「体を悪くするために吸ってるの?」
「割り切ってるだけだよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/06/29(金) 00:09:39.45 ID:bc4AD3lO0<> 俺は煙草を右手に持って、ゆっくりと煙を吐き出す。
ひどく緩慢な動作。

「ゼシカ、何してたの?」
「……逃げてた」
「何から」
「男」

道理で。
なるほど、と、腑に落ちた。
この扇情的な、谷間を強調して深くスカートにスリットを入れた格好は、俺を誘ってるわけじゃなかったのか。

「変なこと考えてるでしょ」
「怖いなあ、乙女の勘ってやつ?」
「もう乙女なんて年頃じゃないわよ」
「処女でもないしね」

嫌みったらしく言ったら。ビンタされた。
本気で痛い。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/06/29(金) 00:10:44.85 ID:HSP3Tb6SO<> …木ィ原くン? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/06/29(金) 00:34:59.51 ID:bc4AD3lO0<> 俺もゼシカも、互いに『初めて』の相手だ。
聖天使学園の卒業を間近にした時、俺は、ゼシカにレイプされた。
どんなルートで手に入れたのか分からない媚薬に、甘ったるい睡眠薬の味、体に食い込む拘束具の感触。どれもまだ覚えている。
あれ以来、セックスとは乱暴なものだと、そういうイメージが染み付いている。

「で、男に何されたの?」

擦り切れるような痛みを訴える頬を無視し、俺は一応彼女に尋ねた。
ゼシカは表情を暗くして、ぼそぼそと喋りだす。

「キャッチセールスだって分かってたけど、つい乗せられちゃって、したくないのに、ホテルに連れ込まれそうになって……」
「バッサリ断りそうなもんだけどね」
「似てたの」

そこで彼女はじっと俺を見た。

「誰が、誰に?」
「その人が、アマタに」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/06/29(金) 00:44:41.19 ID:bc4AD3lO0<> くだらない。俺は半分ほどに減った煙草を灰皿に押し付けた。
来月の上映スケジュールの組み立てとか、やることはいくらでもあるのに。こいつに構ってる暇はない。

「あ、あのさ」
「何?」

焦ったような上擦った声。俺は振り向かず、背中だけで続きを急かした。
彼女は言葉を続ける。

「泊めてほしいの」
「家に帰って」
「今、家、ないから」

意味わかんねぇ。
思わず振り向いた。いつの間にか、大きな瞳から涙がポロポロと零れ落ちている。

「私、卒業したら、軍隊に入るつもりで。アクエリオンのパイロットとして、働くつもりだったの」

ああ、アンディやMIX、ユノハやカイエン。ほとんどが現役のパイロットさ。

「でも、私、合格できなかった。軍人になれなかった」

痛切な瞳
震える肩

クソッ、放っといても、仕事に手がつかないな、これ。

「何で」
「私が、アルテア側についてたから」

……神話型の時の、ことか。
軍としては、私怨のために自分たちの世界を滅ぼそうとしていたヤツに体を貸していた女など、入れたくないだろう。
彼女のパイロットとしての腕は間違いなく一流だ。じゃなきゃ、あれだけの戦いを生き延びることはできなかった。

「今までは、友達の家に居候させてもらって、アルバイトとかも住み込みのをしたりして、それで……」

ドラマみたいな話だった。
でも別に同情はしない。町の少し暗い所に関わっていれば、ゼシカより不運なヤツらはいっぱいいる。
彼女は五体満足で生きてる。それだけでも滅多物だ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/06/29(金) 00:50:23.05 ID:bc4AD3lO0<> 人が住める部屋、ここしかない。

「寝る時はそこのタオルケット使って、床で寝て」
「!」
「8時ぐらいに戻ってくるから、冷蔵庫の中身で適当にご飯作っといてよ、二人分」
「……分かった!」

どくん、心臓が跳ねた。まるで今の返事が、表情が、学生だったころの彼女みたいで。
俺に今のゼシカは分からない。どうして今、居着くことを許してしまったのかも分からない……でも。

今までの生活より、断然騒がしくなりそうなのだけは、分かった。



【続く】 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2012/06/29(金) 00:51:40.41 ID:1+Pey8Plo<> まさかの鬱々としたお話とはな……乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/06/29(金) 00:58:18.92 ID:KENyUanE0<> なぜアマタがこうなったのかを教えてほしい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空)<>sage<>2012/06/29(金) 00:59:40.63 ID:ZNJQTCtJ0<> 乙
スレタイ回収まで期待やわ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/06/29(金) 01:01:05.30 ID:f+u4T0HX0<> 乙
あの後皆どうなったんだろうな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2012/06/29(金) 01:53:19.73 ID:tCmvSp8AO<> ミコノサーン <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/06/30(土) 00:20:18.13 ID:M/FQ+nui0<> 頬杖をついて、受付嬢を見た。
俺の映画館で支給される安物の制服。顔立ちも大してパッとしない。
なんとか化粧で良く見せようとしてるみたいだけど、目元の窪みが少し印象を下げる。

「館長ー、2番室の証明消えかかってません?」
「担当のグラウ君を呼んで。お客様の誘導は止めなくていいから」

私服姿だし、俺が映画館の官庁だと気づく人なんていないだろう。
俺はこっそりと映画館の中に忍び込む。途中すれ違ったグラウ君が替えの蛍光灯を持って不思議そうに俺を見てきた。
今日上映のアクション映画、どうせ客は少ないだろうし、見たってバチは当たらないだろう。
前作は主演はともかく敵役が微妙だったから、今回はもっとヒールらしく振舞ってほしい。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/06/30(土) 21:40:49.70 ID:ifF2W/+E0<> 薄暗い館内に足を踏み入れようとしたところで、後ろから腕を引かれた。

「館長さん、3番室ってどこ?」
「……ゼシカ、分かっててやってるでしょ」

悪戯が成功した子供のように笑うゼシカは、今まさに俺が見ようとしていた映画のチケットを手に持っていた。
仕方無しに連れ添って進んでいく。

「これって前作は微妙だったわよね」
「それは同意」
「敵役は良かったんだけど、主演がイマイチだったもん」
「は?」

間逆の意見に、思わず眉を寄せる。
どうやらディベートする必要があるらしい。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/06/30(土) 21:51:40.33 ID:ifF2W/+E0<> 前作と今作、二つ合わせての傑作だったという結論に落ち着いた。
俺とゼシカは管理人室に座って、小さなテーブルに皿を並べている。
部屋の隅に詰まれたダンボール箱は彼女の荷物だ。引っ越し屋が来てると思ったら勝手に運び込んでた。図々しい。今すぐたたき出してやりたい。

「今日はパスタ作ってみたわ」
「昨日もパスタじゃなかったっけ」

黙るゼシカ。まさかパスタ以外作れないのか。

「……明日は俺が作るよ」
「料理、できるの!?」
「惣菜買ってきて冷凍食品をあっためたら完成」

がくっとゼシカが脱力する。
男の一人暮らしだし、こんなもんだろ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/06/30(土) 21:59:15.58 ID:ifF2W/+E0<> 俺が食べ終わった後も、ゼシカはのろのろと食べている。
テレビを見ながら煙草に火をつけた。
ナイトショーの時間までは暇だ。

「この女優ってさ、前ドラッグで逮捕されてなかったっけ」
「疑惑が出ただけで逮捕はされてなかったよ」

ゼシカがテレビを指差したので答えた。
話題を振っておきながら興味が失せたのか、そのまま適当に相槌を打ってフォークと皿でカチャカチャと音を立て始める。
俺は煙を吐き出し、テレビを消した。

「いつまでここにいんの?」
「……わかんない」

その声は少し震えていた。
頭を掻く。煙草から灰を灰皿に落として、そのまま寝転んだ。

「ウチの制服、露出少ないよ」
「は?」
「露出好きなんじゃないの?」
「ひ、人を露出狂みたいに言わないでよ!」

確かに、今の格好だって、学生のころに比べたら大分落ち着いている。

「じゃあ制服着なよ」
「へ?」
「自分の食い扶持は自分で何とかしてってこと」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/06/30(土) 22:46:21.80 ID:ifF2W/+E0<> お客様ー、こちらの映画の上映時刻まで15分となっておりますー、お早めにご移動なさいませー。
俺は一日で仕事をマスターしてしまったゼシカをぼうっと見ていた。
すでに制服姿が様になっている。色気も何もないはずの制服なのに、その生地越しに透けるボディラインやグロスを塗った唇が艶かしい。

「ああもう、何やってんだ」

俺は何だ、思春期の学生か。
気持ちを落ち着けるため、俺は一服することにした。

「館内は禁煙ですよ、館長?」

満面の笑みを浮かべるゼシカは、猫のようで、とりあえずムカついた。


【続く】 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>saga sage<>2012/06/30(土) 23:50:43.99 ID:63TDr+jl0<> やべ、面白い <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/01(日) 19:17:40.27 ID:6+PAHNkmo<> 期待せざるを得ない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)<>saga <>2012/07/04(水) 00:39:00.41 ID:RAmx4Llf0<> 期待だ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/07/04(水) 00:57:49.51 ID:kwHClHuT0<> 手早く野菜を刻む。
テンポ良く包丁が振るわれ、買ってきたばかりで水気を含む野菜たちはたちまち一口サイズに切りそろえられた。
大き目のなべはぐつぐつと煮込まれ、適量の塩がまたシンプルな味付けとして腹の虫を鳴かせる。

彼女、ゼシカ・ウォンが居ついて5日目。
このぐらいになればいい加減俺だって怒る。
ネクタイを解いて背広をハンガーにかける。
帰宅すれば毎日テーブルにて出迎えてくれるメンツにうんざりしながら、俺は口を開いた。

「まあ美味しいのは認める。でも、そろそろパスタ以外も作って」
「無理」
「出てけ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2012/07/04(水) 00:59:49.76 ID:DgXeA6S8o<> 無粋だということは百も承知だがレスさせてくれ

チンポ良く包丁が振るわれ、に見えた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/07/04(水) 01:32:21.27 ID:3etriJah0<> 食べ終わった後、テレビ番組をぼうっと見ながら煙草を吸う。
普段ならそうしていて何もないし、時間になれば番組が終わって、それから俺はシャワーを浴びて寝るか町に行って酒を飲むなり女を引っ掛けるなりしてる。
ただ今は違う。

「今日のはどーだった?」

薄い桃色のシャツを着たゼシカの質問。
ふと思えば、以前と比べて露出度が格段に下がった。

「いつも通りだった」
「えー」

頼むからパスタ以外も作ってくれ。

「明日、少し付き合ってよ」
「は?」
「私は明日シフトないから。アマタもあってないようなもんでしょ?」

勝手に予定を組まれた。
強引なとこは全然変わっていないらしい。
こうなってしまうと俺には止められない。そのことを熟知している以上、もう構うのは無駄だった。
煙草を灰皿に押し付ける。今日は眠い。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/07/04(水) 02:13:21.73 ID:3etriJah0<> 女と出かけるのはそう久々ではない。
時期によって頻度はまちまちだが、町に出れば昔何らかの付き合いがあった女なんてそこら中にいる。
隣を歩くゼシカは、昨日とは別のシャツの上からクリーム色のカーディガンを羽織っていた。スカートは膝より少し上ぐらい。

「ねえ、お金どれくらいあるの?」
「たからないでくれ……そんなにないから、高級店とかは期待しないでくれよ」
「じゃああそこにしましょう」

そう言ってゼシカが指差したのは、古ぼけた定食屋だった。
ナメられてないか、俺。

「さすがにそれは」
「お邪魔しまーす」

二の句を告げる前にさっさと入っていってしまった。
慌てて後を追う。

「アマター、なんか店員さんがいない」
「よし出よう」

中に入った瞬間に嫌な予感がした。ここから一刻も早く出なければならないと。

「お、何だ客か」
「えっ」
「あ?」

俺がそそくさと扉に手をかけた瞬間、奥から声が聞こえた。ついでゼシカの呆然とした声。
恐る恐る振り向く。

「お前……何で、ドン底女と」
「…………」

フリフリのエプロンを身につけそこにいたのは、かつての俺の片割れだった。


【続く】 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2012/07/04(水) 02:43:15.72 ID:4sDn9oulo<> 何やってんだカグラwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/04(水) 03:05:19.45 ID:AK+CP2TL0<> フリフリエプロンのカグラなんて想像できねぇwwwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/07/04(水) 05:14:09.42 ID:GuzB7Qxm0<> カグラが店員やってるのが信じられんわ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/04(水) 10:30:52.41 ID:uHb/PjtRo<> むしろどうなってやがるんだwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage<>2012/07/04(水) 15:54:34.22 ID:XUw5lciIo<> まさかのカグラwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/04(水) 15:59:58.06 ID:uHb/PjtRo<> きっとあれだろ?仕事ないんだよ軍では規則を守れるわけではないし… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県)<>sage<>2012/07/05(木) 00:09:24.30 ID:4OefhVwI0<> A.女装でのフリフリエプロン
B.普通にフリフリエプロン
C.アンディの「穴を掘る能力」で穴を空けられた、要するにふたなりのフリフリエプロン

何?アンディの能力はそんなこと出来ない?こまけぇことは良いんだよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/06(金) 00:41:11.58 ID:prOJuLsB0<> Bだった <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/07/11(水) 21:57:40.37 ID:sqdsVnSro<> 来ない感じですか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/07/12(木) 22:39:38.15 ID:WdoKrceQ0<> 「オラ、水だ」

乱暴にお冷が置かれた。勢いあまって中の水がテーブルにぶちまけられる。
僕はいたって冷たい目でそれを見据え、カウンター越しにこちらを睨み付ける自分の片割れを見上げる。
明らかにかつての面影をそのまま残し、野性味あふれる青年は危険な雰囲気をかもし出すワイルドな男に成長していた。

手っ取り早く言うとチャラかった。

「そばっていくら?」
「700」
「高い、650」
「ゼシカ、勝手に値切らないで。みっともない」

隣で店員とけんか腰のツレをいさめる。
いったい僕は何をしにこの店内に入ったのか。ああ、手入れの届いた観葉植物といいワックスがけが隅までされた床といい手拭から調味料まで一通りがこじゃれたボトルに入っているカウンター席といいすべてが憎たらしい。


このワックスかけたのどこの業者だろう。ウチにもやってくれないかな。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/07/12(木) 23:16:59.32 ID:WdoKrceQ0<> 「お前らさ、何? 付き合ってんの?」
「同棲中」
「マジか」
「意義あり」

いきなり個人情報が捏造されかけていた。俺とゼシカが同棲だなんて……あった。事実だった。
俺迂闊。

「俺はそばで」
「あ、じゃああたしはカルボナーラ」
「ウチにはんなもんねえよ。二人ともそばでいいな」

問答無用ということらしい。
俺は隣でぶーたれているゼシカをちらりと見た。
アルテア界との決戦が終わってから、俺は確かに、彼女とこのチャラ店員の間に何かがあったと睨んでいたんだが……気のせいだったのだろうか。

「聖天使学園一の健啖家と呼ばれたあたしが、あんたのそばを見極めてあげるわ」
「健啖家って単なる大食いで、美食家とは違うよ」
「つーか食いもんを視覚的に見極めるとかお前人間業じゃねえよ」

総攻撃にゼシカは涙目だった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/07/12(木) 23:29:43.17 ID:WdoKrceQ0<> そば、というのは麺類の食物にあたる。
種をまいてから稲を刈り取るまでの時期が短く、栄養価の――米にも負けないほどの――高さには現在注目が集められている。
俺自身、以前からこのそばは好んで食べていた。
しかしこいつ……美味い。今まで食べてきたどんなそばよりもうまい。
まず麺。歯ごたえの絶妙さはもちろん、正確に刻まれたその太さ・長さは一口に吸えるというそばの大前提を忠実に守っている。
今回頼んだのはかけそば。つゆは追いがつおのようだ。

「へー、おいしいじゃない」

自称学園一の健啖家は、ちゅるちゅるとかなりのハイペースでそばをすすっていた。味わえているのだろうか。
俺はカグラに問うた。

「作ったの誰?」
「俺だ」

自慢げに語る。
その表情がウザかったので手元の唐辛子をなげかけてやった。
カグラは涙目でその場を転がりまわった。ざまあみろ。
自分でもずいぶん攻撃的に変貌した性格に驚く。今みたいに刺激物の粉末を辺りにばら撒くのは、町内で揉め事があった時逃げ出すのによく使う。

ああ、本当に、俺は変わったと思う。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/07/12(木) 23:47:42.99 ID:WdoKrceQ0<> 俺はもうアクエリオンのパイロットではない。
この飛翔のエレメントも必要ない。
きっと使われない異能は、人生のムダとして切り捨てられるべきものなのだろう。
一生逃げ切れないこの能力は、きっと、いつまでの俺のくるぶしにまとわりつく。
呪いかもしれないし祝福かもしれない。
一度克服したはずの試練に向き合う時に人がもう一度同じ壁を乗り越えられる保証はない。
この翼は無意味だ。

俺は一人では飛べない。

「何物思いに沈んでやがる」

ゼシカは服の整理、俺は煙草を買いに屋外に出ていた。
今日の昼に見たそば屋の店員。いや、定食屋だっただろうか。

「何か用」

買ったばかりの煙草に火をつける。
カグラは嫌そうな表情をした。

「苦手なんだ、そのにおい」
「意外だな」

俺は思わず口に出してしまった。
外見的にも性格的にも、どう考えたって俺よりカグラの方が煙草は似合っている。

「マイセンだかメンソールだか知らねぇが、全部ひっくるめてダメだ。性に合わねぇ」
「俺のこれはフィリップモリスだけど」

紫煙を吐き出す。空気に溶けていくそれは、どこか毒を印象させる香りを放っていた。
でももう、俺はこれを止められないし止める気もない。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/07/13(金) 00:48:16.72 ID:Ybj+lnido<> いいね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/07/13(金) 02:54:14.79 ID:R2R/R7Pv0<> 空に上がっていく紫煙を眺めつつ、

「お前……クソ女とはどうした?」

俺はまた、その場で刺されたように動きを止めることとなった。

【続く】 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/13(金) 08:35:21.29 ID:2UlaFEWIO<> いいね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)<>sage<>2012/07/13(金) 23:28:59.05 ID:go/93xyAO<> わたし男だけどカグラが可愛くてドキドキしてきた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県)<>sage saga<>2012/07/14(土) 00:34:09.03 ID:Yg6R9NeC0<> しかしフリフリエプロンである <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2012/07/18(水) 00:29:43.19 ID:w6QNTJSIo<> まだか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/23(月) 20:50:00.12 ID:gkg5bTVI0<> 帰ってきてよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/07/23(月) 22:15:38.48 ID:AOwqRaFu0<> 「どう考えたって質問するタイミングを外してるよ。本当なら卒業の時に聞くべきだった」
「うるせぇ。いいから答えやがれ」

異世界からの移住者は、目に剣呑な光を宿していた。
一心同体だったからこそ分かる……こいつは、カグラは、彼女のことを、本気で心配しているのだ。

「知らない。むしろ、お前が知らないのが意外だ」
「つがいじゃなかったのかよ、お前ら」
「昔の話だ」

煙をふかす。
この話題は、口にするだけでいやな気分になる。
学生時代のことなんて墓まで抱えていくつもりだったのに、ゼシカと再会してからどうも調子が狂う。
捨て置いた過去が後から追いかけてきたとでもいうのか。
そのうちアクエリオンが空中から飛んできそうだな、と存外まじめに思う。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/07/23(月) 23:20:27.56 ID:AOwqRaFu0<> 「お前のクソ女は……今は違うのか?」
「ああ。連絡先すら分からないよ」

火のついた煙草を壁に押し付ける。吸殻を地面に落として靴裏ですり潰した。
疎遠、なんてレベルの話じゃない。もう何の関わりもない。俺と彼女は無関係なんだ。そうだ、そうだろ。
彼女は理想だった。俺にとって夢見たいな存在だった。いくら手を伸ばそうとも届かないはずの存在だった。
……だからこそ、あっさりと手から滑り落ちたんだ。
そして手の届く範囲から瞬く間に離れていく彼女を、黙って見ていることしかできなくて、そんな自分が惨めで大嫌いになった。

「いつまでたっても、『憧れ』は『憧れ』だ。水面にうつる月を掴むことはできない」
「……じゃあ、あの時、テメェは何を掴んでいたんだ?」

あの時、とは、この星に帰ってきたときのことだろうか。

決まっている。

「月を掴んだつもりで、本当は水の中で溺れてたんだよ」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/07/23(月) 23:37:58.57 ID:AOwqRaFu0<> 二本目の煙草をくわえるころには、小雨が降り出していた。
カグラは、店の片づけが残っているらしく、さっさと立ち去ってしまっている。

これだから雨はいやだ。湿気のせいで煙草がダメになったらどうしてくれる。


空を飛ばなくなったのはいつからだっただろうか。
俺の理想をすべて凝縮して、それに人の形を取らせたような少女が、かつていた。
いたんだ。

思い出の中にしかいないけれど。
彼女の手のぬくもりは、どこまでいっても俺から離れずにいる。それがある限り、俺は自分がアマタ・ソラだと胸を張って言える。
結局のところ、俺が俺である理由など、彼女に寄りかかっていた脆弱なものだったのだ。

もう俺に空は飛べない。
一緒に飛んでくれる人が、俺が抱きかかえるべき人がいないから。
俺一人だったら、成層圏を突き破って宇宙にまで行ってしまう。

ブーツに入れていた錘が急に懐かしくなった。
完全に能力の制御ができる今では不要ではあるが、確かに、あれがあったからこそ俺は能力の存在を感じ取れた。

もう俺は飛べない。
飛ばないんだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/07/23(月) 23:46:20.00 ID:AOwqRaFu0<>






「ところでカグラのやつ、あのエプロンのままで恥ずかしくなかったのかな」



【続く】 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(九州)<>sage<>2012/07/24(火) 00:51:13.78 ID:w2knkVyAO<> やっぱりふりふりだったのかよwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/27(金) 11:41:55.82 ID:jXJdrfXIO<> 支援 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/08/06(月) 21:06:00.98 ID:4Ek+OR1s0<> まだかなぁ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/08(水) 10:48:41.62 ID:NTvBZhC30<> まだかなぁ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/10(金) 20:14:23.96 ID:SEYpcy0IO<> まだかなぁ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/10(金) 20:15:13.11 ID:SEYpcy0IO<> まだかなぁ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/17(金) 07:18:38.62 ID:4WXb090go<> まだかなぁ… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/22(水) 01:33:42.05 ID:EbqgUl+IO<> どうした… <> まだ残ってたのか<>saga<>2012/08/22(水) 23:29:12.67 ID:l58wVQjv0<> 世界は平和だ。
少なくとも、俺が知っていた世界はもっと危険で、こんな風にして何の気なしに食事をすることはそうそうなかった。

「んー、このパスタおいしー」
「まあ雑誌に載るぐらいだし……」

向かいに座ってパスタをすするゼシカは、最近買ったばかりのショールを羽織っている。
適当に居座られてもう一月になろうかとしている。俺が適当な格好ではあるが、はたから見れば十分デートなのだろう。

「ゼシカ、今日はどうするの」
「適当にぶらぶらしましょ」
「毎回思うけどこれってすごい時間の無駄遣いだよね」

普段は――いや、ゼシカが来る前の話だけど――俺一人で来る店だった。
ぼうっとしながら、外を見る。
行きかう人々の観察だけでも十分退屈しのぎにはなるものだ。

アクエリオンのソフビ人形を売る露店。懐かしいそのシルエットに目がいった。
あれは神話型か。金色じゃなくて、EVOLみたいなカラーリングだけど。

「ソーラーアクエリオン、って名前みたいね」
「いい名前じゃないか。ゲパルトとかスパーダとかよりずっと良い」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/08/23(木) 00:19:08.01 ID:bIjNfwQo0<> 呆れたようにゼシカは俺を見た。
フォークの柄で額を小突いてくる。

「そういうこと言うと、関係者に怒られるわよ?」
「もう関係ない。カイエンだってきっと実家に引きこもってるさ」
「はははっ、引きこもりのカイエンとか想像できないし!」
「俺も想像できんな」

バンバンと机を叩き爆笑するゼシカ。
不服そうな表情でコーヒーをすするカイエン。
クラブハウスサンドに手を伸ばした俺。

……!? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2012/08/23(木) 01:09:08.04 ID:bIjNfwQo0<> 「カイエンっ!?」
「嘘、どこから湧いたの!?」
「人のことを虫か何かのように扱うな」

思わず席を立ち上がり声の主を探してしまった。
ゼシカが「あ!」と俺の背後を指差す。いた。俺の真後ろで悠々とコーヒーコップを傾けている。

「久しいな二人とも」
「何キャラよそれ……」
「ていうか気づいたならせめて声をかけるとかしてくれよ」

カイエンがコーヒーのおかわりをウエイトレスに頼んだ。
磨きがかかった精悍な顔立ちに、髪を一つに縛ったその女性は少し頬を染める。ぱたぱたと走り行く彼女に一旦店内の視線が集まり、続いてカイエンに恨めしそうな視線が刺さった。

「うわ、看板娘っぽかったわよ今のコ。いいのあんな簡単になびいて」
「カイエンちょっと表出ようか」
「ファンだったのかお前」

ピキピキと青筋を浮かべるアマタに、珍しく小洒落た服装のいかつい男は呆れたように肩をすくめた。

「久々の再会だ、もっと他に何か言うことはないのか」
「俺にかかわらないでくれ。金輪際だ」

ピシャリと言い放つかつての戦友。面食らったようにカイエンは立ち上がった。

「おいおい、本気で言ってるのか? 防衛省がわざわざ月イチで招待状を送っている意味を考えろ」
「えっ」
「人手が足りないんだろう? でも俺は関係ない。アクエリオンが必要な時代は終わった」
「えっ」
「お前以上にアクエリオンを使いこなせる人間がそういるものか。学園を卒業するころには、俺は模擬線でお前に手も足も出なくなっていたぞ」
「えっ」
「昔は昔だ。今は関係ない」
「ちょっ、ちょっとタンマ!」

ゼシカが突然大声で叫んだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/23(木) 11:11:38.36 ID:aHyV4j4co<> やっと…来たか

乙! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/08/23(木) 16:12:26.40 ID:PuECALfJ0<> 乙、やっと追いついた。

そうか、>>1は蕎麦っ食いか。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/24(金) 01:47:57.24 ID:WJ74wvf50<> 良いところで終わったな
続きが楽しみだ <>