VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/06/28(木) 05:01:23.66 ID:EJ9MWvt0o<>【注意と言い訳】
犯罪の描写があります。
特にグロくは書いてません。書く筆力もありません。
推敲してませんし、する気もありません。
深夜の手慰みの結果ですので、批判されても知りません。
十中八九続きません。

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<>妹「殺人を犯しました」 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/06/28(木) 05:02:02.85 ID:EJ9MWvt0o<>  何人目の死体か忘れたけれど、路地裏の暗闇の中に転がった男の人は確かな死体でした。
 繁華街を歩いていた私に声を掛けた人。馴れ馴れしく肩を抱いた人。
 もう何も言わない人。
 軽薄に笑っていた表情が凍り付いた時には、私のナイフはまくれたシャツの内側で腸を抉って、
 次の瞬間には体重を乗せた踏み込みと共に血飛沫が宙に飛び散りました。
 大きく一歩を飛び退いて、膝から崩れ落ちたその人が絶叫を上げる寸前に喉を突きました。
 声はありませんでした。
 ただ、何もわからないまま、その人は小さく呻いて、泣きそうに笑って倒れました。
 その人が想ったことなんて、私はひと欠片も知りません。知ろうとも思いません。
 それでも。あの時浮かべた表情だけは嘘偽りない真実で、本物のあの人だったのだと思います。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/06/28(木) 05:02:52.68 ID:EJ9MWvt0o<>  顔は忘れました。表情が浮かびます。
 笑い、泣き、苦しみ、怒り、縋り、諦め、人は死んでいきます。
 あれは本物なのだと私は思います。私は本物が好きです。偽物は嫌いです。
 でも世の中には偽物ばかりが溢れていて、時には本物と見分けの付かない偽物もあります。
 特に言葉は信用できません。私は自分の言葉すら信用できません。
 想いは口にしたが最後、途端に色褪せてしまうのです。
 だから私は陽気な気分を胸に秘め、血塗れの洋服を脱ぎ始めました。
 暗闇の中、無言で一糸纏わぬ姿を晒す。見る人はいない。

 鞄に詰め込まれていた新しい洋服に着替える内、心も静かに切り替わってゆく。
「もう……また……っ」
 陰気な私は頭を抱える。この吐き気を催す生臭い匂いが陰鬱な気分を加速させる。
 なぜ。なぜ私は、我慢ができないのだろう。
 後悔より保身が優り、私は血塗れの服をビニール袋に詰めて鞄に入れ、タオルで血を拭う。
 ペットボトルの水で濡らしたタオルはあっという間に真っ赤に染まり、三枚目のタオルが赤くなる頃に、
 やっと人目に付かない程度に血が落ちる。男の死体を後にして、私は繁華街を抜け出した。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/06/28(木) 05:03:46.06 ID:EJ9MWvt0o<>  人を殺した夜は眠れません。
 いつ警察が私を訪ねてくるだろうと、不安に苛まれます。
 そんな時は兄さんの部屋をノックします。
 お決まりの合図は2回。そっと響かせるように、分けて、2回。
 起きていれば、兄さんは蝶番を軋ませて私を部屋に招き入れます。
 照明はベッドサイドのスタンドだけ。
 ベッドに投げされた文庫本。皺の付いたシーツ。昼間よりも穏やかな兄さん。
「今日はどうしたんだ?」
 キャスター付きの椅子に跨り、首を傾げる兄さん。
 私は視線で了承を得て、ベッドに腰掛けます。僅かに軋む音。

「……不安なんです」
 それだけを呟きました。
 本当に言いたい事も言わなくちゃいけない事も、すべて胸の内に仕舞ったまま。
 言葉を紡ぐのがヘタだから。紡いだ想いは嘘になるから。言えるはずがないから。
「不安というのは、すべて未来にあるものだ」
 いつも通りに、兄さんは私の心を詳らかに知るかのように振る舞い、問い質すことなく悩みに答えてくれます。
「安らがず。……未来に起きる何事か、いや、何事も起きない未来にかに、お前は怯えているんだね」
 こくりと私は頷きます。
「お前がそうして悩むのだから、きっと解決は難しいんだろうね。不可能なのかもしれない」
 その通りでした。警察の手が止むことは、たとえ私が殺人を止めてもないはずなのです。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/06/28(木) 05:04:56.51 ID:EJ9MWvt0o<> 「一人では不可能であっても、二人なら可能かもしれない……と言っても、抱え込まざるをえない事態、か」
 答えられません。
「その不安は遠からず、現実になるものかい?」
「……わかりません。明日かもしれないですし、数か月後かもしれません」
 ゆっくりと瞬きした後、兄さんは囁くように言いました。
「忘れるんだ」
 黒い瞳が真っ直ぐに私を捕らえます。
「お前は賢いからこそ悩みから逃げられない。しかし解決のできない悩みなら、忘れた方がいい」
 信じられませんでした。兄さんの口から誤魔化しの言葉が出たことが信じられませんでした。

「忘却もひとつの解決だよ。『いつか』に怯えないための解決だ」
「簡単に忘れられるくらいなら……っ」
 兄さんを責める言葉が喉元にまで出かかりました。
 それを咎めようとせず、兄さんは優しく笑い、私の髪を撫でます。
「眠れるまで付き合ってやる。そのくらいなら僕も協力できるだろう?」
 スタンドの灯かりが涙に反射して、兄さんの顔はよく見えませんでした。
 掌だけが温かく、私はその手を握りしめて何度も頬ずりしました。
 兄さんのベッドで眠った私は翌朝、居間のソファーに横たわる兄さんの寝顔を飽きるまで眺めるのでした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/06/28(木) 05:06:16.95 ID:EJ9MWvt0o<>  私が初めて殺人を犯したのは、夜の森林公園でした。
 うたた寝をして駅を乗り過ごした私は、門限に遅れないために浮浪者の溜まり場の森林公園を通り抜けようとしました。
 街灯がぽつりぽつりと見える遊歩道を小走りに急ぐ私の背後から、その汚らしい手は伸びてきました。
 口を塞がれ、茂みの奥に連れ込まれて、髭に包み込まれた浅黒い顔が目の前に。
 汚臭。えずくほどに甘酸っぱいそれが、まさか人の体臭とは信じられず、私はただ混乱していました。
 浅黒い顔の男……そう、男です。その男は私の服を乱暴に掴み、荒く息を吐いて、何事かを言いました。
 短く、もつれた声。理解したのは数秒後。それはこう言ったのです。
「オカシテヤル」
 私は正気を失いました。顔は青ざめ、手は震えていたでしょう。犯される。それは貞操を奪われるということ。
 この男の穢れを身に受ける。それは死にも優る恐怖でした。臓腑が腐り落ちる幻覚が通り過ぎました。

 誰か助けて。
 叫ぼうと口を開けば入って来るのは垢と土に塗れた男の手。
 嗚咽。涙が目の端から流れる。暗闇が肌に纏わりつき、遠ざかる。
 私は世界に見放されたのです。
 あんなにも暖かだった世界が、今はこんなにも冷え切って、すべてを奪い去ってゆく。
 いやだ。その一心で束縛を逃れようと暴れる私に業を煮やした男は拳を振り上げました。
 星が散る。その衝撃は、そうとしか比喩できないものでした。
 やがて側頭部が熱を持ち始め、私はようやく殴られたのだと理解しました。
 男は獣のような呻き声を上げ、歯を剥き出して睨んでいました。
 抵抗の意志を失くし、底なしの寒気に身を任せた私は、仰向けに横たわって暗い夜空を見上げました。
 救いがないほど綺麗な夜空でした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/06/28(木) 05:06:53.87 ID:EJ9MWvt0o<>  弛緩した体にベタベタと触る男の手が、酷く鈍く感じられました。これが自分の体とは思えないほど鈍い感覚でした。
 だから、地面に投げ出された指先に当たる硬い物を握りしめたのも、ただの反射に過ぎませんでした。
 男をその石で殴りつけたのも、キスを迫るその顔が醜悪すぎたからだけで、
 男が死ぬまで頭を殴りつけたのだって、また起き上がって襲って来るのが怖かっただけだった。
 その時の私には、男への殺意も、憎悪も、怒りさえもなかった。なかったんです。
 だから、笑う理由なんてなかったはずなのに。
 男が私の殴打の一発毎に死に近づいて、不可視の命そのものを失っていくのが、とてもとても愉快で。
 その血が飛び散るほどに心は高揚して、赤熱して、未知の感情が止め処なく溢れ出して。
 私の知らない私が、そこにはいたんです。
 何にも囚われず、ただ真実を求め、ひたすらに歓喜する私が。

 私は兄さんを愛している。
 満天の星空の下、形の崩れた頭蓋に石を突き立て、私は気付いたのでした。
 その愛は衝動です。
 与えるなら血の一滴も残さず全て、奪うなら肉の一欠け残さず全て。
 兄妹愛という偽りを取り除いた私の心にある獣同然の欲望は、
 完全なる略奪のみが愛なのだという啓示でした。
 恍惚が去るほどに時が過ぎた後、私は我に返り、その場を去りました。
 凶器の石は川へ投げ捨てました。
 その事件がどのような顛末を辿ったのか、詳しくは知りませんが、
 私の元に刑事さんが来ることはありませんでした。
 目撃者はいたと思います。浮浪者の仲間が。
 事件との関わりを避けたのでしょう。それが結果的に私を助けているのだから不思議です。
 そうして私は、人殺しを続けました。今度こそは自分の意志で。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/06/28(木) 05:08:50.13 ID:EJ9MWvt0o<>  どうしても耐え難かったのです。
 殺人の衝動が、ではありません。
 兄さんへの肉欲が、です。
 私は兄さんを襲い、犯し、貪る代償行為として人を殺しているのです。
 人は私を狂っていると仰るでしょう。
 違うのです。私は狂わないために人を殺しているのです。
 想像できるでしょうか。
 あなたは餓え渇いた一匹の狼です。
 その牙も爪も本来の役目を全うせず、あなたは今死に絶えようとしています。
 ところが目の前に、一匹の羊が現れます。
 なんて可愛らしく……そして、美味しそうな羊。
 しかしあなたは羊を食べられません。
 だって羊は、あなたのお兄さんなんですから。
 狼の兄が羊のはずがない? ええ、そうですね。そのはずなのです。
 なのに私は兄さんの妹なのです。
 ……この獣じみた性根こそが私の本性だというのに!
 
 そうしていくつもの真実が掌を零れ落ちました。
 犠牲者はいつも、どこか少し兄さんに似ています。
 語りかける声が、細長い指が、見下ろす眼差しが、サラサラの髪が、
 その何処かに兄さんを見つけては、バラバラにして真実を探しました。
 すべて覚えてる。誰のものとも知れない表情のすべてが兄さんの顔をして浮かんでくる。
 破滅の足音はひたひたと近づいています。
 そう遠くない未来、警察は私を見つけるでしょう。しかしそれよりも早く破滅は訪れるでしょう。
 予感は誤魔化しの利かない確信に変わりつつあります。
 なぜなら、もう私が死者から得られる真実も高揚も、尽きつつあるからです。
 次に肉欲の飢餓の限界を感じた時 私が得物を探しに街を歩くことはないでしょう。
 探すまでもなく、獲物はすぐ傍にあるのですから。
 最後に見つける真実が何であれ、私は幸福の中で死ねることでしょう。
 しかし、もし兄さんが嘘偽りない心に私と同じ愛を宿していてくれたなら、
 私は、この血と肉と骨と、そこに宿る心と魂の全てを兄さんに捧げると誓います。
 ですから兄さん、どうか私を犯して殺して貪り尽くし、永久にひとつにしてください。
 愛しています、兄さん。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/06/28(木) 05:10:48.20 ID:EJ9MWvt0o<> 深夜を潰して書いた割りに全然文量ないでやんの
まあいいや、おやすみ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>sage<>2012/06/28(木) 05:43:32.50 ID:MVPMxIKro<> 乙
期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/06/29(金) 01:42:38.12 ID:u0mIqJYeo<> 人のサイトの場所借りてやってるんだし、「十中八九続かない」と書くくらいならここでやるなよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/06/29(金) 07:58:06.80 ID:hAzDomUr0<> 期待してるぞ!
期待してるぞ!
ヤンデレ妹に振り回される兄いいよね……
まあ兄がどんなのかはこれから先見ないとだけど <>